unlimited blade worksはダンジョン攻略に向いている   作:色葉酢

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遅れました~というか風邪ひきました(>_<)

1万4千文字到達です。士郎君の心理描写を盛りだくさんに書いてますので違和感ありまくりだと思いますが、悪しからず~作者にはこれが限界です~

そういえば、25話良かったですね~ウェイバーver.大人とルヴィアが見られて作者は大満足でした~

そして最後になんだかティオナのヒロイン化が止まんないです。アイズは次回なんです!次回!…ティオナもタグでヒロインにしようかな?というのが悩みです。

では



ファミリアと理想

「…………と、言う経緯があって今ここに至るわけなんだ。」

 

話を…終えた。

 

冬木の話を、学校のことを、友達のことを、そして…あの火災の話と聖杯戦争の話も嘘偽りなく、話した。ただ一つ、正義の味方についての話を除いて…だが。あの理想だけは誰にも理解されない。

 

遠坂は俺に言った俺の生き方はひどく(いびつ)だと、アーチャーは俺に言ったその理想は借り物だと、実際そうなのだ。衛宮士郎という男は見返りなどを求めずとも人を救いたいと思い、爺さんが取りこぼした理想にあこがれ、それを最後まで自分の理想として貫き通そうとしている。

 

人として破綻し、かつては未来の自身(今はもう違うが)でさえ過去の己を否定する、そんな男の理想をあって間もない彼らに話しても、誰が理解するだろうか。否定的には捉えられてもまず、肯定的には捉えられることはないだろう。

 

別に否定されるのが嫌なわけじゃない。この理想はときに相手を不愉快にさせることがある。それを今、好意的に接してくれている彼らにあえて言う必要はない。そう判断しただけだ。

 

気を張れ、衛宮士郎。この先、正義の味方への前進はきっと孤独を免れることはできない。

 

だから、俺は……ファミリアには……。

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

 

ぐすっ、ぐすっと泣きながらにして嗚咽を漏らす者が一人。ティオナだ。

 

「ジロぉ~、大変だっだんだねぇ~~。」

 

感情をストレートに表してくれる彼女は本当に優しいのだと思う。同情されることには慣れっ子だった俺なのだが(結局は他人事なのだ)泣かれたことはなかったのでどうすればいいのか分からなかった。そんな時、ティオネが率先してティオナを慰めに来てくれた。

 

ただ、何故か彼女は俺の顔を少し怒った表情で一瞥した。

 

(あれ?俺、何かしたかな?)

 

少し考えてみる。したといえば、した。彼女にではないが彼女の妹を泣かしてしまった。

 

(それ…なのかな?そうだよな…その気はないにしても家族を泣かされたら怒るのが自然だ。)

 

あの日、失った家族のことをあまり覚えていない。が、家族とはそういうものだと、無条件で受け入れてくれる一番身近な人こそが家族だと、そう思う。だから、ティオナ達には後で謝らないとな。

 

「すまない、そしてありがとう、士郎。君にとってあまり話す気が起きない話だったろうけど、君のことが少しでも知れて良かったよ。本当にありがとう。」

 

フィンは大人だ。この話を聞いて尚「知れて良かった」と言ってくれた。それは同情ではなく、悲観したわけでもない。純粋な月並みの感想。

 

同情されて決していい気分はしない、本当にそいつのことが分かるのは自身だけだ。下手な言葉は要らない、本当に欲しいとするのなら偽りのない気持ちだ。だが、残念なことに人は相手の本心まで見通す力はない。もしかしたら、伝える手段はないのかもしれない。

 

それなら、伝える必要のない関係であるならば……でも、それは今の俺には持ちえないものだ。

 

伝える必要のない関係……それは今の俺には決して持つことはないだろう。何故なら遠い昔に失くしてしまったのだから。でも、俺はその関係を名前だけなら知っている。

 

俺はそれを“家族”と呼ぶんだと思う。

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

 

ティオナは泣き止んだ。でも、誰も動こうとしない。フィンは先ほど団長としての仕事があると言って部屋を後にした。ロキさんは何か考え込むようにして執務机に座っている。

 

アイズは……なんだかジ~っとソファの向かいから俺の顔を凝視している。その瞳にはフィン同様、同情、悲しみは見られない。でも、何だろう…こう…寂しさって言うのかな、そんな感情がその瞳には揺れている気がする。

 

俺もこの状態から「ダンジョンに行こう」と言う気にはならなかった。が、意外な人物から

 

「ほら、みんなダンジョンに行くわよ!士郎にモンスターとの戦い方とか見せるんでしょ?」

 

そんなことを言い始めるティオネ。突然だったので不意に「お、おう。」と返事してしまった。

 

「…そうだ、…そうだった!行こうっ、シロー。ダンジョンは初心者だから上層までしか行けないけど、よわっちぃモンスターをたっくさんやっつけてスカッとしないと!そして、そしてその後は美味しものたっくさん食べよう!あと一緒に買い物に行って~服でも選んで楽しまないと!」

 

バッと両手を広げて、さっき泣いていたのが嘘のように元気になったティオナ。あれ?用事が何だか増えている?という疑問が浮かんでくるが、言わない。

 

