デジモンリメンバー/第三章『暴食の僕/The Biggest dreamer』 作:sibaワークス
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『僕は……いや、僕たちは、デジモンテイマーズだ!』
手にデジヴァイスを掲げた少年たち――。
「……んっ!」
自室で目を覚ましたタカト。
「また変な夢……あっ?」
タカトは自分の手が何かを握っているのを感じた。
デジヴァイス――アーク。
そして枕元には一枚のカード。
タカトは、デジヴァイスアークの画面を覗き込んだ。
「ぎる?」
画面の中にはギルモンの姿があった。
「……夢じゃないんだね。 ギルモン」
一階に降り、学校の支度を始めるタカト。
「昨日は遅かったな」
パンの仕込みを終えた父が話しかけてきた。
「あ、うん、ちょっと友達の家に呼ばれちゃって」
「だめよ、そんなに遅くまでお邪魔しちゃ、晩御飯の前には帰るようにね。昨日も向こうのお父さんに送ってもらっちゃって、悪いでしょ?」
「う、うん」
母にも釘を刺されてしまった。
「でも、見たことない子だったな。同じ学校の子か?」
「うん、クラスは違うけど、ちょっと知り合いになって」
「へぇ」
あまり社交的でない息子が、珍しい。と、タカトの母は思った。
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第二話 ともだちのゆめ
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昨晩――。
「改めて自己紹介するね、僕は李健良(リ・ジェンリャ)」
「ジェン……ごめん、外国の?」
「うん、父さんが香港の人。 で、こっちが」
「テリアモンだよ~」
ぴょんっと、テリアモンは、ジェンリャの肩に飛び乗った。
テリアモンはギルモンに比べると幾分も小さく、全長が40cm位しかない。
こうして肩に乗っているとぬいぐるみにしか見えなかった。
「ギルモンを助けてくれてありがとう、テリアモン」
「
「に、しても驚いたぜ~! まさかパートナーがもういたとはな~」
「でも、契約してないのに……意思が通じるなんて」
「ハハッ、ユウの場合は最初大変だったもんな」
ジェンリャの周りには二人の少年がいた。
「君たちもデジモンテイマーなの?」
一人は、蒼いシャツにゴーグルをつけた活発そうな少年。
もう一人はシャツを羽織った優しそうな雰囲気を持った少年だった。
「俺は明石タギル、よろしくな!」
活発そうな方の少年が言った。
「僕はユウ、天野ユウだよ」
続いて、優しそうな方の少年も自己紹介した。
「えと……僕は松田タカト、よろしくね、で、こっちは……ギルモン」
タカトも、それに答えた。
「ところで、その、ギルモン。 君が、考えたって言ってたけど」
ジェンリャが聞いてきた。
「うん、僕が考えて、このカードに書いたんだけど」
「降臨(アドベント)のカードに、絵を……か」
ジェンリャは何やら考え込んだ。
すると、
「ぎゃーっはっはっはっはっはっは!! こいつはおんもしれえ!!」
下品な高笑いが聞こえてきた。
「アイツは……」
タギルが声の先を睨んだ。
「おおーこえー!! そんな怖い顔すんなよぎゃっはははは」
その声の主は――。
「デジモン!?」
タカトが驚きの声を上げた。
声の主は、身長が1メートルにも満たない、小さなモンスターだった。
体の色は黒に近い紫、尖った耳と尻尾、鋭い目。
幾分可愛らしい外見ではあったが、見たものはこう呼ぶだろう。 『悪魔』と。
「タカトくん、あれは"インプモン"……正体がよくわからないデジモンなんだ。気をつけて」
ジェンリャが耳打ちした。
「そう警戒すんなってー! 俺はお前らの傍観者なんだよ。 このデジモンバトルのよー」
