IS 西の男性操縦者   作:チャリ丸

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タイピングで書くと筆が進みます。

あ、後、アーキタイプ・ブレイカーで山田先生出ましたね。この作品で唯一といって良い、オリ主にあだ名をつけられていない女性キャラの山田先生。つけねば。


金髪はとことん良い奴かそうでないかに二分されやすい

 フランス、パリ。

 

「あ、お義父さん。俺がメンズのパリコレに出る話どうなりました?」

「おぉ剣くん。いやー、残念だけど流石に私の力でも無理だったよー」

「えー、おもんな」

 

 デュノア社の社長室に五人はいた。

 時守とシャルロットには見慣れたものであるが、千冬と簪、そしてラウラがここに入るのは初めてだ。

 しかし、このメンツは格式高い場所でも緊張こそすれ、取り乱してしまうということは無かった。

 

「あの、デュノアさん…」

「あぁ、すまないねブリュンヒルデ。それと、デュノアではシャルロットとややこしくなるから私のことはフランクと呼んでくれたまえ」

「ではフランクさん。デュノ…シャルロットの専用機の件ですが…」

「分かってるよ。…単刀直入に言おう、シャルロット。今乗っているリヴァイブから、第3世代に乗り換える気は―」

「ないよ、そんなの。僕は、できるだけこのリヴァイヴと一緒に頑張りたいんだ」

「そう言うと思ってたよ」

 

 フランクがデュノア社に五人…というよりシャルロットを招集した理由は他でもなく、彼女の専用機についてのことだった。

 現在シャルロットが使っているラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡは他の生徒たちにも知られている通り、第2世代機だ。

 現状、IS学園の専用機持ちで第2世代機を使っているのはシャルロットだけであり、一番最新の機体である『紅椿』に至っては第4世代である。

 

「でもね、これからの戦いやモンド・グロッソ参戦のことも考えると、そのわがままも聞けなくなってしまうかもしれないんだ」

「っ、でも…」

「なにも、今すぐ乗り換えることを強制しているわけではないんだ」

 

 シャルロットの操縦は、とにかく巧い。

 一人だけ第2世代を操っているということを忘れさせるぐらいに第3世代機と渡り合えているのだ。

 しかし、それが国家代表クラスが相手となると話は変わってくる。

 

「私たちデュノア社が新たに開発した第3世代IS『コスモス』。それを、デュノア社の人間に使わせる」

「と、いうことは」

「あぁ。シャルロットが勝てば、今まで通りリヴァイヴを。負ければ、乗り換えるということも視野に入れてもらうよ」

「うん。分かった」

「ほえー。第3世代機かー」

「剣くんも戦ってみたいかい?」

「いや、別にいいっす。今はシャルの番なんで」

 

 シャルロットの勝負の時が近づいていた。

 

 ◇

 

「つよ…っ!」

 

 試合開始早々、シャルロットは追い詰められていた。

 第2世代ISであるリヴァイヴの性能の大半を受け継ぎ、かつそれでいて第3世代機となったコスモスは、当然の如く全ての性能においてリヴァイヴを上回っていた。

 加え、第三世代兵器『花びらの装い(ル・ブクリエ・デ・ペタラ)』という実弾兵器をことごとく受け流すエネルギー・シールドが取り付けられているため、実弾が基本装備のシャルロットのリヴァイヴとはとことん相性が悪い。

 

「それでも…!」

 

 その他にもエネルギー弾と実弾を組み合わせた射撃が可能な四八口径ハイブリッドロングライフル『ヴァーチェ』や、三二口径十連装ショットガン『タラスク』の存在もあるが、今まで戦ってきた強敵と比べると、一番強いというわけではない。

 少なくとも、ゴーレムⅢの方が絶望感は強かったし、全ての単一仕様能力を同時に使う時守よりかは勝てるビジョンは見える。

 

「…」

 

 ヘルメットバイザーをしている対戦相手、ショコラデ・ショコラータの顔色は窺いしれないが、かなりの実力者であることはすでに分かった。

 糖尿になりそうな名前、と彼氏が言っていたことが頭から離れないシャルロットであった。

 

「それなら!」

 

 瞬時加速による接近。

 そこに浴びせられる弾丸を真正面から受け、二重瞬時加速に切り替える。

 

「…」

 

 観客席で見守る時守の目は、どこまでも冷静に、戦況を把握していた。

 そもそも、自分ならどう戦うだろうという考えが浮かんだとして、単一仕様能力が発現していない第三世代IS程度ならば、形はどうであれ勝てると踏んでいるのだ。

 今はただ、戦うシャルロットを冷静に見守るだけだった。

 

