Muv-Luv Obituary Notice Angel   作:ファインシュメッカー

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主人公は、ヒイロ=ユイと同じく工作員としての訓練を受けています。

・脳波を自力で調整できる
・たった二人で艦隊を奪う
・50階建てのビルから墜ちても死なない
・etc.

・・・うん、大概ですね。


第二話『流星と星の王子さま?』

宇宙からの来訪者BETA、今も地上を蝕む彼らは何も地上からだけ来る訳では無い。かつて、カシュガルやカナダに落着した様に月からも飛来しているのだ。

 

衛星軌道にある宇宙ステーションでは、月からの招かざる客を監視していた。蒼い母星を眼下に彼らは兎ならず蟲が住む星を見張る。

 

「定時報告、異常なし・・・いえ、これは!?」

「どうした?」

 

観測員が声を上げる。上司は観測員に対し、何事かと問う。

 

「・・・いえ、一瞬地上に何かかが落下したのかと思われたのですが、どうやら只の隕石の様ですね」

「SHADOWは?」

 

対宇宙全周防衛拠点兵器群、Spaceward Hardwares for All-Round Defensive Ordnances and Warheads略称SHADOW。それは月軌道監視網を構築、ラグランジュポイント1に早期核投射プラットフォームを設置し、最期に地球周回軌道に配置された核攻撃衛星群による最終迎撃ラインを構成する大気圏外迎撃システムだ。

 

もし、BETAの降着ユニットの類なら即座に迎撃するシステム。だから、そのシステムが稼動しかどうかを聞いた。

 

「落下物と思しき物には反応してません」

 

観測員の答えはNoだ。落下物は降着ユニットに比べて小さく、反応も直ぐに消えた為、隕石の類が大気圏の摩擦熱で燃え尽きたと判断したからだ。

 

「なら昔の人工衛星の破片か、なんかだろう。・・・それよりも例の小惑星は?」

「またですかオイラーさん?以前変わりありませんよ」

「・・・そうか」

 

上司、レオパルト=オイラーは部下の観測員の報告に肩を落とす。彼は、突如現れた小惑星を黙殺するNASAとアメリカ政府が当にならないと判断すると、この宇宙ステーションに転属を願い出たのだ。

 

だが、オイラーは気付いていなかった。気付く事が出来なかった。彼が注目している小惑星から一つのシャトル型カプセルが発進した事を。そして、そのカプセルが今し方地球に降下した事を気付く事が出来なかった。

 

「・・・ECM正常に作動・・・ウェーブコース問題なし・・・」

 

カプセルの中でアディン=ロウは状況を確認、復唱する。カプセルは大気圏突入様のウェーブコースを取る。そしてカプセルから行われたECMによるジャミングで地球側の監視網を抜けたのだ。

 

アディンが地球に降下しようと決めたのは、しばらく前。丁度ウイングガンダムの修復が完了しようとしていた時だった。

 

 

 

*****

 

 

 

小惑星型基地は『アスクラピウス』と名付けられ、稼動状態にあった。

 

ガレージを一望できる管制室には、アディン=ロウが居た。アディンは、コンソールを操作し、施設を動かしていた。ガレージの壁からアームが迫り出し、パーツをくみ上げてMSを形にしていく。

 

かつて大破して辛うじて形を留めていたウイングガンダムは、再び人型の形になっていく。

 

「順調だな・・・」

 

修復の進んでいるウイングガンダムの状態に満足したのか。アディンは別の作業に取り掛かる。

 

 

 

ソレは胴体しか作られていないMSだ。元から胴体だけと言うわけでは無く、只単に未完成なだけだ。アディンがウイングガンダムを修復・回収するためにパーツを検索していた最中に見つけた物だ。

 

デザインは、ウイングガンダムに非常に似ている。このMSはアディンの世界(●●)では設計図しか作られておらず組み上げられる事は無かった機体だ。いや、もしかしたら、彼のライバルに次世代(エピオン)を託したあの男が組み上げていたかもしれない。

 

その機体の名はXXXG-00W0ウイングガンダムゼロと呼ばれるガンダムだった。そのガンダムを胴体部分しか作らなかったのは、あるシステムを使用するためであり、なおかつシステムの暴走を防ぐ為だ。

 

Zoning and Emotional Range Omitted System(領域化及び情動域欠落化装置)略称ZERO.System。

超高度な情報分析と状況予測を行い、毎秒毎瞬無数に計測される予測結果すなわち未来を搭乗者の脳に直接伝達するシステムである。

 

 

 

アディンは、ウイングゼロのコックピットハッチは開くと中に入る。中は、ウイングガンダムと異なっていた。モニターは投影式に、操縦桿は五指を活用した物に、そしてコンソール中央部の球状レーダーが存在していた。

 

「・・・ZERO、俺に見せろ。俺の行くべき場所(未来)を」

 

