IS 西の男性操縦者   作:チャリ丸

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描きたい描写が多すぎてパンクしてるので、少しずつだけになりますがご了承ください。


陽炎

 

 

 マドカと時守の第2回戦が終わり、しばらく。

 

「はぁ…ッ!はぁ…ッ!」

「…もう、やめておいた方がいいのサ。そのまま続ければ脳に後遺症ができてもおかしくない。いくら今は敵とはいえ、剣ちゃんの想い人を廃人にはしたくないのサ」

「黙、りな…さ、い……」

 

 楯無とアリーシャの戦いは、楯無の精神力が尽きたところで終わろうとしていた。

 

「良くやったのサ。私の今のSEは3桁を切っている。あれだけの猛攻をすべて凌ぎながら着実に削り、よくこの長時間戦い抜いた」

「く、ぅ……あぁ…ッ!」

「私に対し、そっちはほとんどダメージは無し。後数分でも攻撃が続いていたら、確実に私が負けていたのサ」

 

 つい先程までアリーシャの単一仕様能力と武装による猛攻をただひたすらに凌ぎ続けていた楯無。

 凌ぐと同時に攻撃も行い、言葉通りあと少しの所まで追い詰めたのだ。

 しかし、足りなかった。

 

「まだ、よ…。まだ、負けてないわ…っ!」

「さっきも言ったのサ。友人の恋人を再起不能にするほど、私も鬼じゃない。ISを解け。もう戦う気がないことを示してくれれば、攻撃はしない」

「……ふふ。あなた、本当に理解できていないのね、私の言葉の本当の意味(・・・・・・・・・・)を」

「何…?」

 

 破裂しそうなほどの激痛に襲われている頭を左手で抑えながら、楯無は不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。

 

「言ったでしょう?私はまだ、負けてない」

「だから何を――ッ!?」

 

 その言葉にアリーシャが反応を示そうとした時、『テンペスタ』の右翼スラスターが轟音とともに爆ぜた。

 

「な、なぜ…」

「何が起きたか、何をされたか分からないって顔してるわね。でも、気づかないあなたも悪いのよ」

「何のことだッ!」

「簡単よ。もし本当に今私が何もしてないなら、これだけの頭痛があるのはおかしくないかしら。本来なら、回復していてもいいでしょう?」

「クソ…、そういうことかッ!」

 

 楯無の言う通り、何もしていないならばナノマシンの制御のし過ぎで生じた頭痛は次第に収まっていくはず。

 にも関わらずまだ楯無が辛そうにしているということは、まだ何かを行っているということ。

 

「でも残念。今から動き出してももう遅いわよ」

「なっ!?」

 

 右翼に続き、今度は左足が爆ぜる。

 

「うふふ、油断したわねアーリィ。くだらないことをつぶやく前に私にとどめを刺しておけば良かったのに」

 

 決して良いとは言えない顔色のまま『霧纏の淑女』を展開しながら浮かび上がる楯無。

 その彼女を見上げるアリーシャの顔には、怒りの表情が張り付いていた。

 

「舐めてもらっては困るのサ!」

「あら。舐めてるのはどちらかしら」

 

 残った左翼スラスターを巧みに操り、瞬時加速で楯無への接近を試みるアリーシャ。

 しかし。

 

「無駄よ、させないわっ!」

 

 楯無からすれば、これ以上の好機はもう無い。

 相手は痛手を負い、そして尚且つ焦って攻撃に転じてきている。その中で、不意の一撃を食らう訳にはいかないのだ。

 

「いったい何をさせないってのサ!」

「決まってるでしょ?」

 

 楯無が防ごうと、そしてアリーシャが何としてでも実行しようとしていること。それは他でもない、超接近戦だった。

 互いにもう余力はほとんどない状態であり、遠距離戦に持ち込んでもジリ貧になることは目に見えている。一対一のこの状態がいつまで続くか分からない。

 だからこそ、楯無もアリーシャも互いに自分の戦術を貫き通そうとしていた。

 

「はあああっ!」

「チッ…!」

 

 蒼流旋のガトリングによる射撃でアリーシャへの牽制を行う。

 彼女のSEが残り僅かなのは、先ほど彼女自身の口から伝えられている。あとはそれを、確実に削り切ればいい。

 

