なんとか、続きを投稿しました。
『ギシャーー』
「っ!」
ベル兄はゴブリンの鋭い爪の攻撃を軽く躱し、ゴブリンの背後に回る。
なんども、なんどもゴブリンは、執拗に攻撃を繰り返すも、それも危なげなく回避を続けるベル兄。
さすがベル兄!でも、ダンジョンは甘くない1つのことに集中すればすぐに別の角度から襲い掛かってくる。
それを示すかのように、ベル兄に向かって天井をダンジョン・リザードが走ってきた。
『ゲッゲゲっ』
「なっ!?」
「まかせて、ベル兄!」
でも残念、ここにいるのはベル兄だけじゃないんだよっ。
ダンジョンの天井からベル兄目がけて、落ちてくるダンジョン・リザードに狙いを定める。
すかさず、2発の矢を叩き込んで、ベル兄の後方に落とした。
さすがに、硬い鱗に覆われているダンジョン・リザードは貫けないか。
あぁ!!今の矢2本とも折れちゃってるし!?
今日からの新品だったのにー!!
その思いを胸に、ホルスターからナイフを引き抜いて見動きの取れないダンジョン・リザードに近づく。
「40ヴァリスの仇ーーーッ!!」
『ゲェッ!!』
渾身の力を込めて、ダンジョン・リザードの頭部を突き刺し絶命させる。
まったく、矢だってタダじゃないんだからね!まったく…。
灰となり消えた、ダンジョン・リザードから魔石を拾い、バックパックにしまう。
「す、すごい掛け声だったね…。」
「あ、ベル兄!そっちはもう、終わったの?」
「うん、それじゃあ帰ろっか?」
「わかった。あ、ちょっと待って。」
ベル兄が戦っていたあたりに、小さな光るものが見えたから、近づく。
やっぱり、ドロップアイテムだ。これも換金できるんだよね。
確認ができたら、すぐに自分のバックパックにしまう。
「うん!それじゃあ、帰ろうー」
「そんな、細かいのまで拾わなくてもいいのに。」
「ダメだよ!ベル兄。1ヴァリスを笑うものは1ヴァリスに泣くんだからね?」
ただでさえ、まだまだ使えた矢を2本も駄目にしちゃったんだし少しでも稼がないとね。
でも、そっか。私がベル兄の荷物持ちと援護だけをすればもっと稼げるかな?
うーん、それも視野に入れてもいいかも。
そんなことを考えながら、あたりに細心の注意を払って来た道を辿っていく。
その時、ふと私たちの主神様のことが頭に浮かぶ。
「ねぇ、ベル兄。今日はヘスティア様、ホームに帰ってきてるかな??」
「うーん…、書置きには3,4日って書いてあったからそろそろ帰ってくるとは思うんだけど…」
そう、私たちの主神ヘスティア様は現在、ホームを3日ほど開けている。
知り合いの神様たちに逢ってくるから数日留守にする旨が書いてある書置きがあったとはいえ、心配だなぁ。
神様だし、私みたいな子どもが心配することじゃないのかもだけど…。
うん、決めた!ホームに戻ってまだ帰ってきてなかったら、夜探しにいこーっと。
あれこれ考えながら、道中のモンスターを何回か蹴散らして、『始まりの道』と言われてる幅の広い通路を抜けると、何人かの冒険者とすれ違った。
地上へと向かうにつれて、大型のカーゴが目に見えて増えてくる。
「ベル兄、あれって…」
「そうだね、遠征でよく使うらしいけど、あんなにいっぱいどうしたんだろうね??」
そんな疑問をもって、足を進めていると、
ちょうど、隣を歩いているヒューマンとドワーフで構成されているパーティーの話し声が聞こえてきた。
「おい、見ろよ。ガネーシャ様のところの奴ら」
「あん??あぁ、今年も
「物好きだねぇー」
「そりゃ、あのガネーシャ様を主神にしちまったんだから覚悟はできてんだろ」
詳細が気になり、もう一度耳を傾けると、要するにダンジョンのモンスターを
あ、あのカーゴはじゃあモンスターが入ってるんだ。
ふーん、あんまり面白くなさそう…。
流れに沿って、歩いていくとモンスターの入っているカーゴを運ぶ冒険者とエイナさんが話をしていた。
ベル兄もそれに気づいたのか、呟く。
「あ、あれってエイナさん?」
「ダメだよ、ベル兄?エイナさんに話しかけたりしたら。」
「わ、わかってるよー」
ホントかなぁ?
