どうせ誰も覚えてないべ!
「度胸試し?」
「そう、あの辺に廃工場があってそこに出るんだってよ」
「なにが?」
「それが……よく分からないんだ」
よく分からない?
幽霊の類だろうか……
同じ中学に通う悪友たちによると、どうやら町外れにある廃工場に『ナニカ』が出るそうだ。
その『ナニカ』はときおり叫び、それはまるで怪物のような叫び声だという。
……大方、風かなにかを聞き間違えたのだろうが。
「上の学年の先輩たちが見に行ったそうだけど、まだ帰って来てないんだと」
「幽霊にでもさらわれたのか?」
どうも神隠し的な不可解現象が起きているようだ。
「親も騒いでるしさー、危ないけど気にならね? 一体なにがいるんだろうな!」
「危ないし、止めた方が良いんじゃないのか?」
俺以外の慎重派な生徒も止めた方が良いと声をあげる。
「それにそろそろテスト近いだろ? 遊んでていいのか?」
「うげ……それはいうなよイッセー」
◆
『結局、一応確認するのだな相棒は』
まあねぇ。
所詮うわさ話とはいえ、怪物のような声、と来たら確認しないわけにはいかない。
……もしかしたらそれは、はぐれ悪魔かもしれない。
この世界にも、悪魔や天使、堕天使がいるのかもしれない。
そんな期待が、まだ俺の中に燻っている。
一度、どうしようもないくらいに破壊されたはずなのに。
本当に悪魔たちはいた、そういう証拠が未だに俺は欲しいのだ――
そんな俺の期待は、なんとも意外な形で裏切られることになるのだが、この時はまだ知る由もなかった。
◆
「やっぱり……な」
うわさの廃工場に来てみたが……
誰も何もいないようだった。
相当オンボロらしく、穴だらけだ。
これでは雨宿りにも使えない。
ときおり風が吹き不気味な音が鳴る。
……これが怪物の鳴き声の正体。
やっぱりこの世界には――
『相棒!』
ドライグが叫ぶ。
なんだ?
そう思っていると――
炎!?
火だ、火炎だ!
ドライグのお陰でギリギリの所で避けることが出来たが……
一体、なにが……
そこには、赤い龍がいた。
そこには、青い龍もいた。
「…………」
「…………」
色以外はよく似た双子の龍。
こいつらは――
「ワングレンに、ベイツールだと……!?」
この世界にはないはずのゲーム。
パズドラ、パズル&ドラゴンズに出てくるドラゴンたちだった。
◆
パズドラ。
転生前の俺がいた世界にあったスマホのソーシャルゲーム。
一応、この世界にも似たようなゲームはある。
確か、カンポーの海本小介Pなる人たちが作ったゲームでダンジョン&パズルズなるゲームだったはずだ。
そう、この世界にパズドラはない。
故にワングレンやベイツールを知る人などいるはずがない。
何故、こいつらがここに……?
『相棒……こいつらは邪龍だ……ただ作られた存在のようだがな』
作られた……邪龍?
ま、まさか……
俺の脳裏によぎるのはクリフォトのトップ、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。
原作だと最終的にヤツは死亡する、だがアイツはそうなるまで人造邪龍を聖杯の力で量産していたはずだ。
もしかして、こいつらは『それ』なのか?
だとしてなんで――その邪龍が俺の知っているゲームのドラゴンに似た姿になる!?
まったく訳がわからない……
どうなっている……
双子龍を見ると――なにかを食べているようだった。
あ、あれは、まさか、そんなことが。
ニンゲンだ……奴らはニンゲンを――
ワングレンによく似た龍は、黒焦げになったナニカを。
ベイツールによく似た龍は、氷漬けになったニンゲンをガリガリと囓りながら。
食べていた。
食べていたのだ……
うぐッ……
胃の中がめちゃくちゃだ。
今にも吐き出しそうになる。
『相棒! 見るな! あれは人間には毒だ、いや、猛毒だ!』
だとしても! 戦うんだったら相手はちゃんと見ないと行けないだろッ!
『……相棒!?』
あいつらをここに放置しておいたら、この町に住む人々が危ないッ!
いずれ警察が行方不明になった生徒を探しこの廃工場にくるだろう。
だが警察のニューナンブごときであの双子龍たちを倒せるか!?
答えは否!
絶対に倒せない!
ドラゴンの鱗は簡単には傷つかない!
俺はそれをよく知っている。
最終的にISが出て来て大騒ぎになる。
恐らく凄まじい被害を出すことになるだろう。
それだけは――それだけは絶対に避けなければならない!
穏便にしておきたいというのもあるが、もしこの邪龍をきっかけに、俺の存在がバレてしまったら……
龍の力を持つ人間だなんて、絶対にモルモットにされる!
もしくは種馬か?
それも避けなければ……
「こい!
どちらにしろ……戦うしか……ない!
◆
コレが俺の現実世界での初めて戦いだった……