「ムカつく武器なのサ。槍なのか銃なのかハッキリさせて欲しいところなのサ!」

「敵にそう思わせてるのなら、いい武器じゃないかしら」

「あぁ、いい武器サ。攻撃に関しては、な!」

 

 接近戦は無理だと判断したのか、アリーシャが楯無から距離を取る。

 今までよりも遥かに遠く、そしてなぜか『疾駆する嵐』を解除した。

 

「何を…ッ!」

「簡単サ。お前の攻撃が届く前に、私の最強の技でお前を叩きのめせばいい」

 

 アリーシャの身体の周囲を纏うように発生していた乱気流が、『テンペスタ』の装甲内部に入り込んでいく。

 彼女の左手が前に突き出され、その手のひらに風が集まり始める。

 

「『テンペスタ』がただ近距離だけに強いISだと思ったら大間違いなのサ。『疾駆する嵐』で周囲に分散させた風を、一気に機体内部に押し戻し、圧縮して放つ…ッ!」

「っ、しまっ――」

 

 楯無の反応が遅れる。

 その僅かな隙を見逃すほど、アリーシャは甘くなかった。

 

「遅いっ!風の砲弾(プロイエッティレ・ディ・ヴェント)ッ!!」

 

 渦巻く風が、一塊の巨大な砲弾となり楯無に襲いかかろうとした、その時。

 

「な、ん、て、ね。『清き熱情(クリア・パッション)』!」

 

 アリーシャの装備していた『テンペスタ』の全てが大爆発を起こした。

 

「な、が…っ!」

「ふふっ。面白いほどに上手くいってくれたわね」

「何、を…!」

「いくら精密に操作したとしても、最初っから装甲の中全てにナノマシンを仕掛けるなんて、疲れちゃうわ」

「まさ、か…」

「えぇ。私が苦労して『テンペスタ』に仕掛けたのは翼と脚だけ。それ以外は、今丁度あなた自身が取り込んでくれたのよ」

 

 爆破された右翼と左脚。

 そこから判断し、『テンペスタ』の装甲全てにナノマシンが入り込んでいたと勘違いしていた。

 だが、実際はそんなことはなく。楯無がただ空気中に散布していただけのナノマシンを、『風の砲弾』は放つ際に取り込んだ。

 

「だから言ったでしょう?後悔するのは貴女だって」

「……なるほど、単一仕様能力の相性だけじゃない、ってのはそういうこと、か…」

「えぇ。と言ってもギリギリよ。本当に間一髪間に合ったってところかしら」

「その油断が、命取りになるのサっ!」

 

 最後の抵抗といったところか、アリーシャがライフルを展開し、楯無へと向ける。

 

「馬鹿ね。だから言ったじゃない、間一髪間に合ったって」

「ガ…ッ!?」

 

 そんな彼女の後頭部を、強烈な衝撃が襲った。

 

「待たせた、刀奈」

「ううん、大丈夫よ。剣くんがトドメを刺していなくても、避けられたから」

「ありゃりゃ。んじゃ要らん手助けやったか?」

「け、剣……ちゃん…?」

「よぉアリーシャ。悪いな。後頭部に思っきり膝蹴りカマしてもたわ」

 

 点滅するようにボヤける視界でギリギリ捉えることが出来たその姿は、アリーシャと馴染み深い方の男性操縦者のそれだった。

 見慣れたISと光を身にまとっているところから、『雷動』の移動速度のまま彼女の後頭部に膝を直撃させたことが伺える。

 

「な、ぜ…ここ、に…っ!マドカが、いたはず、じゃ…」

「おぉ、あのクソガキか。弱すぎて話にならんかったわ。俺の足止めしたかったらもうちょい強いやつもってこいって言っといて。…もう無理やろうけど」

「ハ、ハハハ…」

 

 彼のその言葉を聞き入れ、アリーシャは沈んだ。

 

「最後の美味しいところ、剣くんに持っていかれたわね」

「この戦いにそんなん無いやろ。……刀奈、休んどくか?」

「ううん、大丈夫よ。無防備に休んでるところをアリーシャ以外に襲われる可能性もあるし」

「それもそうか」

 

 倒れたアリーシャに近寄り、気絶しているかどうかを確認する楯無。

 意識がないことを確認すると、ISの展開を解除した。

 

