「花見だー宴だーまだ続くんじゃあー」
まぁ、鬼の登場はもうちょい先。萃夢想ってなるけど、もうちょっと日常っぽいのをやる
49話
博麗神社
花見が終わった次の日
「ふんッ!」
「ぐッ・・・」ガッ!
鍛錬場で霊香と組手をしていた
ここは主に霊夢が博麗の巫女の修行で使われる場所
基本は外での鍛錬がほとんどだが霊香との組手の時だけ此処を使っている
勝負は完全にこちらが負けている
霊香の動きは組手を行う事に何度も見て、覚えている・・・だが、長い間体を動かす事を禁じられていた故にかつてよりも動きが遅く分かっていても体が思考している動きについていけない
「・・・」ブンッ!
「ハッ!」
「ッ・・・」ドサッ!
右拳を放ち攻勢にでても少ない動作で拳撃を受け流し、道着の裾と襟を掴まれ投げられる
組手故に俺も霊香も本気を出してはいない。だが、それでも化け物である俺は人間の霊香に負けている。この事実はどうあっても覆す事は出来ない
「ふむ、昨日の今日ではやはりこれぐらいが妥当か。本気では無いとはいえ力が落ちているな」
「・・・」スッ
「なに、心配するな。かつての力に戻れるよう私も全力で協力してやる、原因は私にあるんだからな」ギュッ
横たわり仰向けから上体だけを起こした大尉を背から包み込むように抱きしめる霊香
手から感じる暖かい体温、後頭部に当たる霊香の豊満な胸の感触。通常の男性ならばこれだけでも赤面する場面だろうが大尉は表情一つ動かさず霊香の言葉を聞いていた
「だが、すぐ戻す事は無理だ。妖怪、人外の存在でも必ず個々に限界というものは必ずある、その限界を無視し体を酷使すれば戻る所か更に弱体する。焦らずゆっくりだ、無理して体を酷使するんじゃないぞ分かったか?」
「・・・あぁ」
「よろしい。じゃあ、休憩だ」
「・・・」コクッ
鍛錬場を後にし、道着の上を脱いで離れにある井戸に向かった
ロープを引っ張り桶を引き上げて汲み上げられた水を少し口にする
渇いた喉に冷たい水が通っていく感覚は、心地よく喉を潤してくれる
残りの桶に入った水で持ってきた布を濡らし体の汗を拭き取った
「・・・ふぅ」
空を見上げ立ち尽くす小夜
結局、昨日の花見に八雲紫は姿を現す事は無かった
藍と橙は紫が通常まで妖力を回復したという事で監視の任を解かれ紫の元に帰った。今日の朝での出来事だ
シュレディンガーはいつも通り博麗神社で居候するらしいが橙の部下という立場は変わっておらず、今日はマヨヒガにて橙とその部下の猫たちと集会をするらしくシュレディンガーを連れて行った
「いつ帰れるかは分からないけどご心配なく〜」と言い残して行ったがシュレディンガーに対して特に心配する要素が見つからない
「あややや、鍛錬後のお姿も凛々しいですね〜小夜くん」パシャ!
「・・・文か」
カメラ音と共に空から降りて来たのは射命丸文だった
そう言えば、あの異変から昨日の花見まで一切姿を見せなかったな。新聞のネタ探しに必死な烏天狗が全く姿を見せないとは珍しい事もあるものだ
「お話はルーミアさんから聞きましたよ。今回の異変で意識不明の重態になっていたとか」
「・・・あぁ」
「流石にそんな状態の小夜くんを置いて巫女の皆さんに取材なんて出来ないので、しばらくはずっと異変に関しての情報集めをしておりましたよ。そして意識を取り戻したと噂で聞いた後、昨日の花見で是非取材をと思ったのですが・・・あのスキマ妖怪に会いましてね。今回の異変の記事を書く事を止められましたよ」
「・・・そうか」
不機嫌そうにため息を吐く文
あの紫が自ら出てきて今回の異変を伝える事を止める。親友である西行寺幽々子の為なのだろうな
「まぁ、もっと大変だったのは椛ですよ」
「・・・なにかあったのか?」
「それはありますよ。小夜くんが意識不明の重態なんて聞いたらそりゃあ心配するでしょう、一体どれほどの質問をされた事か」
「・・・そうか」
「まぁ、椛には妖怪の山を守る哨戒白狼天狗の任もありますし、隊長として若い白狼天狗の見本にならなければならないとかで小夜くんの見舞いには行けませんでしたけどね。全く、上のお固い方々は」
「・・・なら、久しぶりに行くか」
「妖怪の山にですか?」
「・・・」コクッ
頷いて肯定した小夜
椛からはいつでもきていいと言われているから問題はないだろう
「あややや!それはいいですね!椛も喜びますよ!じゃあ、私はネタを探しに行きますのでそれではー!」バッ
「・・・」
言いたい事を言って飛んで行った文
あの自由奔放な性格はいつになっても変わる事は無いのだろう
そう言えば妖怪の山には烏天狗と白狼天狗以外に河童もいるらしいがまだ会った事が無いな
「兄さーん」
「?」
後から聞こえた霊夢の声に反応して振り返ると手を上げて左右に大きく振る霊夢の姿があった
