洋館前
「・・・吸血鬼か」
「えぇ、そうよ。私は吸血鬼、そしてこの霧を生み出すように仕向けた張本人よヴェアヴォルフ」
騙すでもなく、自らこの異変を起こした張本人だと主張した女吸血鬼
「まずは名乗るのが先よね。まず、後にいるこの二人は私の従者たちよ」
「初めまして、紅魔館のメイド長を勤めております十六夜咲夜と申します」
「紅魔館の門番、紅美鈴です」
後に控える従者たちが名乗った後、吸血鬼も名を名乗った
「そして私はこの紅魔館の主であり、ドラキュラ公“ツェペシュの子孫”レミリア・スカーレットよ」
・・・なに?今、この吸血鬼はなんと言った?
「ツェペシュ・・・だと?」
「そうよ。ヴェアヴォルフである貴方も聞いた事ぐらいはあるでしょう?」
「・・・」
ヴラド・ツェペシュ
かつて15世紀のワラキア公国の君主でありまたの名を
串刺し公
そう、ヴラド・ツェペシュとは串刺し公と恐れられた最強の吸血鬼
ヘルシングの鬼札、アーカードの事だ
しかし、長年ミレニアムは奴の事を調べてきたが奴には子孫が居たとは聞いたこともない
それに俺が感じ取った吸血鬼の気配、確かに目の前にいるこの女もそうだがもう一つ、アーカードに一番近く強大な気配がもう一ついたはずだ
「・・・お前が串刺し公の娘?馬鹿げた事をほざくな、奴に娘が居たなど聞いた事もない」
「?その口振り、まるで私のお父様と認識があるかのようね」
「・・・俺は奴に会い、奴の眷属とも戦った。俺は敗北した、そしてミレニアムは奴を貴様の言うツェペシュを殺した」
「・・・ッ!」ギリッ!
俺の言葉に吸血鬼は苦虫を噛んだような強ばった表情になった
正解には結果はどうなったか俺は知らないが、少佐が長年の歳月をかけて最強の吸血鬼であるアーカードを殺す手段を得た
シュレディンガー少尉、対アーカードの為に作られたミレニアムの切り札
「何処にでもいて何処にもいない」存在である少尉をアーカードに取り込ませる事で何処にもいない存在にする。それが少佐が編み出したアーカードを殺す術
成功か否かは定かではないが、アーカードの『拘束制御術式 零号』を解放し自分の持っていた数百万もの命を総て解放する“死の河”を行った時点でミレニアムの勝ちは決まっていた
「戯れ言を抜かすな!ミレニアムだと!?お父様が貴様らのような奴等に負けるはずがない!貴様の言う殺したツェペシュなどどうせ偽物だ!」
「・・・アーカード」
「なに?」
「ヘルシング家の人間に使役され従う、俺が戦ったツェペシュのもう一つの名だ。・・・奴の子だと言い張りながら何も知らないのか、貴様の言うツェペシュの方が偽物なんじゃないか?」
「・・・そうか。よくわかった」
吸血鬼から溢れる強い妖力、これほどならセラス・ヴィクトリアと同等か
どうやら怒らせたようだ
「咲夜、美鈴、手出し無用よ。私自らやるわ」
「しかし、お嬢さ(スッ)ッ!咲夜さん!」
「・・・お嬢様の命よ、私達は邪魔者が現れたらそっちに対処すればいいわ」ボソッ
「・・・」コクッ
小声で話し合う従者たち
小夜の前に出たレミリアの目には、父を侮辱した目の前の人狼を殺さんとする怒気で溢れていた
「ふん、聞き分けがよければ飼ってやろうとも思ったがやめだ。お父様を侮辱したお前は絶対に許さない」
「なら、無駄だ。すでに俺は・・・博麗の犬だからな」
バッ!
両腰にあるホルダーからモーゼルM712を取りだす
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
銃口をレミリアに向けて容赦なく引き金を引く
しかし問題の弾は両銃に装填されているマガジン一個に十発、合わせて二十発しか無い
「ヴェアヴォルフが玩具なんて、犬にはボールの方がお似合いよ」
撃たれた4発の弾丸をレミリアは簡単に避け、彼女は弾幕で反撃を始める
彼女が放った弾幕は弾幕勝負などのように派手さを決めるような強さではない、本格的に倒そうとする威力である
「・・・」バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
しかし、小夜も避けながらまた引き金を引きレミリアを狙い撃つ
しかし、彼は銃で狙い撃つばかりで得意である接近戦を一切行おうとしない
残り弾数 12発
「ヴェアヴォルフの癖に遠距離ばかり。臆病なのかしら、ね!」
レミリアは弾幕を放ちながら小夜に急接近し、鋭い爪を小夜の顔に振るう、が
「・・・短気め」
スッ!
