ibの世界に東方小説の主人公が乱入するようです※完結済 作:ホイル焼き@鮭
こちらの方は完全思いつきなので、プロットも何もありません。故に、矛盾しているかもしれません。この作品は、本編との関係はあまりありません。一部、凜の発言に東方世界での事が出たり、ゲルテナ美術館を訪れる理由付けの時に出たりするくらいです。東方なんか知るか、俺はibを見に来たんだ!と言う人は、飛ばしてくださいな。
ある廊下で、一人の少女が額縁の前に立ち、絵を眺めていた。暗く、何も見えないその廊下で、その絵だけが、輝かしい光を放っている。
「…………………いいなぁ」
その少女には、額縁の中は光り輝いて見えた。物理的にではなく、その中が美しく見えたのだ。沢山の人が居るだけの、極めて一般的な景色でも。その少女にとっては確かに、美しかった。自分もその世界に行きたい、額縁の中に入りたい、と――――。無邪気なその少女が願ってしまうのは、無理もないことだった。だが、そんな少女に、『彼ら』は声を掛ける。
―――――ナニをシテルの?メアリー。
「………………っ!嫌っ……!」
―――――クスクス。アラアラ、ソンナに怖ガラナクテモイイのに。ウフフ、またソトをミテルノ?
「うるさいっ………!貴方達には、関係ないでしょ………!」
―――――フフ、ツレナイナァ。
脳に語りかけるような、おぞましく、愉しそうな声が少女の頭に響く。
―――――ネェ、メアリー。そんなどうせイケナイ世界ノゾマナイデ、コッチにオイデ?キミのタメにオ茶会を開イテアゲル!
「……………嫌ぁ………。う、うううぅ……………!」
異質な声が次々と頭に響き、少女を誘う。頭を抱え、塞ぎ込んで逃げようとすればするだけ、頭に響く声は大きくなっていく。
「……うふ、うふふ………。アハハハハハハ…………!」
………やがて、抗うことにも、望むことにも、何もかもにも。少女は疲れてしまう。だが、疲れはて、壊れてしまったとしても。少女は心の底から、願っているのだ。
「(お願い……、誰か………誰か、私を――――――)」
☆ ☆ ☆
「□▽◇………!」
「…………え?」
突如凜の頭に、妙な声が聞こえた。あれは……………。
「『助けて』……………?どう言う意味だろ。何から助けろって………。いやまぁ、助けるのはやぶさかではないけれど、場所が分からんのだが……………。まぁいっか」
この物語の主人公となる青年『高橋 凜』は今、美術館………ゲルテナ美術館に来ていた。ゲルテナという人物が作った芸術品は、不気味なものが多いが、反面、美しいものも多い。芸術品に興味などはない凜だが、暇を持て余して、紫に誘われるままこの美術館に来ていた。八雲紫の能力で送ってもらい楽ちんではあったのだが、紫がいつになく真面目な顔をしていたのが凜には少し気にかかった。
「ほー…………。美術品ねぇ………。何度見ても良さがわからん………うーむ。なんだろな、美術品は視点を変えて見てみることが大事って聞いたけど、やっぱり合う合わないってのはある気がするねぇ………」
そんな事を口にしながら、広い美術館を練り歩いていると、ふと凜は、違和感を感じた。
「………………?これは………雰囲気が、変わった…………いや。世界が変わっている?」
凜は、ふと自分を取り巻く環境が変わっていることに気づいた。世界が変わってしまった感覚………そして、おぞましく漂う危機を感じたのだ。人は危機に瀕した時、安心を求める。それは例え彼であっても例外ではなく、自らの能力で身体能力をあげようとした。だが。
「………………んなっ…………!力が使えない………!?それどころじゃない、魔力、霊力もない……!?」
『何故か』彼は自らの持つ全ての幻想の力を失っていた。先程までは、確かに力がある事を確認していたのに。
「…………………あはっ!あははははは…………。参ったな………。小さい頃からずっと、一緒だったアレが………使えない……………」
自らを守る最大の武器を失い、うなだれる…………そんな普通の反応を、この男『高橋 凜』に求めてはいけない。彼はとてつもない享楽主義者……いや、『愉悦』主義者なのだから。
