ibの世界に東方小説の主人公が乱入するようです※完結済 作:ホイル焼き@鮭
そろそろこちらは佳境、この調子なら9話で完結ですかね?
それでは、ゆっくりご覧なさいませ。
その後4人は、お互いに協力しながら、先に進み続けた。
それぞれの行く先は、様々なギミックが連結しているようで、かなり複雑な様相だった。
しかし、どのような些細な事でも情報を交換し、その度にメアリーの助言でなんとかしていけた。
木の鍵、見たこともない作品名でのパスワード、七つの絵の具玉など、多種多様なギミックを攻略している。
交換した情報の中でも、凜は1つ、気になる文言があった。
「…………『この世の定理』」
「『存在を交換することにより、空想が現実になり得る』」
「どういう意味だか分からないけど………そんな感じの本があったわ」
「…………」
「凜?」
「…………いや、なんでもない」
「???」
「(なるほど………ね、だから……)」
凜は手を握るメアリーを見る。どこか力が入っているように見えた。
「で?今、絵の具玉は5つ集まったんだっけ?」
「ええ。多分、七つ集まれば、アナタ達の部屋にある灰色の部屋が通れるようになるんだと思うんだけど」
「ふぅん……。こっちはもう何も無いかと思うけど。んじゃあもう一回、本棚が1杯ある所に行って見たらいいと思う」
「分かったわ。行きましょ、イヴ」
「うん」
ギャリー達が去っていく。
「さてさて、ちょっと話してみようか。………さっきの言葉、ちょっと気になるんだよね」
「……………」
「題が『この世の定理』だもんね………あは、残念だったねメアリーちゃん。一緒に居たのが俺じゃなきゃ、気づかなかったろうにね」
凜は、ニヤリと笑った。いつになくウザイ顔だった。
一方、ギャリーの方では。
「あら。さっきは通れなかった方が通れるようになってるわ」
「……行こう」
今度は右側の方の本棚群に向かう。
紫の色の絵の具玉。手に取ると、すぅっと消えていった。
絵の具玉。様々な色のそれを集めると、何かが起こるらしい。ついていけない人はそういうものだと思っておくが吉。
ドラゴ〇ボールみたいなものだと思えばいいと思う。それと同時期に、色の全くない灰色の部屋を見つけているので、それに関係しているのでは?と、凜は思っている。
「一応、本棚も調べておきましょうか」
ギャリー達は本棚を調べた。
すると、気になる本を見つけた。
「ゲルテナ作品集・下ね」
適当にページをめくる。それほど大した情報ではないみたいだったが…………ギャリーは、そこで信じ難い情報を見た。
それは、Mのページだ。
「『メアリー』………!?」
そこには、『メアリー』という作品の解説がなされていた。
ゲルテナが手がけた、生涯最後の作品。
まるでそこに存在しているかのように微笑む少女だが、もちろんのこと彼女も実在しない人物である。
「どういうこと………!?つまり、あの子は作品ってこと!?じゃあ、今凜と居るのは………!?」
「………凜が危ない!」
あまりの情報に、ギャリー達は慌てる。
それと同時に、壁に白い文字が浮かび上がる。
¨知っちゃった 知っちゃった メアリーの秘密知っちゃった¨
「い、急いで戻りましょ!」
「うん……!」
時は少し戻り、凜とメアリーは話していた。
「この世の定理。なんとも意味深だよねぇ……『存在を交換することにより、空想が現実になり得る』と。ねぇ、どう思うメアリーちゃん?この世界には詳しいでしょ?ねぇねぇねぇねぇ?」
ニヤニヤニヤニヤニヤニヤ。
凜は非常に鬱陶しい口調でねちねちとメアリーをなじる。
この世界では何故かいいことばかり喋っていた凜だが、凜はあくまでも凜。
人を弄って遊ぶのが大好きな、良く言えばお茶目な、悪く言えばゲスな人間なのである。
「…………」
