ibの世界に東方小説の主人公が乱入するようです※完結済 作:ホイル焼き@鮭
3人から4人になった凜達が、紫の廊下をしばらく進んでいくと、コルクボードのような茶色い絵画を境に分かれ道になっていた。
一先ず右側の通路を行き、扉を開けようとしたが、開かない。
仕方が無いので左側の通路を通り、扉を開けようとする。今度は開いた。
中に入ると、肌の青い人形が大量に存在し、目を瞳孔1杯に見開き、口裂け女のごとき大口を開けていた。真ん中の壁には、更に口が裂けた巨大な絵がかけられている。
あまりの醜悪さに、ギャリーはあからさまに嫌な顔をした。程度の差はあれど、凜も概ね似たような表情を浮かべている。
「この部屋といい………なんでこんなに気持ち悪いのよ………」
「ま、そうだねぇ………」
「えー、そうかなー?カワイイと思うけど………」
「んー、まぁ、そう思えば可愛くなる…………いや、流石に思えないよメアリーちゃん」
「えー。イヴはどう思う?」
「…………撫でたい」
「ほら!イヴもカワイイって!」
「まぁ、イヴちゃんとメアリーちゃんがそう思うなら、それでいいけど………」
「……最近の子はよく分からないわね……」
「あは、同感」
本棚が二つあったので、凜は中身を簡単に調べてみる。多くの文献は手がかりになりそうではなかったが、一つだけ、気になる本があった。
『心壊』
『心が大きく疲弊すると、次第に幻覚を見るようになる』
『しかも厄介な事に、『壊れて』いる事を自覚する事は出来ない』
「(……………なるほど、ね。どうやらまだまだ、イヴちゃんへのアフターケアはする必要がありそうだ)」
「イーヴちゃんっ!」
「?…………!?」ギュゥゥ
凜はイヴをギュッとハグし、頭を撫でる。
「よーし、いい子だぞーイヴちゃん!よーしよしよし!」
「!?!?は、はなれて……!///」
真っ赤な顔でイヴが言うと、ケラケラ笑いながら凜は離れていった。いきなり理解不能な行動に出た凜を、ジト目でイヴは見る(顔はまだ赤かったが)。
そうすると、再度イヴの頭に手を載せながら、凜は言った。
「イヴちゃん、少しでも寂しくなったり、辛くなったりしたら、いつでも言うんだぜ?メアリーちゃんにも言ったけど、1人で抱えちゃ、なんだか壊れちゃいそうでしょ?」
「…………………」
凜は相変わらずの表情のままだったが、ひどく優しい声音だった。
突飛なことをしたかと思えば、ふと思いついたかのように、他人の身を案じる。
凜のそういう所を、イヴはズルい、と思った。
だから、という訳では無いが―――――9歳の少女には似つかわしくない、蠱惑な笑みを浮かべて言った。
「…………ふふっ、いきなり抱きつくような人が、言うことじゃない」
「あはははっ、そりゃ確かに!」
「……………ありがと」ボソッ
「ん?あは、何か言ったかい?」
「ううん、なんにも」
「そ?ならいいけど」
爆発しr――――――もとい。
難聴とか草h――――――でもなく。
そんな2人を、メアリーはじっと見つめていた。
「(…………いいなぁ、あーいうの)」
そんな、羨望の眼差しで。
幾分か気楽になったとはいえ、凜達への罪悪感は拭いきれてはいない。若干の疎外感を、メアリーは感じた。
そんなメアリーが目に入り、凜は少し考え始める。
「(んー……。何を後ろめたく思ってるんだろー………。彼女がこのゲームの
凜が他の3人を集めてそう言うと、一行は一旦、部屋から出ることにした。
しかしその時、所狭しと並べられていた青い人形達の内の一体がおもむろに倒れ、頭がめちゃくちゃに裂ける。
その中から紫の鍵が出たが、あまりの気持ち悪さに、ギャリーはそれを拾いたくないと思った。
凜もうっわ、きんもちわりー、などと思ったが、ニヤニヤした表情は崩さず、それを拾い上げた。
「さっきの右の通路の鍵かな?まぁラッキーって事で」
4人は部屋から出る。そして右側の通路へと戻ろうとしたら、丁度分かれ道の真ん中、コルクボードのような絵の前で、異変が起きる。
「………………?」
ガサガサ、という音が、絵から鳴り響く。
その音はだんだんと大きく、次第に近づいていった。
そして絵から緑の蔦が飛び出し、大きな赤い花を咲かせる。
