27話
四月が終わり五月に入った
しかし未だに雪は止まず今も降り積もっている。そして今日も神社の屋根の上の除雪作業が始まる。霊夢と霊香も今回の冬の長さは異常だと判断し異変として原因を探しに早くから出ている
俺も付いていく筈だったが前回の異変の解決をほとんど俺がしてしまった故に霊夢が今回は自分の力で解決できるようにする為、俺は今回は休むように言われた
そう言われたが俺には八雲紫からの約束がある、調べるまでは協力無しでもいいだろうが原因が分かった時は例え来ては駄目だと言われても向かわなければならない
「兄さーん」
「?、霊夢か」
除雪作業を一旦止め、屋根から降りる
「お疲れさま兄さん、またちょっと出掛けて来るね。昼食は作って置いたから」
「もう昼だったか、ありがとう・・・どうだ、何か分かったか?」
「まだ何も。異変なのは確かだけど誰がどうやって起こしてるのか見当がつかない、でも母さんも動いてるし必ず突き止めて見せるわ」
「無理するな・・・必要な時は、頼れ」パッパッ
「うん。ありがとう兄さん、行ってきます」
「・・・コクッ」
服や髪に付いた雪を払ってあげて、出掛けて行った霊夢を見送った後昼食を食べる事にした
とりあえず、昼食を食べた後は人里に向かってみよう。当然待つだけなどするつもりはない、こちらはこちらで出来る限りの事をするまでだ
人里
ほとんどが雪によって真っ白な光景が広がり、子供たちは元気に雪遊びをしていた
外に出ている大人たちはたぶん子供たちの親だろう、見守りながら話し合っていた内容は冬の異常な長さについてだった。流石に不信感を抱き始めているようだ
たどり着いたのは稗田家の屋敷
千年もの間、転生を繰り返して記憶も引き継がれる阿求ならなにかしら力になるかもしれないと判断したからだ
「・・・」ガンガンガン
「はい。どちら様でしょうか?」
「・・・稗田阿求に博麗小夜が来たと伝えてくれ」
「分かりました。少々お待ちください」
稗田家に仕える給仕の女性はドアを締め、俺はとりあえず待つことにした
稗田家は古くから続く名家、そうそう他人を屋敷に招き入れる事はない。あっても当主が許可を出した者だけだ
「お待たせしました。当主様から許可がおりましたのでどうぞお入りください」
「・・・邪魔する」
中に入り、給仕の者に案内され阿求のいる部屋にたどり着く
「失礼します阿求さま。博麗小夜さまをお連れ致しました」
「どうぞ、入って下さい」
襖を開け、中に入り阿求の前に出された座布団の上に座る
「ようこそ小夜さん。お元気そうでなによりです」
「あぁ・・・」
「もう下がって良いですよ。それと私が良いと言うまでこの部屋に近づかないよう皆さんに伝えてください」
「分かりました。失礼致します」
給仕の者は部屋を出て今この場には俺と阿求のみとなった
「あ、あの小夜さん。よろしければなんですがもう少しお近くに行っても良いですか?」
「・・・構わない」
「で、では失礼します」
立ち上がり俺の隣に座り、その身を預けるように体を俺の方に倒しくっつく
「すいません。こんな事をお願いしてしまって」
「甘えたければそうしろ・・・俺は、問題ない」
「ふふ、やはり優しいですね小夜さんは」
稗田家に生まれる子は一子のみ、転生時に男子が女子かどちらに生まれるかは本人でも分からない
その為阿求には兄弟姉妹などは誰もおらず密かにそういった存在に憧れを抱いていたのだ。当主という肩書きが彼女に甘えを許してはくれなかったようだ
「それで今日はどうのようなご用事で来たのですか?」
「異変の調査・・・阿求の知恵を借りたい」
「異変、この長い冬の事ですね。残念ですがたぶん私では力になれません。確かに少し遅めの春の到来はありましたが今回の件は前例がないんです」
「春が来ない理由はいい・・・何か春、もしくは冬に関連する妖怪か妖精を知らないか」
「春か冬に関連する・・・居ます。春告精という妖精が」
「春告精・・・?」
「はい、リリーホワイトといってその名の通り春を告げる妖精で春が訪れた日には必ず人里や他の場所にも春の訪れを報せに現れるのですが・・・今年はまだ誰も見てはいません。しかし、リリーホワイトはあくまで春を告げるだけで春を運んでくる妖精ではありません。今回の異変とは無関係だと思います」
「・・・」
その後も阿求から情報と幻想郷縁起を調べた後、稗田家を後にした
阿求からは「今度訪れた時はゆっくりしていってくださいね」と言われた。異変の調査もあって長居は出来ないが異変が終わり、遊びに行った時はそうすると答えた
人里から出て神社に戻る道中、調べて分かった事を脳内でまとめていた
春告精以外に冬にのみ現れる妖怪、レティ・ホワイトロックという存在
冬の時期のみ外に出てくるがそれ以外は何処かの日影に隠れて暮らしている。彼女もただ冬に現れるだけというだけで冬を長引かせるような力等はない
だが、この異変に関してこの妖精と妖怪は何かしらの鍵を握っていると判断している。あくまで予想だが出来れば接触はしておきたい
きゃー
「?」
突如聞こえた女の悲鳴
人里から外に誰かが出た話はなかった筈だが、もし人里の人間ならば助けねばならない
悲鳴が聞こえる方向へ走るが雪の性でそこまで速く走れない。霊夢たちの様に飛べるようになれたらいいのだがな
そう思っていると前方から見慣れない少女が誰かから逃げるように飛んできた
そして俺を見つけた途端、急速して飛び込んできた所を片手で抱きとめた
「た、助けてください!」
「・・・落ち着け、何があった?」
涙目で助けを求める少女。どうやら人間では無く妖精のようだ。金色の髪に白い服ととんがり帽子を被り、背中には透明な羽が付いている
握られた手には白い光の様な物があり、何故か光から温かさを感じた
「・・・ッ」チャキ
「き、きた」
いち早く反応した小夜は剣の柄を掴み握りしめる。妖精も自身の追手に気付き小夜の背中に隠れた
「まさか、このような所で再開するとは思いませんでしたよ小夜さん」
「・・・お前は」
姿を現した妖精の追手に見覚えがあった
白髪のオカッパ頭に腰に2本の刀、そして彼女の隣に存在する霊魂
小夜は確信して彼女の名を呼ぶ
「魂魄妖夢」