「日本見つけたんだぞ!」
「くっ!」
6発の銃声と、それを斬り捨てる音。キンと鋭い音が響く。
「なら、これで!」
アメリカが30口径のピストルを投げ捨て40口径へと変える。当たれば怪我ではすまないだろう。トリガーへ指をかけると素早く連射した。合計6発。最初の3発までは刀で防げたが、死角から飛び込んできた一発に気をとられ、残り二つがお留守になってしまった。このままでは被弾する!日本が覚悟を決めたその時、
「日本大丈夫か!?」
後方からの銃声2発。それらは日本の横を通りすぎ、アメリカから放たれた弾丸と正面衝突して空中で留まった後、地面へと落ちていった。
「ど、ドイツさん!」
「礼は後だ!イタリア!」
「了解であります!“緊急脱出”!」
アメリカの目前から三人がスッと消え去る。
「くっそー!また取り逃がしたんだぞ!」
アメリカは地団駄を踏んだ。
「ドロケイがしたいんだぞ!」
アメリカがホスト国の世界会議初日、初っぱなからこんな提案をしたことで会議は始まった。
「何いってんだよアメリカ。そんなことより早く会議進めろ」
この発言はイギリスだ。今回ばかりは彼が正論をいっている。だが、アメリカは聞く耳を持たなかった。
「親睦を深めるためにドロケイがしたいんだぞ!反対意見は認めないんだぞ!」
言い出したら聞かないアメリカだ。もう頭は“皆でドロケイ”に向かっている。
「泥棒と警察に別れて戦うんだぞ!負けた方は勝った方の言うことを聞く!それでどうだい?よし、決定!今からやる!」
こうしていきなり始まったドロケイ。会場は世界会議場の建物だ。制限時間は日没。まだ朝なので相当時間がある。
泥棒: 日本 イタリア ドイツ プロイセン ロマーノ
警察:アメリカ イギリス 中国 ロシア フランス
他の国は観戦者となっている。
尚、参加者は武器を使用することが可能だ。軍事演習もかねている。
普通にやってはつまらない、ということで一国につき一つだけ特殊能力の使用が可能となった。(イギリスのほあた☆による)先程イタリアが使った“緊急脱出”もそれの一つだ。
そして、上記の戦いに戻るのである。
緊急脱出を使い瞬間移動をした空き部屋で枢軸三人は荒い息をしていた。
「ヴェー……日本大丈夫?」
「す、すみませんご迷惑をお掛けして……ありがとうございました。」
「いや、日本が無事ならそれでいいんだ。しかし危なかったな」
「そうですね」と答えながら日本は刀を取りだし点検する。8発の弾丸を切ってもその切れ味は失われていないのを確認し鞘に納めた。
「だけど、さっきのすごかったねー。まさかKATANAで切っちゃうなんて!」
「あれはまさにNINJYAだったな!」
二人が盛り上がっているのを日本は微笑ましく見ていたが、急に真面目な顔になって黙った。
「どうしたのー?日本」
「イタリア君、少し静かに」
耳を澄ます。常人ではけして聞き取れないだろう声が耳に届いた。……戦闘音だ。泥棒側の誰かが警察役と戦っているらしい。
「ちょっと戦闘音が聞こえたので助太刀してきます。イタリア君は次に緊急脱出が使えるのは一時間後ですよね?私一人で行ってきます。では!」
日本はそういうやいなや飛び出していった。
残された二人は顔を見合わせる。
「まずいんじゃないか?日本だけでいったら。連合側の狙いって…」
「あ、やっぱりドイツも気づいてた?そうだよ。たぶん日本は連合側から狙われてる。特に、イギリスとアメリカだね。あっちからしてみれば“言うことを聞かせたい”相手なんだろうなぁ」
「じゃあ、一人にしては……」
「まずいねぇ」
そう言ってイタリアは立ち上がる。そこに先程までの弱さは見られなかった。
「日本を変態たちから全力で守るよ」
「ja」
扉を開けて廊下に出る。
「逃げることだけが俺の能力じゃないよ。……ラテンの本気、見せてあげる。」
ところかわって大階段の踊場。プロイセンはロシアと死闘を繰り広げていた。
「プロイセン君!そろそろ諦めたらどうかな!」
「ケセセっ!何いってんだ!俺は負けないんだぜ!」
ロシアが放つ縦断を避けながら間合いを詰める。素早く真下まで回り、サーベルを上方に向かって突きだした。
「もらった!」