彼女の顔を見れば一目瞭然、彼女は今にも泣きだしそうだが、笑っている。意図は鈍感な俺にも分かる。俺を元気づけようとしてくれている。彼女はきっといつも本気で、仲間思いで、全力で他人の気持ちを理解しようと努力しているのだろう。気持ちが分からなくとも、分かろうと努力する姿を精一杯見せること……そんな気持ちの伝え方があったんだな、と彼女の純粋さに俺は気づかされた。ここで彼女の意をくみ取らないのは間違っている。

 

「うん…そうだな、ありがとう3人とも。よっし!ダンジョンに行こう、みんな。」

 

「…うん。」「OK-!」「待ちくたびれたわ」三者三様の返事が返ってくる。俺の話で一時はどうなるかと思ったが、俺が思うほど彼女たちは弱くない。

 

弱いのはきっと、“自分の理想”について語ることができなかった自分の方だ。

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

 

バベル、迷宮の真上に建つ50階建ての摩天楼施設。そこは冒険者の始まりであり、モンスターを抑える「蓋」としての機能も果たす。

 

俺たち衛宮一行はバベルにたどり着いた。途中、「剣姫(けんき)」、「大切断(アマゾン)」、「怒蛇(ヨルムガンド)」、「童顔(どうがん)」という言葉がちらほら聞こえた。おいっ誰だよ童顔って言ったの!そうなのか?初対面の人から見てもわかってしまうほど深刻な童顔なのか?俺。と不快ではあったがさっきとは明らかに変わって楽しそうに笑うティオナの顔を見たので今回は水に流す。

 

「じゃあ、もぐろっか?」

 

「ああ、どんな感じなのか見に行きたい。」

 

こうして一行はダンジョンの中へ

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

 

ここは、執務室兼僕の部屋である。僕、フィン・ディムナはどうやらダンジョンに行く士郎たちと行き違いになったようだ。あの空気のままだったら団長として助け舟でも出さないと、と思い、即刻仕事を終わらせて帰ってきたというのに…でも、誰かが率先したというのならみんな若いのに(ロキ以外)大したものだ。

 

静まり返った部屋で本を読んでいること数分、誰かがドアをノックする。

 

「どうぞ。」

 

「私だ、フィン。」

 

「リヴェリア……。もしかして、さっきのことかい?」

 

「ああ、さっきは急用ではないと言ったが。少々、事態が変わってね。」

 

「事態が変わった…?」

 

「どうやら最近、上層付近での死者が急増しているらしい。」

 

「!」

 

僕が驚く理由。それは上層の異常性だ。正直言って冒険者が上層で死ぬことは一般的に少ない。もし要因があるとしたら、よっぽどの冒険初心者か、運悪く他のパーティーのモンスターを『怪物進呈(パス・パレード)』されたかどちらかぐらいのものだった。でもそんなことは稀だ。

 

「…では、死んだ理由に問題が?」

 

リヴェリアは頷く。

 

「ああ、死んだ大半の者はソロでの行動者。だがそこに問題はない、問題なのはその冒険者の年期だ。初心者の数を抜いての計算だが死んだ者の中にはLv.1を1年以上もの間続けている者が4割を占めているらしい。」

 

「!」

 

1年以上も冒険者を続けている者が死んでいる?1年、冒険者の経験を積むと大半の者は冒険のノウハウを理解する。そんな彼らがよっぽどの無茶でもしたのか?それとも、他に理由が?

 

「原因は…分かっているのかい?」

 

「直接ギルドの者に聞いたが…何しろ死んだ者は何も語らない。原因は不明だ。」

 

だが、とリヴェリアは言葉を紡ぐ。

 

「これはあくまでギルド内で流れているという噂程度の話なのだが…。どうやら、その問題が浮上してきているのと同時期に、ダンジョン上層部では不定期的に中層モンスターが出現しているらしい。」

 

「なんだって?」

 

リヴェリアのその言葉で、執務室に衝撃が流れた。

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

 

「ふんふ、ふ~ン♪いやぁ~上層を冒険するなんて、何年ぶりだろ?」

 

「遠征となるといつもスルーしてしまうしね~。」

 

「……でも、新技の試し打ちとかなら、結構使うよ。」

 

「たしかに~」と相槌(あいづち)をうつティオナ。……なんだか凄くリラックスしているね、君たち。一応は確認しておくがここはダンジョンです。みんな、モンスターという敵がいるんですよ?静かに行動しましょうね。

 

「それにしても、これが世にいうRPGというものなのか?やったことないけど…。」

 

「「あーるぴーじー?」」

 

「………?」

 

小言で言ったつもりだったが、聞こえてしまったか。姉妹は声をはもらせ、アイズはいつもと同じようにコテン、と首をかしげる。

 

「ああ、俺の世界にあったテレビゲー……ってそうか、そういっても分からないよな。まぁ、遊びの名前のことだよ。」

 

「へぇ~、じゃあ後でご飯の時に教えてねっ。その『あーるぴーじー』っていうの。」

 

「分かったよ。」

 

