ソードアート・オンライン《かさなる手、つながる想い》 作:ほしな まつり
いただきました。
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お手数ですが、よろしくお願いいたします。
週明けの月曜日、いつもの時間に登校した里香は自分より早く教室に来て席に着いている親友の姿を数日ぶりに見て、トトッ、と駆け寄った。
「おはよう、アスナ…………随分お疲れみたいねぇ」
朝の挨拶の次にかけられた労りの言葉に思わず「ひぇっ?」と明日奈が驚きの声をあげる。ぶわっ、と頬を染め親友の顔を見返しているはしばみ色はこれでもか、と大きく見開かれていて挨拶を返す余裕すらなく、ぎこちなく開いた唇からは震える声がよろよろと這い出てきた。
「どっ……ど、して……」
「何が?、だってずっと捕まってたんでしょ?」
「えぇっ!?……なんで、知って……」
「土日を使ったとは言え、わざわざ学校休んで五日間だっけ?、京都の本家と病院を往復してケガ人のお世話なんて、そりぁ看病する方だって疲れるに決まってるわよ」
里香が気遣ってくれた内容が、明日奈にとって京都にある結城家の本家が決して居心地の良い場所でない事と、今回、その本家に泊めてもらい昼間は兄のサポートの為、入院先の病院通いを続けていた事を指しているのだとわかって、ふっ、と緊張を緩める。
「う、うん。まあ、兄さんが重傷じゃなかったのは不幸中の幸いだったし」
まだ強張りが残る微笑を親友に向けつつも内心で大きく安堵の息を吐いていた明日奈に対し里香は疑いの目で更に距離を詰めて来た。
「それにしても本当に顔色が良くないわね……帰って来たの遅かったの?」
「えっとね……夜の七時すぎ頃かな、家に着いたの」
「その後、ちゃんと寝た?」
「ふぇっ!……あぅっ……うぅ……色々片付けをしたりして…………寝るのがいつもより遅くなっちゃった、かも」
「もう、アスナってば。キリトもね、ずっと元気なかったわよ。いつもの年越しの京都行きとは違って今回はいきなりだったでしょ?、でも理由が理由だから、自分からはなかなか連絡しづらかったんじゃない?」
明日奈が学校を休んでいた間の和人を思い出しているのか、里香の笑顔が少しだけ弱くなる。
「私は、ほら、グループ発表の割り振りとかあったから担任からも連絡しておいてくれ、って言われたし」
けれど僅かな笑みを浮かべていた里香の口元が突然、ふふっ、と得意気な曲線に変わった。
「カフェテリアで偶然会った時『アスナ、日曜にはこっちに戻って来るのよね?』って言ったら、アイツ、驚いて一瞬口を開けたまま固まったのよ。それからスゴイ勢いで詰め寄ってきて『ホントか!?』って聞かれたから教えてやったの。『あら、知らなかったの?、昨夜、電話で喋った時に言ってたわよ』って」
更に里香の目もこれまた「にんまり」という表現に相応しい曲線に変化する。
「見物だったわよー。レアアイテムを横から掠め取られたみたいに悔しそうな顔しちゃって」
日頃から何かとしてやられた感を和人から味あわされている里香としては多少溜飲が下がる気分だったのだろう。親友のクルクルと変化する感情とそれを表す面容に可笑しさを含めて明日奈は自分の日常が戻って来た事を実感する。
「うん、キリトくんにもメールしようと思ったんだけど、リズとお喋りしたあの夜はついそのまま寝ちゃって……」
確かに翌日の夜キリトにも連絡をしたのだが、少し拗ねた様子で『リズから聞いたけど』と言われた事を思いだし、明日奈の表情が苦笑に変わった。二人で顔を見合わせて、互いに「ぷっ」と噴き出すと里香は少し表情を改めて秘め事を打ち明けるように顔を近づけ「けど結果的には京都に行ってて正解だったかもね」と告げ「……実はALOでね……」と小声で囁く。それを聞いた明日奈は思い当たる事があるのだろう、再び頬を赤らめて「あ、ウンディーネの?」と問い返せば、妙に神妙な顔つきの里香がゆっくりと頷いた。
「知ってたの?、集団で一人のウンディーネを拘束して、くすぐり倒した事件」
「く……くすぐり?」
「信じられないわよね。それまでは仲良くしてたのにウンディーネだからって、よってたかってくすぐるなんてっ」
「え?……それって、どういう……」
まるで自分事のように憤慨の声を荒げた里香は機関銃のように喋り続ける。
「だからっ、ウンディーネの涙に妙な効果がある、って噂が立って、でも痛みは感じないから、いくら暴力に訴えても涙は出ないでしょ?。そこでくすぐって涙を出させよう、って計画を実行したのよっ」
「…………」
「実際、GMに訴え出たのは男性ウンディーネだけど、懇意にしていた多種族の妖精達に散々くすぐられて,泣かされて、顔中舐め回されたらしいわ。しかも関与してたのが全員男……想像しただけで本当に鳥肌エフェクトが出るかと思ったわよーっ」
すっかり顔の赤みが落ち着いた明日奈はポカンとしたまま二の句が継げない。
「まぁ、昨夜遅くに公式発表で噂はデマだって明言されたから、もう大丈夫だろうけど」
一気に話し終わって事態の収束を喜んでいる親友の笑顔とは裏腹に、昨晩の記憶を呼び起こしていた明日奈はヒクリと片方の頬を痙攣させながら、力なく「うん、そうね」と返したのだった。
お読みいただき、有り難うございました。
これから別枠へ向かわれる方、いってらっしゃいませ(笑)
先に別枠をお読みになった方、珍しくキリアス被害にあっていない
リズさんです(笑)
被害にあっていないどころか無邪気な発言でアスナを翻弄させて
います(珍)
いえ、一番の被害者はくすぐり倒され、舐め回された男性ウンディーネさん
ですかね……。