ibの世界に東方小説の主人公が乱入するようです※完結済   作:ホイル焼き@鮭

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さぁ急展開の8話です!
なんか久々に筆が乗りました!
9話では終わらなさそうです!10話ですかねぇ、キリがいいですね!
それではどうぞ!


高橋 凜という人間は

メアリーの心に残った大きなわだかまりも解け、4人は再度、行動を共にすることとなった。

ついては、最後の絵の具玉を探しに、大部屋へと歩を進める。

先ほどイヴとギャリーが訪れた時と違い、部屋の中央に存在した部屋の前に、青い人形が置かれていた。

近くの壁に、一つの文言が記されている。

 

"さっき不思議なもの見つけたよ。わたしのたからものにするの"

 

青い人形の腹部に、丸い膨らみが見受けられ、それがたからもの、であると一行は考えた。

 

「まぁ、剥ぐか………ん?」

 

凜はとりあえず、その青い人形の腹部を裂いて、中身を確認してみようとした。

しかしその前に、メアリーがその人形の前にしゃがみこみ、話しかけてしまう。

 

「ねぇ。それ、ちょーだい」

「…………!」

 

人形はメアリーの姿を確認すると、自ら腹部を裂き、中の白色の絵の具玉を取り出し、メアリーに手渡す。

 

「ありがと!」

「さすがだねぇ、メアリーちゃん」

「本当に。すごいわ、メアリー」

「………お手柄」

 

3人が口々にメアリーを賞賛する。些細なことだったが、それさえも、今のメアリーには愛しい。

そのまま一行は、メアリーの導くままに先へと進んでいく。さすがは彼女の家、様々な仕掛けをやすやすと通過していく。

絵の具玉が7つ、揃うことによって、灰色の部屋が鮮やかに彩られ、奥にあった茶色の鍵を得られるようになっていた。

これにより、更に先に進むことができるようになった。

 

次の道は、クレヨンで描いたかのような雑多な場所だった。

凜とイヴ、2人と手を繋ぎながら歩くメアリーの頭に、またも異質な声が鳴り響く。

 

―――――――ダメダヨメアリー、ソレジャダメダメでダメダメダダダダ……!

 

異質な声は、なにやら焦りを帯びているようにメアリーを急き立てる。

つんざくような痛みが、メアリーの頭に走る。

なんで……さっきまで、あんなに静かだったのに………!!!

 

うるさい!だまれだまれだまれだまれ!

 

これ以上ない程の幸せを。

やっと手に入った、この輝きを。

邪魔するこの声が、メアリーは今まで以上に疎ましかった。

 

――――――イクノ!?何処ニ!何処ニ何処ニ何処ニ何処ニ!?行ッチャダメダメダメメメメメメメ……!!!

うるさい!外に……私は出るの!だからだまれ!

――――――ソウ、外ニ!アァ、出ルンダネ!?外ニ!外、外、外、外ニ!

 

メアリーの様子がどこかおかしい。

それに気付き、3人はメアリーに声をかける。

 

「メアリーちゃん?なに、どうした?」

「メアリー?どうかしたの?なにか見つけた?」

「…………メアリー?」

 

心配そうな声だ。しかしメアリーには届かなかった。頭に刻まれる声が、それを阻む。

メアリーの額に脂汗がにじむ。

 

そう……そう、そうよ!私は―――――外に

―――――分カッテルノニ、分カッテルクセに――――ジャア、モット、分カラセテアゲルね?

 

異質な声が最後にそう響くと、周囲が弾け、全てが書き換えられていく。

クレヨンで描かれた家や道が、真っ赤で染め上げられたかのようなどす黒い道で塗り替えられていく。

この異常事態に、凜でさえもたじろいでしまっていた。

 

なんだ、これは―――――イレギュラー?メアリーちゃんを見るに、これは想定された場所じゃない―――――のか?