疑いを込めた目でベル兄を見るとすっと視線をそらす。
わっかりやすなぁー、ベル兄。
そんなわかりやすい反応に思わず笑うと、今度はベル兄が疑いの目で見てきた。
「ジーっ!!」
「怒らないでよ、ベル兄。さ、早くギルドいって換金しよ?」
「あ、待ってよ!メル。」
その視線から逃げるようにその場から駆け出す。
後ろに、ベル兄が付いてきているのを気配で感じつつ、ギルド本部に向かった。
ーーーーーーー
あの後、まっすぐにギルド本部に行って換金を済ませ、外に出ると空はすっかり夕焼けに染まっていた。
その夕日を背に受け、二人でホームに帰っていると知り合いの影を見つける。
あ、あれミアハ様だ!遠くで、荷物をたくさん持った長身の人影に近づいていく。
「ミアハ様―!」
「ミアハ様、こんにちは。」
「ん?おぉ~。ベルにメルクではないか。元気にしているか?」
「はい!」
「おかげさまで」
「ふふ、そうかしこまるな。して、今日もダンジョンか?」
この
私たちのファミリアと同じくらい貧乏なポーションとか冒険用品の販売をしているファミリアの主神様だ。
ちなみに、貧乏仲間でお隣さんで、神様同士が友達だからファミリア同士とっても仲良くさせてもらってる。
今は、夕食の買い出しに出て来たところ見たい。
あ、もしかしたらミアハ様ヘスティア様のこと何か知ってるかも??
「あの、ミアハ様?ヘスティア様を知りませんか??なんか、友達の神様たちに逢ってくるって書置きだけで、三日も帰ってないです」
「なに?ヘスティアが?ふ~む、すまないが、力になれそうにない」
「そ、そんな!もしかしたらと思って聞いただけですから気にしないでください。」
「そうだ、詫びと言っては何だがこれをもらってくれないか?」
そう言って、2本の試験管を差し出す。
これって、ポーション??それをタダでなんて貰えないよ!
私とベル兄は慌てて両手を振る。
「タダでなんてもらえませんよ!」
「そうですよ!」
「よいか、二人とも。これはただの善意ではないぞ。こうして恩を売っておくことでこれより多く買ってもらおうという算段があるんだ。」
「は、はぁ」
「ほれ、だから貰っておけ。それではな。」
そういって、無理やり2本のポーションを押し付けて去っていくミアハ様。
はぁ、あの人には敵わないなぁ。
呆然とする、ベル兄を見て声をかける。
「ベル兄?これは、いっぱい買いに行かなきゃだね?」
「うん、そうだね?」
普通はあんな風に本心を言ったら意味ないんだけどなぁ。
でも、これはある意味成功なのかな?
そんな一幕を経て、今は北東のメインストリート沿いの店を見て回っている。
すると、ベル兄はある店のショーケースを見て足を止めた。
「ん?ベル兄??」
「あ、ごめん、メル。ちょっと見ていっていい??」
「え?あぁ。いいよー。私はあっちのお店見てるね?」
「わかった、あんまり遠くに行っちゃだめだよ??」
「はーい」
そう言って、ベル兄から離れて反対側にある露店の雑貨屋へ。
今、ベル兄が見てるのは、オラリオでも有数の鍛冶師で構成されるヘファイストス・ファミリアのお店だ。
やっぱ、憧れるよね。私も実は良い装備には、憧れてる。
ベル兄と違って、弓だけどね。
雑貨屋に視線を移すと、いろいろな工具?っていうのかな?
うーん、見てもよくわかんないや。ほかに目を向けると最近よく手にする物が映った。
お、矢だ!へぇー、こんなのも売ってるんだ。
いつものより、ちょっと高いけど、これ矢じりが鉄だ。
もう少し稼げるようになったら、ここの買おー。
そう決め、露店から離れるとちょうどベル兄が走ってきた。
「メル―。」
「あ、ベル兄。もういいの?」
「うん、お待たせ。それじゃあ、帰ろっか。」
「はーい」
なんとなく、手を握りたくなってベル兄の手を握る。
そんな私の行動に一瞬驚いた後、ベル兄も握り返してくれる。
顔が真っ赤だから緊張してんのかな?あはは。
2人で仲良く、ホームへの道を帰っていると西のメインストリートに入った瞬間に、一つの喫茶店の店員さんが私たちをみて声を上げた。
「あー!!白髪頭が年端もいかない幼女を誘拐しているニャー!!」
「ちょ!?ひ、人聞き悪いこと言わないでくださいーー!?」
そんな声を聴き、ベル兄は慌てて獣人のお姉さんのところに駆け寄る。
あの喫茶店は、この間ベル兄が寄ったところだよね。
ってちょっと待って?今あの獣人のお姉さん私のことを幼女って言わなかった??
むっ!それは聞き捨てならないな!!
