英霊ドラえもん 作:ZIN
今は朝の登校時間。
『その人物』の周囲にもちらほらと制服姿の生徒が見える。
そして、涼しい顔の彼は『今日も』制服ではない姿で校門を通り抜けていく。
度の入っていない『黒いまるぶち眼鏡』を掛け、緑の半袖シャツと蒼い半ズボンで私立穂群原学園に登校する一人の男子高校生がいた。
この2月という冬空の元に、気でも狂っているように思える小学生か?という姿。
彼の名は―――間桐慎二。
ライダーのサーヴァント、『ドラえもん』のマスターだ。
ランドセルは、免除されているのか背負ってはいない。
そして不思議な事に、その異様な彼の姿見ても誰も何も言わないし、校門に立つ生活指導の先生から咎められる事もない。そして彼は寒くも無かった。
それは、ひみつ道具【魔法事典】に『制服ニ見エル:間桐慎二の衣服は私立穂群原学園の制服に見える』『20度ホオン:間桐慎二の周囲は気温が20度に保たれる』と呪文を書き足しているからだ。
聖杯戦争は先日英霊が七人出揃っており、始まりを迎えている。
すでに彼の横には、ひみつ道具【透明マント】を被るドラえもんが臨戦態勢でいた。
聖杯戦争―――。
それは、数十年に一度、ここ「冬木市」に現れるとされる、『手にする者の望みを実現させる力を持った存在』である『聖杯』をめぐる戦いを言う。
七人の魔術師(マスター)と其々が契約する使い魔(サーヴァント)らが最後の一組になるまでのバトルロイヤル形式で戦うのだ。
十年前に第四次の聖杯戦争が起こっているが、再度聖杯戦争が起こった理由を慎二は知らない。どうでもいいと考えている。
慎二としては面倒事は早く片付けたい。死にたくない。それだけだ。
事の発端は、慎二の祖父間桐臓硯が、どこからか謎の『黒いまるぶち眼鏡』をもってきたことに始まっている。
そして、義理の妹の桜が『ヤツ』を呼び出しやがったのだ。この青と白と赤鼻の猫型ロボットを。
もちろん出現時の第一声はこれだ。
「ボク、ドラえもん」
そののちに臓硯より「お前がやれ」と申しつけられて、慎二が偽臣の書を譲り受け『英霊ドラえもん』を桜から引き継いでいた。
臓硯曰く、「これならお前でも勝てるだろう」と。
慎二も確かにそうかもしれないと考えた。
しかし。
「なに? 人を殺すことは出来ないだと。これは殺し合いの戦争なんだぞ」
「僕は、良い子な子供たちの味方なんだ。そんなこと出来る訳ないじゃないか。でもサーヴァントの方はなんとかするよ」
(ちっ、マスターは殺さずにやるしかないのか。面倒くさいな)
この英霊『ドラえもん』は、未だにそんな甘いことを言うために慎二は困っていた。
とりあえず、慎二は他のマスター達に怪しまれないようにといつも通り学園へと登校して来た。
彼はまだまだ割と余裕があると考えている。
最悪、『ドラえもん』のひみつ道具を使えば殺しでもなんでも何とかなる気がしているからだ。【悪魔のパスポート】などだ。
まず初めにすることは、他のマスターを知ることだと考えた慎二は行動を起こし始める。
つづく
2015.06.16 UP