≪この物語の幕を開けるには、役者の紹介を始めなければなりません≫
男の声が誰もいない観客席へと届く。
≪まず一人目は白くも紅い少年の紹介を始めましょう≫
返事がないまま語り告げられる少年の記録。
≪メラニン色素、という言葉をご存知でしょうか?これはある種の遺伝子の病気によって失われるものでも御座います≫
語られる姿は悲惨なものであった。
≪肌が白いというばかりに不義の子ではないかと噂された少年で、白金の髪に紅い瞳を持つゆがんだ心の持ち主でもあります≫
それゆえにでもあるのかもしれない
≪それゆえに置き去りにされ、施設へと預けられました≫
しかしそれは幸運でもある。
≪しかし少年が三歳のとき、転機は訪れました≫
幕が紅い幕から白い幕へと変わり、投影機から光が溢れ、幕へと映像を流し始める。
「ねーぱぱ、なんであのこ、おはだがしろいの?」
茶髪の少女が尋ねた。
それに黒髪の男が答えた。
「あの子はね、そういう病気なんだよ」
茶髪の少女はそれに対してなぜ治さないかと問う
「なんでおくすりもらえないの?」
黒髪の男は苦笑いしながら答えた。
「あの子の病気はね、治らないんだ、生まれたときから、ずっとあの姿なんだよ、別に害はないし、あの子の病気も移らないから、安心していいよ」
その時、確かに少年に転機は訪れたのかもしれない
「あたしは結城明日奈だよ!あなたのおなまえは?」
茶髪の少女が尋ねた
「白井、名前は無い、付けられる前に捨てられたから」
白髪の少年は名前は無い、笑うことすらしてもいない。
「じゃあきょうからあなたのおなまえは」
しかし、少女は気になりすらしなかった
「しらい、しらい
なぜなら、その心はどこかで、見下げる人を望んでいたのだから。
「そう、じゃあ早く戻ったら?俺なんか気持ち悪いだろう」
自分より弱そうな体が。
「そんなことないよ!いっしょにあそぼうよ!」
自分より下だと、思いたかったのだから。
≪役者の過去はこれで終わり、二人の少年少女が交差する物語、そろそろ幕があがるようです≫
男がそう告げると、白い幕が上がり、紅い幕のみが残る、いつの間にか投影機は光をともさず、舞台には光が灯る、そして紅い幕が上がる――――――――――