「っ!」
振るわれたレミリアの腕を飛びはねながらで避け、一回転しながら彼女の頭に強烈な蹴りをくらわせた
レミリアの頭は血が吹き出し、そのまま地面に叩きつけられる
「(よし、ここからだ)・・・さぁ、お前たちの主は消した。霧を止めろ」
レミリアの死体を背に傍観していた二人に視線を向ける小夜
そんな小夜に咲夜は賞賛する
「お見事です。吸血鬼の守護として飼われるヴェアヴォルフのその力はさすがとしか言いようがありません、しかし“それだけですか?”」
小夜の背後にあるレミリアの死体から煙が現れ死体はゆっくりと体を起こす
「頭を潰した?脳を弾丸で撃ち抜いた?心の臓を貫いた?その程度でお嬢様が死ぬと」
閉じた瞼を開き、恍惚な笑みを見せながら真っ赤に染まった瞳で背を向けている小夜を見る
「お嬢様こそ、我ら従者が忠義を尽くして仕えるに値する、ただ一人の愛しき主君なのです」
「・・・ッ」カチャ!!
ドスッ!
気づいた時には既に遅く、レミリアの手刀が小夜の腹に突き刺さる
「・・・ぐっ」ドサッ
腕を抜いた瞬間、小夜は倒れ伏した
レミリアは爪に付いた血を舐めとった後、ペッと地面に舐めた血を吐き出す
「この程度?番犬にも使えないわね」
倒れた小夜の髪を握り、顔を上げさせる
「簡単には殺さないわ。番犬としては使えないけど貴方にはあの子の人形として生かしてあげるわ、せいぜい泣き叫びながら死ぬといいわ・・・まっ、聞こえてないわよね」
手を放し、咲夜たちの方へ歩いていく
「お見事でしたお嬢様。汚れたお手をお拭きいたします」
「ありがとう咲夜。美鈴」
「はいお嬢様」
「まだ、生かしてあるわ。アレをあの子の部屋に運びなさい、その後はいつも通りに門番の仕事を続けなさい」
「・・・分かりました」
美鈴は倒れた小夜を背負い、レミリアと咲夜と共に紅魔館に入っていった
草陰
「やばいやばい!やばいよ大ちゃん!おおかみ兄ちゃんがやられちゃった!!」
草影から出てきて声をあげる青い服に氷の様な羽を持った少女
その後から羽を生やした緑髪の少女も現れる
彼女たちは霧の湖を縄張りにして遊ぶ妖精たち
青い方がチルノ、緑髪の方が大妖精こと大ちゃん
小夜とは何度か交流があり、二人も小夜を兄のように呼んでいる
「ど、どうしようチルノちゃん?」
「んー、ここはさいきょうのあたいが助けたいけどてきはおおい、多税に無税だね」
「勢だと思うよ。でも、確かにわたしたちじゃあ、お兄さんは助けられない・・・チルノちゃん、霊夢さんかルーミアのお姉さんを探そうよ」
「おお!その手があった!てきがおおいならこっちもふやせばいいんだ。よし!さっそく霊夢とルーミア姉をさがしにいくぞ!」
「ち、チルノちゃん、霊夢さんたちならきっと博麗神社だよ!まっ、待ってよー!」
小夜のピンチを救うため、二人は霊夢とルーミア姉を探しにその場を離れた
その頃
紅魔館
地下階段
蝋燭の微弱な火が暗い地下への階段を僅かに照らす中、その階段をゆっくりと降りていく美鈴
その背には未だに起きない小夜がいた
階段は終わり、重厚な鉄の扉の前で一度止まる美鈴
息を整えながら決心した表情になり、鉄の扉を開けて小夜を壁に寄りかかるようにゆっくりと下ろす
「・・・さようならです」
小夜に別れの言葉を言い残し、部屋を後にした
部屋の中も数本の蝋燭だけで灯しているだけで薄暗く、天蓋付きの大きなベッドが一つだけという殺風景な部屋だ
「・・・血の臭い、だれ?」
ベッドから聞こえてくる幼い少女の声
悪魔の妹が目を覚ました
・・・別に大尉をロリコンにしたい訳ではない
口数は少ないけど大きくて優しい?から小さい子には人気あるんです
俺も大尉を兄さんと呼びたい