しかし、メアリーは口を閉ざしたまま俯く。
遅ればせながら、凜の気持ちに若干のやっちゃったかな感が芽生える。
思ったよりも、メアリーは自分を信頼してくれていないようだった。
「…………あはは。うん、話したくなきゃ話さなくていいさ。人間誰しも、自分の利にならないことは喋らなくていいし。推定無罪の原則ってね」
ケラケラした口調ではあったが、気遣うように凜は言う。
メアリーは『無罪』という言葉にピクリと手を反応させると、自虐するように笑った。
「……………わたし、やっぱり罪深い、よね?」
おろ?と凜は思う。
正直、いつもの軽口を叩いているだけのつもりだったからだ。
基本的に喋る時は何も考えてないので、自分が人に与える影響というのにはひどく無頓着なのだ。
しかし、確かにいまメアリーの状態に、『罪』という言葉は少し、思うことがあるのも、凜は理解出来た。無遠慮だったかなー、とか思い、少し真面目なことを言おうと思った。
「さぁねぇ?君の心のうちでは、君が被告であり、弁護人であり、検事であり、傍聴人であり―――それに何より、裁判長でもあるんだぜ」
しかし、普通にいい事を言うことが出来ないのも、彼の彼たる所以だった。
そういう性分というか、素直に感情を示すのが、ひどく苦手なのである。
どうしても、その口調は、軽くなってしまう。
「であるからには、その弁護も、糾弾も、その他の気持ちも―――その判決も。ぜーんぶ君が受け止めるべきことであり、することなんだよ。それを他人に求めることは、無粋ってものだ」
「……………どういうこと……?」
「ざっくり言おう。俺がどんな不平不満をぐちゃぐちゃ並べ立てたところで、全く関係ないと突っぱねていいってことさ」
凜は手を離してくるくると回り、首だけを後ろに回して言う。
「精神の自由って言ってね。心の中は誰も犯せない聖域なんだぜ。ただ、俺は思う――――人間、正しい事をするべきだってね」
更に腕を広げてくるくる回転し、メアリーに再度向き合う。
「正しい事ってのは、『自分にとって』正しい事だぜ―――――――――自らの良心に従い、自らの悪心に従い、自らの欲望に忠実に――――――正しい事をなせ」
話してて楽しくなり、凜は凄く楽しそうな顔をしながら言う。そしてメアリーの頭に手を載せると、しゃがみ込んでメアリーと視線を合わせる。
俯いたメアリーの頭が、暖かな感触によって上げられる。
「あ…………」
「まぁ、他の人がどうか知んないけど。イヴちゃんがどう考えてるか、ギャリーがどう考えてるか。俺には分かんないけれど―――――君が正しい事をなそうとするのなら、俺はその手助けを誓おう」
「り、ん………」
「何があろうが、君が君のまま君の正しさを貫くとあれば。絶対に、俺は君の正しさを受け止めるさ」
「………」
「無罪と判決を下すなら、それもいいだろう。有罪と自らを裁くなら、それもいい。審理を延期してもいい。何しようが、心の中なら勝手だし――――それに従って行動を起こす事だって、俺は受け止めるからね。それが君の『正しさ』であるのなら」
「…………難しいの、私には」
メアリーが口を開いた。
「凜が何を言ってるのか、それは理解してるつもり……。でも、決められない……頭ではわかってても、私には………決められない!」
目に涙を浮かべながら、メアリーは叫ぶ。
「ねぇ………凜。お願い。私には決められない――――誰を信じればいいのか、何がすべきなのか―――そんなのわかんない。だから―――あなたが、私を決めて――――っ!」
「――――やだね」
決死の表情で叫ぶメアリーの願いを、凜は間髪入れずに一蹴する。
その言葉を聞き、メアリーは深く、絶望する―――――あぁ。
やっぱり私の味方なんて、どこにもいないんだ―――――――――――――――――――
