東方人狼行軍   作:BATTU

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「今回、鬼とは戦う?」

戦わないよ大尉は


54話

場所は戻って博麗神社

 

 

「お、鬼?貴方があの鬼だと言うの?」

 

「あぁ、そうだよ。同じ鬼の名を持つ吸血鬼」

 

「・・・」

 

 

 

かつて妖怪の山を支配していた妖怪の中で最強と言われた種族

この萃香という女は身なりこそ小さいが、頭に生えた角と溢れ出る妖気は伝承に書かれる鬼そのものを思わせる

 

同じ鬼と言われる吸血鬼のレミリアとフランを西洋の鬼と言うならば伊吹萃香、こいつは東洋の鬼と言うべきか

 

しかし、もっとも驚く事はこれ程の強い妖気を放っているのにこの萃香は突然あらわれた。八雲紫のスキマでも咲夜の時止めでも無く、シュレディンガーとも少し違うがいきなり現れたのだ

 

 

(鬼は力を象徴した妖怪と聞く・・・だが、何か特別な力を持っている訳ではない・・・・だとすれば、伊吹萃香の程度の能力か)

 

「ただいま大尉」ボソッ

 

「・・・・どこ行ってた?」ボソッ

 

「霊夢さんを呼び戻しにですよ。あと、魔理沙さんも来るみたいですよ」

 

「・・・そうか」

 

 

急に居なくなったと思ったが、どうやら霊夢を呼び戻しに行ってくれたようだ

だが、一応こちらには霊香も居る。何かを起こしても霊夢が来る前に俺と霊香だけでも止められるだろう

 

 

「それで萃香。何の用で来た?・・・まぁ、お前の事だ。また宴会でもやりたいから来たんだろ?今回の異変の首謀者」

 

「ははは、さすが霊香だな。やっぱりバレてたか」

 

「あの、霊香さん。どういうことでしょうか?」

 

「一昨日の花見。みんなを集めて花見を起こしたのはこいつの仕業なのさ」

 

「そう、私の能力は『密と疎を操る程度の能力』。物質だろうが精神的なものだろうが何でも集めたり散らしたり出来るのさ」

 

(・・・そうか、八雲紫のスキマでも無ければ咲夜の時止めでも無く突然現れたのは自分自身という散らした物質を再度集めて、いきなり現れた様に見せたのか・・・しかし、花見をすることが何故異変としてなるのだろうか?・・・博麗神社の食糧と財を無くす狙いか?)

 

「まぁ、異変もそうだけど今日はそこの妖怪君に用があって来たと言ってもいいかな」

 

 

そう言って萃香は俺の方を見た途端、指を指しながら言った

 

 

「最初に言っておくけど、私はお前が大っ嫌いだ」

 

「「「ッ!」」」

 

 

その言葉と同時に陽気だった雰囲気は消え、激しい敵意を俺に示した

 

それと同時にレミリアとフラン、咲夜が構えだし大ちゃんとチルノは腕を組んだまま立っている霊香の後に隠れた。チルノでさえ萃香から放たれた敵意に恐怖を感じていた

 

 

「ハァ?いきなり何言っちゃってんのこのチビ?いきなり現れて大尉が嫌いって頭おかしいんじゃないの?」

 

「・・・俺はお前とは初めて話す・・・俺がお前に嫌われる様な事はしたつもりは無い・・・」

 

「あぁ、私とお前がこうして話すのは初めてだ。君が私を知る筈は無い、私が君を知ってるけどね。君でも知ってるんじゃないかな、鬼は嘘を嫌うって。そこの吸血鬼はどうかは知らないけど」

 

「・・・」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

 

霊香の後に居た筈の大妖精が突然飛び出して萃香に向かって叫んだ

 

 

「おや、なんだい妖精?」

 

「お、鬼が嘘を嫌うっていうのは私の様な妖精でも知ってます。でも、今のす、萃香さんの話ではお兄さんが嘘つきだって事ですよね?」

 

(え?そうなの大ちゃん?!)