「はぁっ!」

 

 パイルバンカーの一撃を囮に、空中一回転の蹴り上げを浴びせる。

 思わぬ攻撃だったからか、相手が怯んでいる隙にショットガンの連射を浴びせる。

 その連撃がヘルメット・フェイスを割った。

 

「チィッ!」

「っ、あ、あなたは!」

「あ?」

 

 現れたのは、もはやIS学園1年生専用機持ちの中でも見慣れた顔である、亡国機業のオータムの顔だった。

 時守の顔が思わず歪む。

 

「くそっ!何もかも台無しじゃねぇかぁ!」

「ど、どういうことですか、お父さん!?」

 

 叫ぶシャルロット。その視線の先では、フランクが青ざめた表情でアリーナを見上げていた。

 

「どういうことも何も、この最新鋭機を頂こうってことだよ!」

 

 フランクが部下に命じてアリーナのロックを試みているが、上手くいかない。

 千冬は、以前束とともに行動していた少女、クロエ・クロニクルの顔を思い浮かべた。

 

「簪、カウンター頼むわ」

「うんっ!」

「ちっふー先生?」

「あぁ、時守。今すぐピットに向かって―」

「待って!」

 

 開いていくアリーナの天井を見て、簪にカウンターハックを指示する時守。

 ピットからアリーナに乗り込もうとする時守を止めたのは他でもなく、シャルロットだった。

 

「いつまでも、剣に頼ってばかりじゃいられない!」

「シャル…」

 

 とはいえ、開きつつある天井を見て焦ってしまったシャルロットのリヴァイヴは装甲をかなり削られてしまっており、地の利でも心境的にもオータムが優勢だった。

 

「はっ!せっかくこの場で一番強ぇやつの手助けを断るなんてなぁ!」

「僕はその人に並ぶために、戦ってるんだ!手助けなんて、借りていられないっ!」

 

 シャルロットが攻める。

 

「っ、やべ…」

 

 しかしそれは、時守の目から見ても、そして千冬やラウラ、果てはフランクの目から見ても明らかなほどに、焦りから生まれてしまった攻め。

 

「くぁ…!」

 

 シャルロットがまともにダメージを与えられないのと対照的に、コスモスの攻撃がリヴァイヴに降りかかる。

 リヴァイヴの装甲が割れ、ついにはISコアが露出してしまう。

 

「シャルッ!」

「織斑先生!ハッキング元、特定出来ました!」

「よし、でかした!…チッ。このアリーナの上空1000mだと…」

「シャルロットが奴を撃破できれば…」

 

 千冬はこの時点で全ての戦況が理解できた。

 デュノア社内部に潜入したオータムがコスモスに乗り、クロエのIS『黒鍵』の単一仕様能力『ワールド・パージ』とお得意の電脳戦の補助を使い盗み出すというもの。

 その作戦の完遂には、シャルロットの撃破が前提として存在していた。

 

「舐め、るなぁ!」

 

 そしてそのことはシャルロットもよく分かっていた。

 言ってしまえば、このフランス空路組の中での一番のカモ扱いされたも同然。

 父の、そして愛する人の目の前、故郷で、母が好きだった花の名を受け継いだ機体をいいようにされて、いくら温厚なシャルロットでも我慢の限界だった。

 

「お願いっ!リヴァイヴ!!」

 

 シャルロットの慟哭。

 それとともに露出したリヴァイヴのコアと、コスモスの装甲がぶつかり合った。

 

「なぁっ!?」

 

 瞬間、二機の間で共鳴現象が起きた。

 

「あ、あれは!」

「なんやアレ」

「以前、VTシステムに飲まれた私を助けるときに、嫁が白式で突撃してきた時と同じ光だ!」

「…あ。俺そん時ぶっ倒れてたから知らんわ」

「ということは」

 

 光に包まれる二つの機体。

 強制排除されたオータムとシャルロットは、アリーナの地面に叩きつけられた。

 

「っし。二つとも!」

「させない!おいで、リヴァイヴ…ううん、『輪廻の花冠(リィン=カーネイション)』!」

 

 シャルロットの叫びが、声が、想いが――届いた。

 

「やっぱり合体…っ!シャルと合体していいのは俺だけやぁっ!!」

「このタイミングでふざけるな馬鹿者」

 

 時守の声もばっちりと届いてしまったようで、シャルロットは真っ赤な顔のまま、文字通り専用機となった『輪廻の花冠』で飛翔した。

 

