ibの世界に東方小説の主人公が乱入するようです※完結済   作:ホイル焼き@鮭

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こちらではお久ですね。基本的には、理想郷の方を進めていますので、更新頻度は極稀です。ご容赦ください。


価値

ギャリーの言っていた扉に行った。

 

「これは………確かに、危険そうだね…………」

 

三人の目の前にある扉は、青い顔が浮かんでいた。その顔は無邪気だったが、内包する狂気を全く隠せておらず、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。

 

「うんまぁ、迷っててもしょうがないさ。これ以上仕掛けは無さそうだし、なんとかなるでしょ」

「そうね、行くしかないわね」

「…………うん」

 

三人が扉の前に立つと、扉が喋り始めた。無邪気で、子供の様な声だったが、やはり内にある狂気は隠せていない。

 

「えへへへ へへへへへ はな………おはな いいなぁ……」

「そのお花 くれたら ここ通してあげるよ……えへへ」

「えへへ……お花 ちょうだい?」

「おっと、ここで選択肢か。もちろん、ブーケをあげるよね」

 

凜が花嫁から渡されたブーケを、目の前の扉に差し出す。

 

「えへへへ ありがとう………

イイニオイダナァー…………えへへ」

「ソレジャ イタダキマス」

 

扉に浮かんでいる顔が真っ赤に変わり、ブーケを噛み砕き、飲み込んでいく。ブーケが完全に飲み込まれると、再度顔が青に戻り、喋りだした。

 

「あー おいしかった えへへへ」

「ありがとう ありがとう 約束だからね ここ通すよ」

「このドアで 奥に行けるよ

それじゃあね えへへへへ」

 

青い顔が引っ込み、黒いドアとドアノブだけが残される。どうやら先に進めるようだ。

 

「うん、まぁオッケー。ごめんね花嫁さん」

「それじゃ、先に進みましょうか」

 

三人は黒いドアを開け、先に進む。最初の部屋は絵画が二枚あっただけなので次の部屋へ。そこから更に先に進むと、三人は大量のマネキンの首と、マネキンの絵画が三点飾られている通路に出た。マネキンとはいえ、人の形をしたモノの頭部が大量に並んでいる様は見ていて気持ちのいいものではないだろう。

 

「な、何よこれ…………」

「んー、危険は無いみたいだし、ちゃっちゃと進もうか」

「……………」コク

 

三人がマネキンの通路を進んでいくと、ふと凜は『見られている』ことに気づいた。三枚あるマネキンの絵の内、真ん中の絵が三人に視線を向けているのだ。

 

「…………(やっぱり、監視されている………。それが好意的なものであるなら良いが、十中八九悪意だろう)」

「凜………どうしたの?」

 

難しい顔をしている凜に気づいたのか、イヴが凜に声を掛けた。

 

「ん?…………あは、なんでもないさ」ナデ

「ん…………ならいい」

 

ま、考えても仕方ないか。一先ず、このゲームを進めていこう。これが誰かが仕組んだゲームである以上、勝ち目はある筈なのだから。そう整理して、先に進むことにした凜。マネキンの通路を抜け、複数の小部屋がある大部屋に辿りついた。部屋には、先ほど襲ってきた女の絵や無個性が数点、存在している。三人は右側の通路を進み、真ん中下の小部屋に入る為ドアノブをひねったが、鍵がかかっており、開かなかった。

 

「後回しにしようか」

「そうね」

「………うん」

 

三人が真ん中下の小部屋を迂回し、二つの小部屋が隣接している場所に行くと、パスワードロックがかかっており、扉の上にはヒントと思しき文字が刻まれていた。

 

「"この部屋にある女の絵の数は?”と」

「"入力せよ”ね。女の絵の数はともかく…………入力せよ、は良くわからないわね」

「この部屋のどこかに、パネルに打ち込む4ケタの数字があるって事かな?」

「多分、そう。…………探してみる?」

「んー、まずは全部の部屋を見てからにしようか」

 

部屋の前から右に行き、残っていた扉のドアを捻ると、ドアノブは回り、開いた。

 

「どうやら鍵はかかってないみたいね」

「そだね、入ろうか」

 

三人が中に入る。部屋の中は、大きな鏡があるのみだった。

 