「そうかな? 君は僕らを掻き回そうと妙な噂を吹いて回っているらしいけど――」
ユウがインプモンに言った。
「ウワサぁ? 俺はお前らに有益な情報を与えてやってんだぜぇ?」
ジェンリャの懐疑的な態度をあざ笑うかのように、インプモンは肩をすくめた。
「そんなことよりよぉ、タカト。 お前、おもしれえじゃんか。 降臨のカードに絵をかいちまうなんて。 初めて見たぜ、ソイツ?」
インプモンはギルモンを指差した。ギルモンはそれを見るや否や、唸り声を上げて威嚇する。
「えっ……これって絵を書くんじゃないの?」
「いや、どちらが正しい使い方はわからないけど、僕らは白紙のままカードをスラッシュしたら、パートナーのデジモンのほうから――」
「ぎゃはははっ! デジヴァイス・アークも驚いたろうな! 規格外の動作を実行させられたってわけだ。ウヒヒヒヒ!!」
慌てふためくタカトの様子を見て、インプモンは、腹を抱えて笑った。
「な、なんだよ! いいじゃないか、だってギルモンは――!」
余りにも人を食ったようなインプモンの態度に、タカトは訳もなく苛立った。
「ヒヒ! ワリィワリィ、でもよー、そろそろちゃんと、契約したほうがいいんじゃねえか? ……そろそろ、『消えちまう』ぜ?」
えっ? とタカトはギルモンの方を振り返る。
「ぎるる?」
見ると、ギルモンの体が、細かい粒子の粒になって、――消えようとしていた。
体の一部が、半透明になっている。
「わわわっ! ギルモン!?」
「タカト君、ギルモンをカードとデジヴァイスに戻すんだ!」
ジェンリャがタカトに言った。
「デジモンは長時間、この世界にはとどまれないんだ! だから、」
「契約すりゃいいんだ。 契約すればデータはカードに取っておけるし、存在もアーク内で維持できる」
「えっ!? えっ!?」
言われるまま、タカトは、カードを、ギルモンの体に押し当てる。
「ぎるる」
ギルモンが鳴いた。 すると、ギルモンの体は細かい粒になって、カードの中に吸い込まれていった。
そして、ギルモンの体の中から、光の球のようなものが現れ、そちらはデジヴァイスに吸い込まれた。
と、タカトの色鉛筆で書かれた年齢相応のカードのイラストが、まるでプロのイラストレーターに書かれたような写実的なものへと変化した。
「ヒヒ、おめでとさん、それでお前もテイマーだ。 面白くなってきやがった。 これで、今晩、テイマーは全員揃ったぜ」
「揃った!? 15人揃ったっていうの?」
ジェンリャがインプモンに言った。
「ああ、これからが始まりだぜ? もしかしたら、本当の……な?」
ぎゃっはっはっはっは、と。 インプモンは下品な高笑いを残して、その場を立ち去った。
タカトは、画面を覗き込んだ。
画面の中では……ギルモンが元気そうな姿で歩いている。
「ギルモン!」
タカトはその様子を見てほっとした顔を浮かべた。
「これで、君も名実共に”テイマー”ってわけだ。 なら、話しておかなきゃいけないね……これからウチにこないか? 色々と説明するよ」
ジェンリャは言った。
ジェンリャに招かれたタカトは、タギル、ユウの二人と別れ、ジェンリャに連れられるまま、彼の家に向かった。
新宿駅西口からしばらく歩いたところに、ジェンリャの家はあった。
中国人の父親がいるというので、少し不安を抱えたタカトであったが、なんのことはないよくあるマンションだった。
しかし、異質だったのは、彼の部屋だった。
「うわあ……」
彼の部屋は小学生離れしていた。
普通、自分と同じ年頃の子供の部屋といえば、玩具にコミック本、ゲーム機やサッカーボールなんかが置いてあるが、
彼の部屋を埋め尽くしているのは、コンピューターや計器、見たことないデジタル器具だった。
「もともと僕の兄さんが使ってた部屋なんだ。 パソコンとかも、いくつか貰ってね。今兄さんは家をでてるんだ」
「へぇ、李くん、でもこれ使ってるんだ?」
