「……わかった。今回も恩に着るよ。じゃあ、遠慮無く――」
部屋で電話を掛けていたコルネリエが通話を切り、時計を見ればそろそろ大雑把に指定した『夜』と呼べるべき時間に差し掛かっていた。
少しして、一度の素早く無遠慮なチャイムが彼女の部屋を駆け巡る。
ドアを開けて迎え入れてみると、最初に来たのは柑那だった。更にその後ろから、続々とやって来る仲間達。
コルネリエから見て、病院で真相を話した仲間は誰一人として欠けていない。皆が、危険を承知でコルネリエを助ける為にやってきていた。
「――あ、上がって」
先頭だった柑那の『待たせておく気か』と言いたげな視線に、コルネリエは感動と興奮に高鳴っていた心を落ち着けて皆を自室へ入れた。
柑那の手にはライフル用らしき武器ケースが握られていて、コルネリエが訊ねてみると、ケースの中身はコルネリエ用だと柑那は語った。
「全員、揃ってるみたいね」
円卓に座るアリアが周囲を見渡して呟いた。
「私はどうしても協力する、と言ったしな」
武器ケースを脇に置いた柑那は迷うこと無く語る。他の皆もそうだった。
「で? 作戦はあるのー?」
円卓を囲む理子は持ち込みのジュースを煽ってから、コルネリエへ問う。対するコルネリエの返答は単純だった。
「ハデにやる。さっき、ミーツェから一つ許可を取った。一緒に、緊急時の公道走行許可も通してもらう。リータはあたしを見つけた――多分、目立てばアイツは来る」
「正気か? そんな当てにならない作戦で――」
キンジが反論しようとすると、柑那がそれを遮った。
「当てにならなくてもやるしかない――ってことか」
「そういうこと。全員、それでもやる?」
全く以て無謀極まりない作戦。リータが現れるとの確証もない。そんな不安だらけの作戦を提示したコルネリエが円卓をゆっくりと見渡すが、誰一人として席を立とうとはしなかった。
キンジ達にとって、円卓についた時点から既に『コルネリエとの契約』になったのだ。武偵は必ず契約を全うしなければならない。だがそれ以上に、『仲間を助ける』という武偵の意識が皆にあったからこそ、無謀な作戦でも彼らは降りなかった。
「決まりだ。コルネリエ、武装は最低限に、且つ効果的にだ」
作戦立案が通ると、柑那は傍らに置いていたライフルケースを開いてコルネリエへ見せる。
著名なM16アサルトライフルの様だが、それより遥かに小さく組み上げられている。レシーバーにはナイツアーマメントカンパニーの、騎士の甲冑が描かれたロゴが刻まれていた。
「ナイツPDW。使用する弾は特殊だが、小型で持ち運びには良い。それから、これは平賀から無理矢理押し付けられた。リストに使用するナイフみたいだが」
ライフルとマガジンを二本、90発の6mm口径弾と一緒に柑那は手首を覆うような対のバンドを手渡した。
大きなリストバンドのようなそれにはスライド式のナイフが格納されており、コルネリエが試しに装着し動作を確認すると、引っ掛けた指、手首の動きと連動してナイフが手首から突き出す物だと判明する。
「ほほう。これ、長袖で上手く隠せば不意討ちに使えそうだなー」
「なんだ、長袖の制服は無いのか?」
「うん」
あっさりとしたコルネリエの返しに、柑那は深い溜め息を吐いた。だが、何も隠す方法は一つではない。
奥の手として、コートを羽織る手もある。コルネリエはクローゼットから、オリーブ色のミリタリーコートを取り出して、セーラー服の上から羽織る。スライドナイフはこれで完全に隠れた形だ。
武装も全員の意見を参考に、アデライードから受け取った鎌を置いて、愛用の刀を。ライフルはナイツPDW、ピストルにゴールドカスタムとコルネリエにしては落ち着いた武装となった。
仲間たちも準備は出来ている。作戦は道すがら話すことにし、コルネリエの案内で皆はリューディアとの決戦の地となった青海ふ頭へと向かう。
「ミーツェが、ふ頭の倉庫を一棟所有してるんだ。今回はミーツェに頼んで、そこから車を借りる。やることは簡単――全員で暴走して、とにかく目立つこと。後は向こうから見つけてくれる。……“同じ”だからこその勘だけどさ」
そう皆へ語ったコルネリエの表情は暗い。自分が終わらせた、と考えていた“研究”が再び再開していて、また自分と同じ苦しみを味わっている子供達が居る。
そう思っただけで、コルネリエの胸はどこか締め付けられるようだった。だからこそ、リータを倒す――否、救わなければならないのだとコルネリエは心に深く刻んだ。そして今度こそ、研究を終わらせるのだと誓った。
仲間達の手を借りれば、コルネリエより能力が上になるリータを相手に出来ると堅く信じて、彼女は青海を目指す。
久しぶりの投稿ですが、字数かなり少な目です。
幕間として……。