「どうかしら大尉さん、幻想郷での生活はなれたかしら?いや、今は博麗小夜だったわね」
「・・・」
目を細め微笑むように話す八雲
表情は笑えど彼女は決して心を許してなどいない
俺がミレニアムの者だとわかっているからだ
「今までの貴方の生活の1部も見させてもらったわ。私の言うとおりに霊香と霊夢を守ってくれているようね、貴方ほど番犬に似合う人狼は居ないわ。そう思わない戦争犬?」
番犬や戦争犬など嫌味にしか聞こえない八雲の言葉に対して小夜は表情を変えることも無くただ沈黙している
それらの言葉も大尉からすれば否定することも無い事実だからだ
「・・・」
「黙ってばかりではつまらないわ。貴方からも話したい事があれば何でも聞いても構わないのよ?」
「・・・それだけか?」
「・・・なに?」
沈黙を破り、八雲にそれだけかと問いかける小夜
先ほどまで笑みの表情だった筈が次は鋭く睨む様になった
「妖気を俺だけに向け、此処に来させて話はそれだけか?・・・なら、俺は戻る」
「・・・確認をとらせてもらうわ。貴方に与えた役目は?」
「・・・博麗の巫女を守る、どのような状況でも命を掛けて・・・忘れてなどいない」
「よろしい、その役目を違えない限り私は何もしないわ。でも、少しでもその役目を放棄するような事があれば貴方を幻想郷から追放するか、殺すわ」
「・・・」
八雲の忠告を聞き、その場から立ち去った
八雲紫はこの幻想郷内で唯一、小夜の正体をミレニアムという組織を知る人物
ミレニアムという組織にいた大尉を幻想郷にやって来た日から今日のこの時まで警戒を解いた事は無く、そしてこの先も無いだろう
どのような存在だろうが受け入れるのが幻想郷だが、その幻想郷に仇なす存在は当然生かしてはおけない
特に大尉が属していたミレニアムという『最後の大隊(ラスト・.バタリオン)』を率いた指揮官である少佐は戦争に対する狂気に満ちた男
その人物の側近であり最後までミレニアムの兵士として戦った大尉を八雲紫が信じるはずもないのは当たり前だ。またあの時の様に戦争を望んでいるのではと疑っているのだ
そこで彼女が彼に約束させたのが幻想郷に住まう代わりに博麗の巫女を守るという役目だ
それはどのような状況、たとえ自身が死ぬ可能性があっても守れ。それが八雲紫が大尉に与えた条件だ
当然これは霊香や霊夢、他の誰にも話していない事だ
ただ、これに関する事を紅魔館のメイド長である十六夜咲夜に少し口をすべらしてしまったが気づかれる事は無いだろう
「・・・」
例えこんな条件をのまずとも、恩がある霊夢たちを守る事は決めていた
しかし、いずれ霊香も霊夢も消え誰かが博麗の巫女を継いだ後、俺はその時も博麗の巫女を守ろうと思うだろうか?
「兄さーん、遅かったけど大丈夫?」
「・・・」
俺の顔を見上げながら覗き込み、大丈夫かどうか心配する霊夢
「・・・フッ」
「え?わぷッ!?」ワシワシ
霊夢の頭を少しだけ力を込めて撫でながら通り過ぎた
・・・今はただ、霊夢を霊香たちを守る為に生きるしかない
その先の事を考えるのはもう少し後からでも良いだろう
「・・・え、あっ!ちょ、兄さん!さ、さっきの!さっきの顔をもう一回見せて!」
この時、霊夢は確かに見たのだ
自分を見ていた彼が、今まで1度も表情を崩したことのない兄が
微笑んでいたのだ、と
??