それと同時に、絵とは逆側の壁付近の床が、ボゴォ!という音とともに破壊され、緑の蔦が背高に飛び出てくる。そしてどんどんと床が壊され、緑の蔦で埋め尽くされていった。
あまりの出来事に、イヴとメアリーはそれに全く反応できていない。
「イヴっ!」
「メアリーちゃんっ、ちょいとごめんよ!」
しかし、ギャリーと凜は違った。
咄嗟に、それぞれ自分に近い方の少女達を引き寄せ、ギャリーは左側、凜は右側に移動させる。
何とか、命は助かったが―――――――。
凜は蔦を軽く叩き、質感を確認した。
「ダメだな、こりゃ植物じゃねぇ。石か………あるいはコンクリートか。どちらにせよ、破壊できる気はしないね」
「困ったわね………分断されちゃったわ」
「そうだな……。しかしこうなったら、どうにか合流できる道を探すしかないか」
凜とギャリーは横目で、それぞれ自分達の側にある扉を見つめる。恐らく、凜の側にある鍵のかかった扉は、凜の持つ紫の鍵で開くはずだ。ギャリーの側の部屋も、何か見落としがある可能性は否定出来ない。
別行動にして、合流ルートを探す。
それが最善の策であることは間違いないだろう。ギャリーもそれは分かっていたが、それでもやはり、不安が残った。
「………そうね……。あまり別行動にはしたくなかったけど………」
「ま、俺とギャリーが分かれただけマシでしょ。心配いらないと思うけど、無茶はしないでね」
言外に『前の事』を言っているのだと気付き、ギャリーは苦笑した。
やはり凜は、何か大人びている。年下であるイヴやメアリーへの気遣いもそうだが、年上であるギャリーにも気を遣ってくる。
そんな凜に、頼りがいを感じるのも確かなのだが、何となくどこか、『脆い』ようにも感じてしまう。
『一人でいると、なんだか壊れちゃいそう』
それは、凜の過去からもたらされた言葉なのかもしれない。もしかしたら、今も。
ここではないどこかで、彼が『壊れてしまう』のではないかと――――――――ギャリーは少し、心配になった。
「まぁ、連絡が取りたくなったらまた、ここに戻ってこよう。そっちでは解決出来ないことも、こっちでは解決できる――――なんてことも、あるかもしれないしね」
「えぇ、分かったわ」
凜はギャリーの側に居る、イヴに笑いかける。蔦の合間を縫って、イヴの頭に手を置いた。
何か茶化そうかとも思ったが、そういった事を言うのは、一時的な処置にしかならない。
これからを進んでいくための―――――ほんの少しの、勇気を。
与えたいと―――――――凜は思った。
まぁ別に、格好つけた言葉は要らないとも思った。だからあくまでも端的に、言葉を出す。
「頑張れよ、イヴちゃん」
しかし凜は、なんだか照れくさくなり、イヴから視線を逸らす。そしてそのままイヴの頭から手を離すと、くるりと踵を返し、後ろ手にひらひらと手を振った。メアリーも慌てて、その背中を追いかける。
「…………ん、分かった」
「アタシたちも行きましょうか」
これからも何とかなる。
優しく、暖かい眼差しとともに差し出されたギャリーの手を掴みながら、イヴは何となく、そう思った。
◇▽□
「さてさて、この部屋調べようか、メアリーちゃん」
メアリーの白磁器のように真っ白な手を握りながら、凜は言った。
「うん………」
さて、メアリーはと言うと、少し居心地の悪さを感じていた。
先ほどの凜とイヴの会話を聞いて、彼らの中にある一種の『信頼関係』を目の前にし、一抹の寂寥というか、疎外感を感じてしまう。
仕方がない、と分かっているのに、それがどうしようもなく、メアリーは悲しかった。
手から伝わる凜の温もりも、メアリーの意識を苛んでいく。
もういっそ全てを打ち明け、ここから逃げ出してしまおうか、とメアリーは思い始めた。
手放したくはなかった。あんなに暖かな雰囲気を知ってなお、冷たく、暗いあの廊下に戻りたいとは思えない。
ただ、本当の仲間としてあの3人の中に入れないことを、否が応にも実感するのが、辛かった。
こんな気持ちを感じさせられるくらいなら、全て投げ捨ててしまう方がいい。その方が彼らにとっても良いのだ。そう、メアリーは決意する。
「………………」
しかし、手が震える。伝えたらきっと、彼らは離れてしまうのだろう。
暖かな手の温もりも、優しげな眼差しも、全て、崩れてしまう。そんな確信が、心を竦ませた。
