有村 渚は死してなお働かない。   作:汐留 夏華

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前回までのあらすじ!

幼馴染みが家に来ることになりました。




第5話。亡くしてしまったはずのものが今そこに。

 

「うーん…」

 

その日、俺は悩んでいた。

なんとか回避できないものか。

夜の8時。夏でももう日が沈むような遅い時刻に、幽霊である有村渚は、幼馴染みの齋藤吉見に会う。

会うだけなら良かったものの、吉見は渚の家まで行きたいとお願いをした。

上目遣いで目をウルウルさせてお願いされたので断るわけにもいかず、OKを出してしまった。

 

「大丈夫かなぁ…」

 

不安で足取りは重い。

なんといっても、家にはぶっ倒れてる七色さんがいるのだ。

一応吉見は俺の元彼女を知っているから、あまり今は家に上げたくない…

別にやましいことをしているわけではないが、変に誤解されるのも嫌だ。

 

「嬉しいや…こうしてまた2人で歩ける日が来るなんて思わなかったよ…」

 

今の季節は夏。俺が死亡したのは冬だから、半年位俺は失踪していたということになる。

甘えん坊なこいつは、俺が死んだと聞いた時どうしたんだろう…そう考えると、胸が少し痛むような気持ちになった。

 

「そうだな…懐かしいな」

 

と、曖昧な返事をしながら。

 

 

その後少し話をした。

ほとんど吉見の話だったが。

今部活で何をしてるーとか、仲良かった子から急に告白されて困ったーとか。

俺も何か話してやりたかったが、流石に死んだから地獄へ行くはずだったけど、何故か現世に戻ってきた…なんて事、言えなかった。

 

話し込んでいると、俺のアパートの前まで着いていた。

あー、もうこれ入らないといけないやつだわ…と思ったその時だった。

ズドン!と、何かが落ちるような音が遠くから聞こえた。

どうやらその音は、市役所の方から聞こえてきたらしい。どう考えても普通に鳴り響くような音ではなかった。

俺はあの音がとても気になってしまった。

 

「渚、あの音が気になったの?」

 

不意に吉見に心の中を読まれ、俺はびっくりした。こいつはいつもそうだ。俺がなにか気になったりすると、すぐにこいつには分かられてしまう。俺がわかりやすいだけなのかもしれないけどさ。

 

「いいよ、ボク待ってる。行ってきなよ」

 

「…ありがとう」

 

俺は吉見に、七色さん用のコンビニ弁当を託して、音のしたと思われる、市役所の方向へと向かって走り出した。

この時完全に七色さんが家の中にいてめんどくさい事になりそうという思考が抜け落ちていた。後々気が付いて帰るに帰れなくなるのは目に見えていた。

 

「…行っちゃったか。昔っから何か気になると他のことには見向きもしなくなるんだもんなぁ」

 

吉見は、以前渚に合鍵を貰っていた。

突然電話をかけてきて、いつもいつも容赦なく家の前に立ってたりするもんだから、渚が合鍵を渡していたのだった。まぁ、合鍵を貰っていても電話をかけてOKを貰うまで家には入らなかったのだが。

 

「しっかし…なんでハンバーグなんだろう…?あのコンビニには渚の大好きなたらこスパゲティもあったのに…」

 

吉見が階段を登ると、一つだけ不自然な部屋が見えた。なんと扉が無い。

しかし、その不自然な部屋の場所には覚えがあった。むしろありすぎて困った。

 

「え、あれって…渚の部屋、だよね?」

 

なんで扉が無くなってるんだろ…?