「うん、父さんがこういう仕事をしているから、暇なときは色々教わってる」
ジェンリャはパソコンデスクの椅子に腰掛けた。
タカトも促されるまま、ジェンリャのベッドに腰掛けた。
「タカト君も、デジヴァイスに"選ばれし子供"である以上、他人事じゃないもんね。話しておかなくちゃいけないこともあると思って」
ジェンリャはタカトに、自分のデジヴァイスを差し出した。
形状はタカトのものと全く同じだった。 ただカラーリングだけが違った。
タカトのものが、まるで燃える様な赤いカラーリングであるのに対して、
彼のデジヴァイスは白地に、金属的な緑色の縁取りがされていた。
「デジヴァイス。 アニメの言葉を借りると、”人間とデジモンをつなぐ聖なるデヴァイス”だね。そして、デジモンテイマーの証」
ジェンリャはにっこりと笑った。
タカトも、自分のデジヴァイスをポケットから取り出して眺めてみた。
「僕はね、多分タカト君も一緒だと思うけど。本当のデジモンと会いたいって、強く思ったんだ。 そしたら、このデジヴァイスと、テリアモンが現れたんだ」
「え……」
「みんな、そうなんだ、テイマーの子って」
さっき出会ったタギルやユウ。 もしかして、あの少女も――? とタカトは思った。
少なくとも、自分はそうだった。 タカトは夢中で夢想していた、毎日毎日。デジモンと会える事を。
「僕も、テリアモンに会えたときはとても嬉しかった」
ジェンリャは笑顔で言った、しかし、
「……けどね、僕たちデジモンテイマーは、デジモンに会えたことばかり、喜んでもいられないんだ」
と、ジェンリャは急に顔を曇らせていった。
タカトくん、とジェンリャは真剣な面持ちでタカトの目を見ながら言う。
「どうして、僕たちは、デジヴァイスとデジモンを与えられたんだと思う? そして――どうしてデジモンたちが僕たちの世界に現れ始めたんだと思う?」
急に張り詰めた表情をしたジェンリャに、タカトは面食らった。
「え……」
考えても見なかった。 そういえば、これだけ夢みたいな出来事が連続しているのに、それを疑問に思うことなんて一つもなかった。
それだけタカトは浮かれていたのだ。
「これはまだ推測だけどね、タカトくん。 このデジヴァイスは、リアルワールドに現れるデジモンを倒すために、この世界に送り込まれたんじゃないかと思うんだ」
「リアルワールドに来るデジモンを? って、そんなにデジモンが?」
「実はね、タカト君。 今この新宿近辺には、不可思議な現象が相次いでるんだ」
ジェンリャは手元にあったパソコンを操作した。画面には新宿の地図や、ツイッター、インターネットの掲示板が表示された。
地図にはいくつもの赤い点。 画面には『霧の中浮かび上がる巨大な影』という写真や、
『謎の通信異常』『第二次デジタルハザードの予兆か?』などのネットニュースの記事が映し出された。
「タカトくん、最近停電多くない?」
「そういえば……」
ここ数日、東京都内で、謎の停電や、信号機の異常。 ネットワークのダウンなどの事故が多発していた。
タカトらの通う小学校でも、昼間謎の停電が起きて、ちょっとした騒ぎになることがあった。
「ああいう事故って、この世界に紛れ込んだデジモンが起こしているんだ」
「え、それってどうして……」
『データをたべないと、デジモンはバラバラになっちゃうんだよー』
え? とタカトは辺りを見回した。 今、テリアモンの声が聞こえたような。
と、タカトは気づいた。 ジェンリャのデジヴァイスから、テリアモンの声が頭の中に直接届いたのだ。
『デジモンはデジモンを倒してたべるか、データをたべつづけないと』
「この世界に、”デジタルワールド”からはぐれてやって来たデジモン達は、この世界に留まるために、データをたべ続ける。それが事故の原因なんだ。
普通の人達には、それがデジモンの仕業だ何てわからないから性質が悪い。事故のせいで、怪我人も出てる。