それでも懸命にメアリーが言葉を探していると、不意に声をかけられた。
「メアリーちゃん?さっきから妙にそわそわしてるけど、何か言いたいことでもあんの?」
「ふぇ!?…………う、うん………」
驚きつつも、メアリーは頷く。
「ふぅん。顔を見る感じ、どうにも言いたくないみたいだけど。別に、言いたくないなら言わなくてもいいんだぜ?」
そう、凜はメアリーを気遣う発言をする。
しかし――――――その気遣いも、メアリーの罪悪感を刺激するだけだった。皮肉にもその気遣いは、メアリーの背中を後押しする。
「実は…………私………。この世界の……。作品なの………!」
ギュッと目を瞑りながら、メアリーははっきり、そう告白する。もはや、何を言われても仕方が無いと思っていた。
その告白に対し、凜は―――――――――。
「いや、知ってるけど」
と、当たり前のように言った。
「…………………え」
メアリーは一瞬、何を言われたか分からなかった。しかし一旦落ち着き、その意味を理解すると―――――――――叫んだ。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!?」
あまりの声量に、凜は耳を塞ぐ。
「あーもう、うるさいなぁ。あんまり大きな声は得意じゃないんだ、耳元で叫ばないでくれ」
ちなみに、これはタダの本音である。
凜は昔から、クラスメイトの女子がわーきゃー甲高い声で叫ぶのが大の苦手で、一時期殴って黙らせっかな………と思ったくらいなのだ。そもそも、大きな音が苦手なのである。
「だ………だって!だってだってだってだって!な………何でっ!?」
「だからうるさいって………。ま、初めてあった時から気づいてたよ。どこにも重きを置かないなんてのは、『ヒト』にゃあ不可能だからね」
その他にも色々、不自然な点が多かった。
それゆえに、実は凜は、正体がバレてることを、多少は気づいているんじゃないかと思ってたりしたのだが――――――案外、そうでもなかったらしい。
「まったく、言いたいことはそれだけ?そんじゃ、さっさとこの部屋調べようよ」
そう言って凜は、部屋の中に所狭しと並べられている段ボールを開き、中身を漁り始める。
平然としている凜に対し、メアリーは依然、慌てていた。
なんで?気づいてた………の?なら何で?なんでそんなに平然としてられるの?
そんな気持ちがぐるぐると、メアリーの頭を巡る。
「げー、何にもねーな………ありゃ、バタフライナイフがあるじゃん。いやー、使えないねー。いる?メアリーちゃん。人間ならぶっ殺せると思うけど」
「……………なんで、一緒に居てくれるの?」
「……………」
凜は何も言わない。
「だって………私、作品だよ?散々あなたを苦しめてきた、
「……………」
凜は何も言わない。
何も言わずに――――――――ぎゅっと、メアリーを抱きしめた。
「あ………」
「あーもう、うるさいうるさい。ったく、これだから子供のお守りは楽じゃない」
そんな気だるげな口調で、凜は笑う。笑いながら、メアリーの金糸のように鮮やかな髪を撫でる。
「やめ、てよ………」
メアリーは涙をこぼす。あの『声』から必死に逃げている時ですら、見せなかった涙。自分が涙を流せることを、メアリーは初めて知った。
「だめ、やめないよ。女の子を泣かせたまんまなのは、男として最大の不名誉だ」
そういって、メアリーを強く抱きしめる。
今までの苦しみや悲しみが―――――全て、溶けていくような気が、メアリーはした。
凜の温もり、自分を強く抱く腕、胸―――――全てが暖かくて。冷たいあの廊下の記憶など、すぐに吹き飛んでいく。
「やめてよ…………。優しく、しないでよぉ………っ!」
「まったく――――――何度も同じ事を言わせないでよ。辛かったし、寂しかったんでしょう?一人でそれを抱えちゃ、壊れるだけだ」
「そんな事、言って………!凜は、私が何をしたか、知らないからぁ………っ!ひっく、そんな事、言えるんだよぉ…っ!」
「あー何も知らないさ。君の境遇なんて知ったこっちゃないし、君の過去なんてこれっぽっちの興味もないもん。はっきり言って、君がどんな朽ち方をしようが、お好きにどうぞ、だ」
「う………うぅ………っ!だ、だったら放っておいてよっ!!」
「女の子にそんなくしゃくしゃの顔されて、放っておいたら、それは男じゃねぇよ」