「『テンペスタ』の装甲も内部からの『清き熱情』で完全に破壊したし、もうアリーシャは脅威ではないわね」

「ん、もう行くんか?」

「えぇ。と言っても休みながら、だけど。……今の状態じゃ、さすがに足手まといになっちゃうでしょうし、体力を回復させながらゆっくり向かうわ」

 

 IS学園メンバーの中でも屈指の実戦経験を誇る楯無だが、今は疲れ切っている状態だ。

 アリーシャをブラフと技術でなんとか倒したものの、これだけ脳に負担をかける戦いをしていては絶対に持たない。

 かつて隣に立つ彼が倒れたように、自らも力尽きてしまうかもしれないのだ。

 

「私と剣くんがこうして勝ったってことは、戦況的にはかなり有利に進めることができるわ。さ、行きましょう。……あれ?」

 

 ふと、今まで彼がいた方向を向く楯無。

 

「剣、くん……?」

 

 そこに、彼女の想い人の姿は存在していなかった。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「ギャハハハハッ!おいおいどうしたよ!さっきまでの威勢のワリには随分とシケた戦いだなぁ!?」

「……」

 

 オータムのその罵倒のような叫びに一切耳を貸さず、簪は防御に徹していた。

 

「もっと俺を楽しませてくれや!」

「……はぁ。なんであなたに、って気持ちもあるし、なんであなたがって想いもある」

「あ?何言ってんだ?」

 

 急に口を開いたかと思えば、突如として意味の分からないことを話し出した。

 そんな簪をめのまえにオータムは攻撃をやめはしたものの、臨戦態勢は解かなかった。

 

「ホントに、やめて」

「はぁ?なんだ、ぷっ、クハハハハ!今更命乞いかぁ!?」

「違う。そんな生半可な実力で、ハンデを負ってる剣やお姉ちゃんを襲わないで。万が一にでもあなたが勝っちゃったら、二人の評判が下がっちゃう」

「アァ?んなもん関係ねぇだろうがよ!」

「……うん。関係ない。でも、だからこそ、二人よりも弱い私があなたを倒して、二人は弱くないってことを証明する」

「だぁかぁらぁ、かかってくるならさっさと――」

 

 かかって来い。オータムがそう言おうとした、その時。

 どんっ!と大きな音を立て、簪が『打鉄弐式』ごとまばゆい光に包まれた。

 

「分かったの。どうすれば強くなれるか。誰かのためとか、何かを守るため、とかじゃないんだって」

「テメェ…」

「IS…専用機のコアには、人格みたいなのがいるでしょ?だから、その子と一緒に強くなれば、それでいいの」

 

 若干の砂埃を舞わせ、その光とともに少しずつ晴れていくその姿。

 簪の小柄な体に合っていた、専用機としては少しばかり小さめだったそのフォルムは消え、手足の装甲が分厚くなり、それを十全に動かすために翼も大きく。

 最大の特徴であった肩を覆うようなスラスターに付随していた『山嵐』はどこかに隠れ、あるのはただ、打鉄と似たシンプルな姿。

 

「二次移行、打鉄弐式『鎖牢鉄(ろうさてつ)』……ハァッ!」

 

 距離を取っていた簪が、瞬時加速でオータムへと急接近する。

 

「馬鹿が!二次移行したからって調子こいてんじゃ…!」

秋火(しゅうか)!」

 

 簪がオータムに向けるのは、彼女の恋人が雷を放つ時と同じ、右手。

 その装甲の手のひらの部分が開き、急速に膨大な熱量のエネルギーが溜まっていく。

 

「っ、チィッ!…ゴーレムⅢのやつか……!」

「一緒にしないで。あくまでもこれは、サポート専用。チャージ時間もアレとは比にならない」

 

 回避したオータムの脳裏によぎるのは、かつてIS学園に向けて放ったゴーレムたち。

 そのとんでもない火力を誇るものが、相手の第二形態に取り込まれていたのだ。

 

「はっ!」

「くそっ…!」

 

 再び、オータムの行く手を阻むように『秋火』を放つ簪。

 ゴーレムⅢの熱戦との違いを主に述べるとするならば、その速度と威力。

 速度は簪の『秋火』の方が速く、威力はゴーレムⅢの方が高い。

 

「ちょこまかと鬱陶しい!」

「二次移行して、速度が変わらないわけがないでしょ?」

 