ベル兄がお姉さんに走っていった後を、静かに近寄りお姉さんの前で立ち止まり、物申す。
「あの!」
「何ニャ?」
「メル?」
「すぅ……!私は幼女じゃありません!!」
大きく息を吸い込み、一気にそれを開放する。
その大声は、どうやらこのメインストリート一帯に響いたらしく近くにいた人がみんな一斉にこっちを向く。
その声を、向けられた獣人のお姉さんとその近くにいたベル兄は唖然としてピクリとも動かない。
ふん!自業自得だもんね。
唖然とした、ベル兄の手をつかみそのまま帰ろうとしたら、喫茶店の扉が開く。
「もしや、うちの店員が何か致しましたでしょうか?」
「あ!クラネルさん?」
「し、シルさん!?」
中からエルフとヒューマンのお姉さんが出てきた。
ヒューマンのお姉さんは、当初の目的を忘れたのかベル兄と話している。
一方、エルフのお姉さんは通りの状況と私の顔、そして獣人のお姉さんの様子を見て何かを察したようにため息をついた。
そして私に向き直り、頭を下げる。
「詳しい事情は分かりませんがどうやら、彼女が迷惑をかけたようですね。申し訳ありませんでした。」
「そ、そんな!気にしないでください。」
凛とした雰囲気のエルフのお姉さんに頭を下げられて、慌てて首を振る。
こんな容姿だし、今までが後ろめたいことをしてたから頭を下げられることに慣れないなぁ。
「それならよかった。さぁ、あなたもお詫びをしなさい!」
「ニャフン!?」
するとエルフのお姉さんは、獣人のお姉さんに向き直り手に持っていたお盆を頭に見舞う。
バコッと音がしたその一撃は、まったく見えなかったよ。
音で何が起こったのかを知ることができたけど…
その素早い一撃、それに凛とした仕草…。かっこいいなぁー。
「どうやら、クラネルさんともお知り合いの様子。今度この店にいらしてください、おもてなしさせて頂きます。」
「はい!絶対に来ます」
エルフのお姉さんの言葉に、半ば反射で返事を返す。
ちょうど、ベル兄もヒューマンのお姉さんとの話が終わり、再びホームへの帰り道を歩き出す。
手を振って、見送ってくれるヒューマンとエルフと獣人のお姉さんを横目に、私も手を振り返す。
約束したし、絶対にあの店に行こう!そう決めた。
ーーーーーーー
やっぱり、あの後ホームに戻ってもヘスティア様はおらず、探しに行っても見つからなかった。
うーん、本当にどこに行ったんだろう…?
今日の夜も探しに行こうかな?
そんなことを考えながら、ダンジョンに潜る準備を済ませる。
「よし!今日も張り切ってダンジョンに潜って沢山お金を稼いで、神様を驚かせよう!」
「はーい!がんばろー!!」
意気揚々と、二人でホームを出ていつものように、ダンジョンに向かう。
すると、昨日の獣人のお姉さんに声をかけられる。
「あー白髪頭と幼少女!!」
「ムッ!!」
頭に後に少を受ければいいって問題じゃないんですが…。
またあのエルフのお姉さんに言って、叩いてもらおうかな。
そんなことを考えていると、お姉さんは礼儀正しくお辞儀をした。
「おはようございます、ニャ。ちょっと頼みたいことがあるんだが、いいかニャ?」
「お願いですか…?」
「ちょっと面倒なことになったニャ。はい、コレ」
「え?」
「アーニャ、それでは伝わりませんよ?」
訳も分からず、ガマ口財布を渡され唖然としている私たちに、店からエルフのお姉さんが出てきて説明してくれた。
その内容は、昨日のヒューマンのお姉さんが財布を忘れてお祭りを見に行ったから届けてほしいという事らしい。
ふむ、なるほど。そういう事なら。
「ベル兄?」
「うん。わかりました、そういう事なら僕が届けます。」
「ありがとうございます。」
「ありがとうございます、ニャ」
深々と頭を下げる、エルフと獣人のお姉さん。
よーしならちゃちゃっと渡してきちゃおう。
ベル兄の後を追うように動こうとしたら、振り返り声をかけられる。
「あ、メルはここで待ってて入れ違いになった困るしさ」
「あ、そうですね。わかりました、待ってます。」
ベル兄が、走っていくのを見送る。
と言うわけで、私は一人でここに待っていることになったわけだが、どうしよう。
手持ち無沙汰になり、とりあえず隣のエルフのお姉さんに話しかける。
「あの、エルフのお姉さん?」
「あ、すみません。名乗るのを忘れていましたね。リューです。えっと…」
「あ、メルク・プーランです。よろしくお願いします、リューお姉さん。」
「ふふ、こちらこそよろしくお願いします。プーランさん」
そういって優しい笑顔を向けてくれるリューお姉さん。
すっごくきれいな人だなぁ…。それに、仕事の準備があるのに私に付き合ってくれてる。
中のことは、獣人のお姉さん(アーニャお姉さんだったかな?)に任せて近くのテーブルに腰を下ろすように言われる。
すみませんと一度頭を下げて、椅子に座る。
それからリューお姉さんも向かい側に座り、私と話してくれた。
いつからこのオラリオにいるのか、ここで仕事をしてどれくらいなのかと言った身の上話から、
好きな食べ物や嫌いな食べ物は何かと言った、雑談みたいなものまでいろいろと。
とっても楽しい!ヘスティア様とベル兄以外の人でこんなに話してて楽しい人に会ったのは初めてだ!