 

異質な声が収まり、多少の余裕を取り戻したメアリーが、赤黒く染められた道を見て悲痛の声を上げる。

 

「なにこれ……わたし、こんなの知らない……!」

 

赤黒い道は、一方通行だった。

周囲はただ赤黒いだけで、女の絵や無個性のような作品たちは存在していない。奥には、周囲とは不釣り合いな程鮮やかな、黄色の扉が見受けられた。

 

「…………とりあえず、だ。進むしかないわけでしょ?なら進もう」

「えぇ……そう、ね」

 

凜とギャリーの判断に、メアリーもイヴも頷く。これまで助けてくれたメアリーの助言も、これからは得られないだろう。

そんな未知の場所に、4人は進んでいく。

先程まであれほど喚いていた異質な声も、異様な程に静かだった。

やがて奥にたどり着き、ドアノブを回す。

当然のことだが、開いていた。

何があっても構わないよう、細心の注意を払いながら、凜はドアノブを引く。

 

―――――――中には3枚の絵画と、二つの扉だけがポツン、と存在していた。

 

不審に思いつつも、凜はその絵画達へと近づく。絵画の下には、説明書きのような者が記されていた。

 

一つは、蒼髪蒼眼の男の絵だった。

――――意地汚いメアリーは、外に出るために凜を見捨てました。

 

二つは、癖の強い髪の男の絵だった。

――――残酷なメアリーは、外に出るためにギャリーを殺しました。

 

三つは、長い黒髪の少女だった。

――――残忍なメアリーは、外に出るためにイヴを犠牲にしました。

 

全て―――――凜達の絵だった。

苦しみ、もがくように―――死んでいる、絵。

 

「嘘………嘘、嘘、嘘!こんなの違う……嘘だっ!!」

「落ち着け、メアリーちゃん。そんなこと分かってるから落ち着け―――――」

 

錯乱するメアリーを、凜が強い口調で宥めようとした、その時。

突如異質な声が―――――4人の脳に、響き渡った。

 

――――――右は外ヘノ道デ、左ハトッテモタノシイオ茶会ヨ!優シイ優シイメアリーなら、モチロンオ茶会に来ルヨネ!?ウフフフフフ!

 

唐突な頭痛に、4人は苛まれる。クスクスクスと楽しそうな笑い声が、永遠に鳴り響く。

 

「どういうことよ……これ……!」

「………頭が……痛い」

 

ギャリーとイヴが、眉を潜めながら口にする。一方で、凜は別の事を考えていた。

 

「(………やっぱり、そういうことかよ………畜生が)ギャリー、イヴちゃん。聞いてくれ」

「……っ、えぇ……」

「………どういう、ことか……分かった?」

「この世の定理………覚えてるか?『存在を交換することにより、空想が現実になり得る』」

「えぇ…それが?」

「……どうかした?」

「これは、誰かをこちら側―――ゲルテナの世界に残すことによって、こちら側の存在が外の世界に行ける。そう言った意味の言葉なんだ。――――現実の世界から失われたのは、三つの存在。外に許されたイスは、三つしかない」

「そんな………つまり……誰かこっちに残らなきゃいけないってこと……!?」

「……っ!そんな……」

 

4人のうち、3人だけしか外には出られない。

その事実が、4人に重くのしかかる。

しかし――――メアリーは毅然とした態度で、凜達を見据えた。

 

「……凜、ギャリー、イヴ。右の扉に行って」

「なっ……何言ってんのよメアリー!一緒に外に出るんでしょう!?」

「いいんだよ。………ホントはね、私。知ってたんだ――――3人だけしか、出られないって」

 

メアリーの言葉に、ギャリーとイヴは困惑する―――――唯一凜だけが、メアリーの目を真摯に見据えていた。

 

「だって―――楽しかったもん。幸せだったんだもの――――そんなこと、考えたくもなかった」

 

「4人で出ようって言うたび――――心で突っかかってたの。でもね――――嬉しくも、あったよ」

 

「ありがとね。ゲルテナ探検隊!だっけ?ふふふ、ネーミングセンスないよね!とっても楽しかった!」

 

「だから―――――ばいばい」

 

メアリーは笑う。大きな水色の瞳一杯に、涙をためながらも。

精一杯の笑顔を見せた。

ギャリーは表情を苦悶に歪ませる。

 

「ダメよ――――そんなの、絶対……っ!」

 

もちろん、イヴも同じ気持ちだった。

ただ―――――凜はそんなメアリーに向けて、話しかける。

 

「ねぇ、『メアリー』。一つ、聞いてもいいかい?」

 

ちゃん付けせずに、凜はメアリーの名を呼ぶ。

元々凜がちゃんを付けるのは、その場を茶化すためや、その人物に親しむため――――今はそんなもの、不要だった。

 

「……っ、な、なにー?みんなが待ってるから、早くしてよ?うふふ………っ」

 

「一つだけね。…………メアリー。それが君の、『正しさ』?」

 

「―――――!!」

 

「君はそれを、本気で望むの?3人しか出られない。そういう状況下において。君は誰かを見捨てて、外に出ようとは思わない?例え幾度繰り返そうとも、この選択をするの?」

 

