Muv-Luv Obituary Notice Angel   作:ファインシュメッカー

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フローズン・ティアドロップの設定もちらほらと出てきます。


第一話『虚空に漂う流星』

「ここは・・・俺のガンダムの中か」

 

アディンが転移の衝撃で気を失っていた。衝撃から立ち直った彼が状況を確認した所、自身がウイングガンダムのコックピットの中に戻っている事に気付いた。

 

「・・・状況確認が優先だな」

 

体に掛かる重力から、ここが宇宙である事がアディンには分かった。だが、友軍に回収されたなら、アディンは狭いコックピットの中では無く病室に居るはずだ。

 

アディンがコックピットのハッチを開くように操作をすると問題なく開いた。外は宇宙でも海の中でも地上でもない。なんらかの人工的な施設だと言う事が見て取れる。

 

「どうやら、あれは白昼夢では無い様だな」

 

大気圏に墜ちた筈の自分が壊れた機体ごと宇宙にあるなんらかの施設に運ばれ、そこに放置される。これは論理的に普通ならありえない。

 

アディンの救助目的ならとっととガンダムから下ろすし、ウイングガンダムの技術が目当てでなら機体を解析する為にアディンという存在は邪魔でしかないからだ。

 

シートベルトを外し、アディンはコックピットから降りる。アディンが振り返った。外から見たウイングガンダムはボロボロだった。

 

「・・・酷い有様だな」

 

かろうじて残っていたはずの脚部は消え去り、頭部も殆どフレームのみとなり、かろうじてガンダムと判断出来る程度でしかなかった。

 

しばらく、大破したの己の機体を見ていたアディンだが、情報を得る為に辺りを見回す。

 

「見たところガレージの様だが・・・あれは?」

 

 

 

アディンはガレージの壁についているコンソールを見つける。地面を蹴り、見つけたコンソールの所まで移動する。

 

コンソールを起動させて、メインシステムにアクセスする。そこには、この施設の概要が載っていた。

 

「・・・なるほど、かなり自動化されているようだな」

 

この施設は宇宙に良くある資源衛星を改良した工場のようだ。MSのパーツ製造施設、ガンダニュウム精製施設、食糧生産プラント、核融合炉の発電プラント、それらを運用するシステムは高度に自動化させられており、アディン一人でも運用できるレベルだった。

 

「MSの生産ラインはOZMSー06・・・リーオーのモノか。・・・これが新しいオモチャ(●●●●)か。とりあえず、リーオーⅣ型(グライフ)は作らない様にしておくか、あの人のためにもな・・・」

 

施設に作られていたMS量産用の施設はリーオーの物だった。リーオーは一年戦争において既に旧式であった。前線で姿を見せるOZのMSはトーラスが殆どだった。

 

これは、AC暦においては、ロームフェラ財団の主力製品としてバカ売れしていたが、宇宙世紀においては、技術独占の為にリーオーはOZにしか配備されなかったことが原因と判断出来る。

 

そのリーオー用の生産ラインがここにある。それを見てアディンが思い浮かべるのは、自分が子供の頃持っていたリーオーの玩具と義父の顔だったのだろうか?

 

頭を振り、アディンは自分の頭に浮かんだ物を振り捨てる。そして、メインシステムから得られる情報を更に吟味する。

 

「形式番号XXXG-01W・・・俺のガンダムのパーツか。これなら修復も・・・?」

 

データベースを検索した結果、いくつかMSのパーツが既に存在していることが判明した。MSのパーツ在庫からウイングガンダムのパーツを見つけた。

 

だが、アディンはそのパーツに違和感を感じた。それも当然だろう。そのウイングガンダムの姿はアディンのウイングガンダムと異なる物だったのだから。

 

「これはアーリータイプ・・・いや、エンドレスワルツ使用と言う事か」

 

データベースに示されたパーツ貯蔵庫の備蓄にあったガンダムのパーツは、ウイングガンダムのもう一つの姿のモノだった。

 

本体の形状はエンドレスワルツ版のウイングガンダムゼロとほぼ同一のものとなり、背部ウイングはより大型かつ複雑なパーツ構成をしている。

 

これにより本来のウイングガンダムに比べるとシャープな印象を与える。そして、カラーリングは鮮やかな原色系のトリコロールになり、武装も大きく変わっていた。

 

「・・・特に問題は無いか。むしろ、バスターライフルの残弾が増える分の強化みたいな物だな」

 

エンドレスワルツ版のウイングガンダムにはバスターライフルの予備カートリッジが片腕に3発収めた専用ラックを懸架しており、左右合わせて6発分の予備カートリッジを所持している。

 

これにより最大出力で三発しかバスターライフルを撃てないウイングガンダムの継戦能力は向上するだろう。

 

「施設の試運転も兼ねてリーオーの生産とガンダムの修理と・・・これは?」

 

アディンが今あるパーツから生産と修理の試運転を行う為にコンソールを操作した。その時だ。彼がソレ(●●)を見つけたのは・・・。

 

 

 

*****

 

 

 

西暦1997年

 

地球世界は暗雲に包まれていた。

 

10年以上BETAの侵攻を持ちこたえていたアラビア半島の戦線が瓦解してしまった。アフリカ連合軍と中東連合軍はスエズを渡って前線を再構築し、アフリカ大陸への侵入を辛うじて食い止めることが出来た。

 

