屋敷内
明かりは無く、ほとんど薄暗いが埃などはなく清掃は行き届いてはいた
誰か居ないか声を出しても誰も現れず返事はない、人は誰も居ないようだ
“人は”だが
「・・・獣の匂い、猫が数匹・・・一匹に妖気あり、もう一人は猫じゃない・・・これは、狐か。妖気が凄まじい、何者だ?」
鋭い嗅覚と感覚を研ぎ澄ませ、屋敷内にいる者たちを感じとる
妖怪が2人に何故か猫の気配が複数。しかも一人はこちらに強い妖気を放ちここへ来いと八雲紫が使った方法で呼んでいる、しかし殺気は感じられない
靴を脱ぎ、放たれる妖気の下へ向かっていき一つの襖を開けて中に入った
「よく来ましたね」
「・・・」
そこに居たのは金髪のショートボブに金色の瞳を持ち、その頭には角のように二本の尖がりを持つ帽子を被っている
そして何より特徴的なのがその背後に存在する9本の尾、幻想郷縁起で見た人物と特徴が一致している。この女が八雲紫の式神
最強の妖獣・八雲藍
「貴方の事は紫様から聞いているぞ博麗小夜・・・いや、大尉」
「・・・」
かつての階級を口にする。どうやら俺の事を紫から聞いているようだ
「・・・八雲の式神が、俺に何の用だ?」
「そうだな、強いて言うなら・・・お前という存在がどういう者か確かめに来た」
「・・・なんだと?」
なんだ今の答えは?
紫から聞いていると言っておきながら俺がどういう存在か確かめるだと・・・まるで名前だけしか教えられていないような、まさか本当にかつての階級の呼び名しか教えられていないのか
だとしてもなぜだ?なぜ八雲紫は俺の事を知っていながら誰1人にも俺の詳細を話そうとしない、自分の式神にすら何も教えないとは何を考えているんだ
「・・・俺の事は聞いたんだろ?」
「いや、紫様から聞かされたのはお前のかつての呼び名のみだ。だが、紫様がお前に対してあれほど警戒しているのは初めてだった。だからこそ、お前が危険かそうじゃないか確かめる為にお前をこのマヨヒガに連れてきた」
「・・・」
マヨヒガ
何処にあるのかは誰も分からない隠れ里のような場所
そこに迷い込んだ旅人が日用品を持って行ったら幸福が持たされたと言う話があるが、実際に迷い込んだ者はおらずただの噂話程度しか語られていない
「さて、話を戻すとしよう。君はただの外来妖怪なのか?君が覚えている自分の事、全てを話してもらうぞ」
「・・・」
特に話してはいけない理由などは無い
俺は全てを話した、ミレニアムの事もそこに居た俺の事も全てを、この八雲藍が望んだから
「・・・なるほど、紫様がお前を警戒する訳だ。人工的に作り出したき吸血鬼の軍、外の人間にそこまでイカレた奴らがいるのか」
「・・・全てを話した。全てを知ったお前は俺をどうする?」
「そうだな、危険分子は出来る限り早く排除する必要があるだろうが私はかつてのお前を知ったが、まだ今のお前を知った訳ではない・・・博麗小夜、私と弾幕ごっこをしろ」
「・・・なぜだ?」
「お前は人間ではないが博麗を名乗り、巫女を守る立場にいるのは知っている。お前が巫女の守護者としての力量と自覚があるかを私が見てやる・・・もし、認めさせる事が出来たらこれをお前にやる」
懐から取り出したのは小さなコンパスのような物だった
「異変を解決する為に冥界を探しているのだろう?この羅針盤は幻想郷の何処かにある冥界の入口に向かって針を示す代物だ。私がお前を認めたらこれをやろう、当然駄目ならばこれはやれん」
「・・・そうか」グッ!
拳を握りしめ、八雲藍に対して戦闘の体勢を取る
「では、いくぞ。出し惜しみは無しだ、全力でかかってこい。でなければすぐにやられるぞ」
険しく、鋭い目で小夜を見る藍の周りに多数の弾幕が現れる。屋内故に数こそ今は少ないが、弾幕の密度、一つ一つに込められた妖力はレミリアやレティたち等と比べものにならないほど強力だと感じさせられる
一方の小夜の方は周りに霧が現れ、顔から徐々に獣化を初める
彼が八雲藍に対しては何も感じないし、目的もどうでもいい。だが、異変を解決するためにはあの羅針盤が必要不可欠、彼はなんとしても手に入れなければならない
「・・・」バッ!
右拳を握りしめ、その場から一瞬にして藍の目の前に接近し、拳を容赦無く彼女に振るった
中庭
「藍さまに言われたから猫たちと一緒に入口近くから離れて中庭に来たけど・・・藍さま、どうしたんだろう」
中庭で無数の猫たちと共に心配そうな表情をする少女が一人
赤い服に胸元に結ばれている黄のリボン
緑の大きめの帽子からはみ出る猫耳は垂れ、2本の尾がゆっくりと揺れる
「まぁまぁ、心配してたって何にも始まらないしのんびり待とうよ」
「え?!・・・あっ!居なくなったと思ったらまた突然帰ってきて!君は橙の部下なんだから勝手にどっか行かないでよ!」
「無理無理、君だって猫なら分かるでしょう?猫は気まぐれで自由なんだよ〜。それに僕は“どこにでもいるし、どこにもいない”突然消えたり現れたりは当たり前なんだから早く慣れてねー」
「また分からない事言って橙をバカにする!シュレ君のバカー!」
中庭にある葉を枯らした1本の木の太い枝の上で横になりながら彼は突然そこに現れた
シュレ君と呼ばれる猫耳を生やした少年が橙を適当に構っていた
「ん?この気配・・・面白くなってきたかも♪」
何かを感じとり、少年はニヤリッと口を歪ませた
さぁ、誰かもう分かりますよね?