ティオナは本拠を出てから、積極的に俺に話しかけてくる。……気にかけてくれてるんだろう。普段の俺なら、あんな話をした後に直ぐ気にかけてくれる人なんて正直鬱陶しくでしかなかった。同情しなくていい、そう言ってやりたかった。でも、彼女はどうだ?明らかに同情しているにもかかわらず、俺は不思議と悪い気分はしない。

 

「あっ、モンスターだ!行くよっアイズ!」

 

「…うん。」

 

すると、遠くにモンスターを発見したティオナとアイズが、ビュンッと擬音ではなく本当にそういう音を出して、モンスターのとこまで走って行った。

 

あれ……俺は?…………というのが3回ほど続いている。確か、この探索はモンスターという存在を、他でもないこの俺がどんなのかというのを見てみるというのが目的だったはずだ。今ではすっかりあの二人のモンスターハントが主となっている。

 

「あの子たち……すっかり目的を忘れてるわね…。」

 

「だな…。」

 

いつも置いてけぼりのティオネと俺。せめてもう少し近くで戦ってほしいものだ。二人ともさっきから、追いついた時にはもう遅い。めちゃくちゃ満足した顔で「楽しかった~」「うん」と言ってくる。あの二人の笑顔といったら、見たら見た者の心を癒す効果でもあるのだろうか、いつも注意し損ねる。

 

でも、ちょうどいい機会だ。

 

「ティオネ。」

 

「ん~。なに?」

 

彼女に向き直って、目をちゃんと見て言葉を吐き出す。

 

「さっきは悪かった。君の妹を泣かせてしまったし、君自身、不快にさせてしまったと思っている。本当にごめん。」

 

そう言ってから頭を下げる。

 

「……士郎、頭を上げて。私は別にそのことで怒ってなんかなかったわ。いや、少しね、少しはそういう感情があったかもしれないけど……。ティオナは感情的な部分があるし、ああいう話をされたら泣いちゃう子だって知ってたもの。」

 

「そう……なのか?」

 

頭を上げる俺に対して彼女は本意を教えてくれた。

 

「そうよ。私が少し怒ってたのは士郎の態度よ。た・い・どっ!全く…女の子が目の前で泣いていたのよ?だったら、女の子に耐性があろうが、なかろうが慰めるっていうのが男の子ってもんでしょ?」

 

じりじりとダンジョンの壁側に詰め寄られる。

 

「そ…、そうか。なら今度からはちゃんとそう行動できるように努力するよ…。」

 

「ほんとにぃ~?いい?女の子の涙は惑星なんかよりも数万倍重いんだからね!?今度そういう場面見つけたら、私が士郎を教育してやるんだから!」

 

「肝に銘じておくよ…。」

 

やはり、女の子という存在には勝てないな。女の子の理念なんてものは常識というものと比べて、複雑怪奇(ふくざつかいき)もいいところだ。もしかしたら、ティオナに対して鬱陶しく感じないことはこういう理念が働いてるからかもしれないな。

 

「と、私からはここまでよ、士郎。さっさと二人を追いましょう、ね?」

 

「ああ。……って、ちょっ!」

 

ティオネは満面の笑みを向けてくる。眩しいなーと少しドキッとしたところで、またやられた。俺にとって、普段ならそんなに気にしないことだ。しかし、あの笑顔の後に右手を取られ、手を引かれるというのは衛宮士郎の耐性限界(キャパシティ)を超えるには十分すぎたのである。

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

「いや~狩ったねぇ。」

 

「うん。」

 

二人に追いついた。二人とも超ホクホクしている。超楽しそうだ。そんな二人にティオネが近づく。

 

「あ、ティオネー、シロー。見てみて~この、ドロップアイ……ったーーー!!」

 

「……っ?」

 

説明しよう。ティオネが、近づいた二人の脳天に拳骨をぶっ放したのだ。すごい…っ、二人とも頭から煙が出ている…っ。

 

「なにすんのさ~。」

 

「はぁ~…、あんた達ね~今日はどうして上層に潜っているのか忘れてんじゃないの?」

 

「「…あっ」」

 

ひどい、どうやら記憶の片隅にも引っ掛かってなかったらしい。だが

 

「お…おぼえてたよ~、だから、こうして戦闘を見せていたわけで……。」ピュ~ピュ~

 

あっ、この子ったら言い訳したな?そういうの見逃さないぞ?俺。しかも、ご丁寧にそっぽを向いて口笛まで吹いている。うまいじゃないか。

 

「…………。」フ~フ~

 

ア…アイズまでティオナと同じことを…。ただ、唯一違うところを上げるとするなら口笛が…ね。そんなにお上手じゃないところだろうか。かなしいかな、こんな時でもちょっと可愛いなと、赤面してしまうのはやはり耐性がなさすぎるせいなのだ。

 

「あっ!あっちにもモンスターいるよ?よっし!いっくよぉおおお!」

 

ティオネから逃げるようにモンスターへ一直線のティオナ、アイズも「よしきたっ」とでも言いそうなぐらいの爆ダッシュを見せる。しかし、それを先読みしていたかのように二人の前に立ち塞がるティオネ。

 

「待ちなさいって言ってるのが、…………聞こえねぇのか(・・・・・・・)?」

 

ティオネがそう言うと、二人は急に立ち止まり、ティオネが真ん中に位置して、両脇の二人の片腕を自分の腕でガッチリ拘束する。二人はというと、物凄く顔が青ざめている?