「ちゃんと、分かる…。お母さんと、お父さんの温かさ…」

「ISやからって調子のんなよぉ!」

「いい加減落ち着け」

 

 すぱん、と小気味よい音が時守の頭から鳴る。

 ガード不可攻撃である千冬のシバキの衝撃は時守を正気に戻すのに十分だった。

 

「いてて…はー、シャル美しすぎません?」

「お前…。まあ喚かれるよりかはマシか」

 

 世界で初めてのデュアル・コア搭載機『リィン=カーネイション』の誕生を目の当たりにして、時守が放った言葉はそれだった。

 ぶっちゃけこの男からしてみれば、世界初の偉業程度のことは自分にとって日常茶飯事となってしまっているのだ。

 

「天使かな?」

「おいアホ弟子。出席簿を食らいたくなければ上空の敵を捉えてこい」

 

 世界初の出来事よりも、いかに彼女が可愛く、美しくなったか。

 共鳴現象により正しく天使の光輪を戴いたかのような翼と装甲に見とれていられるだけの時間が、時守にはなかった。

 

「ちぇっ。んじゃ行こか、ラウラ」

「はっ!」

 

 シャルロットの機体に『コスモス』も入ったため、スコールに強奪される心配がなくなったのだ。

 敵を捉えるなら、今しかない。

 

「来ましたか」

「来ましたでー」

 

 青空に浮かぶのは、ゴスロリ衣装に身を包んだクロエ・クロニクル。

 IS学園の人間では、千冬以外誰一人として見たことのないその姿にも、やはりというかこの男は適応した。

 

「貴様…その顔は!」

「んぇ、どしたラウ……えっ。そっくりさん?」

「いえ、そういうわけでは……」

「いやいやいや。これで似てへんってのは無理があるやろ…」

 

 同じ顔に同じ髪、同じ肌。

 まるで生き写しのような二人を、時守は見比べた。

 

「あ、いや。やっぱ似てへんな」

「はい?」

「ラウラはどっかアホそ……抜けてるっていうか、キツそうやけども。お前何考えてるか全く分からんもん」

「むっ!師匠!それでは私が馬鹿正直だと聞こえるぞ!」

「その通りやんけ」

 

 一見全く同じな二人。しかし、彼にとってはある程度は見分けがつく。

 まずは目。ラウラの方がキツい。

 そして雰囲気。ラウラの方がアホそ…相手の方が賢そう。

 最後に言葉遣いなど。相手の方が上品。

 とことんラウラに厳しい時守であった。

 

「こほん。はじめまして。完成品の『月の落とし子(ローレライ)』。私はあなた。あなたになれなかった、もう一人のラウラ」

「やっぱそっくりさんやん」

「…ローレライ?」

 

 言葉の意味を履き違える時守と、そもそもうまく伝わらなかったラウラ。

 日本語とはつくづく難しいものだと痛感したクロエだった。

 

「あなたは知らなくてもいいこと…。それと、その隣にいる男。時守剣」

「はいよ、なんでっしゃろか」

 

 ハイパーセンサーで下にいるシャルロットの姿を確認していた時守。

 不意に話を振られ、思わず返事をしてしまった。

 

「あなたは完全なイレギュラー。我がマスターのため、いずれこの世から消えてもらいます」

「もうすでに一回死んでる場合は?」

「ノーカンでお願いします」

「お断りしまーす。もう死にたくないでーす」

 

 そもそももう大怪我すら負う気がないため、軽く返す。

 そんな時守とラウラに、地上にいる千冬から割り込んで通信が入った。

 

「何をしている!お前たちが見ているのは幻だ!」

「なっ!師匠!」

「なんや、これ…!」

「前回はきちんとお披露目ができませんでしたが、これが私の単一仕様能力『ワールド・パージ』です」

「前回?…っ、野球ん時か…!」

「はい?」

 

 クロエには分からないだろうが、それだけでラウラには伝わった。

 時守が単一仕様能力を1回使用しただけで2秒で解決してしまった『アメリカ産5分カップラーメン襲撃事件』の真犯人。

 それが、この今目の前にいるクロエと、その単一仕様能力『ワールド・パージ』なのだと。

 

「では、私はこの辺りで」

「ラウラァ!俺の手ぇ握れ!」

「はいっ!」

 

 クロエの姿が宙へと消えていく。

 それを見て捉えられないと悟った時守が、ラウラの手を握る。

 

「雷轟!」

「ぎゃああああああっ!!」

 

