「うぉぉぉっ!」
今、俺は必死になって逃げていた。
あいつ、本気で殺しに来てるぞ!
『ほらほら、しっかり避けないと灰も残らんぞ?』
分かってるんだよ、そんなこと!
クッソ! 何とかして大逆転を生むような名案は無いのか!?
三択だ、三択で考えようっ!
答え① 割りとハンサムな俺は突如反撃のアイデアをひらめく。
答え② サイヤ人よろしくこの状況を打破することが出来る新しい力に目覚める。
答え③ どうしようもない。 現実は非情である。
『そらっ! この攻撃を避けられるか!?』
あ、無理だこれ。
拡散弾のような
答え-③ 答え③ 答え③……
◆
「見慣れた天井だ……」
一度やられた俺が目を覚ますと先ほどまでいた赤い空間ではなく見慣れた天井があった。
ここは……現実。
俺の部屋か。
『これで通算百敗目だな? 相棒』
ドライグ。
「お前、もう少し手加減しろよ……」
『断る、本気でやらないと修行にならんだろう?』
まぁ確かにな……
でも私怨を感じるのは気のせいか?
『もう少しおっぱいを我慢してくれたら手加減してやるぞ?』
ほらやっぱり。
俺――兵藤一誠は転生者である。
前世の名前は思い出せない。
どうしてこうなったのかとんと見当つかぬ。
分かっていることは少ない。
ただ自分は一度死んだ人間である事だけは記憶している。
そして……俺の中にいる赤い龍。
こいつのおかげでまともな人生は送れないことが確定している。
『歴代赤龍帝はろくでもない人生しか送っていないからな……すまないな相棒』
お前のせいじゃないだろ?
力に飲まれて、破滅したらそれはそいつの自業自得だ。
力そのものであるお前のせいじゃない。
『……そう言ってくれると嬉しいよ』
でもこいつには多くの人の人生を狂わせてしまったという罪の意識があるんだよな……
ドラゴンなんだから人間のことなんて気にしなきゃいいのに。
『まぁ最初は人間なんて……! と思っていた時期もあったさ、だが長いことこうやって人間の中にいると人と言う種が愛おしく感じるのだ……それが神器に俺を封印した聖書の神の目的だったのかもしれん』
人格……というか龍格? を丸くさせるのが目的だった可能性が……?
『さてな、もう既に聖書の神はいない以上、誰にもわからん』
……この世界の聖書の神は生きてる可能性があるけどな。
◆
俺が記憶を取り戻したというか思い出してしまったばかりの時はここがハイスクールD×Dの世界だとばかり思っていた。
名前は兵藤一誠だし、ドライグはいたし、神器が出せたしな。
だから俺は鍛えまくっている。
現実世界でドライグ監修の地獄のトレーニングをしたあと、神器の中に潜り込んでドライグ相手に模擬戦をする日々が続いている。
相当手加減したドライグに神器ありなら勝てる程度には強くなったのだが……未だに禁手(バランス・ブレイカー)には至っていない。
作品『ハイスクールD×D』の兵藤一誠は二回も死んでるんだぞ?
同じ兵藤一誠である以上、同レベルの死亡フラグが襲ってくる可能性は非常に高い。
だから強くならなきゃ――そう思っていた。
だが。
「第二回モンド・グロッソの様子はどうですか? 現場の……」
テレビから聞こえてくる音がこの世界が作品『インフィニット・ストラトス』にそっくりであることを証明していた――
でも強くなることを止めるつもりは俺にはない。
俺にはやらなきゃいけないことがあるんだからな。
◆
インフィニット・ストラトス、通称IS。
篠ノ之束という女が作ってしまった、この世界で最強の欠陥兵器だ。
欠陥はなんだって? それは女にしか使えないこと。
こんなものが広まったせいで女尊男卑とかいう意☆味☆不☆明な考えがすっかり人々に浸透してしまった。
そのせいで、ISとは無関係な女が男をこき使ったりするようになった、それが女尊男卑という時代だ。
実に男が暮らしにくい時代になったものだ。
そういう俺も見ず知らずの女に荷物を持つよう命令されたことがある。
勘弁してくれ……そう思っていたら、非常識よ! とその女が他の女に避難され事無きを得たことがる。
俺が助かったのは恐らく俺が前世に比べてイケメンだからだろう。
イケメンはなにをしても許されるという風潮は前世に暮らしていた世界にもあった。
この世界も女尊男卑が加速したことでそれがより強くなった。
原作の織斑一夏が女尊男卑社会で苦労した描写がなかったのは作者の描写不足のせいではなく、こういうことなのだろう……多分。
なお俺が現在住んでいる町は駒王町……ではない。
この時点でなんかおかしいな……と思っていたが、白騎士事件があったことでここが作品『ハイスクールD×D』の世界ではないことを確信した。
怖くなった俺はいろいろ調べた。
駒王学園も存在していなかったし、京都にグレモリーと関係がありそうなホテルはなかった。
その他悪魔の存在を確認出来るようなものは一切なかった。
そもそも俺には紫藤イリナなんて幼なじみはいなかった。
まるで――兵藤一誠とドライグという二つのハイスクールD×D要素が入り込んだインフィニット・ストラトスにそっくりな世界。
そう考えざるを得ないほどにこの世界にはハイスクールD×D要素がなかった、他の作品の要素がまったくと言っていいほど無かったのだ。
そう……あの日までは。