 

???今の、後半の声の主はいったい誰だったんだ?凄くドスの効いた声で…おかしいないきなり難聴になった気分だ。うん、あまり深くは追及しない方がいいだろう。したらダメな気がする。

 

「さ、行くわよ。士郎。」

 

「はいっ!」

 

何故か彼女の問いに敬語になってしまう俺であった。

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

歩くこと約100mくらい、そこにモンスターがいた。数は3体。

 

「あれは、ゴブリンだね。」

 

ゴブリン、まさか向こうの世界では幻だとか伝説だとか言われている生物に出会うとは。俺の中で初めて見たモンスターの感想はそんなものだった。外見は犬なんかと比べるまでもないほど気持ち悪い。

 

「……ゴブリンは、上層で一番弱いとされているんだよ。」

 

「へぇ、何だか見た目の割にそんなに狂暴じゃないのか?」

 

すると、一匹のゴブリンが俺に向かって飛び込んできた。速さは…そんなに速くない、動きが単純だ。こんなの聖杯戦争を乗り越えた俺にとっては緩すぎる。即座に投影魔術に取り掛かろうとした。瞬間、右から何かが飛んでくる。足?ティオナの右足だ。その右足がゴブリンの頭を捉える。

 

「ほっ。」

 

という掛け声とともにゴブリンの頭は体から吹き飛ばされた。その光景はまるで、ア○パ○マ○が、顔を変えてもらうときにスペアの顔がなんらかの事故で届かず、体だけが蠢いているようだった(少し、マニアックだったな)。

 

「もう、いきなりシロー狙ってくるとか…。」

 

「でも、ありがとうティオナ。おかげで無駄な力を使わなくて助かったよ。」

 

それにしても、彼女たちの膂力(りょりょく)については目を見張るものがある。さっきのティオナの蹴りと言い、遠目にだがアイズもさっきゴブリンを蹴ってサッカーボールの如き速さで吹っ飛ばしていたのを見て、この世界の“第一級冒険者”と呼ばれる者たち(彼女らのこと)の身体的スペックはサーヴァントに引けを取らないと感じた。アイズはヒューマンであり、あの細身から繰り出す技には“神の恩恵”というものが深く関わっていることを強く感じさせられる。

 

と、ティオナにお礼を言い、一時考察を脳内で終えた俺。

 

 

ここで俺は何を血迷ったのか無意識にティオナの頭へ手が伸びてしまった(まだ触れてない)。つまりは“頭なでなで”態勢のことである。

 

 

(しまった、何してんだ俺!)

 

ティオナも「なんだ?」という顔をしている。途中で止めてしまえば、急に手を出して、引っ込めるという如何にも…、如何にも挙動不審者のようじゃないか!

ここは心を鬼にして?羞恥を抑え、彼女の頭に無事右手が着地!「ふぇっ!?」と声を上げる小動物(とは程遠いかも)が目の前にいるが気にしてはいけない。

 

…………ここからどうすればいいっ!?全くこの先のヴィジョンを考えていなかった。分かることは、ただ手を頭に乗っけて、ただ手を引っ込ませると、再び挙動不審者に逆戻りするというヴィジョンだけ。じゃあ、どうする?衛宮士郎という歴史書にはかつて女性の頭をなでたという記述はない。無理…だ……。ここから導き出された俺の答えは

 

ポフ、ポフ

 

頭を軽く、本当に軽く掌で叩くことだった。ここが俺の限界、羞恥と耐性の均衡値。同時に「ありがとう」という言葉は欠かさない。やましいことは何もありませんよ~と、全力で表現する。よし、全ての工程は完了した。即座に回れ右をする。スタスタ、彼女から距離を取る。く…っ、なんてこった右手が燃えるように熱いじゃないか!…全神経集中してたもんな。

 

今の奇怪な俺の行為のせいでティオナも少なからず赤面している。ほか二人は丁度、戦闘をしていたのでさっきのは見ていない様子だった。助かった~。はずだったのに

 

「ねぇ、ねぇ今さっきシローに頭なでられたさっ!」

 

顔を紅潮させたままティオナが2人に言いふらす。

 

おばか……っ。しかも、結果だけを伝えているのでどういう経緯があってそうなったのか、ちゃんと2人に説明していない。

 

「いや、そのだな…えぇ~っと「へぇ~、やるじゃない、士郎。」…ハハ…はぁ。」

 

ティオネは変わらない意地の悪い笑みを俺に向けている。「……うん。よかったね。」とティオナに相槌(あいづち)を打っている、アイズ。ティオナはただ純粋に2人にありのままを伝えただけなのにどうしてこうも、全て俺に帰結してしまうのか?どうやらこの3人はあの“あかいあくま”に天然で匹敵するほどの才能の持ち主たちなのかもしれない。

 