 ラウラの身体に強力な雷が浴びせられる。

 ギャグ漫画の如く、ラウラのシルエットが骨だけになった。

 

「何をするんですか!?」

「え、いや。お前まだワールド・パージ…やっけ?アレの影響受けてそうやったから…」

「拳骨でも良かったでしょう!?」

「おけ。じゃあ次はそうするわ」

 

 ぷすぷすと髪の毛の先々を縮れさせ、煙を上げているラウラと共に下降していく時守。

 アリーナではすでに、シャルロットがオータムを捉えていた。

 

「ヒャッハァ!汚物は消毒だァー!」

「またてめぇか!って、ちょ…!マジで全身光らせながら近づいてくんなっ、ギャアアアアッ!」

 

 ひとまず、愛しのシャルロットを汚そうとした下手人に怒りの雷を落とした。

 

 ◇ ◇

 

 

「と、言うわけで」

「シャルロットの専用機問題が見事に解決してしまった件について」

「解決したの?お父さん」

「あぁなに。政府やそこら辺には私がなんとかするから安心しなさい」

「…そもそも、国連代表と懇意にあるお前に下手に手は出さんだろうよ」

「あっ、なるほど」

 

 場所は戻って、社長室。

 縄で縛ったオータムを引きずってここまで来た一同は再びフランクと話していた。

 

「正直シャルロットもこの結果が1番良かったんじゃないのかい?」

「言ってしまえばそうだけど…、ほんとに大丈夫なの?」

「あぁ。それで…シャルロットは、『輪廻の花冠』には乗りたくないのかい?」

「…そりゃあ、乗りたいよ。お父さんとお母さんの気持ちが詰まった機体と、僕の愛機。その2つが合体した機体だもん」

「だったら乗りなさい。『輪廻の花冠』に乗って、お友達と残りの2年間。IS学園でいろんなことを学んできなさい」

「っ、うんっ!」

 

 一学期の学年別タッグトーナメントでシャルロットとフランクの間での誤解が解けて以降、フランクはシャルロットと正妻との間の娘のように接してきた。

 それでも、今まで父親らしい事が出来たかと言われれば、素直には頷けない。

 しかし、今この瞬間のシャルロットの笑顔を見て、ようやく自分は父親らしくなれたのではないかと、フランクは自負する事が出来た。

 

「あ、てかシャル。ワンオフは出たん?」

「ううん。ワンオフも、第二形態移行もまだだよ」

「『輪廻の花冠』は扱い上、特殊第三世代となってるからね。今回の任務を終えれば、詳しく調査を進めていこうと思っているところだ」

「ほー」

「どうした時守。やけに興味津々ではないか」

「まあ合体なんてもん見せられましたしねー。…どんな機体になってるんかってのが楽しみっすね」

 

 シャルロットが機体性能の面で専用機持ちたちの中で少しだけ遅れ始めていたということは、時守も千冬も知っている。

 シャルロットと交際している時守なら尚更だった。

 だからこそ、この誰も見たことも聞いたこともない特殊第三世代機『輪廻の花冠』との戦いに、時守は胸を躍らせていた。

 

「期待しててね、剣。みんながビックリするぐらいに成長するから」

「ほっほぉ。成長度合いでこの俺に勝とうとでも?」

「今はまだ、僕はこの『輪廻の花冠』のことをよく分かってあげられていないけど、ちゃんとこの子のことを分かってあげられたら、きっと剣にも追いつけると思うから」

「…あぁ。その意気込みがあれば、シャルはもっと強なれるわ」

「私たちも……」

「負けていられないな、簪」

 

 覚悟は決まった、とでも言わんばかりの表情を見せるシャルロットに、時守は彼女のさらなる成長を予言した。

 その会話を聞き、共に次代の国家代表を目指すラウラと簪にも火がついた。

 

「互いに刺激しあっているところ申し訳ないが、時守」

「はい?なんすか?」

「今回のこの作戦が終わり次第、国連本部に来るようにとロジャーさんから連絡があった」

「ほいほい。りょーかいっす」

 

 今回の遠征が終わる予定が、12月の25日。つまりはクリスマスの夜。

 そこから年末までのわずかな期間でいいので来てくれとのことだった。

 

「ま、今は作戦に集中しておけ」

「ほぉーい」

 

 どこからどう見ても集中しているようには見えないその様子。

 

 だが、やはりその姿はどこまでもいつも通りだった。




後4話か5話ぐらいで11巻は終わりそうですね。
そうなると、いよいよオリジナル展開…!今の所思いっきりシリアス展開…!しんどい…!

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