AとBの電脳探偵   作:高野景

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主人公ではありませんが、主要人物の無双要素が入っております。苦手な方はご注意下さい。


2-3

 ——クーロン2、とある地点にて。

 

 

「随分と分かりやすい『お客さん』が来てくれたみたいだな」

「おまけに狩れたら随分美味しそうじゃない?」

「かーわいい見た目してるもんなぁ……へへっ」

「ま、そういう楽しみを見出す輩がいるかもな。そういう意味でもなかなかの商品価値だ」

 広い空間一つを人数は十程のハッカーが陣取り、座ったり立ったり各々自由な体勢で円を作るように集まっていた。ほぼ全員が同じロゴの刻まれた服を身につけており、周囲には彼ら以外見当たらない。

「あれはどこ関係だと思う。俺はもしかしたら……警察とも繋がってる奴かとも睨んでるが」

 一人の言葉に数人が首を縦に振る。危険な綱渡りであるはずのことにも、彼らが臆している様子はない。

「末端の域を出ないかもだけど、それでも十分ね」

「そこから警察の網に潜り込めるなら最高だな!」

 不敵な発言を連ねていく彼らに恐怖などは見られなかった。ここに集まった自分たちの実力を疑いもしていない、そんな雰囲気だった。

「それにしてもあの子、あれで誤魔化せてるつもりかねぇ~? 番させてる奴らの大概は欺けてもねぇ」

「連れているデジモンもつまらない子供ばかりだったしな。ふん」

 口々に対象を見下した文言が飛ぶ。誰かは楽しそうでも、誰かはむっとしているようでもあった。

「あんなのに殴り込まれるとは、舐められたものだな」

「仮にも『ザクソン』でもあるこちらにああいう真似とはね。図太いのかそれとも頭が緩いのか」

「本当だよねー。身の程を知らないっていうかさぁ」

「おしおきついでにイロイロ教えてあげたくなっちゃうねぇ」

 一人下卑た笑いをこぼす輩に、冷たい目線と似た笑いが向けられる。そこを一人が「それより」と仕切り直し、場はまとまりを取り戻した。

「あれを狩るのは誰が行く? 警察絡みってリスクを考えると確実に仕留めるのが理想だが」

「ああ、そんなら俺が行く」

 一人が手を軽く挙げ、プログラムをいじる。すると巨大な黒い恐竜のようなデジモン——メタルティラノモンが現れる。

「丁度、肩慣らしがしたい所だった。この辺の野良いじめんのも飽きたんでな」

「ちょっと、キャプチャーくらいしててよ。使えそうなのがいたかもしれないじゃない」

「は? ザコはザコなんだからどうだっていいだろ?」

「強いの欲しけりゃ上行けよ。とりあえずお前に任せるけど」

 彼らの周囲にはデジモンの姿もほとんど見当たらなかった。そこがすっかり彼らに占拠されている証左とも言えた。

「つかよ、あっちも流石に警察関連捕まえたら怒らねー?」

 一人がだるそうな居住まいでようやっと提示した疑問に、一部は顔を見合わせたが大半は気にも留めない。

「逆に誉めてくれんじゃね? ちょっとこういう危険なことしてこそハッカーてなもんだろ」

「そうそう。ま、あんな平和この上ない頭してるっぽい奴じゃ満足してくれるか微妙だけど」

 

 

「平和な頭は認めるが、なるほどな。やはりお前らには首魁がいるか」

 

 

「だろ? つかヘッドの存在くらい分かって……あ?」

 突然割り込んだ違和感に、全員がその元へと一斉に目を向けた。

「そいつもいればだいぶ楽だったんだがな」

「あら、急いではいけないわ。まだ私だって裏にいる何かを掴んでないんだから」

 彼らの視線の先、エリアの入り口にいたのは、二体のデジモンだった。

 片方はピンクの頭部に埴輪のような顔、黄緑色の寸胴な体をしたデジモン。しかし彼らの目線はそちらではなく、その横にいる方に集まっていた。

「……ララモンの横にいるあれ、何だ?」

 一人の呟きに答える者は誰もいなかった。

 人に極めて近い姿をした、二足歩行型のデジモンだった。首回りにファーのついたジャケットと全身を包むライダースーツはいずれも光沢のある黒で、肩や膝にあたる部分に威嚇的な装飾が施されたカバーを着けている。腰周りにはベルト、前腕にはアームガード、脚部にはこれまたごついブーツが装着されている。