 

 

数分して、近くにまたゴブリン2体を見つけた。俺は

 

「なあ、今度は俺一人であいつらと戦わせてくれないか?」

 

そう、提案した。

 

「どうなんだろ~?神の恩恵を持ってなくてもあいつらぐらいなら私は倒せると思うけど…。」

 

「そうね~、元いた世界では戦いのノウハウくらいは身に着けていたの?」

 

「そうだな、戦闘技術的なものなら自身はそこそこあるぞ?」

 

何しろ武器の培ってきた憑依経験を読み取ることが、俺の強みでもあったんだから。

 

「……もし、危険と判断したら、私たちが止めに入るけど…それでもいい?」

 

「ああ、それで構わない。」

 

「じゃあ、構わない…かな。行って来なさい。あまり危ない行為はしないでね。帰りまでに怪我が増えてたら団長にあわす顔がないし。」

 

ティオネらしい。でも、こんなにも安心できる戦闘はセイバーとの練習以来か?とにかく、聖杯戦争ではガチな殺し合いを経験してきたわけで…正直さっき見ていた感じの動きだとすぐに片を付けられそうだ。

 

こうして異世界での初戦闘を行うことにした。

 

「―――投影(トレース)開始(オン)

 

投影するのは勿論、慣れ親しんだ干将・莫耶の夫婦剣。やっぱり、良く馴染む。目の前に敵は2体。よく考えたら2対1は初めての経験だが、今の俺には負ける気がしなかった。

 

▽▽▽▽▽

 

避ける。右からくる拳を避ける。正面からくる鋭い牙で噛みついて来ようとするゴブリンには横から蹴りを入れて回避する。

 

この2対1という状況に慣れるという名目で攻撃を前後左右に避けていたのだが、遅すぎる、敵が。そういえば、白兵戦のサーヴァントとは殆ど剣を交えてきたんだよな。戦闘とはいえ心にかなりの余裕がある。

 

「なんだか、シロー余裕そうだねぇ~。」

 

「そうね、戦闘慣れしているのは確かみたいだわ。」

 

「戦闘全体がシローには、見えてるんだと思う…。」

 

彼女たちの話声を聞く余裕もある。相手の殴る、蹴る、噛みつくの単調な攻撃パターンはもう読み切った。そろそろ終わらせよう。

 

2体の敵はとにかく俺に突っ込んでくる。俺という標的が目に入った瞬間、突進するという本能しか持ち合わせてないんだろう。だったら、その習性を利用させてもらう。まず、先に近づいてきた奴には横っ腹を思いっきり蹴りつける。2体目は殴ってきたその腕を避けて、掴み、

 

「ッラァア!」

 

投げ飛ばす。配置的にはゴブリン2体は左右等間隔に約2m。挟み撃ちされる配置だ。そして奴らは習性上、俺を挟み撃ちせざるを得ない。走ってきた。俺を標的に…2体をギリギリまで引きつけ、直後に2,3歩俺は後ろに下がる。そうするとゴブリンのお見合い状態が生まれる。奴らはこのまま突進すれば互いの頭をぶつけて衝突する。でも、そうはさせない。俺は器用に干将・莫耶をダガー持ちに変えて2体が衝突する。瞬間、左右に迫ってきていた2つの額に片方ずつ、2刀を突き刺す。

 

そしてモンスターは奇声を発して煙のように消えていった。

 

こうして、衛宮士郎の異世界初戦闘が終了した。

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

「すご~い!余裕だったね~シロー!」

 

「確かに、2体同時に相手するって初心者じゃ一つの山場みたいなところあるものね。」

 

「しかも、2体同時撃退…あれも戦闘する者にとって、如何に全体が見えているかを把握している必要がある、とても大事な戦闘技術。…すごいね、シロー。」

 

三人からの評価は好ましいものだった。まあ、ああいう戦闘形式は初めてだったというもの、自分でも驚くほど、うまくいった。臨機応変な戦闘、もともと型なんて持ち合わせていない俺にとって最大限の技術。

 

そして、今の戦闘で気が付いたのだが、(なか)ばそんな気がしていた魔力のパスについてだ。やはりというか、遠坂とのパスは消えていた。これほどまでにイレギュラーなことであればもしかしやと覚悟はしていた。つまりは、魔力に関してあの最終決戦ほど融通の効いたことはできないということだ。

 

「3人がいてくれたおかげで戦闘に集中できたこともあるさ。ありがとうな。」

 

素直にお礼を言っておく。実際、言ったことも間違いじゃないしな。

 

「それじゃあ、これからどうする?士郎のダンジョン内での目的は、ほぼ完遂したとおもうんだけど?」

 

「そうだな、もう上がろうか。今日は下見目的だったし。」

 

「そっか~!じゃあ、帰りに買い物付き合ってね~シロー。」

 

「はいはい。」

 

そういえば、そんな約束があった。いかん、結構疲れているな、俺。それもそのはずか、異世界に来たとはいえ半日前まで柳洞寺で戦ってたんだもんな…。なんだかそう考えていると、急激に体が重くなっていく感じがする。

 