ほうっておいたら、この世界がめちゃくちゃになっちゃう。 それに、データをたべ続けて、満腹になったデジモンは――」
ジェンリャはそこまで言って、言葉を止めた。
そして、テリアモンが続けた。
『実体化するんだよ、そいつとー、ぼくみたいにねー』
形をもった存在として、この世界に現れる。
そして、電子上の脅威として猛威を振るうと共に、現実の世界でも怪物として君臨する。
そういうことらしかった。
「タカトくん、そこで、提案なんだけど。 明日、僕と一緒に”はぐれデジモン”退治に行かないか? そこで君に決めてほしいんだ」
「決める?」
「君自身が、テイマーとしてどうあるのか、って事だよ」
「そんなの決まってるよ! 悪さするデジモンがいるなら、僕とギルモンでやっつけるのさ!」
「……そっか。 それが多分、"選ばれし子供"の役目だもんね。うん、僕も、君がどういうテイマーなのか。 ちゃんと見させてもらうよ」
ジェンリャはそう言って少し笑った。
「そうだタカト君、その前に君にカードの使い方を教えてあげるよ! ギルモンと契約したんだ。多分、"スロット"にカードが装填されてるよ」
「カード?」
ジェンリャはタカトのデジヴァイスを操作した。
画面が切り替わり、「CARD HOLDER」の表示となった。そこには更に4/13と表示されていた。
「この一番大きいボタンを押すと、カードが具現化(リアライズ)するよ」
タカトは言われるがままボタンを押した。
『REALIZE』
電子音声が響き、デジヴァイスの画面が強く光ると、"画面からカードが四枚出てきた"
「わわ」
あわててカードを受け取るタカト。
「デジモン達は、このリアルワールドでは強さがだいぶ制限されるみたい。だから僕達はこのカードを使って、ここぞという時にデジモンたち本来の実力を引き出してあげるんだ」
タカトは、手元の四枚のカードを見た。
・攻撃プラグインAというカードが2枚。 これはあの少女、ルキも使ってたカード。アタックのカードだ。
・高速プラグインBというカードが1枚。 これもデジモンの能力を強化するカードなんだろうか。
・そして、最後の一枚はギルモンのカードだった。
「攻撃力重視の"デック"なんだね。君のギルモン。強そうだったもんな」
ジェンリャは興味深そうに言った。
「じゃ、それぞれのカードの使い方、説明するよ」
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デジモンアニメの主人公、工藤タイキ。
タカトは彼に憧れていた。
決断力に溢れ、周りから頼りにされ、仲間と、どんな困難にも立ち向かい、乗り越える。
彼のようになりたいと、どれだけ願ったかわからない。
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タカトは、ゴーグルを頭にはめた。
それは彼にとってもう一つのテイマーの証。
「どうしたんだよタカト、ゴーグルなんてはめて」
「だって僕、デジモンテイマーなんだもん」
「はぁ?」
「ねえ、ヒロカズ? もし本当にデジモンがいたらどうする? ふふん」
ヒロカズの怪訝そうな顔をよそに、タカトは上機嫌だった。
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昼休み、タカトはそっと、デジヴァイスを覗き込む。
(ぎるる?)
(ギルモン、元気?)
(タカト!)
思ったとおりだ。
昨日のテリアモンのように、頭に思うだけで、ギルモンと会話できた。
(タカト! おなか減った)
「え」
思わずタカトは声に出した。
(おなかすいた? って、どうしよう、なにか食べ物をあげればいいのかな ……って何を)
(おなかすいたー おなかすいたー ぐるるるー)
ギルモンは駄々をこね始める。 と、
(タカト君?)