「昼食の用意が出来たよー」
「・・・」コクッ
頷きながら手を軽く上げて了解したと伝える
井戸に蓋をして霊夢の所に向かって行った
その頃
妖怪の山 哨戒白狼天狗拠点
「ハァッ!」
「踏み込みが・・・甘い!」
「ぐあッ!」
「次!」
「せいッ!」
「攻めが弱い!もっと力を込めなさい!」
「は、はい!」
新米の哨戒白狼天狗の部下たちと手合わせをする犬走椛
既に数十人の相手をしているが疲れの表情を一つも出さずに最後の1人まで打ち倒してみせた
「今日の手合わせはここまで、この後は各々の任務または鍛錬に勤しむように。なにかあれば私かその他の隊長に報告するように、解散!」
「「「「ハッ!」」」」
「・・・ふぅ」
部下たちがその場から離れ各々の場所に向かって行くの見送った後、剣を鞘に納め一息つける
「よう、今日は一段と厳しくしごいたな鬼隊長」
「その鬼隊長はやめてと言ったでしょ、迅(はやて)」
「ははは!悪かったって、ほら水だ」
「ありがとう」
迅と名乗る男の白狼天狗は水が入った竹製の水筒を椛に投げ渡した
顔立ちはそこそこで髪は短髪でツンツン頭。額に横に一線の切り傷の跡がある
受け取った椛は水筒に入った水を全て飲みほした
「あ、おま!何全部飲んでんだよ!?」
「迅のだから別にいいかなと思って。ふぅ」
「良くねぇよ!せめて少しは残せよ!・・・たくっ、また後で汲みに行かねぇと」
「ふふ、散々な目にあったわね迅くん」
「あら?菊。あなたもなんて珍しいわね」
新たに現れた菊という名の女性の白狼天狗
おっとりとした顔立ちで長髪、右眼が黒で左目が青のオッドアイ
椛の言葉に小さく微笑みながら答えた
「休憩時だったから椛ちゃんに会いに行こうと思って。迅くんが居たのは予想外だけど」
「まぁ、俺も休憩だが暇つぶしで来たんだがな。しかし、こうして俺達が集まるのも久しぶりだな」
「そうね。懐かしい」
椛、迅、菊は幼い頃から共に遊んだりした幼なじみ
哨戒白狼天狗になり所属する部隊でも一緒だったが各々が隊長として部下を持つようになってからはこうして話す機会も少なくなった
「そう言えば、小夜の奴は来てねぇのか?」
「ん、あぁ。小夜も小夜で博麗の巫女の守護として忙しいのだろう」
「懐かしいなー。もうあれから10年以上会ってないもんね、もう立派な男の子になってるかな」
(そう言えば2人には言ってなかったな)
そんな雑談をしている3人にもう一人の白狼天狗が割り込んで来た
「けっ、余所者の話で盛り上がりやがってこれだから若造共は」
「・・・夜宵(やよい)」
椛の口から出た夜宵という名
彼も白狼天狗であり椛達と同じ隊長格の1人。気性は荒いが、自分の上司たる烏天狗たちには従順である
「なんだよ夜宵!俺達の話に勝手に首突っ込んできてその言い草わよ!?」
「黙れ迅!隊長だろうがお前は俺より下だ、舐めた口を叩くんじゃねぇ」
「なんだと!」
「迅くん!駄目!」
一触即発の状況の中、迅を止めようとする菊
そんな彼らの中に割り込み、椛は言い放った
「迅。同族であれ上の者には敬意を持って接するべき、その口調は控えるべきだ・・・申し訳ありませんでした夜宵第二部隊隊長」
「椛!おまッ?!」
「ハッ、無能よりよく分かってるな第八部隊隊長犬走椛「しかし」・・・あ?」
「部下の見本となるべき隊長がそのような態度はいただけません。彼も間違っていますが貴方も間違いは正すべきです」
「・・・へっ、いいねぇその目。ゾクゾクするぜ」
椛の鋭い眼光で睨まれてもニヤけた面を平然とする夜宵
「やっぱりお前はいい白狼天狗の女だ。絶対に俺の物にしてやる」
「・・・私は貴方に興味などありませんので」
そう言った後、高笑いをしながらその場を後にした夜宵
椛は夜宵の方を振り返ることもせず、奴が立ち去るのを待った
椛達の下から立ち去った夜宵は森の中で歩みを止めてまたニヤけだした
「あぁ、いいねぇ。あの反抗的な態度、手に入れがいがあるってもんだ・・・そう姉弟だからか少しだがよく似てるなーあのガキに・・・・・・・・・・博麗 小夜」
脳裏に思い浮かんだのは自分よりも小さく、褐色の肌に白い髪、赤い瞳で無表情のまま自分を見下ろす少年の姿
「小夜、小夜・・・小夜、小夜、小夜、小夜!小夜!!あの人狼のガギッーーーー〜!!!」
木に拳を何度も打ち込み、怒気のこもった奇声を上げる夜宵
「殺してやる!あのガキだけは!!俺に恥をかかせたあのガキだけは絶対にこ"ろ"し"て"や"る"!!!!!!!」
ふぅ、今日も頑張った
「なんか知らない間にオリキャラ増えてんだけど。しかも最後の奴めっちゃやばいね。特に頭が」
迅と菊は椛の幼なじみ、夜宵は・・・まぁいいか。今度紹介する時に詳しく説明する。次の出番もだいぶ先だし