主人公不在の修羅場death☆
前回のラストから少し前に遡る…
有村 渚は走っていた。市役所の方から聞こえてきた謎の落下音の方へと。気になったことがあればすぐに向かっていってしまう昔からの悪い癖はまだまだちっとも治っていないようだ。家の中では七色さんと吉見が鉢合わせして大変なことになっているとも知らずに、ただひたすらあの音の元へと走っていた。
「あの落下音…とてもじゃないが普通じゃない。なにか、こう、とても大きい物が落っこちたような音がしていた気がする…」
渚の家から市役所まではそこそこの距離がある。そんな場所であんなに大きな音が聞こえたというのも、なかなか普通な事ではない。市役所の放送だって、前の道を車が通れば聞こえなくなるくらいには離れているはずなのに。
「なーんか、俺が死んでから普通じゃない事起こりすぎじゃないかな…?」
冷静になって考えてみれば、ココ最近はおかしな出来事ばかり起こっている気がする。死んだと思ったらなぜか現世に戻ってきたり、元カノにどことなく似ている居候っぽいのが増えたり、大家さんには俺の姿が見えていたり、死人のはずなのに物に触れるようになったり…この辺りの地域には、そこそこなオカルトっぽい何かがあるとかなんとか言われていたが、本当にそうなのかと思い始めてくる。正直そんなものは信じたくはないが、こうして今俺はこの世界を感じているのだから、信じざるを得ないのだ。
「よっし、着いた…って、あれ?」
全力ダッシュで息切れしながら市役所へ着いたのだが、目の前に広がっていたのは『いつもと同じ風景』だった。何一つ、どこをとっても変わったところはない。看板も、ちょっと派手目なマスコットキャラのポスターも、職員の方が毎日水やりをしていた花壇の花も、いつもと全く同じだった。おそらく、さっきのあの音の出どころはこの辺だと思ったのだが…辺りも見渡してみても、この辺りにはとても大きなものが落ちてきたと思われる場所は無かった。
「うーん、俺の聞き間違えかな…?」
そんな訳ないとは思ったが、無いものは無いのだ仕方ない。さっさと帰っちゃおうと、体の向きを変えたその時だった。突然、後ろから後頭部に銃を突きつけられた。
ん???銃???
俺は驚きすぎて逆に声を上げることすらできなかった。というか、唐突すぎてなんもできなかった。ただただ立ち止まることしか。今何がどうなってんのこれ?
「案外、大人しいな…」
銃の男?かな、はそう言った。声がわりと低めなので、まぁたぶん男だろう。
「分かっていると思うが…俺はこれから、お前を殺す」
いやいやいや!分からねぇよ!?何がなんだか全然把握出来てないよ!?ハイパー超展開だよ!?てか俺もう既に死んでるよ!?
あっでも待てよ…?今の俺って物に触れるんだよな。この状況で致命傷でも受けたらどうなるんだろう…?まさか、マジで痛みとともに死が!?
「これが俺の任務なんでな…悪く思うなよ」
「ちょっ…!」
俺が止めようとするも、男は引き金を引き、銃は発射口から火を噴いた。大きな銃声が鳴り響き、発射された弾が俺の頭を貫き…はしたが、俺にダメージは一切なかった。
「…なっ…!?」
男は驚いていた。同じく、俺も驚いていた。頭を弾丸が貫通したってのに全然、全く痛くねぇ。二人して何が起きたか理解ができず、ただ呆然としていた。先に口を開いたのは、俺ではなく撃った男の方だった。
「…なっ…なな、なんだお前!不死身か!?」
撃たれた箇所を触っても、全く血が出ていない。というか俺って血とか通ってんの?そこから疑問なんだけど。痛みもないので、正直とても気持ちが悪かった。
「いや、その、えっと…俺、もう既に死んでて…その…幽霊なんだよ」
撃たれた俺は恐ろしい程に冷静だった。人とのコミュニケーションは死んでもなお苦手であったが、自己紹介くらいはできたはずなので良しとしよう。
一瞬の静寂が2人を包む。その一瞬はだいたい20秒くらいだったような気もする。
「ゆ、ゆゆっ、幽霊!?」
「あー、その、話すと長くなるんだけど…」
男は、さっきの声とはもはや別人になっていた。さしずめ怖がりな子が無理やりお化け屋敷に連れてこられた時のような声を出して、身体を震わせていた。めっちゃ怖がりだなコイツ。とりあえず俺は、この世界に来た経緯を男に話した。一通り話終えると、男もだんだん慣れてきたのか少しだけ余裕が出てきた様にも見えた。
「そ、そうか、不思議な事も…あるもんだな…」
「だよな〜」
聞くと、男は殺し屋家業をやっているらしい。まだまだ駆け出しだそうだが。てゆーか殺し屋なんてほんとに存在したんだな…物語の中の存在だと思ってたわ完全に。そんでもって、最初のターゲットは俺に酷似した人物なのだそうだ。撃たれたのが俺じゃなきゃ死んじゃってたね、確実に。
