東方人狼行軍   作:BATTU

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今回は妖怪の山。椛の回になります

「大天狗に呼ばれたんだよね。何があるやら」


57話

犬走椛SIDE

 

妖怪の山 哨戒白狼天狗第八番隊待機所

 

 

「・・・以上をもって、天魔様は妖怪の山へと来る部外者を寄せつけぬよう一層警戒を強くせよとのご命令だ。万が一、人間または他の妖怪がやって来た場合はいかなる理由があろうと近づかぬよう警告せよ・・・それでも警告を無視した場合はその者の殺害も許可された」

 

「「「・・・」」」

 

「任務はいつも通りだが、今までよりも警戒を強めて任務にあたれ!いいな!」

 

「「「ハッ!」」」

 

 

私の言葉に皆が敬礼をする。今回の任務がどれほど重要かは天魔様からのご命令というだけでも彼らは分かるだろう

 

 

「それと私はこれから大天狗様の命で1度、上層の方へ赴く。私が居ない間になにか問題があった場合は他の部隊に報告、連携をもって対処にあたれ。報告は以上だ、皆はそれぞれの任にあたり全うせよ。解散!」

 

 

皆は蜘蛛の子を散らすが如く、敬礼をした後は颯爽とその場から離れて各々の任務場に向かった

 

私も準備を済ませて妖怪の山の上層へと向かう

 

この妖怪の山の居住は三つに分けられており

麓には我々哨戒白狼天狗とは違う戦えない者、つまり子供や隠居した白狼天狗たちと河童、その他の山に住み着くことを許された妖怪が暮らしている

 

中腹は我々哨戒白狼天狗と下級の鴉天狗たちが暮らしている。下級の鴉天狗には二つの種類があり、一つは我々と同じように山の警備をする者、もう一つは文先輩のような新聞記者や一般の者たち

 

上層から頂上はこの山を支配している天魔様をはじめ、8人の大天狗様達とその専属の従者達が暮らしている。そして今は外の世界から来た神とやらが住み着いているのだ

 

ちなみに我々哨戒白狼天狗の部隊は実力順で一から十の部隊に配属され、警備をする場も番号によって変わる

 

一から三の部隊は頂上

 

四から七の部隊が中腹

 

そして私の部隊である八から十は麓の警備を務める

 

 

私は長い道のりを歩ききって、上層の門へと辿りついた

 

 

「止まれ!哨戒白狼天狗のようだな。何用か?」

 

 

武装した鴉天狗の門番2人が私の行くてを阻む

 

 

「哨戒白狼天狗第八番隊隊長、犬走椛。大天狗様の命によってここに来ました」

 

「分かった。確認をとる、しばし待て」

 

「・・・はぁ」

 

 

小さく溜息をつく、別に待たされる事に文句がある訳じゃない

上層は大天狗様達や天魔様がお住みになる場、そして今回の件で警備にあたる者たちは皆殺気だっているのだ

 

あの外の世界から来た神達が来なければ今回のような事態にならずに済むのに、と心の中で不満を呟く

 

 

「確認が取れた。さぁ、入られよ」

 

「はい。門番、ご苦労様です」

 

「・・・中に入ってからは気をつけよ。皆殺気だっている故な」

 

「ハッ、ご忠告感謝致します」

 

 

私は早歩きでその場を離れて大天狗様の屋敷へと向かった

 

 

「あややや、やっと来ましたね椛」

 

「文先輩。遅れて申し訳ありません」

 

「大丈夫よ遅れても全然構わない。て言うか出来れば私は来たくなかった」

 

「・・・ご命令ですので仕方ないですよ」

 

「はぁ、ここはネタもないし皆殺気だってて落ち着かないし、それにこれから会う大天狗様は個人的にも苦手ですよ」

 

 

そんな話をしながら、文先輩と一緒に屋敷の中へと入っていき大天狗様の従者に案内に従って歩いていく

文先輩は新聞記者という事で私たちと同じ山の中腹にある居住地で暮らしていますが私はどうしても文先輩が下級の鴉天狗とは思えない

 