(李くん!?)
頭の中に、なんとジェンリャの声が聞こえた。
(やっぱりタカト君か、 ごめん、ギルモンと何か話してた?)
(……わかるの?)
と、タカトは"頭の声"で思った。
(いや、会話の内容までわからないんだけどね、なんていうかテイマーとデジモンが会話してるのって、なんとなく、察するんだ。 これもデジヴァイスの機能かな? そして、こうやってタカト君とテレパシーしてるのも)
(そうみたいだね……)
”頭の声”でタカトとジェンリャは自由に会話することが出来た。
どうやら、任意で聞こえるようにも、相手にわからないように会話することも出来るみたいだった。
(ギルモンが"おなかすいた"って言ってるんだけど、デジモンってなにたべるの? データだっけ?)
(そうか、昨日"降臨"して以来、何も食べてないんだね。 成長期だし……消耗も早いか。そうだ、今から屋上来てくれる?)
タカトはジェンに言われるまま、屋上に向かった。
高いフェンスに覆われた屋上には、誰も来ていなかった。
それもその筈、普段は立ち入り禁止で電子ロックが架けられている。
しかし、今日は何故かドアに鍵はかかっておらず、開け放しとなっていた。
「タカト君、こっち」
ジェンリャが先に来ていて、タカトを手招きした。
「李くん?」
「これを、スラッシュして」
ジェンリャはタカトを手招きして、カードを手渡した。
「えびバーガー?」
「この間、"エビドラモン"を倒したら手に入れたんだ」
(あいつ強かったねー、あとおいしよーそれ、ギルモンよかったねー)
と、昨日と同様、テリアモンの声も頭の中に聞こえた。
ジェンリャにいわれるがまま、タカトはカードをスラッシュした。
ピピピ、と音を立ててデジヴァイスが反応した。
「あ!」
すると、画面の中に変化があった。 ギルモンの目の前に大きなハンバーガーが現れたのだ。
「食べなよギルモン」
ジェンリャが言った。
(ぎるるるー!!)
ギルモンはうれしそうにご馳走に噛み付いた。
「よかったね、ギルモン! ありがとう!李くん! それにしてもこんなカードもあるんだ! ……あっ!?」
タカトはスラッシュしたカードを返そうとしたが、カードは”細かい粒子のように”なって消えた。
「消えちゃった……?」
「そういう系統のカードは消耗品なんだ」
(結構貴重なんだよー。 感謝しなよー)
テリアモンが言った。
(おなかいっぱい、おなかいっぱい……)
そんな二人を知らず、ギルモンはハンバーガーを食べて満足そうだった。
しかし、
(ぎるる……)
満腹になった途端、今度はうなり声を上げて、画面の中をウロウロと歩き回り始めた。
「……どうしたんだろ? ギルモン」
タカトはジェンリャに聞いた。
「……もの足りないんじゃないかな。 "捕食(ロード)"した訳じゃないし」
「ろーど?」
ジェンリャの言った言葉に更に尋ね返すタカト。
「タカトくん、僕らが"はぐれデジモン"をハントしているのは、この世界を護るためだ。でもね、実はモンスターを倒すことでそれなりに見返りもあるんだ。 昨日、僕はデジモンはデータを食べなきゃ体を維持できないって言ったよね?」
「そういえば……」
「僕たちのパートナーだって例外じゃない。……ギルモンが現れたとき、君が彼をかばう姿を見るまで、僕たちはギルモンをハントするつもりだった」
「え……」
「君のギルモンは成長期だけど、とても強いエネルギーを持っていた。 僕たちは、君のギルモンを、パートナーデジモンたちに食べ(ロード)させるつもりで集まったんだ」
「そんな……」