「よっと…………。ん、何もないな…………鏡しかない。なんだろうねぇ、身だしなみでもチェックしろってことかなぁ?」

「そう言えば、結構早起きしたから、ちょっと寝癖ついてるかも………」

「ギャリーは髪型ワカメみたいだよね。それそういうセット?」

「うーん、梳いちゃうとこんな感じではねるのよね………。イヴは、髪の毛サラサラで良いわね?なにかしてるの?」

「……………別に何も?」

「何もしなくてそれなのね。良いわね、女の子って」

「親から変な遺伝子でも受け継いだんじゃないの?」

「凜は………少しくせっ毛かしらね。でも、蒼くて綺麗な色だわ」

「あー、そうだね………。自分としては気に入っているけど。蒼い髪に蒼い瞳で。でも、女の子はやっぱり黒が似合うよ」

「確かに。イヴも可愛いものね」

 

そう言って、イヴの頭をギャリーが撫でる。凜の少し荒い撫で方とは違い、いたわる様な優しい手つきだと、イヴは思った。

 

「…………ギャリーは、優しい」

「え?ど、どういうことかしら?」

「……………撫で方」

「え?な、撫で方?」

「凜は、荒い」

「あはっ、なんだイヴちゃん、批評か?ナデラレリストか?」

「私、そんなのじゃない………」ムッ

「あはっ、悪い悪い。いきなり変な事言い出したからさ?」ケラケラ

「アタシもいきなり優しいなんて言われるとは思わなかったわ」クスクス

「むぅ…………笑っちゃダメ……」

「あはっ。ま、戻ろうか………ん?」

 

三人が鏡に向けていた視線を翻し、ドアへ足を向けると、異物が紛れ込んでいた。先ほどの通路にあったようなマネキンの首が、ぽつんと一つ、ドアの前にあったのだ。

 

「な、なによ、これ………」

「………………動かない」

「あぁ、みたいだな。何か見落としがあって、戻るなって示唆しているのかもしれない」

「それなら、もう一度鏡を見てみましょう」

 

そうマネキンの前で話し、再度三人は鏡に向き合う。鏡には、凜とイヴ、イヴとギャリーが手をつないでいる姿が映っている。

 

「ふむ。何も変わってないように見えるけど……………ん?」

 

鏡に映ったギャリーの肩に、マネキンの首が乗っている。

 

「ギャーっ!」

 

ギャリーが驚き、飛び退る。鏡とはいえ、自分の肩に人の形の頭部があればそりゃ驚く。凜が後ろを振り返ると、先程まで入口を塞いでいたマネキンが、丁度ギャリーの肩に映る位の位置に移動しているのが分かった。変わらず無表情のままだったが、ビビるギャリーをせせら笑っているようにも見える………。

 

「この………っ!」

 

ギャリーが激高し、マネキンの横へと走り出す。

 

「こんなもの……っ!」

 

ギャリーが足を振り上げ、マネキンを蹴り飛ばそうとする。大人の男の力で蹴り飛ばされれば、マネキンは見るも無残な形に、飛び散るだろう――――しかし。

 

「やめときな」「ダメ…………」

 

凜とイヴが、同時にギャリーを止めた。凜はこちらが不利になりそうなことはやめておいた方が良いと思ったから、イヴは不吉な予感がしたからだ。凜達に諌められ、冷静になったギャリーが、足を止める。

 

「………………あのさぁ、ギャリー。あなたが落ち着いてくれないと、イヴちゃんが不安になるでしょ?行きずりとは言え、集団なんだから、自分だけの自分じゃないって事は、分かってくれない?」

 

少々厳しい口調で、凜がギャリーを窘める。

 

「(落ち着きがないのは、本当に困る。ここで強く言っておかないとな…………)」

「……………………ごめんなさい、凜、イヴ」

「……………あは。年上相手に出すぎた発言だったかな。こっちこそごめん」

「…………礼には及ばん」

「ホントに君は難しい表現使うねぇ、イヴちゃん」

「……………喧嘩は、ダメだよ?」

「…………………あは」

「分かってるわよ、イヴ」

「……………ならいい」

 

「そんじゃ、部屋も出れるようになったし、女の絵の数を数えに行こうか。ついでに、4ケタの数字も探してみよう」

「うん」

「えぇ」

 

二人が頷くと、凜達は部屋を出て、女の絵をなるべく目の前を通らないようにしながら数え始めた。十四枚、だった。しかし、その最中で一枚だけ、違う絵画がかけられていたので、三人はその絵の前で考えることにした。

 

