AとBの電脳探偵   作:高野景

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プロローグ:とあるチャットにて

——[AI◎BA]がログインしました

 

[AI◎BA]——こんにちは、Bさん

 

[B]——こんな時間に、急

 

[AI◎BA]——そうですね、今くらい、お昼あたりなんていうのは珍しいかもです。お仕事でもされてましたか?

 

[B]——動いてはいた

 

[AI◎BA]——そうなんですか。お疲れさまです

 

[B]——別に疲れていない

 

[AI◎BA]——本当にそうなんですか? チャット面倒だったら断ってもいいんですよ?

 

[B]——お前は無意味にかけてこない

 

[AI◎BA]——……そうですね。いつもちょっと、Bさんには聞いて欲しいことがあったりしますしね

 

[B]——何故かけてくる

 

[AI◎BA]——うーん、……Bさんだから、としか言いようがないんですけど

 

[B]——……

 

[AI◎BA]——駄目ですか?

 

[B]——好きにすればいい

 

[AI◎BA]——すいません、ありがとうございます

 

[B]——何かあった

 

[AI◎BA]——えっと、夜の事ですけど。ちょっと、怖くて不思議で面白いこと?

 

[B]——どれ

 

[AI◎BA]——全部でしょうか

 

[B]——何があった

 

[AI◎BA]——うーん、言っていいのかな? 覗かれたりしてないかな

 

[B]——まずいことにでも首突っ込んだか

 

[AI◎BA]——まずい、というほどではないんですけれど。話にハッカーが関わっているかも知れなくて

 

[B]——何故乗った

 

[AI◎BA]——え? ええと……何だろう? その、チャット全体の何となくの流れ……は、全然違うし……えーと……

 

[B]——要は

 

[AI◎BA]——……興味が、そこはかとなく湧いたんです

 

[B]——単純

 

[AI◎BA]——駄目ですか?

 

[B]——軽率

 

[AI◎BA]——ひどいなぁ

 

[AI◎BA]——……でも、チャットやめずにいてくれるんですから、Bさんもなんだかんだ見捨てないでいてくれる人ですね

 

[B]——お前を放置してどうなる

 

[AI◎BA]——あはは、それもそうですね

 

[B]——何があった。具体的に

 

[AI◎BA]——Bさんならいいかな。えっと、EDENにあるクーロンっていう所、知ってますか?

 

[B]——話には聞いている

 

[AI◎BA]——そうですか。そこに来たら素敵なプレゼントをあげるって、チャットに割り込んできたハッカーさんが言ったんです

 

[B]——行くつもりか

 

[AI◎BA]——一人じゃないですけどね。もう他の行く人たちとも約束しちゃいましたし

 

[B]——罠では

 

[AI◎BA]——罠?

 

[B]——アカウント狙いだのあるそうだが

 

[AI◎BA]——ああ、そういうことですか! なるほどー

 

[B]——……

 

[AI◎BA]——あれ? どうかしました?

 

[B]——脳の容量が足りていない

 

[AI◎BA]——え、それってまさかですけど……意地悪ですか?

 

[B]——それ以外に何に思える

 

[AI◎BA]——ええっ、だってそんな言い回しされたの初めてというか……珍しい言い方しますね!

 

[B]——……回路の配線も異常極まりない

 

[AI◎BA]——ず、ズダボロに言われた!?

 

[B]——まだ言い足りないくらい

 

[AI◎BA]——どれだけ私をいじめる気なんですか!?

 

[B]——ここまで言われることをしているとの自覚もするべき

 

[AI◎BA]——相当ばっさり人を切り捨てましたね……!?

 

[AI◎BA]——あ、あはは……でも、きっと大丈夫です

 

[B]——何故

 

[AI◎BA]——だって私一人で向かう訳じゃないし、一緒に来てくれる人たちに、なんというか……頼もしさ、みたいなものがあって

 

[B]——付き合いが

 

[AI◎BA]——チャット上だけですけどね。でも二人とも優しくていい人で、信頼出来るんです

 

[AI◎BA]——それに、危ないって思ったらちゃんと逃げますし!

 

[B]——お前が危険と思った瞬間は恐らく手遅れ

 

[AI◎BA]——そんなにいじめないで下さい……!

 

[AI◎BA]——ふう、でも少し気分が落ち着きました

 

[B]——?

 

[AI◎BA]——やっぱりBさんとチャットすると、色々整理できるというか……Bさんが聞いていてくれてるなあ、って

 

[B]——??

 

[AI◎BA]——他のチャットだとあんまり沢山喋ったりしないんですけど。でもBさんとのチャットだとこんなにあれこれ喋ったり出来て、不思議な感じなんです

 

[B]——不可解

 

[AI◎BA]——そうですね。本当に、どうしてなんでしょうね。でもこうしてると、ちょっとした不安とか、まとまらない気持ちとかが整ってきて

 

[AI◎BA]——だからいつもBさんとチャット出来て良かった、って思えるんです

 

[B]——そう

 

[AI◎BA]——はい! いつもありがとうございます

 

[B]——お前とのチャットは飽きない

 

[AI◎BA]——そう言ってもらえたら十分です。私もです

 

[AI◎BA]——あ、そういえば時間!

 

[B]——授業?

 

[AI◎BA]——はい、そうです。Bさんもそろそろお仕事なんかの再開ですか

 

[B]——さあ

 

[AI◎BA]——働き過ぎとかしてませんか? ちゃんと寝てますか?

 

[B]——お前に心配される義理はない

 

[AI◎BA]——あ、そういうこと言います!? やっぱりあんまり寝てないでしょう!

 

[B]——何故そうなる

 

[AI◎BA]——心配するなーみたいなこと言って誤魔化してるじゃないですか! 寝食の充実は健康の要です、疎かにしてはいけませんよ!

 

[AI◎BA]——Bさんのことはよく知りませんけど、健康に越したことはないと思います。無理はして欲しくないですし

 

[B]——していない

 

[AI◎BA]——本当ですかー?

 

[B]——してどうする

 

[AI◎BA]——どうする、というより、私としてはして欲しくないというか、Bさんに元気でいて欲しいというか

 

[B]——……

 

[B]——そう

 

[AI◎BA]——はい。ご飯もちゃんと食べてますか?

 

[B]——食べている。時間

 

[AI◎BA]——え? あっ!

 

[AI◎BA]——すいません! そろそろ終わりにしますね……

 

[B]——遅れないように。授業にも、約束にも

 

[AI◎BA]——もちろんです! えへへ、ありがとうございます

 

[AI◎BA]——じゃあ、お疲れさまでした。いつかBさんにも会ってみたいな

 

——[AI◎BA]がログアウトしました

 

[B]——……

 

[B]——いって、こい

 

 

 

 

 会いたいというなら、会ってやろうか。待っていればいい。

 




本編は次章から始まります。
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