駅に着くと見慣れた白いワゴンが停まっていた。
「恭也、美由希、悠! こっちー!」
ブロンドの髪をなびかせ、手を振るのは俺達の姉的な存在である『フィアッセ・クリステラ』さんだ。
どうやら美由希さんが海鳴駅に着く時間を連絡してくれたようだ。
職場から直接来たらしく、制服のままだ。
「ほら、荷物積んで。 早くしないと間に合わなくなるよ」
その言葉に俺達は荷物を後部座席に乗せ、車に乗り込んだ。
フィアッセさんの運転する車は通勤自動車で混む時間もなんのその。 するすると裏道を使って高町家へと向かう。
「昨日は心配したけど、みんな無事に帰ってきてくれて、よかった」
「うっかりしてた」
「朝も夜も無かったからねぇ」
「殆ど鍛錬漬けでしたからね」
おかげで携帯を見る余裕も無く寝たりしていたわけだが。
次回からはちゃんと日付は把握しておこう。
「帰ったら、お話聞かせてね。 はい、到着♪」
海鳴市藤見町64-5。
住宅地からは少し離れた場所にある日本家屋。
俺達が育った、高町家だ。
一週間ぶりだが、少し懐かしく感じるのは、訓練がハードだったせいだろうか。
「ほら悠。 ぼーっとしてないで早く入る!」
フィアッセさんに怒られ、俺は急いで荷物を担ぎ、門をくぐる。
居間に入ると年長者二人が軽く怒られていた。
「まったくもう……二人がしっかりしなくてどうするの」
「特に恭也。 あなたは二人の先生なんだから管理監督はしっかりしないと」
「……反省してます」
桃子さんにかかると恭也さんでも形無しだ。
さすが、高町家ヒエラルキーの頂点である。
そういえば、何で桃子さんは仕事着じゃないんだろう?
高町家が営んでいる喫茶『翠屋』は年末年始以外は基本的に年中無休のはずなのだが……?
それを尋ねると、
「美由希とレンちゃんの入学式だもの。 そりゃ当然桃子さんも行きますとも。 ビデオ用意して」
確かに、傍らに置いてあるバックにビデオカメラが入っていた。
美由希さんと、この家の同居人であるレンさんは、今日それぞれの学校に入学するのだ。
それぞれのと言っても、同じ敷地内にあるからばたばたすることもない。
「……操作、できるの?」
「夕べ、なのはにみっちり教えてもらったから大丈夫!」
「あー!」
噂をすれば、というやつか、なのはが下りてきたようだ。
「おかえりー! そして悠くんは早く準備して!」
「ただいま、なのは。 すぐ着替えてくる。 恭也さん、部屋借りますね」
「わかった」
俺はなのはに手渡された俺の制服、『私立聖祥大学付属小学校』の制服を持って恭也さんの部屋へと向かう。
ふすまを開けて部屋に入ると、さっと着替えを済ます。
いつも思うのだがこのインナー、少し苦しいんだよな。
伸縮性はあるのだが、肌にぴったりと張り付かれると妙に息苦しさを感じる。
一通り見回し、おかしなところが無いかチェックしてから部屋を出る。
「はい、悠くんのカバン」
部屋を出ると同時になのはに俺のであろうカバンを差し出された。
着替えてる途中から部屋の外に人の気配は感じていたため、特に驚きはしなかった。
驚いた点があるとすれば、中身が入っているような重みが感じられたことだ。
「あれ? 今日授業あったか?」
「ううん、今日は始業式だけだよ」
カバンを開けてみると連絡帳や数冊の教科書、ノートが入っていた。
あー……。
(これ、終業式に持ち帰ったままの中身だわ。)
春休みに入ってから一度もカバンを開けた覚えが無いことを思い出し、内心溜め息を吐く。
本来なら空でいいはずの日に強化書類を持っていくなんて、かったるい。
「なぁなのは――――――「ダメです」」
まだ何も言ってないんだが。
「いくら始業式だけでも、カバンはちゃんと持って行こうね?」
なのはさん、目が笑ってません……。
(……仕方ない、持っていくか。)
俺は内心溜め息を吐きながらカバンを肩に担ぎ、靴を履く。
時刻は8時15分。 早すぎず遅すぎず、なかなかにいい時間だ。
『いってきまーす!』
「いってらっしゃーい」
家族の言葉に押されて、俺達は新学年への第一歩を踏み出した。
「あー! またネクタイ緩めてる!」
「あ、いやこれは……」
「ちゃんとしないとダメなんだから」
そう言われてネクタイをきちっと締められたのは余談だ。
とらハBGMを聴きながらだとなのはの喋り方がとらハ寄りになってしまう……。
まぁ、これはこれでいいか。
登校時間はとらハ参照だけども、公立の小学校だったら遅刻だよね、これ。