 

「うん、そうだよ。こいつは嘘つきだよ、とんでもない大嘘つきさ」

 

「ッ!どうしてですか?!お兄さんは今まで私やチルノちゃん、他の皆さんにだって酷い嘘なんて言った事はありません!」

 

 

大妖精は本当であるという確信を持って萃香に小夜が嘘つきなんかではないと否定した

大妖精にとっても小夜という存在はチルノと同じくらいに大切な人、否、妖怪だ。そんな大切な人物をいきなり現れて嘘つき呼ばわりされるのがたとえ相手が鬼であっても許せなかったのだ

 

 

「ははは!なかなか根性があるなー、鬼の私にそんな風に言える妖精はそうそういないだろうね・・・だけど、私はそんなくだらない嘘は言わないよ?」

 

「ひっ・・・」

 

「なら、話してもらおうじゃない。兄さんが嘘つきだって理由を」スタッ

 

「ッ、霊夢さん!」

 

 

大妖精の前に降りてきた霊夢。その後から魔理沙も降りてきた

 

 

「よく言ってくれたわ大ちゃん。後は任せて」

 

「は、はい」

 

 

大妖精を下がらせるように促した霊夢。大妖精は霊夢の言われた通りに任せて、また霊香の下へと下がった

 

 

「あちゃー、もう戻ってきたか。まぁ、そこにいる何処へでも現れる化け猫もどきが知らせたんだろうけどね」

 

(うわ、なんか僕の特殊能力知ってるみたい)

 

「さぁ、話してちょうだい。なんで兄さんが嘘つきなのか納得出来る理由を」

 

「どういうも何も、言った通りだよ?彼は嘘を突いている。ただ違うのはあんた達にって言う意味じゃなく、彼は自分自身に嘘をついているんだよ」

 

萃香のその答えに対して小夜は動揺している気配はない

ただ無表情で聞いていた

 

「例をあげよう、人間は嘘をつく。これは今も昔も変わってないし、一部の下級の妖怪だって同じさ。でもね、他人に対しての嘘なら嫌いでもしょうがないとも思えるさ。力の無い人間や弱い妖怪はそうやって生き延びてきたんだからね・・・でも、彼は違う。自分を騙して誤魔化して嘘を付いている。私はそういう奴が特に嫌いなんだよ」

 

「お兄さまが自分に嘘をついてるって、何の嘘を付いてるって言うの?」

 

 

魔理沙もそうだが、フランも萃香の言葉に対してイラつきを感じている

 

逆にレミリアと文、霊香はただ静かにしていた。まるで萃香の言葉を理解しているかのように

 

 

「回りくどい言い方は止めて、とっとと要点を話しなさい」

 

 

黙って聞いているだけのつもりだった霊夢もイライラが募っていきついに口を出す

右手に持つお祓い棒を萃香に向けた

 

 

「・・・一番近くに居た霊夢と霊香は特に気付いている事だろ?こいつは、自分に対して何の感情も持ってない事を」

 

「ッ・・・」

 

 

強く握っていたお祓い棒を持つ右手が僅かにピクッと動いた

 

 

「元いた世界には友も、家族もいなければ同じ仲間もいない。そんな場所から抜け出せて幻想郷でこんなにお前を心から慕う家族や友が得られたのに、お前は何一つ喜ばない

 

居場所を得られた事に感謝して、家族が出来て安堵している。だけど、それは誰かの真似をしているだけ、慕ってくれる者に心配をかけたくないから、誰かを真似ているだけ

 

あんたは他人の事は心配して怒りもしたり悲しみもする。けど、自分にはそれを向ける事は絶対にしない。あんたには、自分というものがまるでない。何も描かれていない無地そのものだ」

 

 

萃香の言葉に皆が思い出す

小夜はいつだってそうだと言うことを

 

慧音の寺子屋に通ったのも、鈴奈庵で本を借りたり紅魔館の地下図書に行くのも、霊夢と霊香のあしでまといにならない為に知識を付けるため

 

紅霧異変で偶然地下で出会ったフランの事を気にかけ、レミリアと対峙し自由を与えてあげた

 