そんな幸せな時間がしばらく続いた。
リューお姉さんが、ひと息入れて私にお礼を言った。
「ふふっ、プーランさんあなたと話しているのは、とても楽しい」
「ありがとうございます、リューお姉さん。私も楽しいです!」
「「あははっ。」」
お互いにお礼を言い合い、なんだか不思議な気持ちになり二人同時に笑う。
はぁー、楽しかった。それにしてもベル兄、遅いなぁ。
まだ見つからないのかな?あのお姉さん。
そう心配して、私があたりをキョロキョロとしていると、リューお姉さんが話しかける。
「遅いですね、クラネルさん。」
「ですね。やっぱり私探してきます。」
そう決め、立ち上がると同じようにリューお姉さんも立ち上がる。
一度、店内に戻ると、すぐにエプロンをとって戻ってきた。
「えっと…」
「私も行きます。もともと私が行くはずだったものをクラネルさんにお願いしたのです。そのためにプーランさんに迷惑をかけてしまうのは違いますから。」
「で、でも…」
「それに、まだここに来てから日がたっていないって仰っていましたよね?それならなおさら放ってはおけない、迷ってしまいますからね。」
そういって、静かに微笑むリューお姉さん。
確かに、実は少し心配なんだよね。
うーん、ここはお願いしよう。
「すみません、それじゃあお言葉に甘えさせてください。」
「えぇ。ではいきましょう。」
と言うことで、リューお姉さんと2人でベル兄を探しに行くことになった。
ーーーーーーー
「いませんね、クラネルさん」
「うーん…」
人の大勢いるコロシアム周辺。リューお姉さんと二人、クラネルさんと財布を忘れたシルお姉さんを探す。
けど案の定、全然見つからない。
うーん、本当にどこに行ったのかなぁ?
ダメもとで、耳を澄ましてベル兄の声が聞こえないか試す。
すると、ベル兄とは別の声が聞こえてきた。
「ん?」
「あれ?悲鳴??」
人々の悲鳴が徐々に近づき、人垣が割れてくる。
ちょうど目の前が割れたとき、ベル兄とヘスティア様、そして2人を追う3体のモンスターが目に映った。
「ベル兄とヘスティア様!?」
「それとモンスターも……っ!?」
「行かせないッ!!」
気付いた時には、二人とモンスターの間に身を乗り出していた。
反射的なものだったけど何とか、1体の足止めに成功。
まぁ上出来かな?
さてどうするか……。
相手は確か、シルバーバックだったかな?11階層から出てくる。
はぁ、何とか倒してもう2人を追わないと。
そう一瞬思考に偏ったその隙をついて、モンスターが横殴りの攻撃を繰り出す。
『ガァァァ!!』
「っ!?しまっ―!」
気付いた時にはもう遅い。
モンスターの剛腕が、回避できない距離に来ていた。
あぁ…、何の役にも立てなかった。
「フッ!!」
『ギャァァァァ!』
「え?」
「私の友人に手は出させないぞ!獣風情が!!」
私の前には、リューお姉さんが小さな刀を片手に立っていた。
え?今何が……。そう思ったときには、もうモンスターは灰になって風に消えた。
私の目で見えなかったんだから、ほとんどの人が何があったのかわからなかっただろう。
それだけ早かった。とてつもなく。
「大丈夫ですか?」
「は、はい」
「あまり心配させないでください。」
心配して声をかけてくれるリューお姉さんから手を借りて起き上がる。
もう一度さっきの光景を思い出そうとして、やめた。
今は2人が、家族がモンスターに追われてるんだ!
「すみません、リューお姉さん。私行きます!」
「あっ!待ちなっ―!くっ」
人ごみをうまく抜け、走り出す。
人だかりがあって進めないリューお姉さんに心の中で、お礼と謝罪をしつつ2人が走った方向に向かう。
まだそう離れてはいないはず、2人共の無事でいてください!!
読了ありがとうございます。
今回は、ミアハとリューを書きましたが、うまく口調を捉えられている気がしません。
何か違和感がありましたら教えて頂けると幸いです。
ちなみに、リューが攻撃したのは一瞬でしかも周りに冒険者の類がいなかったと言う奇跡のような状況が重なりばれませんでした。