「あはっ、あははは!」
「面白い!」
自分を守るものが何もなく、もしかしたら命の危険すらあるかもしれない。そんな状況でも、彼は笑う。面白そうだと笑い、笑い、笑い続ける。面白い事。それだけが彼の興味の対象であり、それから逃げる事など、彼はしない。もはや、出来ないのかもしれない。
「あは、面白いなぁ……………ん?」
「………………びくっ」
凜が一人の少女を確認し、見てみると、少女は驚きながら壁に隠れた。
「んー……………気配では、ここらに人はいないねぇ。つまり、あの子だけ、か。うーん、頼れそうな人が居ないねぇ……面白い」ケラケラ
「おーい、そこの嬢ちゃん。ちょっとこっちに来てくれる?」
「……………………むり」
「ありゃ、残念。どうして?」
「……………知らない人としゃべっちゃダメって、お母さん言ってた……………」
「あは、そりゃ正論だね。でも、そうやって口に出すことも、『しゃべってる』事だと思うけど?」
「……………………あ」
「………ぷっ!あははは!」
「……………むぅ、笑わないでもいいのに……………」
「あは、ごめんごめん。えーと、俺は高橋 凜。一般人Aみたいな普通の人間だ。君の名前は?」
「………………イヴ」
「イヴちゃん、ね。自己紹介出来ていい子だね」
「私、もう9歳………。それくらいできる………」ムッ
「ははっ!そりゃ確かに。失礼失礼。で、なんだか、おかしな感じがするけど…………君もそう感じる?」
「………………うん」
「それは良かった。おめでとう、君は正常だよ。さて、俺はここから出られるよう頑張るけど………君も行くかい?ここに居たって安全とは限らないし、俺はついて来て欲しいけど」
「…………知らない人について行っちゃダメって、お母さん言ってた」
「あは、そうかい?」
残念だなぁ。
そう凜が踵を返そうとすると、
「でも…………今、あなたの名前を聞いた」
「ん?」
「だから、知らない人じゃない」
「……………っ!あはっ………よし、じゃ、一緒に行く?」スッ
そう言いながら凜が手を伸ばす。イヴはその手をギュッと握り締め、頷く。
「うんっ……………」
◇ ▽ □
二人はまず、フロントから出られるかを確認することにした。
「イヴちゃんは、甘いもの好きかい?」
「…………うん。好きだよ……」
「好きなケーキの種類とかある?」
「………ザッハトルテ」
「うわぉ、高級品選択したなぁ。その服もシルクみたいだし、相当いい家に生まれたんだねぇ」
「わかんないけど、そうかも」
「へぇ、いいなぁ。………おっと」
二人が話しながら向かっていると、フロント近くの窓に赤黒い血が垂れてきた。
「………………っ」
イヴは凜の手をギュッと強く握り、耐えていた。9歳の少女にはいささかショッキングな事だったのだろう。
「でも、それだけみたいだな。出口も開いてない、か。ひとまず、一度館内を歩いてみようか」
「………凜は、こわくないの……?」
「えー?うーん、そうだなぁ。多分、怖くないわけじゃない。でも、俺が怖がったら、イヴちゃんが不安になるだけじゃん?だからそういうのは見せない。それだけだよ」
「………………ふぅん、そうなんだ」
二人が話しながら歩いていると、ある作品から青黒い液体が流れてきた。その瞬間、地面に『おいで』と文字が浮かび上がった。
「へぇ、良く出来てるなぁ。レミリアの血液操作みたいだねぇ」
「………凜、文字に変わってる」
「………お、お手柄だね、イヴちゃん」
凜がイヴの頭に手を乗せ、頭を撫でる。すると、イヴは嬉しそうに言った。
「…………………えへん」
「あは、ありがとう」
凜はイヴが示してくれた字を見た。
「『下の階においで』ねぇ。ひとまず向かってみようか」ギュッ
「うん」
言われた通りに下の階に行き、凜が『深海の世』という作品の近くに来てみると、近くにあった柵が無くなっていた。
「…………ふむ、水のようで水じゃない。有るのは水の感触だけ、か。ここに入れ、って事かな」
「…………多分、そうかも」
「あは、どうする?」
「行くしかないよ」
「オーケー、行きますか」
凜はイヴの返事に満足したように、にやりと、口の端をつり上げた。