「全く――――――まだまだガキだなぁ。そんなにぐずっちゃってさ……さっきも言った。君の心の内は、君だけの聖域―――他者の踏み入る権利なんてない」
「だって―――仕方ないじゃない、私には―――自分の好きなようにする権利なんて」
「ない、とでも?はぁ―――――ふざけるなよ」
こんな状況だが、凜は猛烈に、イライラしていた。
齢10にも満たないであろうメアリーに対して、こんな気持ちを抱くのはおかしいのかもしれない。けれど――――自分を管理できない人間は、嫌いだった。
「俺の是は、君の是じゃない―――俺の否は。君の否じゃない――――俺がなんと言おうと。それが君の正しさとはならない。自分の行動は、自分の正しさで決めるべきなんだ」
すっと片膝をつき、凜はメアリーと目線を合わせる。メアリーの頭をグッと掴み、凜はその目を深く、見据える。
「それが出来て、人に頼ることが出来る。人に決めてもらうことも出来る」
そう言って、凜は目の前の少女を睨みつける。
このような所にずっとひとりでいた、そんな孤独でカワイソウな少女―――――そんな風に、凜はメアリーを扱わないのだ。
かわいそうだ、助けてやろう。
そんな浅慮な考えで、彼は動かない―――――かわいそうで、手を伸ばしたくなるような存在に対しても、彼は言うのだ。
だからなに?と。
「そんなことも出来ないのに――人に助けを求めるな。そんな奴なら、俺は手を貸さない」
「…………」
メアリーはもはや訳がわからず、真摯な目で自分を見つめる凜から目をそらす。
そんなメアリーの『弱さ』に対し、凜は無理やり、目線をこちらに向けさせる。
耐えきれず、メアリーの目に涙が浮かぶ。
「怖いか?辛いか?なぜこんなことを言われなければと、俺が憎いか?おう、なんとでも思うがいいさ。だからといって俺はこうして君を諭すのをやめはしない。それが俺の『正しさ』だからだ」
「…………ぅっ」
「分からないなら、何度だって言う。わかるまで言う。俺には、君を決められない。君が―――君だけが。『君』を決められるんだ」
「…………ひっく」
「望め。叫べ!なんだお前らはって。ごちゃごちゃうるせぇ!って」
「………っ、うぁ……っ!」
「やりたいことがあるなら……やればいい。決めればいい。それがどのようなものであろうと……俺は尊重する」
そこまで言って、凜はメアリーの頭から手を離し、その小さな身体を抱きしめる。
「あ………」
「だから、やりたいようにやればいい……望めば君の正しさを、俺は真っ向から助けてやる」
その言葉を出してから、メアリーのすすり泣く声が収まり出す。
もはや凜も何も言わない。ただ、メアリーの返事を待つ。抱きしめられる温もりだけを、メアリーに与え続けながら。
「ねぇ、凜……?」
「おう」
「私ね……ヒトじゃなくてね……っ」
「―――あぁ、知ってる」
「しかも、凜達をこんな所に巻き込んで……っ!迷惑、たくさんかけてるんだ……」
「あぁ、そうだな」
「それでも!…………望んで、いいの?」
「さぁ、良くはないかもな。ただ―――言わなきゃ、始まらない」
「………そう、だね……。私―――私は、もっと、凜達と居たいよ。もっと―――もっともっともっと!みんなで一緒に居たい!だから―――――私を、『助けて』―――!」
メアリーは叫ぶ。その目に涙は、既に浮かんでいない。ただ力強く、決意に満ちた目。
凜はメアリーから離れ、その目を見つめかえす。凜は破顔する。
「いい目だ……なんて。人生でこんなセリフを言うとは思ってなかったぜ」
「………ふふふ、確かに……ね」
「―――――――もちろん。約束する―――俺が君を『助けてやる』」
その言葉を聞いて、メアリーは目に涙を浮かばせる。それが先程までの悲しみの涙ではないことは、彼女の笑顔を見ていれば、誰にも明らかであった――――――――――。