「・・・」
そこは異様な空間だ
上下左右、360゜何処を見渡せど目玉の様な物が存在し、そこからあらゆる場所を移したスキマが点々と開かれている
ここは言わばスキマの世界、スキマ妖怪の八雲紫のみが出入りが可能な特殊な空間。そのスキマから見える景色はすべて幻想郷に存在するあらゆる場所を映しており、彼女はそのスキマを渡ってその映し出された場所へ行く事が出来る
彼女が見ているのは先ほど博麗神社でひらかれている宴会の様子、そして博麗の巫女とその傍にいる男を見ていた
「紫さま」
「あら藍、どうかした?」
「ご夕食の用意ができましたのでお声を掛けに・・・まだ、見ていたのですか?」
「・・・えぇ」
スキマの世界に突如現れたのは八雲紫の式神にして傾国の美女とも謳われた大妖怪
九尾の狐、八雲藍
八雲紫の式神として、彼女は八雲紫が使うスキマの力を僅かに扱う事が出来る。しかし、それも幻想郷内で移動する程度でしかないが
「紫さま、お言葉ですが…そこまで危険の可能性があるのであれば今すぐ対処するべきです。何かがあってからでは」
「・・・」
藍の言葉を聞いてから紫の脳内にはある男の記憶を思い出していた
数十年前
飛行船内
『
諸君 私は戦争が好きだ
諸君 私は戦争が好きだ
諸君 私は戦争が大好きだ
殲滅戦が好きだ
電撃戦が好きだ
打撃戦が好きだ
防衛戦が好きだ
包囲戦が好きだ
突破戦が好きだ
退却戦が好きだ
掃討戦が好きだ
撤退戦が好きだ
平原で 街道で
塹壕で 草原で
凍土で 砂漠で
海上で 空中で
泥中で 湿原で
この地上で行われる ありとあらゆる戦争行動が大好きだ
戦列をならべた砲兵の一斉発射が 轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ
空中高く放り上げられた敵兵が 効力射でばらばらになった時など心がおどる
戦車兵の操るティーゲルの88mm「アハトアハト」が 敵戦車を撃破するのが好きだ悲鳴を上げて 燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵を
MGでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった
銃剣先をそろえた歩兵の横隊が 敵の戦列を蹂躙するのが好きだ
恐慌状態の新兵が 既に息絶えた敵兵を 何度も何度も刺突している様など感動すら覚える
敗北主義の逃亡兵達を街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらない
泣き叫ぶ虜兵達が 私の降り下ろした手の平とともに
金切り声を上げるシュマイザーに ばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ
哀れな抵抗者「レジスタンス」達が 雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのを80cm列車「ドーラ」砲の4.8t榴爆弾が 都市区画ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える
露助の機甲師団に滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に守るはずだった村々が蹂躙され 女子供が犯され殺されていく様は とてもとても悲しいものだ
英米の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ
ヤーボ英米攻撃機 に追いまわされ 害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ
諸君 私は戦争を 地獄の様な戦争を望んでいる
諸君 私に付き従う大隊戦友諸君
君達は一体 何を望んでいる?
更なる戦争を望むか?
情け容赦のない 糞の様な戦争を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし 三千世界の鴉を殺す 嵐の様な闘争を望むか?
』
『クリーク!!クリーク!!クリーク!! (戦争!! 戦争!! 戦争!!)』
『
よろしい ならば戦争だ
我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとする握り拳だ
だがこの暗い闇の底で半世紀もの間 堪え続けてきた我々に ただの戦争では もはや足りない!!
大戦争を!! 一心不乱の大戦争を!!
我らはわずかに一個大隊 千人に満たぬ敗残兵にすぎない
ふるつわものだが諸君は 一騎当千の古強者だと私は信仰しているならば我らは 諸君と私で総兵力100万と1人の軍集団となる
我々を忘却の彼方へと追いやり 眠りこけている連中を叩き起こそう
まなこ髪の毛をつかんで引きずり降ろし 眼を開けさせ思い出させよう連中に恐怖の味を思い出させてやる
連中に我々の軍靴の音を思い出させてやる
天と地のはざまには 奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる
カンプグルッペ一千人の吸血鬼の戦闘団で世界を燃やし尽くしてやる
最後の大隊 大隊指揮官より全空中艦隊へ
第二次ゼーレヴェ「あしか」作戦 状況を開始せよ
征くぞ 諸君
』
『・・・』
かつて見た男の演説の光景
戦争に対する狂気じみたその一つ一つの言葉は八雲紫が男に対する印象を狂人と思わせるなど簡単だった
そして最後の最後に彼は、彼が率いたミレニアムは敗北し、同時に勝ったのだ
『楽しい戦争だった』
それが敗北し勝者になった狂人の最後の言葉だ
「駄目よ藍、今はまだ様子を見続けるわ」
紫が人間という種族の中で最も恐れを覚えた男の元にいた大尉の監視を続けることを話す
「しかし・・・」
「大丈夫よ、今の彼は博麗の巫女を守る役目を違えたりはしないわ。何かあればすべて私が終らせるから・・・それに」
スキマを通して見える1人の親友とその娘を見る八雲紫
「出来れば親友の悲しい顔を“もう二度と”見たくはないわ」
スキマを閉じ、紫と藍は別のスキマを通って姿を消した
ゆ、指が壊れる(><)
当初は紫と少佐との会話イベでも書こうとしたのですが上手くいかず、八雲紫が少佐の演説を覗き見している場面に変えました
あの八雲紫でも唯一人間の中で恐怖かそれに近い感情を思わせるのって少佐だけな気がする
これで次の異変に進めそう