 これだけならやけに大きな体躯をした人間と間違っても不思議ではない。しかし手は指先が長く鉤爪状になっており、更にどういう構造なのか、長く硬質な鋭い尾が生えている。

 そして何より顔だった。口元から上は藍色の仮面のようなもので覆われており、薄い金の頭髪を逆立て目の部分だけ穴が開けられている。それぞれの穴から見える血のように紅い「三つの」眼が、冷たく光っていた。

「で、……ララモン。あいつらで間違いないんだな?」

 そのデジモンは通りの良い低音の声で明確に、流暢に喋った。横のデジモン、ララモンが頷く。

「ええ、間違いないわ。最近調子に乗ってるハッカー集団の一部よ」

「そうか。

 とりあえず聞くが」

 謎のデジモンの目線がハッカーたちを射抜く。

「お前らは何かの権限があってここを占拠しているのか」

 ハッカーたちは戸惑った顔でそれぞれ互いを見回した。その様子にデジモンは片手を腰に当てる。

「特に無いようだな。聞いた通りだが」

「相変わらずあなたってせっかちね。じゃあ私から言わせてもらうのだけれど」

 状況が掴めず言葉が出ないハッカーたちの前に、ララモンが進み出て顔の恐らく頬へ手を添える。

「最近あなたたちがここにいるせいで困ってるのよ。私たちも、ここに来る他の人たちもね。

 だから率直に、まずはお願いするわ。ここでアカウント狩りと無闇なデジモン狩りをするのをやめてくれないかしら?」

 ララモンの柔らかな言い口にも、ハッカーたちが言葉を紡ぐには時間を要した。

「……どうしてデジモンの言うことをあたしたちが聞かなきゃならないのよ」

 やっとララモンに返されたのは、明確な拒否だった。ララモンは「あらやだ」と言いながら、その場でくるくる回る。

「デジモンに対する差別だわー、私たちだってあなたたち人間と同じように感情もあるし食住も必要な知的生命体なのよ? そんな冷たいこと言わないで欲しいわ」

「うっせーな、お前たちのことなんてどーでもいいんだよ」

「あらそう」

 ハッカーの一人の言葉にララモンは回転を止めた。相変わらず三つの穴が並んでいるだけの顔が無表情だ。

「しょうがないわね、じゃあこれならどうかしら。

 ここにいるデジモンのパートナーが、あなたたちの活動で迷惑を被っているの」

 ララモンの小さな手が、横の大きなデジモンを指した。するとデジモンが仮面の下で若干表情をしかめた。

「おい待て」

「その人の頼みもあって、私はこのデジモンをここへ連れてきたのだけれど。あなたたちに意味が分かるかしら?」

 謎のデジモンが何事か付けようとするのをララモンは遮った。デジモンの方は苦い顔をしたが、そこでハッカーも口を開く。

「はっ、分かりやすい実力行使ですか」

「はい正解。分かるならまどろっこしいことはもうしないわ」

 突如、ララモンの声から明るさが剥がれ落ちた。その豹変の為か、ハッカーたちも表情を凍らせる。

「ここでの活動を今から全面的にやめなさい。反論は聞かない、これは最後通告」

 あまりにも酷薄な声には、静かな威圧が込められていた。ハッカーたちは場の空気を支配するようなその重みに、じりと後ずさった。

「素直にやめるのなら危害は加えないわ。そうでないのなら……分かるわね」

 仕方がない、といったようにララモンの後ろにいるデジモンが溜息を吐いた。

