艦隊これくしょん -Blue submarine-   作:イ401

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大変お待たせしました。少々苦戦しまして…


第9話

日本首都 東京。

 

かつては、経済大国の一つとして立派な現代文明を築き上げていたのだが、今では切り捨て政策によって、3割の領土を自然(廃墟)へと還し、国内難民の住居と裏取引の温床となっている。

 

首都である東京も、よく見れば廃墟も見える有様だ。しかしそれは、「日本」という「国家」が生き残る為の、苦渋の決断の証でもある。

 

 

 

 

国会議事堂、軍事会議室。

 

そこには、15人の陸海空の大将と、日本の政治の心臓部を担う総理大臣が集い、円卓会議を始めんとしていた。

 

「それでは、これより緊急軍事会議を始める」

 

唯一、スーツ姿で円卓の椅子に座っている総理大臣が、開始の言葉を放った。

 

「トラック泊地の件についてだが……ここにいる全員が同じ想像をしている事と思われる」

 

この会議に参加している全ての人間の脳裏に、黒衣に身を包んだ悪魔の姿が浮かび上がる。

 

「提督の様子、極僅かな時間での壊滅……そして火の海を作り上げ、無残な残骸を築き上げる存在……そんな芸当を成し遂げる存在は、奴しかいない」

 

それは艦娘が人類と接触してから数日後に分かった存在。人類から海を奪った怨敵。深海棲艦を"率いて"艦娘と戦う者。

 

 

 

 

「「「「「罪禍悪鬼(しんかあっき)」」」」」

 

 

 

 

罪禍悪鬼──謎多き深海棲艦の中でも一際謎めいた存在。艦娘によって、それが深海棲艦の司令塔的存在であるという事は昔から分かっている。

 

そして同時に『優秀な鎮守府を一ヶ月の間に9つも"単騎強襲で"壊滅させた怪物』であることも。

 

「大規模な艦隊であるならば発見が早かっただろう。しかし襲撃の直前まで気付かなかったとなれば、奴しかあるまい」

 

「私も同意見だ。奴以外は考えられん」

 

「最後の単騎強襲以来、目撃情報は途絶えていたが…今度は、トラック泊地の壊滅で知らせてくるとは…」

 

全員の表情に、苦渋の表情が浮かぶ。それ程、"罪禍悪鬼"という存在は大き過ぎるのだ。

 

「皆も知っている通り、奴は正真正銘の化け物だ。駆逐艦クラスの船体でありながら、戦艦と何ら変わらない威力の砲撃、多数の特攻兵器の発艦能力、艦娘最速の島風をも上回る機動力。姫級を上回る知能。そして、損傷しても短時間で修復する回復力…奴がいる限り、我々人類は海を取り戻す時は来ない」

 

「しかし、罪禍悪鬼の目撃情報は殆ど皆無。目撃した者は全員海の底…更に言えば、我々は罪禍悪鬼に対して有効な手段を持っていません」

 

「ああ…対抗手段が無い今、警戒を密にしていくしかない。全軍にフェイズ4を発令する。罪禍悪鬼を発見時には現地判断に任せる。本土に現れた場合は即時交戦。一秒でも多く時間を稼ぎ、市民が逃げる時間を与えろ」

 

「「「「「はい」」」」」

 

「…さて、今回はもう一つある」

 

首相の左後ろに待機していた秘書が、とある資料を一人一人渡してゆく。

 

「今配った資料は、一ヶ月前から複数に渡って目撃されている"潜水艦"に関するものだ」

 

「潜水艦…?海軍所属の艦娘ではないのですか?」

 

「いや、全ての鎮守府及び泊地に問い合わせたが、この潜水艦に関する情報は皆無だ。そもそも深海棲艦相手に、単艦の潜水艦による行動はまず無い」

 

「ドイツのU-511の可能性は………いえ、それもあり得ませんでしたね。ドイツの航路は今だ開いておらず、アフリカと北極圏は深海棲艦だらけ。通れる筈もありませんし、そもそもドイツとは同盟関係…もし戦力を送るならば、ドイツから連絡が来ない筈がありませんね」

 

「…新種の深海棲艦の可能性は、ありませんでしょうか」

 

「「「「「──!!」」」」」

 

空軍の大将の発言に、陸軍と空軍の大将の顔色が変わる。が…

 

 

 

「それはあり得ない」

 

 

 

海軍の大将が、それに待ったを掛けた。

 

「この潜水艦は、過去何回か艦娘の艦隊を火力支援しているとの報告もある。深海棲艦が同族を殺し、敵である艦娘を助けるなどあり得ん。しかし同時に、潜水艦の装備は我々が開発していない代物を使用している」

 

「どういう事だ?」

 

「この潜水艦は、戦艦を一発で撃沈可能な威力を持つ魚雷と、広範囲に爆発を起こす魚雷が確認されている。どちらも、我々は開発していない…つまり、ある筈が無い代物をこの潜水艦は保有している」

 

「更に言うと、出没した海域にも問題がある」

 

「問題…ですか」

 

「…一度だけ本土間近の海域、横須賀鎮守府が担当する本土最終防衛線にこの潜水艦らしき影が確認されている」

 

その言葉に、場の空気が凍った。

 

「……つまり、この潜水艦は……その気になれば、本土への直接攻撃が可能……?」

 

「そういう事になる。今までは海軍が捜索を担当していたが、これからは陸空軍にも協力を願いたい。この潜水艦を放っておくと、何かしらの被害が出かねんからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太平洋、海上。

 

そこに、一隻の艦艇がいた。

 

その全長は平均的な駆逐艦となんら変わりのないサイズだが、装備された主砲と三連砲は明らかに駆逐艦の口径ではなく戦艦クラスのもの。更に船尾には小さなカタパルトが二つ存在し、この艦が如何に異質かを物語る。

 

「…」

 

そしてその異質な艦の艦首に。

 

"彼女"は立っていた。

 

黒のクロークと短パンを着て、黒髪を一房に纏めた赤い瞳の彼女は、月夜が照らし映す水平線をただ静かに見つめている。

 

 

──ザァァァァ…

 

 

海を突き進む音が彼女の後方から響き、そして彼女の後ろで一隻の駆逐艦型深海棲艦"ニ級"が静止した。

 

「──どうした」

 

水平線へ視線を向けたままの問いかけ。それに応える様にニ級は伝令を伝える。

 

「……成る程。ならばこうするか……」

 

彼女は初めてニ級へと身体を向け。

 

 

「────」

 

 

新たな指令を送る。

 

「この様に動けと伝えろ、これは命令だ。これさえ守れば好きに動いて構わん」

 

その言葉を合図にニ級は動き始め、己の役割を果たす為に行動を開始する。

 

 

そして、彼女もまた──

 

 

「さて、どんなものか…」

 

邪悪な三日月を描く唇。誰に向けたものかも分からぬ呟きと同時に、艦艇の機関が唸りを上げる。

 

 

──グォォォォォォォォ…!!

 

 

駆逐艦クラスの艦艇ではあり得ない駆動音が響き、4つのスクリューが回転を開始。規格外の加速を得て、50ノットで航行を始めた。

 

 

最強(最恐)の深海棲艦が今、動き出す。

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