東方人狼行軍   作:BATTU

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29話

博麗神社 居間

 

 

 

日は傾き、外は暗くなり始めていた

 

未だにしまうことのない炬燵に入り、その近くに部屋から持ってきた布団一式を敷いてリリーホワイトを横にさせている

 

彼女が持っていた光はとりあえず小瓶に入れて蓋をしておき、炬燵の上に置いてある蜜柑の隣に置いて観察している

見る限りは何の変哲もない小さな光の塊。明かりに利用出来るしほのかな暖かさは寒い日に携帯しておけば出歩く先でも暖がとれる便利な物だ

 

妖夢は何かしらの理由でこれを集めている。もしかしたらこれが今回の異変の原因の1つなのかもしれないが今はなんとも言えない状況だ

 

 

「ん・・・あれ、ここ」

 

「・・・起きたか」

 

 

リリーホワイトが目を覚まし、まだ眠たそうな目をゆっくりこする

意識がはっきりし始め、小夜が目に入ると少し驚いた表情で口を開く

 

 

「あ、あれ、小夜さん?・・・ここは博麗神社?」

 

「あぁ・・・あの後、気を失った」

 

「そ、そうだった。すいません、助けていただいたのに」

 

「・・・」フルフル

 

 

首を左右に振り、気にするなと促す

とりあえず落ち着いた後本題に入った

 

 

「お前を追っていた妖夢・・・これを狙っていた、これは何だ?」

 

 

光の入った小瓶をリリーホワイトの前に差し出すと彼女は両手で小瓶を持ちそれをギュッと抱きしめながら答えた

 

 

「これは『春の光』です。春になるとこの光が幻想郷を包み込んで春になるんです。でも、今年の幻想郷でこの光が見当たらなくなってしまったので色んな所を周りながらやっと1つ見つけたんですが、その時に刀を持ったあの人に出会って・・・グスッ」

 

「・・・」ナデナデ

 

「す、すいません」

 

 

その時の怖さを思い出してしまったのかまた泣き出してしまい、頭を撫でて落ち着かせようとする

 

しかし、この光が幻想郷を包み込んで春がやってくるとはまたよく分からない仕組みだ

まぁ、今はそんな仕組みを理解する意味はない。重要なのはこれがなくなっている事によって春が来なくなり冬が長く続いている事は分かった

 

落ち着いて泣き止んだあと、リリーホワイトは続きを話した

 

 

「あの人が春の光を渡すように言った後に私が春告精だと気づいた瞬間一緒に来るように言われたんですが、怖かったので逃げ出したらいきなり襲いかかって来たんです」

 

「そうか・・・妖夢がそれを狙う理由、何か知らないか?」

 

「すいません、その事に関しては何も言いませんでした。ただ白玉楼に一緒に来てもらうって言われたのでその白玉楼に何かあると思います。きっと他の春の光もそこにあると思うんです」

 

「・・・白玉楼」

 

 

聞いた事の無い名だがどうやら無関係ではなさそうだ

 

後は春の光を集めて何をしようとしているのかさえ分かれば対処も考えやすい

単純な理由なら春を来なくさせ、幻想郷を滅ぼすくらいだろう。春が来なければ植物も動物も寒さに死に絶えて人間の食べ物も暖をとるための薪も手に入らず最悪人里は餓死して滅ぶ

そうなれば人間を糧にする妖怪の大半も全滅する

 

例え違ったとしても最悪はこうなってしまう。時間にまだ猶予はあるが早めに解決しなければやばいだろう

 

 

「ただいまー、うぅ、寒かった」

 

「・・・お帰り霊夢」

 

「ただいま兄さん。あれ、お客さん?」

 

「お、お邪魔しています」

 

 

霊夢が帰ってきたのを気に彼女の事と今回の異変について分かった事を全て話した

 

 

「・・・もう、兄さんは休んでて良いって言ったのに結局私より色々調べて帰って来ちゃった」

 

 

呆れた様な表情でため息を吐く霊夢

どうやら、思ったよりも前回の異変解決での事を気にしているようだ

 

 

「・・・すまない」

 

「あぁ、ごめんなさい。私とお母さんの為に調べてくれたのに嫌味みたいに言っちゃって、兄さんは何も謝ることなんかないのに」

 

「霊夢と霊香は恩人、家族・・・だから力になりたい」

 