だが、これはあくまで食い止めることが出来ただけで戦線を押し返すことが出来た訳では無い。BETAが地球圏に来訪してから30年。

 

未だ、人類はBETAに戦場で勝利した事は無かった。

 

BETA大戦において世界を支える大国アメリカ合衆国。そこにある米国航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration)、通称NASAにおいてある計画が行われていた。その計画は地球の未来を決める重要な二つの計画の内の一つだった。

 

 

 

「だから、本当に突然出現したとしか説明の仕様が無いのです!」

 

ワシントンD.CにあるNASA本部にある問題が発生した。

 

「そんな馬鹿な・・・観測機器の故障ではないのか?」

「ありえません!間違いなく、その小惑星はラグランジュポイントⅣに突然出現したのです!コレはありとあらゆるデータから判明できた事実です!!」

 

ラグランジュポイント4、通称L4に突如として巨大な小惑星が出現したのだ。その小惑星は太陽系外から飛来したのではない。突然出現したのだ。

 

しかも、L4にて非常に安定した状態で存在しているのだ。これを動かすとなると別の小惑星が衝突するか人為的に動かすかのどちらかしか方法は無い。

 

「わかったわかった。君の言うとおり突然現れたと仮定しよう・・・それが何の問題なのかね?」

「局長、本気でおっしゃってるのですか!?もしかした、BETAの仕業かもしれないのですよ!十分、問題ではないですか!」

 

NASAの局員は局長に食って掛かる。明らかな異常事態なのに局長の反応が薄いからだ。BETAと言う異星生物に侵略されているにも拘らず宇宙で起こった異変を放置する。その局員にとっては信じられなかった。

 

「だが、例の計画が遂行されている月軌道の裏側のL3には何の問題も無いじゃないか」

 

しかし、局長の関心はアメリカが主体になって進めているある計画についてのみだった。月から地球を挟んだ裏側のラグランジュポイント3においてアメリカは、ある物を建造していた。そして、L3とL4は、かなりの距離があり、L4の異変は彼にとってそこまで大事ではなかった。いや、正確には大事にしたくなかったのだ。

 

「だからと言って・・・!」

「オイラー君、これは上の決定なんだよ」

「ッ!政府の!?」

 

局長の言葉を聞いた局員オイラーは驚愕する。そう、局長の判断は、アメリカ政府の意向を受けていたのだ。

 

「ここだけの話なんだがね?我々が推し進めている計画は、ユーラシア各国にとって受け入れ難い物なのは、わかっているだろう?避難先があるからこそ何とか予備計画として採択出来そうなのだよ」

 

局長はオイラーを宥める様に理由を語る。アメリカが推進している計画は、かつて西暦1989年に一度否決された。その為にも、L3で進めている計画が必要だった。

 

そんな最中に宇宙に発生した異変。もしかしたら、それにより計画が再び否決されるかもしれない。だからこそ、アメリカは主張しなければならない。

 

今回の異変は大したことが無く、計画の遂行に問題は無い。例え問題が発生したとしても十分対処可能である、と。

 

「・・・だからこそ、宇宙には何も問題は無い。そう事実を捻じ曲げるつもりなんですか、上の人間は」

 

オイラーは肩を震わせ、感情を押し込めた声で局長に問いかける。怒り、諦観、理解、呆れ、色々の感情が彼の中で錯綜している。

 

「オイラー君、聞き分けなさい。これは必要な事なのだ」

「・・・・・・・・・」

 

歯を食いしばりオイラーは答えない。彼の手を白くなるほど強く握り締められていた。

 

「オイラー君!」

「・・・わかりました」

 

もし、ここで彼らがその小惑星を調査しようとしていたら、歴史は変わったかもしれない。だが、アメリカのとった判断は静観だった。

 

故に彼らは手に入れそびれる事になる。その宝の島とも呼べる存在を・・・。

 

 

 

*****

 

 

 

宇宙から見た地球、それは翠の大地を蒼で包み込み、雲で化粧した乙女のような奇跡の星。1961年に人類として初めて宇宙飛行を成し遂げたガガーリンは、『地球は青いヴェールをまとった花嫁のようだった』と語った。世界中の人々には『地球は青かった』として知られている。

 

だが、その花嫁は今難病に犯されていた。緑が失われ、夜から光すらも失われたユーラシア大陸、その有様は、美女の肌が醜く火傷したかの如くだ。

 

宇宙の民スペースノイドにとって地球は聖地だ。その聖地が蝕まれる姿を目の辺りしたこの世界に只一人の宇宙の民(アディン=ロウ)は、何を思っただろうか?

 

「各部正常・・・外装問題なし・・・追加ブースター、異常なし・・・」

 

彼はウイングガンダムのコックピットの中から地球を眺めていた。ウイングガンダムは、修復・回収を終えていた。だが、今のウイングガンダムの姿は一目でそれと分かる姿をしていない。外から見るとスペースシャトルにしか見えなかった。

 

「目標、太陽系第三惑星地球極東エリア日本・・・」

 

バードモードに変形し、偽装を付けたウイングガンダム、そしてそれに乗るアディン=ロウ。彼らは地球を目指す。見せられた(●●●●●)未来から答えを求めて・・・。

 

「任務了解。アディン=ロウ、発進する」

 

ガンダムは再び飛翔する。新たな戦いへ、新たね舞台へと。アディンは再び戦う。迷子になっている己の帰るべき場所を求めて。

 

宇宙の心と地球、それは重なろうとしていた。

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