どこまでも優しい声音で、襟が涙で濡れていくのも構わず、凜はメアリーを抱きしめながら笑う。
それはいつもと同じ、ニヤニヤした楽しそうな笑み――――――しかし、少し優しげに見えた。
「泣くことは、弱いことだ。でも、吐き出さなきゃ、前へは進めないよ。一人でそれを抱えちゃ、壊れるだけだ。いつか泣くことさえ出来なくなる」
だから――――――と、凜は繋げて。
メアリーをより一層、抱きしめた。
「泣きたい時は泣いとけ。そして笑いな。最後に笑えば全て丸く収まるさ」
その言葉を聞いた瞬間、メアリーの中で何かが弾けた。涙が、止まらなくなってしまう。
「………う、うう………っ!う、うわぁぁぁん……!」
メアリーはそのまま、凜の服を涙で湿らせていく。凜は何も言わないまま、ただただ優しく、その背をさする。
いくら泣いても、その涙は止まらなかった。
ただ冷めきった心が、少しずつ暖かくなっていくような、そんな気がした。
しばらく経つと、メアリーの涙は次第に止まっていった。
「えーっと…………そろそろいいかなー?」
「…………すん……すん」
「いやー………ダメだよねぇ、ごめんね」
あはは、と凜は笑って撫でるのを続けた。
さてさて、どうしようか………。このまま撫でてると、俺が狼になるからなぁー…………。あは、
なんとも軽ーい事を考えながら、凜は笑った。相変わらず、シリアスが得意ではない凜なのだった。
「メアリーちゃん。君がどんな事をして、どんな生き方をしたのか―――――ちょいとこの凜くんに、教えてくれないかな?」
再びしばらくしてから、凜はそう言う。
メアリーはまだ、真実を告げることに怯えていたが―――――次第に、口を開いた。
十数分後、凜は全ての事情を聞いた。
彼女が、『メアリー』という名の、ワイズ・ゲルテナ氏最後の作品であること。
外に出たかったこと。
外を見つめていたら、
それが、メアリーの語った情報だった。
「あっはははは、なるほどねー」
凜は全てを聞くと、おかしそうにケラケラ笑い声を上げた。
凜はメアリーの話を、探索ついでに聞いていたので、メアリーはちゃんと聞いてくれてたのかな………と不安になった。
というか、あまりに凜が気軽すぎて、なんだか先程までの嬉し涙も引っ込んだ。
「そうかそうか、ふぅん、そういう感じなのねぇ………なるほど」
特に有益な情報は無かったな………。大体の裏事情は察した。けれど、それが脱出に役立つかと言うと、否だ。いやまぁ、メアリーちゃんがここの住民なら、ここから先、かなり楽になるのは確かだけれど。
なんとなく思いつつ、凜は手の埃を払う。
「さて!じゃあひとまず何も無いし、ここから出よう」
凜がそう言うと、突如部屋内が暗くなった。
しかし、すぐに電気がつく。
電気が着いた後、そこには異変が起こっていた。
先程まで、入口付近にあった赤色の『無個性』が、入口を塞いでいたのである。
凜はその無個性の近くに寄り、それを押した。動かない。
「………固定されてるねぇ」
凜も高校生にしては力が強い方ではある。異能の力が全く消失している今の状態ですら、並大抵の暴漢なら軽くあしらえる程度の腕力はある。
それでも動かせないということは、外には行くなという事なのだろう。そう凜は判断する。
「んじゃ、仕方ないね。もう1個の方行こうか」
入ってきた側とは別の扉を開け、そちらの方に進む。なんとも薄暗く、足元も覚束無い。
しばらく廊下を進んでいると、次第に扉が見えてきた。扉を開ける。
「なんだこれは………穴?」
扉の先の廊下は、大きな穴で閉ざされていた。その穴の近くの壁には、瞬きを繰り返している緑の絵と、4本の紐がぶら下がっていた。
「うーん…………これじゃ通れないね」
少し、時間は遡り、イヴとギャリーは。
「うーん………なんっかい見てもこれがカワイイだなんて思えないわ………」
再度青の人形の絵を見ながら、ギャリーはもらした。イヴは少し不機嫌そうだった。
気はまったく進まなかったが、ギャリーは絵を取り外そうとしてみた。まったく動かない。
その次は本棚を見てみた。先ほどと同じく、やはりめぼしいものはない。
「めぼしいものはないわねぇ…………ん?」
ギャリーが力を入れると、本棚はずれ、大きな穴が現れた。