「じゃ、早くいこ~う。あたし、お腹すい「うわぁあああ!」

 

ティオナの言葉を遮って、そんな叫び声が聞こえてくる。瞬時に全員叫び声の方向に顔を向けると、なにやら暗くて見えない奥の方で火の玉のようなものが飛び交っているのが光でわかる。

 

「あれ……ヘルハウンド…?」

 

「うそっ?あれって中層モンスターじゃなかったっけ!?って、こっちに向かってきてんじゃん!」

 

「まずいわね…上層であいつらに荒らされると初心者たちがダンジョンに潜れないじゃない。少し、ここにいる奴らだけでも片づけておきましょう?」

 

「じゃあ、私は襲われているヒトの、ところに……。」

 

「OK-」と言葉を交わしている3人…ただその場にいた一人は話など聞かずに走っているのだが…

 

「あれ?シローは?」

 

話を聞かずに声がする方へ走っている、俺。いま大事なのはそこに死に追い詰められそうになっているヒトがいるということ、それだけだ。あと、もう少しで…

 

 

 

そこには男性が一人。ヘルハウンドと呼ばれていたオオカミのようなモンスター3体に壁際で囲まれていた。すでに退路はなく力なく膝を地に落としてしまっている。その冒険者に

 

「今行くから、もう少し持ちこたえろ!」

 

そう叱咤(しった)し、生きる気力を少しだけでも持たせる。「は、はぃいいー」と情けない声を発していたが、冒険者は立ち上がった。よしっ

 

「――――投影(トレース)開始(オン)っ」

 

だが、走りながら投影を行使して気づいてしまった…今の俺にはあの夫婦剣をこの手に収められるだけの魔力も…ない。

 

「く…っそ」

 

それでも走りを止めることはできない。ここで止めてしまえば俺は俺でなくなる。衛宮士郎はここで走りを終えてしまうことで、追い続けてきた理想を捨ててしまうことと同義であると理解できている。

 

それだけは……できないっ。

 

間に合った。俺は彼とヘルハウンドの間に割り込むことができた。彼は立ち上がり、逃げる態勢が出来上がっている。

 

「俺が3体を引きつけておくから、その隙に逃げるんだ。」

 

相手に有無を言わせずそういうと、泣きそうな彼は素直に首を縦に振った。

 

「少し借りるぞ。」

 

おそらく、彼のであろう落ちていた剣を拾い上げて確認を取る。瞬間、正面のモンスターが口火を切って俺に噛みつこうと襲ってきた。剣を縦に持ち、噛みつけないように防御する。

 

「今だ!走れ!」

 

俺はそう言い放って、3体の綻びから走って逃げていく冒険者。……これでいい、これで後はこの3体をどうにかすれば。そう考えていると、さっきの正面のモンスターは剣によって口が閉じない状態で、その口内に火球を生成し始めた。

 

ボウッ

 

とっさの判断によって剣でモンスターを投げ飛ばした。が、

 

「ぐうっ…っ。」

 

剣を持っていた右手が軽度の火傷を負う。剣は落とさない、落とした瞬間にあの鋭い牙に貫かれて終わりだ。戦意を新たに敵全体を把握すると、3体同時に火球を生成している。

 

(まずいっ、形を持つ火球ならまだしも無形である火炎放射は剣では防げない!)

 

左からの来る炎を避ける。右から放たれた炎は俺の着地点めがけて飛んでくるが剣で何とか着地点をずらしてギリギリ躱すが、正面、3体目の炎は態勢的に避けられない。炎は無慈悲にも着地点に向かって放たれた。最後の手段に俺が唯一持ちえる“守る”ことに特化した盾があるが、パスもなく、この、からっきしの魔力で何ができるのか。でも、やらないよりは…マシだ。

 

右手を前にかざす。そしてその盾の名前を口に出す

 

「“熾天覆う(ロー)…「【目覚めよ(テンペスト)】」「エアリアル」

 

発動するかしないかの、一瞬。俺の後ろからダンジョンで起きるはずがないと思うほど、圧力のかかった風が吹いてきた。その風は飛んでくる炎とぶつかり、炎が燃え上がり狂うだろうと思われた。が、それすらも食いつぶしてしまうかのような高密度の風は、とうとう炎を掻き消した。

 

そして地面に左肩から不時着した俺の目の前には金が。

 

「無茶したら…ダメ、だよ?」

 

そう言った彼女は、目の前にいた3体のモンスターを時間にして数秒で消し去ってしまった。

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

「も~、ダメだよ?あたしたちとはぐれちゃ?」

 

「ご、ごめんな。体が勝手に動いちゃってさ。」

 

ここでも、なぜ助けたかの真意は語らない。

 

「ほんとよ?右手の甲の火傷でなんとかすんだけど、ヘルハウンドは群れで行動するから連携攻撃が面倒臭いモンスターなんだから。」

 

ただ、心配かけたことは反省しないとな。

ちなみにここはもうダンジョンではなく、お腹がすいたみんなの希望で、カフェである。そこで3人からのプチ説教を受けているのだが、ほぼ姉妹からの愚痴であった。アイズはというと今日何度目かになる“じー”とこちらを見つめてくる状態となっている。そんな彼女が口を開く