「——だから?」

 一人のハッカーが、出していたデジモンを見やる。するとデジモンがララモンともう一体のデジモンの方へ、ずんずんと追いつめるように近づいていく。

「あちらもそうだけど、随分なめた態度じゃない」

「デジモンってかわいそーな奴らだな。俺らを何だと思ってんだ?」

「そのパートナーとやらもな。本当にバカだ」

「パートナーが消えなきゃ怖さもわかんねーってか? ひひっ」

「余程平和な頭をしているようだな。てめぇらも」

 ハッカー全員が次々とプログラムを起動し、手持ちのデジモンを一斉に場に呼び出す。あっという間にその場をデジモンが埋め尽くした。どのデジモンも成熟期かそれ以上だ。

「こっちこそ最後通告だ。そのパートナーとやらを泣き寝入りさせるか、ここでデータぶっ壊されるか、どっちか選ばせてやる」

 ハッカーの声と態度は優越に満ちていた。自らの絶対的な優位を信じて疑っていないと物語っている。

 ハッカーたちの合図に自らの武器を構え、威嚇してくるデジモンたちを前に、ララモンともう一体は全く落ち着いていた。

「割と言うだけはあったわね。ちょっと意外」

「というかお前な、何だパートナーって。完全に向こうにインプットされてるだろうが」

「いいじゃないの、このくらい。それよりこれって実は脅迫?」

「今更白々しいんだよ。こうするつもり満々だっただろう」

 二体がどこか暢気に会話をしている中、メタルティラノモンが片腕を振り下ろす。二人が気付いたのは直後で、

 二体のいる場所を黒と銀の巨腕が叩き潰した。

「うぉっ! やったなー」

「やだ、ザンコク」

「手加減なんてしなくていいんだろ?」

 ララモンの相性、成長具合からして、今の一撃で粉砕は確実だ。ハッカーたちが黒い喜びに沸き立つ。

 その直後だった。

「撤回しないか。それでも構わん」

 メタルティラノモンの頭がごぎゃ、と嫌な音を立ててブレた。

「……は?」

 恐竜の頭部は、おかしな方向にねじ曲がっていた。先程振り下ろした片手に、人型の影が一つ乗っていた。

「まあ、こんな程度か」

 影が腕を蹴って離れると、メタルティラノモンの体が傾いで地面へと倒れ伏した。影の後ろから小さな姿も現れる。

 ララモンが、無傷のまま浮遊していた。

「ああ、こんなに派手に戦うの久しぶり。何分もってくれるかしら」

 どこか愉悦の含まれた一言が発された途端、空間に巨大な暗闇が生み出され衝撃が迸る。ハッカーたちのデジモンが悉く蹂躙され、悲痛な叫びが混ざり合って一帯へと響き渡る。

「な、な」

 ハッカーたちがララモンの方に気を取られている間に、謎のデジモンが消えた。這々の体で闇から逃げたデジモンも相手が一体足りないと気付き、辺りを見回す。

 その背後に、黒い姿がいつの間にか立っていた。

「これであいつも助かるか。ならいい」

 デジモン一体の背面が大きくへこみ高々と吹っ飛んだ。他のデジモンが呆気に取られた一瞬、いつの間にか片脚を振り上げていた謎のデジモンが鉤爪の腕をもたげた。

 デジモンたちが一斉に、不可視の何かで殴りつけられたように弾き飛ばされた。状況を把握し指示を出そうとしていたハッカーたちもまた、突然のことに固まってしまった。