気合い一閃。だが、プロイセンはその直後後頭部に尋常じゃない衝撃を感じ倒れた。霞む視界で見上げると、水道管を持ったロシア。
「ま、じかよ……」
あまりの衝撃に立つことができない。捕縛されるのも時間の問題だった。ここで負けるのか、と思うと遊びでも悔しい。せめて、気を失うまで、暴れ続けてやる。
「え?まだ立つの?結構強く殴ったんだけどなぁ……血が出てるよ?」
「ケセセッ……俺様はこれくらいじゃ倒せねぇよ……!くらえ、“
途端、プロイセンの足元から数えきれないほどの小鳥が飛び出しロシアに向かって殺到する。最初のうちこそ水道管を駆使して小鳥さんを排除していたロシアだがその圧倒的な多さにたちまち不利になった。
「“怖いよ助けて冬将軍”!」
ロシアの周りが絶対零度となる。小鳥さん達は一気に消滅させられた。プロイセンは小鳥さん達が声も出さずに消されていくのを見ることしかできなかった。
「俺の……俺の小鳥さんをよくも!」
「鳥がいなくなればあとは君一人だけ……君は亡国だからロシア領にすることが出来なくて残念だよ。おとなしく捕まってくれるかな?」
スッと近づいてきたロシアから逃げるように後ずさりするプロイセン。弾は使いきった。サーベルはロシアの足元だ。かっこいい小鳥さん達も今はいない。もう一度召喚してもまた絶対零度で倒されてしまうだろう。もはや捕まるのは時間の問題だった。
「っ!」
いきなりロシアがプロイセンから距離をとった。次の瞬間、今まさにロシアがいたところに小柄な人影が刀を突き立てていた。階段の上方から飛び降りたらしい。
「に、日本!」
「しくじりましたね……一気に決めたかったんですけど……あ、大丈夫ですか?プロイセン君。」
一瞬黒い日本が見えたが助太刀は助太刀だ。まだ殴られた頭がぐらぐらするプロイセンにとってこれほど力強いものはない。
「プロイセン君ここは私が引き受けますので、早く何処かへ!」
「恩に着るぜジジイ!殺られるなよ」
プロイセンは階上へと撤退した。上のフロアにはドイツとイタリアがいるからもう安心だ。
「お気をつけ……危なっ!」
プロイセンに気をとられていたるうちにロシアが近づいてきたのだろう、日本の頭上すれすれを水道管が通る。避けていなかったら思うとゾッとする。昏倒間違いなしだ。
「どうしてプロイセン君を逃がしちゃうの……」
コルコルコルコル、と背後に文字が見える。相当怒っているようだ。
(まずいですね……この体格差だと一撃必殺にしないと……長期戦だと負けます確実に)
「“遺憾の意”!!」
日本は初手から能力を発動する。スピードを三分間極限まで高める技だ。これに日本独自の技“忍術”を組み合わせれば相当に強くなるはずだ。
日本はロシアの背後へと回り込む。すばやい、なんてものではない。残像が見えるほどのスピードだ。
「っ!」
ロシアは必死に追いかけようとするが時すでに遅し。刀の柄による肝臓打ちにより膝をつく。
チャ、とロシアの首筋に刀が当たる。鞘から抜かれたそれは血を求めて妖しく光っていた。
「日本君……」
「終わり、ですね。さて、脱落してもらいましょうか。確か警察側も脱落させられるんですよね」
「……勝った気でいるの?」
え?と日本が思った時には刀が動かなくなっていた。見ると、ロシアが手で刀身を握っている。指の間からはぽたぽたと血が流れていた。
「そんなっ……!」
「日本君は詰めが甘いなあ。ほら、ロシア領日本になろう?」
ロシアが刀身を握ったまま日本に向き直る。刀を放せばいいのだがそうなるとこの先丸腰となってしまう日本は手放すことはできなかった。……絶体絶命だ。
「さあ、大人しく牢屋へ」
「ヴェー!」
突如響いたイタリアの声。次の瞬間、ロシアが何か大きく白いものに包まれた。白いものの一端には棒がついている。……大きい白旗だろうか?
「日本!大丈夫!?」
遅れてイタリアが階上から降りてきた。そのままもう一本白旗を取りだしロシアを昏倒させる。
「ふぅ……これでロシアは退場かな?」
「い、イタリア君……」
「さ、今の音で他の人が集まる前に逃げるよ!」
まだ何か言いたげな日本をせかし、イタリアは何処へかと去っていった。
泥棒: 日本 イタリア ドイツ プロイセン ロマーノ 計5人
警察: アメリカ イギリス 中国 フランス 計4人