「『吊るされた男』…………ねぇ」

「この絵だけ違うってことは………何かのヒントって事よね………?」

「間違いないけど…………」

 

とりあえず、仕掛けも見当たらなかったので、三人は注意深く、目を点にしてその絵を眺めた。すると、吊るされている男の服に、数字が記されていることに気が付いた。

 

「5629…………4ケタの数字だな」

「吊るされた男は、逆になってるからそのまま読まず、6295と読まなきゃいけないわね」

「んじゃ、それを入力すればあそこの部屋に入れるって訳だな。うし、行きましょうか」

 

そう三人が結論を出し、吊るされた男から目を離したら、吊るされた男の眼孔がぎらりと輝いた。

 

「……………あは、監視要員、多すぎじゃね?」

「凜、どうかした?」

「うんにゃ、何でもないぜ?」ナデナデ

「ならいいけど………」

「早く行くわよ、二人とも」

「おkおk」

「……………うん」

 

再度、三人は隣接していた小部屋の前に戻ってきた。まずは、女の絵の数を聞かれていた方の扉から入る事にして、凜はパネルに数字を打ち込み始めた。

 

「14、っと」

 

カチャリ、という音とともに、ドアの鍵が開く。そのまま三人は中へ入った。

中には、水の入った花瓶と、注意書きをされた貼り紙があるだけのようだ。

 

「あまりバラを失うのは好ましくないし、持っていけるなら持っていきたいところだけど」

「………………動かない」

「だねぇ。そこまでのゲームから逸脱した行為は出来ないってわけか。リアルに命のかかってるゲームじゃなきゃ、ただの脱出ゲームなんだが……………」ハァ

「……………」

「ギャリー?どうかしたのか?」

「…………いいえ、何でもないわ。ここには何も無いみたいだし、次の部屋に行きましょうか」

「?そうだね、まぁ行こうか。注意書きには何が書かれてたの?」

「別に、大したことは書いてなかったわ。作品は傷つけないようにとか、そういう美術館によくある注意書きだったわ」

「ふぅん、まぁそれなら関係なさそうだけど」

 

一度部屋を出て、もう一方の部屋に三人は入る。中には、描きかけの椅子が描かれているキャンパスと、座るための椅子、もう一つ離れたところに椅子があるのみだった。

 

「あー………………なんてわっかりやすい…………。ご丁寧にも、ちょうど椅子を置いていたみたいな痕も残ってるしなぁ」

「確かに、わかり易いわね………」

「…………うん…………」

 

仕掛けに気づいた三人は、椅子を動かして、キャンパスでデッサンをするのにちょうど良さそうな位置に椅子を動かした。すると、パタンという音が外で鳴った。

 

「これは本当にわかり易かったなぁ…………ま、行こうか」

 

部屋を出て、外の変化を見に行く三人。すると、『緑の服の女』の絵が動き始めていた。狂気に満ちた顔で、何かを探すかのように首を振りながら移動していた。あまり俊敏ではないようで、イヴと同じような速度だった。

 

「ち、悪化してんじゃんか………。めんどくせぇな」

「凜、鍵も落ちてるよ」

「…………ん、確かにあるね。ありがと、イヴちゃん」ナデナデ

「……………♪」

「となると、鍵を取りにいかなきゃいけないわけだが」

「あの女の絵がある限り、出来そうにないわね」

「………………んー。じゃ、こうしよっか。俺が上にあの絵を誘導してから撒くから、その間にイヴちゃんとギャリーが鍵を回収する。多分中央下の部屋の鍵だろうし、そこで待機すればいい」

「…………一人じゃ危ないわ。三人ではダメなの?」

「ここで普通に喋っていて追いかけられないって事は、奴には視覚以外の索敵方法がない可能性が高い。三人じゃ視覚的に目立つ」

「でも……………」

「この中じゃ、一番俺が場慣れしてるだろ。いざとなれば、武力的手段も取れないことはない。だから大丈夫だって。ま、俺がバラを持ってる限り狙われないイヴちゃんだけ残してもいいんだろうけど」

「……………っ」ギュ

「…………ま、バラを持ってなきゃ狙われないと決まったわけでもないし?ギャリーも付いててくれよ」

「…………………分かったわ。無理はしないでよ?」

「わーかってるって。じゃ、中央下の部屋でね。………………うん?」

「………………」ギュッ

「なんだい、イヴちゃん?」

「……………絶対に、帰ってこい」

「………………命令されるとは思わなかったけど……………ま、了承しました、指揮官殿」

 