 その暇を許さないが如くララモンがふわりと浮き上がり、手を泳がせる。緑光が落ちて膨れ上がり、デジモンたちを喰らい焼き焦がす。

 超範囲の攻撃からどうにか逃れた一体へ、突如前方へ謎のデジモンが現れ片腕を薙ぐ。鉤爪が深々とデジモンの肉体へと食い込み、滑らかに切り裂いた。

 木の葉のように払われた一体が地面へ転がる。その隙に宙空の他の一体が息を吸う。謎のデジモンは無感動にそれを捉えながらも狼狽えない。

 白を含んだ紅蓮の爆炎が吐き出された。渦巻きながら周囲を巻き込むそれが、謎のデジモンを腹へ収めようとして、

「ぬるい」

 再び謎のデジモンが消えた。次の瞬間には攻撃の最中で硬直した一体の懐で、片手に握った何かを振り抜いていた。

 腹部への一撃で、逆巻く炎が血液さながらにデジモンの口から塊となって飛び出た。

 一体が地面へと叩き落とされ、他のデジモンを数体巻き込む。そこへ明かりを飲み込みながら闇が収縮し、デジモン諸共炸裂する。

「うそ」

 ハッカーたちの目の前、飛んでいるデジモンが一体、また一体と地面へ墜落する。宙に躍り出た謎のデジモンの下、地面が割れ燐光が溢れデジモンたちを破壊していく。謎のデジモンが降り立つと同時、また一体が背中を真っ二つに踏み割られた。

 何が起きているのか、ハッカーたちが理解している気配は無かった。ただ呆然と目の前の光景を見ているしかなかった。

 一体が頭をブーツで踏み砕かれる。一体の半身が闇に消し飛ばされる。尾を掴まれ振り回された一体に数体が薙ぎ払われる。強大な圧に多数が潰れていく。

 言い表しようのない一方的さだった。あまりにも圧倒的過ぎていた。

 そしてハッカーたちが気がつく頃には——たった二体を残して、立っているデジモンはいなかった。

「……」

 一言も発せ無いハッカーたちへ、深紅の三つ目が冷徹に向けられる。途端、ハッカーたちの顔色が抜け落ち、数人がへたり込む。

 何かを悟ってしまったようだった。何か、触れてはならないものを知ってしまったようだった。

「どうする」

 三つ目がハッカーたちへ歩み寄りながら、片手に持ったものをくるくる回して握る。

 それは巨大な、拳銃だった。人間の頭程度なら易々と吹き飛ばせてしまいそうな、銃口を二つ持つ代物だった。

「条件を飲むなら、お前らにはこれ以上何もしない」

 がちん、と三つ目の親指が撃鉄を引く。ただの一発さえ放たれなかった事実が、三つ目はハッカーたち相手に武器を使うまでもなかったのだと物語っていた。

「安心しろ。喰らった所で痛みがあるだけだ、現実のお前らの肉体に損傷は出ない」

 まるで救いのように三つ目は口にするが、そんな話で済むものではないと、ハッカーは全員分かっているらしかった。そこにいる人間の誰もが最早恐怖に震えることすら出来ずにいた。

「あなたたちをやめさせた所で末端の一つを鈍らせるだけみたいだけど、いいわ。今回のことを薬にして、賢いやり方っていうのをもう一度考えなさいな」

 ふわふわとララモンがハッカーたちの前へ漂ってくる。声は柔らかだったが、そこに暖かな感情など籠もってはいなかった。

「さあ、あなたたちに残された選択は一つだけよ。選びなさい」

 既に選択にすらならない要求を、ララモンは容赦なくハッカーたちへ突きつけた。三つの眼もまた、どこまでも冷え切っていた。

 

 

 