アディンは、ZEROシステムを起動させる。コックピット内が黄色く染まる。実際に黄色の光で照らされているのではない。ZEROシステムがアディンの脳に投影している情報がその様に表現されているだけだ。

 

アディンの目標、それはこの世界で生き抜くこと、そして自分の羽を休めれる場所を見つける事、その二つだ。

ゼロは、その目的を達成する為の手段演算する。勝利の為には搭乗者の死すらも提示するシステム。

 

だからこそ、同様のシステムを作り上げた男はこう言ったのだ。《その機体に乗って勝者になってはならない》と。

演算する、搭乗者の目的から回答を割り出す為にゼロは予測する。

 

アディンの脳裏にあるビジョンが浮かび上がる。映し出されたイメージは戦場だ。16mサイズのウイングガンダムがそれよりも大型な機体、戦術機が戦っている姿が映し出された。銃口の先は、醜悪な異星の使者BETAだ。

 

BETAに立ち向かう戦術機たち、その中に一際目立つトリコロールの小型の機体、自分のガンダムがあることにアディンは気付く。戦場は、どうやら町中のようだ。

 

放たれる煌き、物量に飲み込まれる兵、そしてなぎ払う光束。そんな中アディンは町の看板が日本語で書かれていることに気付いた。

 

(これは・・・日本・・・物語の地か)

 

しばらく、戦闘の映像をZEROが見せていた。アディンはZEROが日本と接触する必要性を訴えかけていると察した。世界が違うとはいえ、自身の前世もまた日本民族であり、ヒイロ=ユイと呼ばれるはずだった現世の自分もまた日系人である事から、日本なら自分が馴染み易いのではないかとアディンは推測した。

 

「良いだろう」

 

そして、アディンはZEROの予測した未来を信じて、『アスクラピウス』を発ち、日本帝国へと潜入したのだった。

 

 

 

*****

 

 

 

地球の空をシャトル型カプセルは飛ぶ。

 

「中国大陸、四川省上空通過・・・あれがH16、重慶ハイヴか・・・。酷い物だ。周辺が荒野と言うよりは更地だ」

 

アディンは現在地を確認するとコンソールを弄り、モニターに地上の映像を映す。

 

そこにはH16重慶(チョンチン)ハイヴ が映されていた。西暦1993年にBETAにより中国領四川省重慶市に建設されたフェイズ3のハイヴだ。ハイヴの周囲30km圏内の植物は殆どが駆逐され、大地も殆どが地ならしされていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

宇宙から地球の様子は見て取れていた。緑の大地にある十円禿のようなハイヴ周辺地域、文明の灯火が消えた夜の大地。

 

だが、実際に間近で見ると受ける衝撃は格段と違った。ここでジオニズムは例にしてあげよう。ジオニズムは元々エレニズム、地球を聖地として扱う思想から発展した思想だ。

 

そして、アディンはスペースノイドとして地球の大きさを知り、前世において地球を自分たち人間を支えてくれている事を知っている。そんな彼にとって、地球が蝕まれる姿は心を動かさざる負えなかった。

 

「レーザー照準警報?・・・!?」

 

だが、そんな感傷も長くは続かなかった。カプセルがレーザー照準でロックされたとアラートがなったのだ。

 

それを聞いたアディンは機体を咄嗟に動かす。数瞬、カプセルが存在した位置に光が走った。

 

「目視できるほどの出力のレーザー・・・BETAの光線級か!」

 

BETAの武器はその物量、そして光線級による制空能力だ。光線級が現れる以前は通常兵器で十分BETAに対処できていた。しかし、光線級の出現から一転、人類は空から駆逐され多くの人々がBETAに喰われていった。

 

「くそ、高度を下げすぎた!」

 

BETAは隕石や砲弾などの落着予測地点付近の存在する重光線級のみが迎撃を行い、一定距離以遠では一切反応しないことが判明している。

 

逆を言えば一定距離に近づけば攻撃を受けると言う事だ。すなわち有効射程距離30kmの飛翔体を確実に落とそうとして来ると言う事だ。

 

(なるほど、確かに普通の飛行機なら空から駆逐されもする・・・!)

 

アディンは度重なる光線級のレーザーを回避する。光線級のレーザーは最大出力になるまで数妙の時間を要する。だからこそ、レーザーの初期照準を受けた段階で回避する事で未だ墜ちずにいる。

 

BETAのレーザーを航空機で回避する。それは小回りの聞く戦闘機で尚且つパイロットがエース級でも無い限り不可能だろう。そして、一度や二度は回避できても度重なるレーザーにパイロットや機体が耐えれるわけが無い。それをアディンは身を持って実感した。

 

「このままでは持たないか!・・・外装パージ!追加バーニア、ブーストオン!!」

 

カプセルが壊れる。いや、偽装が解除されたのだ。カプセルの中から現れたのはウイングガンダム・バードモード。脚部には大気圏離脱用のバーニアが装備されていた。

 