「ありがとう」
メアリーの決意から、数分後。
凜はつないだメアリーの手を握りしめながら、ある事柄について考えていた。
そもそもの事の発端―――――『この世の定理』の文言についてだ。
「(存在を交換することによって、空想が現実になり得る――――これを単なる妄言とするには、『この世の定理』という題は軽くない―――――もし、俺が考えているとおりなら)」
メアリーは、決して外の世界には行けない。
「(はっ………ただの妄言なら、いいんだがな)」
「凜?」
「ん?なんだい?」
「なんだか調子悪そうに見えて―――なにか考え事?」
「んー………まぁね。あは――――気にしなくていいさ」
「うん」
メアリーは不思議そうだったが、凜の手をぎゅっと掴んで、嬉しそうに笑う。
穴の下から、ギャリーの大きな声が鳴り響いた。
「はぁ……はぁ……!り、凜!その子から急いで離れて!」
「ギャリー?その子ってメアリーちゃんの事かい?」
「………!」
ギャリーの焦燥した声に、凜はただ事ではないことを察した。
メアリーは凜の腕をさらに強く掴む。
そこまでしてから、凜は気づいた。
ははーん。いまさらながら、メアリーちゃんの正体に気づいたな?あは、そりゃ焦るわ。
そう断定すると、凜はニタァ、と笑い出す。
良し、ちょろっとからかってやろー。
「………っ!信じられないかもしれないけど――――凜!その子は人間じゃない―――ワイズ・ゲルテナの作品なの!」
「………………ついにバレてしまった、か」
「……………?り、凜……?」
「もう少し、持つと思っていたんだけど……。あは、どうやら、計画に不備があったようだ」
「そ、そんな………もしかして、凜、あなたも………っ?」
「………不思議に思わなかった?なぜこうも俺達が、ここのギミックに詳しいのか、ってさ?それはつまり―――そういうことだよねぇ?」
「………凜、あなたも………だったのね……くっ!」
「…………凜っ!」
凜が敵だなどと、イヴにとっては悪夢でしかない。冗談でしょ?と、イヴは叫びたくなった。その気持ちに耐えきれず、イヴは彼の名を呼ぶ。
まぁ。
冗談なのだが。
「あなたが私に優しくしてくれたのも――――全部、嘘だってこと―――?そんなの、ない………!」
「いやいや、嘘なわけないじゃん。常識的に考えて」
「……………え?」
上の階から凜のケラケラと乾いた笑い声がして、イヴとギャリーは度肝を抜かれる。
「あはー、やっぱ俺、悪役の素質あるわー。いらねー!あっはっはっは!」
「まさか、さっきのは全部冗談………?」
「あははっ!あったりまえじゃないか。俺をどっからどう見たら芸術品に見えるの?目ん玉腐ってる?あはははははっ」
凜の高笑いが、ギャリーとイヴに降り注ぐ。
ギャリーの隣で、イヴの手がプルプルと震える。明らかに様子がおかしい。
「イ、イヴ……?」
「凜の………バカァーーーーーー!!!!」
キーン。
今度は凜が度肝を抜かされる番だった。
あまりの甲高い音に、凜は片耳を塞ぐ。
凜は大きな音が嫌いだった。
「ぼけ!あほ!でべそ!おたんこなす――――!!!!」
「わー!わー!ごめん!ごめんってば!謝るから!叫ぶのはやめてくれーーー!」
イヴと凜が叫ぶのを聞いて、ギャリーは苦笑する。
あぁ―――――緊張感が薄れていく………。
凜がイヴを宥めることなんと数10分(!)。
ようやく落ち着いたイヴが、凜に話を促す。
「で。なんであんなこと言ったの」
「はいイヴ様!若気の至りでございます!」
間髪入れずに凜が答える。敬語で。恐怖が染み付いてしまったのである。自業自得。
しかし、どうしてもギャリーには疑問が残った。
先ほどのセリフはすべて冗談だとしても、どうやら彼は、メアリーの正体に気づいていたらしい。なのになぜ――――――?