 どうせ奴らを纏める頭を潰さねば意味は無かろうし、そいつには後ろ盾があるかも知れない。それが分からないお前ではないだろう、デジモンは隣の相手にそう問うた。

「それを誘い出す為の一歩に決まってるじゃない。私も会ってみたいのよ、諸悪の権現ってものに」

 とても個人的且つ気分的な内容に、デジモンはどこか呆れた様子になった。だが隣のデジモンは気にした風も無く、「それにしても」と浮遊する。

「力や使命感を得ると面倒なのは、デジモンも人間も同じなのね」

 クーロン2の最奥までへの道を歩きながら、そのデジモンは横の昔なじみに目を寄越した。今やララモンへと小型化した相手は無表情にくすりと笑った。

「別にベルのことを揶揄ったわけじゃないわよ」

「お前が俺相手にそんな言い方をしないのは知ってる」

「可愛くないのは変わらないわねー、あんな可愛い子から外見借りておきながら」

「どこに繋がりがあるんだ、その言い分」

 ベル、と呼ばれたデジモンは藍色の仮面の下、僅かに紅い目を眇める。ララモンの方を映そうともしない。

 クーロンの遠大な空間へと向けられていたが、その紅眼は何か別のものを捉えているようでもあった。

「あなたや私は一種自由だけれど、あちらはそうもいかないのが大変。そういう話かしら、こういうのを上から目線っていうのかもね」

 ララモンもまたどこかを見つめながら口にした。その言葉は曖昧過ぎたが、ベルは分からないという顔はしていなかった。

「奴らもまだ思う通りににしていればいい。俺はまだ何をするつもりもない」

「ふふ、そうね。私もどうやって動くかは、まだまだ先の判断ね。

 私ももう少し時間と機会が必要かしら」

 漂いながらララモンはベルへと目を向けた。

 ……何か言いたげな目線に、ベルは大きめの溜息を吐き出した。

「俺は嫌だ。あいつに、アミに言え」

「折角人間の姿してるのにつまらないわねえ。ま、ベルのこじらせ一匹狼は健在ってことにしてあげる」

「貴様の腹黒も健在だな。少しは直ってるかと思ってやったが」

 ベルの醸し出す殺気立った空気にも、ララモンは楽しそうにするばかりだ。ベルが拳銃のグリップに手をかけても焦りもしない。

「大体お前は何をしにここにいるんだ。あれが呼んだ時にはいなかったなら俺より前にいる」

「今ネタばらしなんてしたって面白くないでしょ。お楽しみは最後まで取っておくものじゃないの」

「単純に次の手が打てなかったとか言うんじゃないだろうな」

「あらやだ、ベルじゃあるまいし。ちょっと見過ごしたくないものがあっただけよ」

 さりげない毒舌にベルは舌打ちするが、実際あまり反論出来ないと自ら判ずるのか黙っていた。そんなベルにララモンはホホホホと高笑いする。

 しかしその途中で、ララモンは小さく宙を見上げる。

「でも、あのアミって子……何だか忘れられないのだけれど、どうしてかしら」

 横のデジモンの呟きに、ベルは少しだけ瞼を長く閉じた。

「もしかして——

 いえ、気に入ったということかしら」

 ララモンの声に、珍しく惑うような色が混じっていた。ベルはその言葉を否定も肯定もせず、短い沈黙が流れた。

「リリ」

 ベルが言葉を紡ごうとした、その時。

 

 

「ガアァアアァ!!」

 

 

 突如ベルの背後へ、一つの影が飛びかかった。

「あら」

 ララモンが一言発した瞬間には、ベルが横にスライドして突撃を避けていた。

 そして瞬時に抜かれた拳銃のグリップが影の頭を殴りつけ、前方へと吹っ飛ばした。

「がっ、ぁぐっ、げっ」

 地面を跳ねながら転がって、影は仰向けに停止した。その様をベルもララモンが歩きがてら、まるで傍観しているかのように眺めていた。

「報復ではなさそうか」

「というより、やっぱりこの子ね」

 ララモンは地面に倒れたそれに近づいた。小さな青い体は、傷のない場所を見つける方が難しい程にぼろぼろだった。

「なんだ、知り合いか」

「襲われたから追い払ってちょっとお話しただけの関係よ? あ、襲われたって言ってもそういう意味じゃなくて」

「そういうのはどうでもいい。なんなんだこいつは」

 ベルは小さい青の頭に結ばれた赤い紐を引っ張り、ぶらんと持ち上げた。自身と青のいたくぞんざいな扱いに「酷いわぁ」などとララモンは頬を膨らませつつ、青の頭を撫でた。

「まあ私がここに留まってた理由そのものね。

 言っちゃえばこの子も、使命感みたいなもので面倒になっちゃった部類かしら。それも、一番痛々しい感じで、ね」

 ララモンの言葉に、ベルは持ち上げた青をまじまじと見つめた。


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