「なんで気づかなかったのかしら」
その穴は、しゃがめば通れそうなくらいの大きさで、その先に一筋の光明が見えた。どうやら、先に続いているようである。
「取り敢えず、行ってみよう」
「えぇ、そうね。行きましょう」
暗い穴の中を、まずギャリーが進み、イヴがそれに付いていく。
「うぅ、埃っぽいわね………イヴ、大丈夫?」
「………ん」
我慢して先に進むと、出口にたどり着いた。
その大部屋の中は、散々な有り様だった。
天井に穴が空いていたり、床に三角の凹みがあったり、ボロボロである。
「何よ、ここ………。ボロボロね……」
「あは、なんだこりゃ。詰んでるじゃん……穴も結構深いしさぁ………………」
そう言って嘆息した凜だったが、下を覗いた時にある事に気づいた。
「……………あん?」
「どうしたの?」
「いや、なんつーか………気配が2つ、動いてるんだ。もしかして………ギャリー達か?」
「………そうかも!確か、下の階はあっち側の通路と繋がってたと思う」
「あは、そいつは重畳。ギャリー!!居るんでしょーー!!?」
その穴に向けて、凜は大声で呼びかける。気配が二つとも、穴の下に移動してくるのを凜は感じた。
そして何やら声を発しているようだったが、聞こえない。
「聞こえないよー!!もっと大きな声で言ってー!!?」
「―――――凜!?」
そしてようやく、ギャリーの声が凜に聞こえた。ふぅ、と凜は息をもらす。
「やっぱりか……。無事でなにより、かな」
凜は安堵すると、そのままギャリーと大声で会話をし始めた。
「そっちはどう?」
「裏道があって……なんか、ボロボロの部屋に出たわ」
「ふーん、そっか………。こっちは何か、穴があって先に進めないんだ。なんか、紐みたいなのに繋がってる絵は掛けられてるけど」
「紐?」
ギャリーは辺りを見回す。こちらの部屋にも、4本の紐がぶら下がっていた。
「こっちにも紐がぶら下がってるわ」
「本当?」
凜はこちら側の紐を注視した。三本目の紐に、緑の絵が繋がっている。
「………ギャリー。そっちの紐って、4本ぶら下がってたりする?」
「えぇ、そうね」
「それじゃ、左から三本目の紐を調べてみて。何かあると思う」
「………分かったわ」
ギャリーは言われた通り、三本目の紐を調べてみた。
どうやら紐は、引っ張れるようだ。何かのスイッチかもしれない。
ギャリーはひとまず、試しに引っ張ってみることにする。念のためにイヴには離れてもらい、その紐を引っ張る。
カチッという音と共に、紐は下に伸びた。
「………………ビンゴっと」
そうすると、凜の側の絵が、ちょうど穴を塞ぐように降りてきて、通れるようになった。
あは………もし分かれてなかったら、詰んでたんじゃね?
そんな風に、凜は思った。
「よし、これで通れるね」
凜は、緑の絵を見つめる。どうやら動くらしく、目線がせわしなく移動している。
「えーっと………通っていいかな?そのままじゃ目に砂とか埃とかついちゃうよー?」
凜がそう声をかけると、緑の絵は目線を止め、すぅっと目を瞑った。
「ありがとね」
緑の絵を橋にして、穴を越える。メアリーもそれに続いた。
どうにかこれで、先に進めそうだった。
こちら側には、何か三角柱のような物体があるようだ。凜はなんとなく不審に思い、下に居るギャリー達に大声を張った。
「ギャリー。他に何かおかしなことはない?」
「え?……………そうね、あえて言うなら………少しよろけそうな穴が空いてる事……かしら?」
「んー………その穴、もしかして三角?」
「その通りだけど………もしかして、なにかそっちにある?」
「うん、まぁね。多分、その穴に嵌めるんだろうけど………今から落とすから、ちょっと離れてて」
「分かったわ」
凜は三角柱を穴の中に落とす。
ギャリーは目の前に落ちてきた三角柱を押し、三角の形の穴に入れる。
カチッという音が、左端の奥にある小部屋から響いた。
急いでその小部屋に駆け寄り、ドアノブを回す。開いた。
「凜。なんか、進めるようになったみたい」
「そっか。そりゃあ良かったぜ。なんか知らんが、そっちとこっちで出来ることが違うみたいだな。取り敢えず、詰まったらまたここに戻って、話し合っていこう」
「それが良さそうね」
そう結論が出たので、それぞれ協力しながら、進んでいく事にした。