「……………」

 

しばしメアリーは逡巡し、うつむく。

しかし、すぐに顔をあげる。

あげられた顔は、とても澄んだ表情をしていた。

 

「……………うん。これが私の、『正しさ』」

「………………あは。そう―――なら、尊重しよう」

 

凜は少し辛そうに笑い、メアリーに背を向ける。見送るかのように、メアリーは手を振る。凜の顔とは比べ物にならないほど、悲痛を抱えた顔で。

凜はギャリーとイヴの背を押し、右側の扉へと押し付ける。

 

「なっ……!?」

「………!?」

「行くよ、二人とも」

「なっ……にを言ってるの!凜、あんたメアリーを見捨てるっての!?あんたほんとにそれでいいわけ!?」

 

ギャリーがそう叫び、強く抵抗する。

しかし、凜の力はとてつもなく、むなしくもジリジリと、体が扉へと進んでいってしまう。

イヴも当然のように、扉へと吸い込まれていく。

凜の強行態度に、これ以上の説得は無駄だと知る。しかし、抗わずにはいられなかった。

 

「…く……っ!メアリー!あんたもよ!こっちに来るの!外に出たいんでしょ!?聞いてんの、メアリィィィィ!」

「………メアリー!!!」

 

それだけ残し、二人は扉の奥へと消えていく。

凜は悲しげにフッと乾いた笑みを浮かべる。

 

「良かったね、メアリー。ああまで悩んでくれる友達、そうはいないぜ?」

「うん……本当に」

「さぁ、じゃあ俺も行くわな?」

「………凜は、ああやってくれないんだ」

「ああやって欲しいの?けどしてやんないよ。俺結構意地悪なのが特徴なんで」

「………ふふ……知ってる!一々うるさいもん!」

「あは、そいつは悪かったねぇ。なんなら俺が残ってやろうか?」

 

凜は冗談交じりにそう言ったが、それも悪くないとは思っていた。

なにせ彼の本当の居場所は、人外だらけの魔境なのだ。守護者たる彼がいなくなれば、まず間違いなくあの賢者が助けに来るだろう。そもそも、凜をここに招いたのは彼女なので、迎えは案外、すぐに来るかもしれない。

それを鑑みれば、凜が残るのも悪い案ではない。

 

「………あはは。簡単に言うよね、凜は」

「実際、簡単だから仕方ないよねぇ」

「……ねぇ、凜。最後に言っていい?」

「あん?まぁ言いなよ」

「私ね、凜のこと好きだよ」

「……………はい?」

 

たまらず、これまでずっと背中を向けていた凜が振り返る。

メアリーはニヤリと笑う。

 

「あは!なーんて、ね。うふふ、びっくりした?」

「……んだ、冗談ね。なんかメアリーさぁ、なんか俺に似てきたねぇ」

「うぇ、それはヤダな……性格悪くなっちゃう」

「あは、あははははっ!いやぁ、そういう所が俺っぽい!傍から見るとうざいことうざいこと。でもさぁ、ここでの俺は良心的だったと思うけどなぁ。カッコイイこと、一杯言ったでしょ?」

「あはっ、自分で言う所が凜の凜なところだよね!」

「いや実際そうでしょー?俺は事実は否定しないんだよ、あははっ!」

「でも……ホントに、カッコよかったと思う」

 

メアリーは、寂しげに笑う。

凜もまた、照れくさそうに頬を掻く。

 

「最後に……言わせてもらっていい?凜」

「………いやだ………なんて。茶化しちゃダメかい?」

「ダーメ。このままじゃ、ずーっと喋ってたくなっちゃいそうだから」

「………あは……俺ってさぁ、こういう時は普段通り喋るべきだと思うタチなんだ。………最後の言葉とか、苦手で…ね」

「ごめん。許してね」

「あは……こっちこそ。どうぞ」

 

凜が促すと、メアリーは左の扉へと歩き出す。

ドアノブに手をかけ、ピタリと静止する。

 

「私ね………本当に、凜のことが――――だいすきだよ」

 

メアリーが振り返る。ポロポロと、大粒の涙が頬を伝っていた。雫が地面に零れ落ちる。

 

「おちゃらけててさ。ギャリーとかイヴとかと、すっごく仲いいの……っ。それでね、私にいーーっつも難しいこといーっぱい言うんだぁ……。でもさぁ……!分かるんだよねぇ……全部、私のために言ってくれてるんだってさぁ……っ!?」

 