「うぅ…初めての任務でいきなり失敗だなんて…」
男は弱々しく泣き始めた。おいおい、やめてくれよこんな道のど真ん中で泣くのは。
「俺はその道のことは全然分からないけど、あんまり気を落とすなよ。ほら、誰だって最初はビギナーだろ?大丈夫だって!」
「そうは言っても…お父さんは俺を信じて送り出してくれたんだ…お父さんに合わせる顔がねぇよぉ…」
なんで撃たれたはずの俺が撃ったはずの相手を慰めてるんだろう…とか思いつつ、なんかもう泣きすぎてかわいそうに思えてきたので、とりあえず俺はこいつをウチに連れていくことにした。そこで色々話を聞こう。しかしこの時の俺は、今この瞬間にも二人の『女』が激突してるだなんて、知る由もなかった。
有村宅前にて。
結局あの大きな音の出どころは分からなかったが、何かあればきっとニュースで取り上げられるはずだと、気持ちを切り替える事にした。さてさて、ところであの2人は仲良くしてるかなと家の中を見てみると…
吉見と七色さんが取っ組み合いしてた。
「うわっ、なんだこれ!?」
俺たちはただただ呆然と見ているしかなかった。入り込む余地なんて1ミリも無かった。今仲裁に行ったら八つ裂きにされそうだ。
「この家、なんで扉が無いんだ…?」
「ツッコミ入れるところそこ!?」
この殺し屋さん、ボケ担当なのかなと思ってしまうほどの凄まじいボケだった。コイツ殺し屋やめて芸人目指したらいいのに…
このままでは埒が明かないので、とりあえず2人を引き離してどうどうしてみた。が、2人から闘争心は消えてないご様子。
「なんでケンカなんてしてたんだよ?」
「だ、だって…私が…この女…殺らなきゃ…!虹音さんが…!虹音さんが!!」
うわっ、正気じゃなさそうだぞこれ!?
その目は血走っていて、恐ろしい殺意を感じた。殺し屋さんもビビっていた。ヤベェなこいつ殺し屋になれるよマジで。
「虹音がどうした?アイツはもう…死んでるんだぞ?」
「でも渚は生きてた!じゃあ…虹音さんだって!」
う、勘違いされてるっぽいな、これは。この誤解を解くのはなかなか至難の技だぞ…なんていったって当事者である俺ですら自体を完全には把握出来てないんだからな。
「もし、仮にだ。仮にだぞ?アイツが生きているとしたら、おそらくここに来てくれるはずだろ?ここが、アイツと俺の家なんだから」
「そっ、そうだよ!だからこんなヤツ、入れてたらいけないんだよ!はやくコイツ追い出さなきゃ!確かに虹音さんには似てるけど、コイツは虹音さんじゃ無い!虹音さんが帰ってくる場所に、他の女は要らないじゃん!」
アイツの、帰ってくる場所…か。俺、いったい何の為にこの場所に帰ってきたんだろう?唐突にまたここに戻ってこれたって事は、何かしらの意味があるはずだ。無意味にここに帰ってきたって、古傷を抉られるだけだ。まぁ、ここが地獄ならそれが本来の目的なのかもしれんが。でもここは地獄なんかじゃない、そんな気がする。たぶんだけど、ここは本当に俺の生まれて育って死んだ町だ。しかし、アイツは俺の目の前で死んだ。俺は何もかも失ったはずだ。この世界に、まだなにか未練でもあるのだろうか?俺がここに帰ってきた理由…今の俺には、到底考えつかないな。
「…お前もアイツのこと、ちゃんと忘れないでいてくれたんだな。ありがとう」
俺は今、大事な問題に気が付くことが出来たのかもしれない。この場所に来たことに、意味があるのかもしれない。俺がここに戻ってきたように、もしかしたらアイツも戻ってくるかもしれない。
まだ何もわからないが、必ず分かる時が来ると、俺は確信していた。
続く。
こんにちは、こんばんわ!どうも、汐留 夏華です!
有村渚、第6話です!今回ちょっといつもより長めですね。なんか書いてるうちに長くなっちゃいましたw(言うほど長くないけど)
とうとう物語が動き始めていきますよ!今回はターニングポイントとと言っても過言じゃないんじゃないでしょーか!ホントはこれから悪の組織とかなんやらワラワラ出したかったけど、なんか無理そうだから出ないですねw
なるべくシリアスな感じでギャグも織り交ぜつつ、楽しげな物語にしていきたいと思っております!
さて、ここから恒例の(なぜか急に恒例にしていくスタイル)どーでもいい筆者の身の回りの出来事です!
とうとう筆者にも人生のターニングポイント的なところがやって来てるんですよ!ここからどうするかで私の人生決まりますね…皆さんも人生におけるターニングポイントではキチンと確認して、自分が後悔しないような選択をしてくださいね!私はもう既に後悔しているので!
では、次回の更新もお楽しみにしてください!