凜がイヴの手を離し、緑の服の女が彷徨いている通路の上の通路を通って迂回し、緑の服の女の前に姿を現した。

 

「おーにさーんこーちらってね〜」

「ガァァァァッ!!」

 

緑の服の女が奇声を発しながら凜に向かって走り出す。凜はそれを認めると、上に繋がっている通路へと逃げていった。どんどんとその背中が遠くなっていき、遂には見えなくなった。

 

「…………っ」ギュゥ

「行きましょうか、イヴ」

「うん」

 

緑の服の女が去った通路に、慎重に周りを警戒しながら二人は向かう。多少の武力を使える凜がいない以上、適切な行動を取る必要があるからだ。特に何もなく、鍵の元へとたどり着くイヴとギャリー。ギャリーはそれを拾い上げ、安堵の声をもらす。

 

「…………良し、あとは凜と合流すれば」

 

簡単に鍵を回収できたせいだろうか。この時ギャリーは、外への警戒を一瞬だけ抜いてしまっていたのだ。ここは未知の世界。何が起こるか、分からないと言うのに。

 

「ガァァァ!」

「え――?」

 

 

 

 

「……………ふぅ………。上手く撒けたか」

 

さて、上手く上へ誘導できたし、早くイヴちゃんとギャリーの所に行かなくては。思ったより早く撒けたし、まだ鍵の近くにいるかな?

そう凜は思ったので、誘導してきたルートとは違う側の道を戻ることにした。なるべく早く合流して安心させようと、その足取りは素早い。しかし、タッタッタッと早足で戻るより先に、ギャリーとイヴの叫び声が、凜の鼓膜を揺らした。

 

「きゃあああっ!?」

「ギャリー!」

「……………大丈夫よ、イヴ……!離れてなさい……!」

「(!?なんだ、今の声!?まさか―――作品か!?)」

 

凜が先を急ぐ。全速力で走り、叫び声が聞こえた所に辿り着く。凜の目に映ったのは、緑の服の女が掛けられていた左の『赤い服の女』が、ギャリーを襲っている姿だった。胸ポケットに差されていたライトブルーのバラは、服の損傷と共に数枚、千切れていた。

ギャリーの苦しそうな顔を見た瞬間、凜の中でなにかがぷつりと切れてしまった。

 

「てめぇ…………ギャリーに…………!」

「なぁにしてんだぁぁぁっ!!!」

 

なおもギャリーに迫ろうとしていた赤い服の女に、凜は飛び乗る。そのまま縦に立てられている額縁の部分を横にし、仰向けになった上半身を蹴りつける。額縁の広い面が下になったため、吹き飛ぶ程の距離は無かったが、数秒身動きを取れなくするには十分だった。

凜は近くに転がっていた灰色の鍵を引っ掴み、疲弊しているギャリーを背負って中央下へと走り出す。

「イヴちゃん!走るぞ!」

「………………ぇ………?」

「走れって言ってんだ!付いてこねぇと死ぬだけだぞ!?」

「…………う、うん………!」

 

凜に怒鳴られ、イヴも凜と共に走り始める。男一人抱えた凜と、九歳であるイヴの走る速度はかなり遅く、赤い服の女がどんどんと凜達との距離を詰めていく。しかし―――。

 

「――――――ついた!」

 

捕まる前に中央下の部屋にたどり着き、凜が鍵を開けて中に入ってドアを閉める。扉がドンドンドン!と叩かれるが、ドアが開く事は無かった。つまり―――――。

 

「はぁ、はぁ…………!た、助かった、か…………!」

 

凜が床に寝転がる。緑の服の女を撒く時にも走り、イヴとギャリーの下に戻る時も走り、挙句の果てには大の大人を抱えて全速力で走ったのだ。如何に運動慣れしていようとも、凜にも限度というものがある。彼はしばらくそうしていると、息が整ったのか、スクッと立ち上がった。

 

「……………すまない、二人とも。全面的に俺の判断ミスだ。あそこで離れるべきじゃなかった」

「………………いえ、アタシが油断してたからよ。もっと気を配っていれば…………」

「それでも、だ。三人で行動していた方が安全だった。俺が判断を誤ったのは事実だ。謝って済むことじゃ無いが、すまない」

 