「もちろん、僕たちが狙うのは悪さをするデジモンだけだ。 でもね、デジモンはデジモンを倒すことで、そのカラダを保てるし、強くなる。だからテイマー同士で獲物の取り合いになることもあるんだ。 ……昨日ギルモンを襲ったあの女の子。"牧野留姫"のようなタイプの子もいる。……自分のデジモンを強くするために手段選ばないんだ。 他のテイマーを攻撃してでも、デジモンを自分たちで倒し、パートナーに捕食(ロード)させようとする」
ジェンリャはため息をついた。
「テイマーって、そんなにいるの?」
タカトはジェンに聞いた。
「多分、15人」
「多分?」
「これ、見てよ」
ジェンリャは自分のデジヴァイスをタカトに見せた。
『Tamers 15/15』
「君が、ギルモンと契約した瞬間に、15分の15になったんだ。 だから多分、僕たちみたいなテイマーは全部で15人。 僕は、昨日の二人以外にも、何人かとは知り合ってる」
「15人……」
そういえば、昨日のあの奇妙なデジモン、インプモンもそんなことを言っていた気がする。
そこで、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
「……そうだ。タカト君。 今日のデジモンハントには、もう一人テイマーが同行するんだ。 君がまだ会ったこと無い人だよ。後で紹介するね」
ジェンリャはそういって教室へと帰っていった。
「僕らみたいなテイマーが15人か……」
一体どんな子たちなんだろう。 タカトの胸は、期待と不安の入り混じった、不思議な震えが起こっていた。
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「おい、タカト! 帰ろうぜ」
放課後、ヒロカズとケンタがタカトに声をかけてきた。
「あ、うん……ごめん! 今日は用事あるんだ!」
しかし、タカトはジェンリャとの約束があるため、そんな二人を振り切って一人急いで帰途についた。
「あっ……」
「なんだよタカト、最近付き合いわるいなー」
「アイツ、そういえば、なーんか変なこと言ってたな……」
そんなタカトの様子を二人は怪訝な顔で見送った。
タカトは急いで自宅に帰ると、靴を脱ぎ、自室にカバンを置いて、更にまた靴をはき直した。
「こらタカト! どこに行くの?」
「ごめん、ちょっと友達と遊んでくるー!」
「今日は遅くならないのよ! もう」
母親の心配する声を軽く流し、売れ残りのパンを幾つかポケットに詰め込む。
そして、デジヴァイスを持っていることを確認すると、玄関から飛び出そうとした――が、
「あら、ジュリちゃん、いらっしゃい」
「――っ!」
クラスメートの加藤ジュリだ。
時々彼女は、自分の店にパンを買いに来る。
「あら、タカトくん、どうしたのそんなに慌てて」
「あっ……と、ちょっと……」
「秘密の用事?」
「え、う、うん!」
彼女を前にすると、なんでか上手くしゃべれない。不思議な感じ。
もしかして、この感じって……とタカトはいつも思う。
でも、それはまだ漠然として、形として表現できるものではなかった。
――変にぎこちなくなるのも嫌なので、タカトはそれ以上考えないようにしていた。
「ふーん、いいなあ。ふふ」
何故かジュリは声をこぼして笑った。
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ジェンリャと約束の場所に向かう途中。
タカトはデジヴァイスの画面を幾度と無く覗き込んだ。
「ギルモン」
(?)
ギルモンはいつも、キョトン、とした顔で画面の中から彼を見た。
「僕は、君と一緒にいられるだけでうれしいんだけど――」
(タカト、ギルモン、たたかう?)
「うん、そうしなくちゃいけないみたい。 悪いデジモンが来てくるんだから――でも、ギルモンがこの世界に生まれたのって、もしかしたらそういうデジモンと戦うためなのかも!」
(ん? わかんない でも、ギルモン戦う!)
