深淵の異端者   作:Jastice

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第13話 ゲームの時限爆弾イベントはパニクって操作ミスる可能性が案外少ないよね

「もうそろそろか!?」

 

 俺は壊され尽くされたホドの街道を走り抜けていく。

 目指すはホド島西方に位置するフォミクリー研究所。

 次の目的地こそが俺にとっての本命となるだろう。

 かなり時間を取ってしまった、まだ間に合うか心配だ…。

 

 俺がフォミクリー研究所へ向かうきっかけとなったのは30分前の出来事――。

 

 ファブレ公爵を人質から解放し、鳩で本部に連絡していたのか、ガルディオス伯爵を討ち取るのを図っていたかのように撤退を始めていくキムラスカ兵に引き取ってもらい、後から俺はペールさんと事情を説明し合った。

 

「フォミクリー研究所?」

「そうです、そこへはヴァンデスデルカ様とファルミリアリカ様の御二人が連れて行かれた、だがフェンデは…」

「…フェンデの当主は、一体何が」

「――フェンデは、最後まで勇敢に戦った。膝を矢で射られようが、肩を槍で貫かれようが、片腕を譜術で捥ぎ取られようが――彼こそがまさしく忠臣だった。私には彼を、最後の頼みとして始祖ユリア様の墓前へ連れて、そこで看取ってやることしか出来なかった」

「……そうですか」

「フェンデはこう私に言い残して逝った。「ガルディオス家を…そして私の家族を…どうか代わりに最後まで守り続けてくれ」とな。それに比べ私は肝心な時に主の元へ赴く事もできずに…ッ!!」

「…ならまだ間に合います、ペールさん。今やガルディオスの忘れ形見となったマリィベル様とガイラルディア様はこの屋敷にある客間の暖炉中に隠れています。今ならキムラスカ軍はほとんどこの屋敷を立ち去ってる筈です。だからこそ、あの二人には今まさにあなたの助けが必要なんです」

「それは真か!?」

「それと、島裏側の港には手漕ぎ船が何隻か残ってた筈です。それを使えば…」

「しかし、君はどうするんだ。一緒に逃げる事は出来ないのか」

「…俺には、まだやるべき事がありますから」

「御二人をこれから助けに向かう気か!? 無理だ、フォミクリー研究所は関係者以外では立ち入る事が出来ない仕掛けが施されている。君のような少年が生半可な知識では――」

「恐らく、その心配は無くなると思います。それに、これからこの島は…」

「……?」

「…いえ、なんでもありません。これは聞き流して頂きたい」

 

 

 さて、ペールさんから教えてもらった通りの道によれば間もなく到着する筈なんだが…。

 あいにく、燻る戦火による煙幕掛かったような景色ばかりで遠くを見渡せない。これは厄介だな。

 俺には困惑の表情が浮かんでいる事だろう。

 

 だが、俺は気付いていなかった。

 

 絶望のカウントダウンはこれから本番を迎え始めている事に――。

 

 

 ――瞬間、全ての音が【消えた】。

 

 

「――なんだ、あれは?」

 

 天空へと雲をかき消して伸びていく極光の柱。

 先ほどまで吹いていた微風が止み、無震の世界に唯一人取り残されたかの感覚。

 先ほどまでの濁った世界は塵一つない鮮やかな白を色付ける景色となる

 彼の光景は、まるで神々の降臨を思わせるほどに綺麗で、その実異質な存在そのもの。

 

 空から降り落ちる黒い塊が、早々にホドを地獄へと誘った。

 

「うぉッ!?」

 

 目の前にある光景を一言で言い表すならば――終末。

 ホドを地獄へと変えていく黒い塊は、建物や何かの譜業を構築していた大きな一部であると分かった。

 絶え間なく振り続けていく。既に壊れた住宅や街路を更に破壊していく。

 嘗て前世で見た火山の噴火と類似した光景であった。

 

「くそ、ここに留まるのは危険か。研究所に…ッ!?」

 

 何の因果か、澄んだ景色となった先に見える研究所は例の光の発生源と気付く。

 懸念していた考えが嫌に頭の中で警鐘を鳴らし続けていた。

 あそこで一体何が行われているのかは俺には詳しく分かっていない。

 だけど、行かなければならない。

 俺は頭上から降り注ぐ残骸に注意しつつ、足を進めていく。

 

 

 極光の影響故か、所々がひび割れて損害が目立つ研究所。

 初見で思い浮かぶのは只々異様という空気。

 

「研究所に人が全く見当たらないとは…どういう事なんだ?」

 

 譜術で壊れやすくなっていた壁を破壊し、そこから研究所に潜入していた俺だったが、そこはもはや廃墟といえるような内部が目に映る。

 いくら探しても人の気配が全く感じない。

 あるのは壊れた部屋や廊下の光景だけだ。

 

「誰か居ないのか」

 

 試しに大声で呼んでみる。

 返事が返るかはどうか分からないが、やらないよりはマシだろう。

 

「――ぇ――こ――してッ! ――にいる――」

 

 研究所の奥から俺と同じように大声を出して呼び掛ける者の存在に気が付いた。

 すぐさまそこへ向かう。長い長い廊下を全速力で駆け抜け、その終着点には堅牢な扉が立ち塞がっていた。

 

「もし、そこにどなたかいらっしゃいますか!? お願いですから返事をしてください!」

 

 ――この声は…。

 

「まさか、そこにいるのは…ファルミリアリカ様!?」

「…ッ! 私の名を――どなたですか」

「俺です、ハイルです! 今扉を開けますから離れていてください」

 

 俺は音素を取り込み、すぐさま練り上げて譜術に変換させる。

 使うのは低威力――錠を破壊する規模で十分。

 

「炸裂する力よ、≪エナジーブラスト≫!!」

 

 鉄格子の錠に衝撃を与え、無理やり扉をこじ開ける事に成功した。

 開いた扉の先にはヴァンの母--ファルミリアリカ様が居た。

 

「どうしてあなたがこのような場所で…?」

「フォミクリー研究所から訪れた研究員達から本国の命令としてヴァンデスデルカの召集を命じられまして…私もあの子の同伴としてここへ参ったのですが。いきなりここの者達によりヴァンデスデルカと無理やり引き離されて、そのまま牢へと……」

 

 順を追って説明をしてもらうが、次第に地鳴りが響き渡る。

 どうやらここでのんびりとしている暇は無さそうだ。

 

「ヴァンデスデルカが居る筈の実験場はこの研究所の地下にあります。急がなければあの子がッ!」

「…分かりました。案内をお願いします」

 

 

 ヴァン、お前が何をしているのかはこの際関係ない事だ。

 

 早くこの人の心配を解いてやれ。

 

 これからはお前がこの人と、生まれてくる『キョウダイ』のために強くならねばいけない。

 

 だから、早くお前の無事を知らせてくれ。

 

 

 

【ホド崩壊まで――あと15分…】

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