春が来ない事を落ち込むリリーホワイトの為、白玉楼まで霊夢達と行き

八雲紫の約束通り、西行妖から霊夢を命を掛けて守り通した

 

それ以外にも、阿求の兄がわりも、チルノとの修行も、ちびルミの遊び相手も、人里での手伝いなども

 

自分の為に行動しているようで、実は誰かの為だった事ばかりだ

 

ずっと黙っていた小夜は表情を変えること無く遂に萃香に対して口を開いた

 

 

「・・・聞きたい・・・何故そこまで俺を心配する?」

 

「・・・は?」

 

「お前は俺を知っているようだが、俺はお前を知らない・・・鬼というのはそこまで他人を心配する種族なのか?」

 

 

あれほど言われたにも関わらず淡々と話す小夜

 

その異常さに萃香だけでなく霊夢たちも驚いていた

 

 

「・・・俺は何も思わなかった訳じゃない・・・幻想郷は俺に無かった色んなモノ、たくさんくれた・・・・」

 

「・・・」

 

「霊香、霊夢は家族をくれた・・・魔理沙、ルーミア、霖之助は友をくれた・・・慧音、阿求、小鈴は知識をくれた・・・チルノ、大妖精、ちびルミ、ミスティア、リグルは遊びを教えてくれた・・・化け物の俺には無いものを皆くれる、だからせめてくれた分を何かの形で返したいと思っている」

 

「・・・・・なんだが、知りたいが為にあれだけ言ってた自分が馬鹿みたいに思えてきたよ」ドサッ

 

 

その場に突然座り込んで頭を掻く萃香

そんな萃香に霊香が話しかけた

 

 

「どうだった?うちの息子は?」

 

「・・・ふっ、完敗だよ。こいつは嘘つきじゃない。鬼である筈の私が嘘に関して勘違いするとは笑い話だな」

 

「「「?」」」

 

 

萃香の突然の敗北宣言に小夜とシュレディンガー、霊夢たちは頭に?を浮かべる

 

小夜はただ思った事を喋っただけのつもり、シュレディンガーに至っては上官である大尉の悪口に怒り心頭で萃香の話の真意などなにも分かってない

 

 

「ねぇねぇ咲夜、どういう事か分かった?」

 

「さ、さぁ、少し分からないといいますか・・・」

 

「・・・どちらにせよ、お兄さまが鬼と戦う事が避けられて良かったと喜ぶべきね」

 

「そ、そうですね〜・・・」

 

 

どちらにせよ、レミリアや文は小夜が鬼と戦う事だけは避けることが出来て安堵していた

 

 

「えーと、とりあえず解決・・・なのか?」

 

「いいえ、まだ異変解決が終わって無いわ・・・で、萃香だっけ。あんたには色々言いたい事あるけど、それは後。まずは意味不明な異変を今ここで終わらせてあげるわ」

 

「はぁ・・・色々と想定外すぎたけど、気持ちを切り替えて、勝負だ。博麗の巫女!」

 

 

そう言って弾幕勝負を始める霊夢と萃香

 

俺はとりあえず霊夢が勝つまでその姿をただ見ていることにしていた




「・・・これ、結局どういう事?」

簡単に言えば大尉の現状の気持ちを書きたかった訳だね

萃香がなんで大尉と准尉を知ってたかかは別の機会で話すけど、まぁ萃香の目には今の大尉の姿が気に入らなかったんだな

外の世界より幸福な状態の筈の大尉だけど、それに対して何も喜ぶ素振りを見せない。だから、今回の異変で大尉の真意を知りる為にあんな事を言ったりした訳だ

「結果、萃香さんの勘違いだった訳だね」

そう、大尉はちゃんと心から幻想郷に来れたことも家族と友人を得られた事を喜んでるよ。無表情でいつも淡々と話すから嘘を見破れるかどうか難しいと思うんだよね鬼でも

まぁ、駄文だから多分あまりにも伝わりにくいかもしれないけどそういうものだと思ってくだふぁい
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