 

「シローは…自分よりも他人が大事…?」

 

「!」

 

驚く。彼女は本当に俺の心を的確に読んでくる。

 

「なんでそう思う?」

 

内心、動揺するが平静を装う。

 

「ああいう極限の状態になった時、人は本音とか、心の声がストレートに出てきやすいと思うから…。そして、シローはあの場で自分が助かるよりも彼が、助かる方を優先した。」

 

アイズは本当にすごいな。寡黙で人に関心がないのかと思いきや、人の本質を見ることには長けている。

その受け答えにどうしたものかと困っていると、料理が運ばれてきた。「きたー」と喜ぶ少女が救いとなり、ひとまずお腹を満たそうという空気が広がって俺の返事は流れた。

 

 

 

食事を終えてショッピングという名の武器調整のために【ゴブニュ・ファミリア】と呼ばれる鍛冶派閥であるファミリアの本拠へ。そこは雰囲気こそ華やかとは言い切れないが、まさに工房。“これ一本で生きてます感”がにじみ出ていた。

それとは別に「げげっ、【大切断(アマゾン)】!」とか「ティオナ・ヒリュテ!?」「来やがったなぁー!」と声をあげられる者が約一名。本人もぶすっと頬を膨らませて「いちいち傷つくなー」と言っていた。……【大切断(アマゾン)】ってティオナのことだったのか…。

 

 

 

そんなこんなでもう夕暮れ時だ。【ロキ・ファミリア】の本拠のほぼ目の前。

 

「今日は楽しかったですな~。」

 

「ね、シロー」と話しかけてくるティオナ。「そうだな」と本心ではあるが少し返事がぞんざいになる、俺。本拠の前には見える人影が3つ。ロキさん、フィン、リヴェリアだ。

 

「おかえり、4人とも。ダンジョンは君の目にどう見えた?士郎。」

 

「ああ、なんだか不思議だったよ。危ないと頭では理解しているのに先に進んでみたくなる。そんな場所だった。」

 

「ふふっ。そういうことが言えるなら君は、冒険者の素質があるよ。」

 

フィンと俺は苦笑する。少なくとも高揚した瞬間は確かにあった。そんな心のスペースが俺にまだ残っていたことが驚きだ。でも…

 

「それで?ウチのファミリアに入るんか、入らへんのか?」

 

少し語調が強い、そして初めて会った時とは全く違う真剣な雰囲気で聞いてくるロキさん。このヒトは……きっと気づいている。俺がファミリアに入るのか入らないのかの答えを…。

 

 

「俺は……………ファミリアには入りません。」

 

 

静寂。予期していただろう向こう3人と、驚き、声が出ないこちらの3人組。

 

「理由を聞いてもええか?」

 

ロキさんが静寂を切る。

 

「理由は詳しくは言えないですけど、俺のわがままですよ。俺の“どうしても叶えたい理想”がファミリアという組織に相反するということが全てです。」

 

ロキさんはそれを聞いて息を吐く。

 

「そっかぁ~、それならウチは止めん。でも、自分さっき“ファミリアには入らん”ゆうたけど、もしかして…」

 

「はい、俺はここのファミリアに所属したくないってわけじゃなくてファミリア自体に入らないつもりです。」

 

つまるところ、そうなのである。ファミリアというものは派閥争いがあり、“メンバー以外の派閥はダンジョン攻略において敵である”という見方がある。どこかに所属するということは自らに敵を作り、その相手との競争は免れないということを指す。それは、俺の理想が許すのか?……時としては仲間を守るために他人を犠牲にしてしまう可能性のものが俺の望む理想だったのか?違う…だろ。

 

「……そうか、そう言うかもとは思っていたよ。では、冒険者とならない君はこれから何を生業(なりわい)として生きていくつもりだい?」

 

フィンは優しく聞いてくる。確かにそれは一時の問題である。冒険者とはならない俺がどうやって生計を立てていくのか…。

 

「まあ、まずはそれをこれから探してみる予定だよ。」

 

本当に無計画な話だ。まず、バイトを探さないといけないなんてな。今は夕暮れだが周りが見えない程暗いわけじゃない……明日までには見つかるかな?

 

「で、でも!住むところとかは?ご飯だって食べないとだし、生活できる環境だって…っ!」

 

「ああ、それなんだけど…さっき助けたヒトからお金を貰ったんだ。俺は要らないって言い続けたんだけど…。当面はこれで宿にでも住み込もうかなと。」

 

頭を掻いて説明する。「ホントにいらない」と言って返したつもりだったのだが、いつの間にか俺のポケットに入れられていて、ご丁寧に「助けていただいてありがとうございます」という手紙まで添えられていた。そこまでされて、今から返しに行くというのは難しく、また、くどくなってしまうと思ったのでありがたく貰ったのだ。

 

「ぐうっ……」と口から声を漏らすティオナ。これでは何だか一人暮らしを引き留められているお兄ちゃんの気持ちが分かってしまいそうだ。でも、時は止まらない。

 