その旨を凜に伝えると、
「うん?あぁ――最初からわかってたからね。驚く必要はないでしょ」
「な、なら……なんで。そんなに平気そうなのよ」
「…………この子に、俺達を害する意思はないよ。ないなら、それ以外の理由があるはずでしょ?それを確認せずに、追い返すってのも酷な話だろ」
ギャリーの言葉から、わずかな自分に対する疎外の意思を感じ取り、メアリーはビクッと震える。
それを見て凜は、メアリーに笑いかける。
「まぁ、心配すんな。例えあいつらが君を疎外しようが、俺は少なくとも味方だ」
「………うん」
「よし。ギャリー。イヴちゃん」
「………なに?」
「このままじゃ話しづらいでしょ。だから―――どいてね」
「…へ?」
凜はメアリーを両腕で抱える。
「え―――な、なに――――?」
「しゅっぱつしんこー」
凜はメアリーを抱えたまま、穴の中へと飛び降りた。
「きゃあぁぁぁぁぁ!?」
ドスン。
凜は衝撃を膝で全て吸収して、ギャリー達のいる部屋へと飛び降りた。
あまりの突飛な行動に、凜を除いた3人は驚愕する。
凜は膝が軽く痛むのを感じて、少し涙目になる。
「くー、いったぁ……。なんじゃこりゃ、三階分くらいあるだろこんなん」
「も、もう!いきなり飛び降りないでよ!びっくりするでしょ!ばか!」
メアリーが凜の奇行に苦言を呈する。当たり前である、普通に危ない。
「うん?あは、メアリーちゃん、腰抜けてるでしょ?明らかに重い」
「うー……!う、うるさいよ!いきなりこんなことするとか思わないじゃん!」
しばらく凜とメアリーがじゃれているのを見て、ギャリーとイヴは笑い出す。
良くわからないが―――――どうにも、メアリーがこちらを傷つける意思がないことは、確かなように思えたのだ。
「―――ほら、メアリーちゃん。ちゃんと、自分の気持ちを伝えなさい。そんなことまで、俺は手伝わないよ?」
少し口調を堅くして、凜はメアリーに告げる。メアリーはそれを見て、コクリとうなずいた。
そして、メアリーは話し始めた。
自分がワイズ・ゲルテナの遺した、最後の作品『メアリー』であること。
ずっと、外の世界に出てみたかったこと。
ふと外を見ていたら、凜達を見て、お話してみたいと、そう思ったこと。
作品たちがそれを感じ取って、凜達を無理やりこの世界に引きずり込んだこと。
凜に話したことの全てを、メアリーはギャリー達に話した。
「だから……ごめんなさい。ギャリーもイヴも、凜も……。全部、私のせいでこんな目に遭ってるの……。本当に……ごめんなさい」
メアリーは堂々と、ギャリーとイヴを見据えながらそう言った。責められても仕方ないと、そう思う。それが当然の帰結だと、覚悟していたから。
「………バカね、あなた」
「え?」
「大バカよ。全く………そんなの、あなたのせいなんかじゃないでしょうが」
「………悪いのは全部、その作品たち。……メアリーのせいじゃない」
「ギャリー……イヴ……」
二人の優しさに、メアリーは涙ぐむ。
嬉しくて――――――仕方がなかった。
「あは、良かったね。まぁ、心配はあんまりしていなかったけれど」
凜はそう言ってメアリーに笑いかける。
なんにせよ、これでメアリーと凜達のわだかまりは、完全に解けたのである。
それならば―――――先に、進もう。
「つーかメアリーちゃんさぁ、そろそろどいてくんない?重いんだけどー」
「り、凜のせいでしょ……!………もう少し、このまま……ぐすっ」
「あーあー、良く泣く子だよ全く………。フランも大概だが、君には負けるぜ」
「………ふらん?」
「あは、気にしたら負け負け。そうだねぇ、ここから出たら、メアリーちゃんも会わせてあげる」
「………うん!」
「そうだ、ギャリーも来るかい?ここよりずっと、面白いぜ?」
「そうね………ここから出られたらね」
「おう。あ、記念に写真でも撮る?チームゲルテナ探検隊、的な」
凜が懐から携帯電話を取り出しながら言うと、3人が口々に言い始める。
「呑気なもんねぇ………」
「…………撮りたい」
「うん!撮りたい!」
「まぁメアリーちゃんは、このまんま撮ることになるけどね……ぷーくすくす!」
「う、うるさいよ!私は困らないからいいの!」
「あは、そいつぁ結構結構。まぁ撮ろうか。チームゲルテナ探検隊、結成を祝しまして――――?」
「「「「ぴーす!」」」」
そうして、メアリーと彼らは、心からの仲間となることが出来た。
凜達が自らの罪悪感を肯定し、その上で仲間としてくれたこと。
それはメアリーの心を、なにか暖かいもので埋めてくれていた。ずっと憧れていた、暖かな空間の中に、自分がいること。
メアリーにとって、これ以上の嬉しさはなかった。しかし。
真っ暗な廊下の奥。どこまでも暗く、どこまでもおぞましいその場所で、『彼ら』は蠢く。
―――――――ダメダヨ、メアリー………ソレジャア、キミは…………………ダメなのに……!
彼らの言葉を聞くものは、誰もいなかった。