アディンがバーニアを起動させるとウイングガンダムは加速する。光線級の射程30kmから速やかに逃れる為にバーニアを起動させたのだった。

 

 

*****

 

 

 

日本帝国にある街、横浜柊町。BETAの軍靴の響きが近づきつつあるが、まだこの街は平和だった。

 

 

「見てみて武ちゃん、流れ星!」

 

まだ、高校生にもなっていないような少女が空を見上げて声を上げる。頭上には星空が広がり、闇夜を切り裂く流星が尾を棚引かせながら墜ちて行った。

 

「おっ、ホントだ」

 

少女の隣を歩いていた少年は少女の声に釣られて空を見る。

 

「ん、純夏。どうした?」

 

少年は、隣の幼馴染が祈っているのに気付いた。

 

「願い事をしてるの。流れ星に三回願うと願いが叶うんだって」

「なんだ、んな迷信信じてるのか?」

「む~。良いじゃない」

 

少女は頬を膨らませる。

 

「そんで何を願ったんだよ?」

「・・・内緒!」

「なんだよ、純夏の癖に生意気だぞ」

「デカシリーが無いんだよ、武ちゃん!」

 

少年と少女はじゃれ合う。

 

「・・・それを言うならデリカシーじゃないのか?」

「そ、そうとも言うらしいね」

「そうとしか言わねえよ!?」

 

何時までも続くかと思われる平和。だが、徴兵年齢の繰り下げや学校の必修科目の切捨て等、着々と学徒動員と言う言葉が迫っていた。いや、既に学徒動員といっても良いだろう。

 

少年少女が進級する頃には彼らは徴兵されているだろう。後方国家である日本帝国が前線になる日も近い。

 

(星の王子様・・・どうか、武ちゃんとこのまま平和に暮らしていけるよう、お願いします)

 

だが、それでも彼女は願わずにいられなかった。

 

 

 

京都でもその流れ星を見ている少女たちが居る。

 

「見てみて、唯依!流れ星よ!」

 

士官学校に付属している寮の自室の窓から身を乗り出して、少女はルームメイトに語りかける。

 

「本当?・・・ああ、綺麗・・・」

 

窓から乗り出している少女の後ろからルームメイトの少女が顔を出す。

 

「そうだ!願い事、願い事!」

 

「願いか・・・」

 

少女たちは願う。この国の防人としてひよっこな自分たち。いずれ自分たちも戦場に立つだろう。

 

(皆で生きて、この国を守れますように)

 

 

彼女らは、願う。未来を、流星に・・・。

そして、流星は太平洋へと姿を消した。

 

 

 

*****

 

 

 

光の届かない海底に佇むカラフルな鳥型戦闘機ウイングガンダム・バードモードの中でアディンは、ぼやいていた。

 

「機体は問題ないが・・・問題は帰りの推進剤だな」

 

ガンダニュウム合金で出来た機体は、レーザー攻撃にも耐え、更には高速で海面にぶつかった衝撃にも拘らず健在だった。しかし、別の問題が発生していた。

 

「どうにか追加ブースターの推進剤を確保しなければ・・・」

 

アディンは地球に来る際、地球から『アスクラピウス』戻る為、大気圏離脱用のブースターを装備して来た。しかし、光線級の射程から逃れる為にブースターは使用され、大気圏を離脱する為の推進剤が無くなってしまったのである。

 

「・・・とりあえず、行動を起こすか。」

 

 

 

*****

 

 

 

日本のある大学の図書室にその男は居た。深夜と言う事もあり学校にいる人間も少ない。それにも関わらず、彼は図書室に備え付けられたパソコンに張り付いていた。

 

「西暦1998年・・・白銀が出現する3年前か」

 

アディン=ロウだ。彼は、大学の備えられた図書館に潜入し、ネットワークから情報を収集していた。

 

(・・・今の将軍は、煌武院 悠陽では無いのか。やはりゲームでの描写だけでは知らなかった事ばかりだな)

 

彼は電子の海から情報を探っていた。アディンはこの世界の一般常識を知る為に情報を収集していた。

 

「さて・・・」

 

ある程度、情報を集めた彼は、懐からディスクを取り出しパソコンに読み込ませる。読み込んだ瞬間、パソコンに無数の文字列が流れる。

 

「・・・軍のシステムにアクセス・・・成功・・・気付かれていない・・・問題なし・・・」

 

 

それはドクターJが用意したハッキングツールだ。これは地球連邦軍のマザーコンピューターですら解析できない高度なツール。

ネットワークが宇宙世紀ほど発展していない、この世界では侵入を拒めるモノはまだ(●●)居なかった。

 

「見つけた・・・!戦術機用ロケット燃料・・・これだ!」

 

推進剤不足、それをアディンは工作員らしく解決しようとしていたのだった。




プロローグで大破、今回で水没。

ウイングガンダムって不憫なガンダムですよねえ。デザインやコンセプトは結構好きですけど原作での扱いがアレなんでこうなりました。
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