玄関の前に立つと、目の前には、散乱している家具が伺えた。

まるで家の中のものをひっくり返して何かを探したような跡だった。

掃除が趣味でもある渚が、出かける前にこんなに荒らしていくわけは無いし、ドアをぶち壊されてるのにも関わらず1人で外を出歩くような事も絶対にしないだろう。

 

「こ、この部屋で何があったんだ…?」

 

もしかしたら強盗に入られてしまったのかもしれない。

渚はそこそこ有名な財閥の長男である。親にはめちゃめちゃ優しくされていて、毎月仕送りも貰っていたらしい。

ありえる話だ。

急いで渚に連絡しないと…と、携帯を取り出そうとしたその時。

ガタッ…パタン

何かが倒れる音がした。

更にガサゴソしている音も聞こえた。

…中に誰かいる。

確信した。絶対にまだ犯人は中でものを漁っている。

 

「…行くしかない!」

 

吉見は一応合気道でそれなりに結果を残している。自身の身を守るくらいの事はできるはずと踏んで、家の中に足を踏み入れた。

恐る恐る歩みを進めると、どうやら音の出ている場所は、渚の部屋らしい。

吉見は勇気を振り絞り、犯人の前へ飛び出した。

 

「そこのお前!ここで何してる!」

 

「…へ?」

 

気の抜けた返事をしたのは、渚の生前の彼女、明河 虹音(あけかわ にじね)にとても良く似ている女性だった。

不意に胸に何かがこみ上げてきた。

自然とボクは、涙を浮かべていた。

 

「…に、虹音…さん…!?」

 

「え、え…?」

 

虹音に似ているその女性は、ただひたすら「?」を浮かべていた。

 

「え、えーっと…どちら様、でしょうか…?」

 

「ぼ、ボクを覚えていませんか!?ほら、渚の幼馴染みの…!」

 

この人が本物の虹音なら、こんな質問するはずがない。そんな簡単な事すら、その瞬間は気が付くことが出来なかった。

 

「そ、その…ごめんなさい…」

 

「あ…そ、そう…ですか…すいません、忘れてください…」

 

ボクのことを知らないのは当たり前だ。

彼女は本物の虹音ではないのだから。

…ならば、この女性はいったい誰なんだ?

そうだ。彼女が虹音では無いとすると、いったいどこの誰なんだ。

虹音の葬式で渚は、こんな事を言っていた。

「虹音を忘れることなんて…到底できない。もう2度と俺は、人を好きになる事は無いんだろうな」と。

渚は嘘をつかない。渚はおそらく、この女性と虹音さんを重ねているんだろう。

でももうこの世に虹音さんはいない。

目を覚まさせてあげる必要が、渚にはあるとボクは感じた。

ボクが、私が虹音さんの代わりに…

 

「すみません。あなたが虹音さんでは無いのなら…あなたは、どこの誰で、渚とどんな関係なんですか?」

 

「えっ…!?」

 

吉見の目から光は消え、今にも殺しにかかりそうな殺気を放っている。

そうだ。渚の人生に、余計な女などいらない。虹音さんの為にも、私はこの女を排除しなければならない…!

 

「え、えーっと…その…う、うーん…」

 

相手は返答をとてつもなくしぶっている。やはり汚い手段で渚を誑かし、金目当てでいい顔してるだけに違いない。虹音さんの姿まで使って…絶対に消さねば。この場所は、渚の隣は、虹音だけの聖域なのだから。

 

「早く答えてくださいよ、偽物さん」

 

その冷たい眼は、あの女を捉えて離さなかった。

 

 

続く。

 




えー、どうもどうもお久しぶりです汐留夏華です!
いやー、この度は更新が大幅に遅れてしまって申し訳ありません…完全に忘れてしまってました…
pixivの方でも小説書いているんですが、そっちの方ばかり気にしてしまったり、お絵描きしてたりしたらこっちの更新のことを完全に頭から無くしてしまってましたw
このお話、季節は夏なんですが、私達の現世はそろそろ冬に入るか入らないかってレベルの寒さになってきましたね。
我が家ではそろそろオフトゥンに新たに毛布様がパーティ入りしそうですw
暖かいオフトゥンってやっぱり吸い込まれますよね…w

それではまた次回も!
早めに更新するようにします!
頑張ります!
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