「うん、そうだよ、僕らはテイマーとパートナーなんだっ!!」
アニメの主人公タイキとアグモンの姿を思い出すタカト。
互いを信頼し、助け合い、困難を乗り越える。
彼らのようになれたらいいな。とタカトは願った。
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夕闇が、都庁を包む。
東京の夜は明るく、一晩中眠ることが無い。
だが、昼間のある種、清廉とした機能的な光から、夜の怪しい官能的な光へと映るその合間。
昼が終わり夜が始まる夕方。
その時間帯はどちらの光も存在していない。奇妙な時間。
それは古来より、最も暗闇の差す時間だった。
それを逢魔ヶ時と、人は呼んだ。
機械と電子の支配する、この現代の東京においても、その不気味な時空は依然として存在していた。
新宿のとある街角、夕日が作り出す、色濃いの陰影。 その中、電柱から伸びる、一本の闇。
と、その闇から、影から、"更なる影"が生まれた。
途端、電柱に、石を打ったような火花が飛んだ。
そして、そこから、湯気が噴出すようにして、白い霧が現れた。
うっすらとした霧は、やがて周囲の人間が気がつかないうちにその一帯を覆った。
「ケヘヘ! またお客さんだぜぇ、ヒヒッ、ゲームが始まったんだ。今日のゲストは凄そうだぜぇ……」
それをビルの上から見下ろすインプモン。
今日も少年たちの、逢魔ヶ時が訪れる――。
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「それじゃテイマーとして、初ハントだね。 タカト君、準備はいい?」
「う、うん。 あ、李くん、もう一人は」
「少し遅れてくるけど、もうすぐ着くよ。 ……タカトくん、緊張してる」
「え、えーと」
カードも確認した。 デジヴァイスも持ってきた。
そして……。
「ギルモン、大丈夫だよね?」
(ギルモンたたかう!)
「うん、大丈夫……あっ」
緊張するタカトの肩を、ジェンリャは叩いた。
「心配ないさ、ギルモンは負けない。 ”デジヴァイスと僕ら”がいる限り、僕らのデジモンが”はぐれデジモン”に負けることはありえない」
「え……?」
「今にわかるよ」
モーマンタイ
(無問題ってことさー)
テリアモンが陽気に言った。
(きらくにいこうぜーやればできるさー、なあギルモンー)
(んあ?)
「さあ! 行こうか!!」
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『SEARCH MODE』
李はデジヴァイスを操作すると、電子音声が発せられ、デジヴァイスの画面に矢印が表示された。
『SEARCH WILD-ONE』
「わいるど……わん?」
「はぐれデジモンの事だよ」
ジェンリャとタカトは矢印に従って夕刻の新宿を歩いた。
しかし、ジェンリャにはある程度、目的地の目星がついているようだった。
「この間、この近くで携帯の局地的な電波障害があった」
「きょくちてき?」
タカトには良くわからない言葉だった。
「デジモンが出るところでは必ずコンピュータの障害が起きるんだよ」
ジェンリャは言った。
やがて、二人の、目の前に異様な光景が現れた。
霧だ。
とある裏通りに白い靄のような濃霧。
東京の真ん中、今日は晴れていた。それなにこんな霧が発生するなんて。
「ギルモンの時と同じだ……」
そして、更に異様なことに、周りの人間は――
「霧を避けてる? でも見えてないみたい」
「何度か、この現象に触れてわかったけど。デジヴァイスを持ってない人にはコレは見えないみたいだね。 それに、無意識にこの中に入るのを避けるようになるみたい」
「だから、デジモンが見つかって、ニュースになったりしないんだ」
「となると、やっぱり僕たちで何とかしなきゃいけないって事だよ、さあ、入ろう」
ジェンリャは持っていた丸レンズのサングラスを架けて、霧の中に入っていった。
タカトも後に続こうとする。 ぱちり、と静電気のような痛みが、霧に触れた部分に起きた。
タカトの中に、一瞬戸惑いや恐怖が生まれる。
しかし――
「行くよ、ギルモン」
タカトは意を決し、タカトもまたジェンリャの様に、額に架けていたゴーグルを目元にはめて、霧の中に入っていった。