生きた年数とかではなく、先輩がいつも片手に持っている天狗の団扇、葉団扇。あれは鴉天狗の中で力のある者が持つ事を許されたいわば上級者の証でもある

性格は飄々として適当な所はありますが、断じて弱くは無い筈です

 

 

「大天狗様。射命丸文ならびに犬走椛がご到着なされました」

 

「2人を入れよ」

 

「ハッ」

 

 

案内をしてくれた従者は襖を開け、私と文先輩に入るように促す

 

 

「ふぅ・・・よく来たな射命丸文と犬走椛よ。そこに座りたまえ」

 

 

大天狗様の言う通りに指定された席に座る

 

 

「すまぬが我がよいと言うまで従者は誰も近づけるな」

 

「はっ」

 

 

後に控えていた従者は大天狗様の命に従い、中にいた数名の従者たちと共に部屋を出た

大天狗様は煙管を片手に一服しだす。やはりこの煙の匂いは辛い、嗅覚が優れているから尚更だ

 

 

「ちょっと、椛がいるのにそれを吸うのはやめて貰えません?」

 

「ん、あぁすまんな文。どうも仕事の後はこれを吸わぬと落ち着かぬ故な」

 

「はぁ、私だってあまり好きじゃないんですよそれ。少しは周りの迷惑を考えたらどうです“お爺様”?」

 

「ははは、孫娘にそう言われては仕方ない、注意するとしよう。すまぬかったな椛よ」

 

「いえ、お気になさらずとも私めは大丈夫です

 

『射命丸 捷』様」

 

 

そう、この大天狗様は文先輩の実の祖父様

射命丸捷(しゃめいまる しょう)

 

古き時代から天魔様と共に居た最古参の鴉天狗の1人だ

 

 

「それで話ってなんです?つまらない事ならそのボケ始めた脳天を叩きますよ?」

 

「まぁまぁ、そう嫌な顔をするな文よ。そう長くはならんはずだ」

 

「それでお話とは一体?」

 

「うむ、お前達二人にはとりあえず話しておいた方がいいと思ってな」

 

「私と椛に?」

 

「今の妖怪の山の現状は話した通りだ。頂上に現れた神と手を組み、我らがその神を信仰する代わりに我らの守護を約束させた。それだけだならまだマシだが頭の硬い馬鹿共は妙な動きを見せておっての」

 

「つまり?」

 

「簡潔に話そう、山だけでなく幻想郷の地上を我ら鴉天狗の物としようと企んでおる者達がおる」

 

「「?!」」

 

 

私は驚愕した。当然文先輩もだ

上の者たちにそのような事を企んでいる輩がいるなんて思いもしなかったのだ

 

 

「ちょっと、本当に馬鹿なんじゃないの?八雲紫と博麗の巫女を敵に回すつもり?」

 

「文。我らのような古き時代から生きる大妖怪の大抵は野望を抱えて生きておった。遥か昔から強き力を持つ者が支配者だ。うまい飯を食い、うまい酒に酔いしれ、好きなように生きれるのは強き種族だけ・・・ワシら鴉天狗もかつてはそうだ、鬼という支配者が現れるまではな」

 

「しかし、一体誰がそのような事を・・・まさか天魔様が」

 

「いや、天魔は幻想郷の支配などに興味はない。というより天魔は我らのあり方を変えようと思っている方だ。我が知る限りでは3人の大天狗とその配下達だろう、過去の栄光に今もなお縋っている阿呆どもだ。まだ奴らは我以外にはこの企みに気づいてはいないと思っておる」

 

「でも、どうやって博麗や八雲紫を倒そうっていうの?普通に考えて無理でしょ」

 

「神を利用しようと考えているのだろうさ。いくら妖怪の賢者や博麗の巫女も信仰を得て力を付けた神と戦うのは骨の折れる事だ・・・だが、どうやって神を奴らとぶつけようと言うのかそれは分からんがな」