ドアノブから手を離し、袖で涙を拭う。

止まらない涙を、意思の力で止めてしまう。

今のメアリーは、それができる―――――全て凜が、教えてくれたから。

泣きたい時は泣いとけ。そして最後に笑いな。

笑わなくては―――――終われないのだ。

 

「ありがとね。だいすき」

「…………っ」

 

凜は今すぐ、メアリーを抱きしめたい衝動にかられる。彼女の意思を尊重し、外へ戻るのが自分の選んだ結末で、彼女の望んだ結末であるのに。

その気持ちをのみこみ―――――凜は彼女に返す。

 

「………うん。ありがとう。俺もメアリーのこと――――少なくとも、嫌いではないぜ?」

「………ぷっ!そこはさぁ、嘘でも好きだって言ってよ」

「これでも俺は、嘘をついたことはないから無理かな」

「思いっきり嘘ついたクセに。そんなとこも好きだよ」

「おう、俺も自分のこーいうとこ大好きだぜ」

「ナルシスト」

「なんとでも言え」

 

そんな会話をしていると、ふいにおかしくなり、メアリーは笑い出した。

つられて凜も、いつもの笑い方で笑う。

メアリーの前で、凜はあくまでも凜だった。

凜の前で、メアリーは最後に勇気を出した。

それでもう、終わらなければならない。

 

「それじゃあ、ばいばい、凜」

「うん。あ、もう1個だけいいかな」

「なに?……もう、それで最後だよ?」

 

「あぁ。俺ってさ。自己紹介、ちゃんとしてないよね」

 

「…………え?」

 

「高橋 凜っていう人間はさ―――――目の前の事を、理想的にする人間なんだ」

 

「…………?」

 

「俺の―――――幻想郷の守護者の前で。理想以外は許さない―――――妥協なんて、いらない」

 

「―――――さっきから何いって―――」

 

「わかんないならそれでもいいよ。いずれ分かるさ――――――それじゃあ、『また』ね」

 

そう言って、彼は右の扉へと消えていく。

その姿を見て、メアリーはふぅ、と息をつく。

最後の言葉はよくわからなかったが――――無事に彼が帰ってくれたことにほっとする。

まぁ最後の言葉も、これからまだ時間があるのだ、ゆっくり考えていけばいい―――――

 

「……………………あれ……?」

 

メアリーが崩れ落ちる。

足ががくがくと震え、手が言うことを聞かなくなる。体が、感じたことがないほどの冷たさで覆われる。

 

ギャリーの優しい声は、もう聞けない。

 

イヴの楽しそうな声も、もう聞こえない。

 

凜のふざけた冗談も、彼のぬくもりも、真摯な言葉も――――――――既にここにはない。

 

「…………い、いやだ……」

 

悪寒が走る。凜と話している時は聞こえなかった、作品たちの笑い声が、聞こえる。

 

「………さむい……いたい………なんで?ねぇどうしてなの……?パパ。なんで私をこう作ったの?……ひどいよ……っ!ひどい、ひどいひどいひどい!うわぁぁぁぁん………っ!」

 

ただその身と、創造主の無き父に向けて、メアリーは嘆く。凜の前で見せた、あの気丈さなど既になかった。

 

「……好き!だいすき……っ!だから、凜ぅ……!お願いだから―――――私を、助けてよ……!」

 

何度願おうとも、返ってくるのは作品たちの笑い声のみ。狂うことすらも、もはやメアリーにはできない。出来るとすれば―――――ただ―――――嘆く事だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

扉の向こう側で凜は、外の世界への道を歩む。

ここらで自分を待っていて、2人が自分を糾弾するのではないか、と凜は身構えていたが、2人の姿はどこにもなかった。

―――――――――私を、助けて。

少女の言葉を、凜は思い浮かべる。

それに対して返した、自分の言葉をも。

 

「―――――あのさぁ、メアリー。俺って、諦めわりぃんだ」

 

だからさ。

お前を助けるまで――――――この世界を終わらせない。

 

「流石に、世界を敵に回すのは初めてだ―――――――あは、あはははははは」

 

こんな状況だが――――――それでも凜は。

高橋 凜という人間は。

ニヤリと、笑う。

 

「―――――面白い。まぁサクッと救ってあげるよ、感謝しやがれメアリー『ちゃん』?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




凜が残した、意味深なセリフ………。
果たして彼はどうするのか?メアリーを待つ結末とは、どのようなものなのだろうか。まぁ詳しくは、タグ参照ですけどね!にっしっし。
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