「……じゃあ、俺はこれから宿と職探しをしてくるよ。今日はありがとうな、みんな。何も知らない俺にここまで親身になってくれて正直助かった。この恩は絶対に返すよ。」

 

今度もまた、ティオナの頭に手が伸びた。不自然ではなく、無意識でもなく、悲しそうな彼女を慰めようと意識して伸ばした。そして、ポン、と頭に優しく手を置く。

 

「だから、ティオナも俺に貸しを作ったことを忘れるなよ?そうすれば、絶対にまた会えるからさ。」

 

「うん…。」

 

少し和らぐ顔、そうできたのなら“あかいあくま”式貸し借りも功を奏したと言える。そして、手を頭から外して今度はティオネに向き直る。

 

「ティオネもありがとうな。今日一日付き合ってもらって大分助かった。ダンジョンの時もな。」

 

「あら、なんのこと?私はただ二人を呼び止めただけよ?それ以外は何もした覚えはないけど。」

 

彼女とは軽口をたたきあい、少しだけ微笑がこぼれる。最後にアイズ

 

「アイズ、今日は最後まで借りを作ってばかりだったな。それと、ダンジョンの時は言えなかったけど、助けてもらってありがとう。これも返さないといけない大きな恩だ。いつか、必ず返すよ。」

 

「ううん、そんなことないよ。私も…楽しかったし、借りだと思わなくていいよ。…だってシローはもう“家族”なんだし…。」

 

「!…そう…か、ありがとうなアイズ。」

 

懐かしい響きだな。“家族”か……。

そうだなと、その場に居合わせてくれている【ロキ・ファミリア】のみんなが頷いている。

 

「そうやで~シロー。ウチ等は神の恩恵などなくとも一時は繋がりを持った“家族”なんや。だから、遠慮とか隠し事とかはしなくてええんやからな?」

 

なんだか気持ちが悪い…彼らがではなくて、なんだろう?麻痺していてそれに慣れてしまっていた感覚が消えていく感じ。“異常”に慣れてしまって“普通”が受け入れられない感じ。抽象的だが、そうとしか表現できない感覚だ。

 

「あ、ああ…みんな、ありがとう。それじゃあ、そろそろ行くよ。」

 

ここにいると、何かが揺らぐ。なんでか分からないけど居てはいけない気がする。ここは、ひどく“普通”で、俺はその“普通”が分からない。それはおそらく、とうの昔から感覚が麻痺していたせい、ただそれだけの話だ。

 

俺は重くなる頭を叱咤(しった)してみんなから背を向けて歩き出した。その背中に

 

「絶対…無理しちゃダメ、だよ。」

 

という誰かの声が聞こえたような気がするが、俺は振り返ることができなかった。

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 

 

「それにしても、この世界にバイトなんてあるのかな?」

 

俺はほどなくして、そんな心配事を気にしていた。よく考えてみろよ?俺は冒険者にはならない。が、ダンジョンには定期的に潜るつもりだ。あそこには“死”が付いて回る。そしてダンジョンには多くのヒトが出入りしているわけで…今日のヘルハウンドのことと言い、あそこで多くのヒトが絶望の淵に立たされているのだとしたら助けないわけにはいかない。

 

そういう意味でも、ファミリアという制度は少し邪魔でもある。俺は仲間だけではなく全部を守りたいんだから。そこに派閥争いなんかが起これば、“助けられるのに助けてはいけない”状況が発生し得るかもしれない。それだけは許されない。ただ

 

(でも、彼らならそんなことは絶対にしない…かな。)

 

そんな、確信めいたものが心にあったから出て行きづらかったのかもな。とも思う。それでも、正義の味方というものが彼らの持つ“普通”では理解されないことは分かっていたんだ。……やはり、俺は出てきた方がいいに決まっている。

 

(時としてこの理想は周りのヒト達を悲しませてしまうしな。)

 

そう頭の中で締めくくって、いざバイト探し。前述のとおり、俺は強くならないといけないので、バイトに専念はできません。できれば、夜の時間帯にシフトが入って、昼のうちはダンジョンへ、と言うのが好ましい。でも力仕事な~この世界じゃほとんどのヒトが神の恩恵を授かっていて、普通のヒューマン(俺のこと)じゃ発揮できないような力を持つヒトがいるし……。役に立たなさそうだ。できれば俺の得意分野…か、得意分野と言えば機械の修理とか?あとは……

 

「飲食店みたいに料理を作る仕事ならできるかもなぁ~、なんて。」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

目の前には俺の職を左右する(うんめいの)ヒトがいた。

 

 

そのヒトが丁度出てきた店の名は『豊饒の女主人』

 




どうでしたか?なんとファミリアに入らないと言っちゃう士郎君です~

今回は士郎君の家族観について触れてみました~
士郎君の両親っていまだに謎ですもんね~


最後になんとあの店が来ましたね!果たして士郎君の職はいかに!


そして本当の最後に、これからの感想欄のコメントなんですがあれを一人一人にちゃんと書いていると時間がかかってしまい、意外と大変だということが分かりましたのでこれからは直ぐに返せそうなコメントだけ返信させていただきます~

ではまた来週~
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