そう言って、凜は頭を下げる。今までのおちゃらけた表情とは、考えられないくらい真剣な表情だ。それだけ、自責の念が強いということなのだろう。

 

「………あぁ、もう。頭を上げなさいよ、凜。アタシが油断したのだって、紛れもない事実なんだから。そう悔やまなくていいのよ」

「……………ありがとう。そう言ってくれると助かる」

「………………ありがとうね、凜」

「………責められるような事はしても、褒められるような事はしてないけど…………?」

「助けてくれたでしょ。アタシが襲われてたとき」

「まぁ、そりゃあ。でも、自分の蒔いた種だし…………」

「それでもよ。ありがとね」

「…………………まぁ、うん」

「ごめんなさい、少し休ませてくれないかしら………?」

「バラをちぎられたんだよね。ゆっくり休んでて」

「分かったわ………」

 

ギャリーが部屋にあったソファーに座り、目をつぶる。

 

「はぁ…………やらかしたなぁ…………。そうだ、イヴちゃんも大丈夫?怪我はない?」

「………うん………」

「怒鳴ったりしてごめんね?流石に焦ってて…………」

「凜」

「ん、何かな?なんでも言っていいぜ。何なら靴でも舐める勢いだぜ」

「私、ギャリーが襲われてた時…………何も出来なかった」

「何も出来なかったって…………どういう意味?」

「あのこわい人に、ギャリーが後ろから襲われる所………見えてたのに、何も出来なかった………。私にも、なにか出来ること、あったはずなのに。こわいって気持ちで、頭が一杯になって………結局、凜が助けてくれた」

「まぁ、イヴちゃんはまだ九歳じゃん。俺はその二倍生きてるし。だからイヴちゃんが出来ないことが、俺に出来るのは、当たり前でしょ。厳しいようだけどさ」

「………それは、嘘。凜は嘘を言ってる。仮に私がじゅうはちさいになっても、同じように出来るなんて思えない」

「あー……………。そうだねー、確かに、君が恐怖を殺してギャリーに声をかけて走ってれば、撒けたかもしれない。君が強かったら、赤い服の女をぶっ飛ばすことも出来たかもしれない。そこまでいかなくたって、ギャリーに声だけでもかけられれば、ギャリーのバラが傷つくこともなかったかもしれない」

「うん…………」

「で、今までかもしれないは何回出てきたかな?」

「え、えぇ……!?さ、三回……?」

「正解。全部、『かもしれない』の話じゃないか。別に似たような事は挙げられるぜ?走って逃げた先で緑の服の女に鉢合わせて死ぬとか、またなんぞや動き出して死ぬとか、極論、こけて追いつかれて死ぬとかね」

「……………」

「忘れちゃいけない。今こうして生きているのは、俺のおかげでもあり、ギャリーのおかげでもあり、そしてイヴちゃん。君のおかげでもあるって事をね」

「私の…………?」

 

話はそこで終わりだと言うように、イヴと合わせていた視線を部屋に戻しながら、凜は言う。

 

「それを忘れて、自分の非だけを考えちゃ、ダメダメだなぁ。ま、話はこれで終わりってことで、ギャリーが休めたらこの部屋の探索をしようか」

「うん………………」

 

ギャリーがソファーで休んでいる間、部屋で行動するのは控えることにして、凜とイヴは待つ。しばらくそうしていると、イヴが凜に声をかけた。

 

「ねぇ、凜」

「うん?なに?」

「私って――――必要なの?」

「…………………ど阿呆」ゴスッ

「いたっ」

「とぼけた事聞きやがって―――。なに当然の事を聞いてやがる。いいか、1つ言っておく。君が居なかったら、今ここに俺はいない。君は自分の価値に無頓着すぎる。今度似たような事を抜かしやがったら、拳骨じゃ済まないよ?」

「………………い、痛い………」

「いらないなんて、そんなわけねーだろ―――――さっきも言った通り、君のおかげで助かったことだってあるんだ――――君が必要だ。言ったじゃないか、一緒に出ようって」

「!」

「それは今でも変わってない。協力して、一緒に出ようよ。もちろん、ギャリーも一緒に」

「……………うん………!そうだね、その通りだ………!私、頑張る!」

「…………いい目だ。そうでなきゃ始まんない。さ、じゃあギャリーもそろそろ休めただろうし、行こうか」

「うん!」ニコッ

「………………この子、俺をピヨらせるの上手いなぁ」ボソッ

 

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