「うん、ありがとう兄さん。それにしても妖夢が関わってるなんて思ってもみなかった」

 

「・・・知り合いか?」

 

「いえ、あんまり知り合いってほどの仲じゃないわ。人里でちょっと見かける程度だし。魂魄妖夢の家系は冥界に存在する白玉楼に代々仕える護衛兼庭師ってくらいは知ってる。細かい事はお母さんに聞かないとわからないわ」

 

「冥界・・・死後魂が向かうというヴァルハラか?」

 

「冥界は死後、閻魔から転生や成仏を命じられた幽霊が駐留する場所。その何とかはらっていうのは知らないけど死んだ後の魂が向かう場所っていう意味ではあってるかもしれないわね。その冥界は結界によって守られて生者の往来も認知も出来ないし、正確な場所も分かっていないけど魂魄家や一部の者だけは通る事は出来る。異変を起こすにはかなり最適な場所でしょうね」

 

 

なんという事だ。博麗の巫女でさえ教えられない場所に異変の元凶が存在するのか

猶予はあるなどと言ったが、全くの逆だ。分からない場所を永遠と探し続けていたら間に合わない

 

どうしたものかと考え込む小夜

 

 

「あ、あの、お願いします!どうか春を、みんなの春を取り戻してください!」

 

 

突然頭を下げて俺と霊夢に懇願するリリーホワイト

 

 

「私は春を告げる事しか出来ない妖精です、何の力もありません。ですからお願いします、私の代わりに春を取り戻してください!」

 

「・・・」

 

「分かってるわ。元々異変を解決するのは博麗の巫女の仕事よ、私に任せなさい」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ほらほら、分かったなら泣くんじゃないの。可愛い顔が台無しでしょ」

 

「・・・」

 

 

どちらにせよ、やらなければ幻想郷は終わりだ。霊夢と霊香が守るこの幻想郷を救わなければならない

俺は博麗の巫女じゃないが博麗の姓を持っている。例え希望が薄かろうが何もしなければ前になど進まない

 

 

「リリーホワイト」

 

「は、はい」

 

「必ず、春を取り戻す・・・約束だ」

 

「・・・はい!」

 

「霊夢、リリーホワイトを泊まらせる・・・いいか?」

 

「全然大丈夫。お母さんはまだ帰って来ないけどとりあえず夕食の準備しましょ」

 

「・・・」コクッ

 

「あ、あの!私も手伝います!」

 

「そう?じゃあ、運ぶ時に呼ぶからそれまでは待ってて」

 

 

とりあえず夕食の準備に取り掛かる小夜と霊夢

結局、その後から霊香は帰ってこず夕食と風呂を済ませて寝る事になったのだが・・・

 

 

「今日も寒いし、リリーホワイトもいるから兄さんの部屋で皆一緒に寝ることにしたわ」

 

「・・・霊夢の部屋で良かったんじゃないか?」

 

「それもいいけど、寒さはどうにもならないじゃない?なら1つの部屋で皆一緒に寝れば少しは温かいでしょ」

 

「・・・」

 

 

とりあえず俺を真ん中に3組の布団が敷かれ、寝る体勢に入った

霊夢のおやすみーという一言で寝に入った数分後

 

 

「さ、小夜さん・・・もう寝てますか?」ボソッ

 

「・・・何だ?」

 

 

小さな声で俺に話し掛けてきたリリーホワイト

霊夢を起こさないように俺も小声で聞き返す

 

 

「あ、あの、その・・・そっちの布団に入ってもいいですか?」

 

「・・・寒いのか?」

 

「え、えっと・・・はい」

 

「・・・」

 

 

少し黙った後、掛け布団を捲る

 

 

「し、失礼します」

 

 

ゴソゴソと俺の布団の中に入って来るリリーホワイト

枕も隣に置きほぼ顔の真横に彼女の顔があった

 

 

「・・・どうだ?」

 

「ありがとうございます、温かいです・・・すいません、助けてもらっておきながらこんな事まで」

 

「別に・・・頼りたければ頼れリリーホワイト」

 

「ありがとうございます。あの、私の事はリリーって読んでくだい。リリーホワイトだと長いですから・・・それとよろしければですけど、お、お兄さんと呼んでもいいですか?」

 

「好きにしろ・・・リリー」

 

「ッ・・・はい♪」

 

 

そんな事がありながら寒い夜がまた過ぎ去っていった

 

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