 

 

やれやれと面倒事を抱え込んだときの様な呆れ顔で溜息を吐く捷様

 

私はその話を聞いて恐ろしいとしか思えなかった。それに大天狗の中には“あの人”もいる

 

 

「・・・」

 

「それでその重要な話を聞かせてどうしようと言うんですかお爺様?まさか、止める為に私達を巻き込もうとか考えてるんですか?」

 

「なに、どうするかはお前達の勝手だ」

 

「「・・・は?」」

 

 

先程まで机の上に出ていた煙管や書き物の道具を片付けながら捷様は続けた

 

 

「この事を八雲紫、もしくは博麗の巫女に話してもよい。なにも聞かなかったと我関せずでも構わん」

 

「じゃあ、これを私達に話した意味ってなに?!」

 

「文。お前は我の大切な孫娘だ、肉親の為に先に知らせてやらねばと思ったまでよ。そして、椛・・・君は先代の博麗の巫女の息子と友好な関係であったな」

 

「ッ!・・・」

 

「彼は君、いや君達白狼天狗と似た人狼ではあるが所詮は山の仲間では無い余所者。君はいずれ決めねばなるまい。山の仲間達を取るか、彼ら幻想郷の守護者たちを取るか」

 

「・・・」

 

 

汗が止まらない

 

もし、本当にそうなれば八雲紫や博麗の巫女は鴉天狗を、そしてその下に属する我々も許しはしないだろう。必ず幻想郷から排除するために動く

 

そうなったら私は・・・小夜と戦えるのか?

 

 

「さて、我はそろそろ頭の硬い馬鹿共との会議に行かねばならん。我の話に付き合ってくれてすまんかったな。従者達には我から伝えておく。屋敷から出たい時は従者の者に言えばよい、ではな」

 

 

そう言い残し、捷様は私と文先輩を残して屋敷から出掛けていってしまった

 

私の頭の中は今もなお混乱し続けている

 

 

「椛、大丈夫?・・・ではないか」

 

「・・・」

 

「一旦ここを出て、あのひきこもり記者の所に行きましょ。ここにいるよりは大分マシだし」

 

「・・・はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪の山麓

 

 

「・・・天狗達の動きが慌ただしい・・・やはりなにかあったか?」

 

 

妖怪の山から感じる多数の妖気が荒々しく見える

なにかを警戒しているかの様にだ

 

やはり1度、椛の元に行かねばならないか・・・ん?

 

なにかに気づき、妖気を抑え、息を殺して木々に隠れる小夜。ゆっくりと顔を出し、山から降りて来る一つの影を見つけた

 

 

「・・・誰だ?・・・あの服装、巫女服の様に見えるが・・・」

 

 

山から降りて来た緑髪の長髪で白と青を基本とした巫女服を身に纏う女性。まず、妖怪の山で1度も会った事のない人物だ

 

何故、人間や他の妖怪の出入りを基本許さない妖怪の山から降りて来たのだろうか?

妖気が感じられない所から彼女は人間なのは確かだ。どちらかと言えば霊夢と似たような気を感じるがそれ以外にも別の力も感じる、人間だったとしてもなにか特別な力を持った人間だろう

 

彼女が霊夢が勘で言った幻想入りした人物だろうか?

 

 

「博麗神社は向こうの方でしたね。早く用事を終わらせなくては」バッ

 

「・・・」スッ

 

 

その場から飛び去って行った緑髪の女性

その口からは確かに博麗神社と言っていた

 

 

「・・・やはり、行ってみるしかないか」

 

 

小夜は歩を進め、妖怪の山へと続く山道に足を踏み入れた




「あーあ、行っちゃった行っちゃった。大尉が行っちゃったよ。しかも色々面倒な事まで発覚してるね」

次回は博麗神社、君の回になるからよろね

「マジで!」
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