 確かに、速い。

 細く一撃で沈められるような威力は擁していないが、それでも当たれば痛手になる。

 しかし、オータムには一つの疑問があった。

 

「二次移行してその程度ってのは、無理があるぜ?」

「……ッ」

「ハッ!やっぱ隠すつもりだったか?新しく出た単一仕様能力か何だか知らねぇが、ぶっつけ本番で使いこなせるわけねぇだろうがよぉ!」

「くっ…秋火!」

 

 簪が隠しているものの正体はオータムには分からない。

 しかし、何かを隠し持っており、それが戦況を左右するものであるということが分かるだけでも大きな収穫なのだ。

 

「ハハハァ!その熱線に大した火力がねぇのは見りゃ分かる!このままなら、ジリ貧だぜ!」

「……うん。その、通り。このままならね」

 

 意味有り気に微笑む簪。そんな彼女の姿に、オータムにふとした疑問が湧く。

 右手から熱線が放たれるのならば、左手は何なのだろうか。そもそも、隠しているであろう単一仕様能力の正体を本当に知らないのだろうか。

 

「…ッ!クソがァ!」

 

 結果、オータムは攻めに転じた。

 うじうじ考えるのは自分の性にあわないし、何より考えていても始まらないと察したのだ。

 

「かかった」

 

 そして、簪の予想通り単一仕様能力(・・・・・・)に引っかかった。

 瞬時加速で突撃してくるオータムのIS、アラクネの蜘蛛の足のような武装の一部が、切断されて重々しい音とともに落ちたのだ。

 

「な、に…?」

「剣が言ってたの。…確かに必殺技みたいに技の名前を叫ぶのも良いけど、こうやって何も言わずに発動する方が良い時もあるって」

 

 一体何をされたのか、全く理解が追いついていないオータムを見て、少しだけ安堵の表情を浮かべる簪。

 

「でも名前だけ教えてあげる。単一仕様能力、『泡沫ノ糸(うたかたのいと)』 手は、抜かない…!」

 

 額に僅かながら汗を滲ませ、簪は覚悟を決めた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「……大丈夫かな、簪」

「楯無さんと剣さんも気になりますわ…」

「んなの気にしてる場合じゃないでしょ?アタシたちには先に進むしかないのよ」

「……鈴の言う通りだ。確かに三人のことは心配だけど、俺たちは前に進もう」

 

 簪の戦闘領域から少し離れた通路。

 かなり移動したにも関わらずまだまだ奥が見えてこず、距離感が分からないという不安もありながら6人は歩みを進めていた。

 

「それに、私たちも師匠たちのことを心配している場合では…ッ!?」

「ラウラッ!?」

 

 周囲を警戒していたラウラの視界に突如として入り込んできた、爆炎。

 何とかAICを発動させて他の5人へのダメージを無くすことには成功した。

 

「くっ…!その金色の機体は…!」

「ふふっ。どう?あなたたちの中の最強である、あの子と同じ色の機体は」

「別に、色が同じってだけでしょ?そんなもので、僕たちの気持ちは変わらないよ」

「あら、良かったわ。彼がいないからてっきり弱い子しかいないと思ってたから」

 

 ラウラと共にIS『輪廻の花冠』を展開するシャルロット。

 敵は、『ゴールデン・ドーン』とその搭乗者スコール。

 時守の敵がマドカとゴーレムたちになった時点で、ラウラとシャルロットのペアでスコールと戦うことは決めていたのだ。

 

「鈴、箒、セシリア!嫁を、教官を頼んだぞ」

「僕たちも簪と楯無さん、剣を連れてすぐに合流するから!」

 

 ラウラとシャルロットの言葉を聞き入れ、4人は走り出した。

 逃げるように駆け出す4人にスコールの炎が迫るも、ラウラが止める。

 

「させん。…聞いていただろう。貴様の相手はこの私たちだ!」

「あら、随分と可愛らしい子達が相手なのね。ヒナから成長して、一人で飛び立てるようになったのかしら」

「……それは、戦ってみれば分かることでしょう?」

「ふふっ。……いいえ、やっぱり戦わなくても分かるわ。今は、ちゃんと飛べるようになったのね」

 

 煽るように上から見下ろすスコール。

 そんな彼女に、シャルロットとラウラは掛け声やアイコンタクトすらせずに接近していく。

 

 

 スコールvsシャルロット&ラウラ、開戦。




頑張ります…!


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