『友達じゃダメかな――?』
今でも思い出すあの忌々しい断り方。
友達どころか以降話す事すらなく中学を卒業した。
友達じゃダメだから告白したのに、
友達じゃダメかな?
なんて今思えば笑えてくるっつの。
つか、どの女子にも言えるんだが、なんで女子の言葉って一言一言があんなに鋭いの?
心臓を穿つのはもう結果なの?
なにそれ、俺の運とか高く見積もってもEランクしかないから絶対避けれないよ?
「き――ざき―――神崎!!」
「うおっ!?」
「神崎、点呼中に寝るとはいい度胸だな」
「あ、あー、すんません」
「ったく・・・神崎榛樹、出席と」
ああ、朝のSHRか。
つか、俺夢の中だったのね。
もし、現実がゲームだとしたら、生産中止レベルで酷いのである。
初期ステータスの不公平って何?
テスターと正規サービスからのプレイヤーでも情報量の違いはあれど初期ステータスは統一じゃねぇか。
「理不尽って雨みたいなもんか・・・」
俺は曇ってきた空を見上げた。
「一雨きそうだな」
俺は特に部活に入っている訳ではない。
強いて言うなら帰宅部員だ。
「うーん、夕立が来るなこりゃ」
夕立って言っても、ぽいぽい言ってる駆逐艦の話じゃないぜ?
え?知ってる?そりゃ失礼。
「さて、まだ家まで距離あるし、どうするかな?」
言ってると、ぽつ、ぽつ、と雨が頬に当たった。
「やっば、これはかなり降りそう・・・」
丁度近くにコンビニがある。
俺はカッパを買う為、寄ることにした。
「こりゃいよいよ本降りかな?」
カッパを買っただけの短時間でこの降り方、一刻も早く帰りたくなってくる。
「雨、強いですねぇ」
カッパを着ていると、隣から声を掛けられた。
振り返るとそこには、びしょびしょに濡れた20歳くらいの美女が立っていた。
髪の毛は黒髪ストレートロング。
顔はかなり大人びていて、とても整っている。
身長は少し高めで170前後はあるだろうか?
「ああ、そっすね」
「これは台風も近いですかね〜?」
台風か。
学生を期待させて、裏切りまくるあの台風ね。
確かに、こんな暴風と暴雨状態は台風かと思う。
今は七月だし、少し早めの台風が来てもおかしくはない。
近年、季節の循環が少しズレつつあるからな。
「あまり降ってもらうと帰りにくいんですがね」
「そうですね〜」
なんかほんわりとした柔らかな物腰の女性だった。
不思議な包容力があって、こっちを安心させてくる。
俺は先ほど買った紅茶を口に含む。
「好きなタイプの女の子とかいるんですか〜?」
「ブッ!」
思わず吹き出してしまった。
何言ってるんだこの人は!?
初対面の男子高校生にそんな事を聞くか普通!?
「教えてくださいよ〜」
「いや、順序を飛ばしすぎですよ」
「そうですかね〜?」
訂正、ただの変な人だ。
「そうですね、自分より20cmくらい身長低くて、並々に胸も大きくて、大和撫子みたいな人ですかね」
―――俺なんで言ったの?
女性の怖さを改めて思い知った。
え?俺の自業自得?
黙れ!俺の辞書に自業自得なんて言葉はない!
「大和撫子いいですよね〜」
「まあ、理想でしかないんで」
「理想でもいいじゃないですか〜。
私はそういう女の子いいと思いますよ〜」
ん?てか、なんで俺は初対面のこの人に好きなタイプを話してるんだ?
もしかして:職務質問
俺なんか悪いことしたかな?
「では私は帰りますね〜」
さようなら〜
そう言って彼女は雨の中に歩き出した。
瞬きをした時には雨はピタリと止み、彼女の姿は消え去っていた。
そういえば、家族以外の人とこんなに話したのっていつ以来だっけ?
近寄らないし近寄って来ないからわからん。
恐らく2年程度は話してない。
マーイーカ、別に今更クラスメイトに話しかけても嫌悪感丸出しになる事は目に見えてるしな。
「ただいまー」
返事はない。
姉ちゃんはまだバイトみたいだな。
母さんもいないが、恐らく買い物だろう。
てことは俺は1人か。
自分の部屋に入り、ベッドに横になる。
コンビニで会ったあの不思議な女性。
高い包容力と優しい口調。
そして雨と共に消えて行った不思議さ。
「なんだったんだ、あの人?」
瞼を瞑る。
疲れが溜まっているみたいで、すぐにでも眠れそうだった。
そういえば朝のSHRでも寝ていたな。
俺はあの女性を思い浮かべながら眠りについた―――。
パチッ と目が覚める。
時計を見ると18:32を示していた。
「2時間くらい寝たのか・・・」
重い頭を動かして起きる。
喉が乾いたから茶でも飲もうと思い、立ち上がった。
その時にある違和感を感じる。
「―――ん?」
ズボンとパンツが下に落ちた。
寝る前に緩めていたのか?
色々と疑問は残るが、履き直そうと下に手を伸ばした。
ふと違和感に気付く。
「あれ、俺の掌ってこんな小さかったか?」
掌だけではない。
足も細くなり、濃かった臑毛は消え去っていた。
一度姿勢を正して立ってみる。
カッターシャツは腰程度までの長さしか無かった筈なのに、膝まで伸びている。
俺は寝ぼけているのだろうか?
胸を触ってみる。
柔らかい感触、言ってしまえば女子が持ってるあの……。
確信の為に股をさすってみる。
無い………。
「嘘だろ・・・?」
最後に鏡を見てみる。
そこには――――
黒髪ロングストレートのまるで大和撫子の様な美少女が俺を見つめていた。