朝9:00
「お、おまたせ…」
「いんや、今来たとこや」
『(テンプレ…だな。ま、まあ…今日はじっくり観察させてもらうぞ!)』
時守と簪はIS学園1年生寮の玄関で待ち合わせていた。
この時間にした理由は2つ。
1つは簪が自分の心を落ち着けるための時間を作るため。
もう1つは夜遅くまでセシリアと愛し合っていた時守が仮眠をするため(自室で)。
セシリアとヤったとなるとここからさらに三連続でヤることがほぼ確定しているので『少し、休んだら?』と簪が言い、『じゃあ私も少し遅めでいいわよ?剣くんの身体が大事だし』と刀奈が言い、『体調が良くないと楽しくないもんね♪』とシャルロットが言い、仮眠を取らせてもらえるようになったのだ。
「あ、あの……その…えと…」
「い、いや、あ、あのな簪…ほら、いくらこういうの初めてやからって言ったって緊張しとぅぎ…」
『(そういう剣も緊張しまくりではないか!なんだ『しとぅぎ』とは!なぜそこで噛んだ!『しすぎ』ぐらい普通に言えるだろう!それにその微妙なぎこちなさ!付き合いたてのカップルか貴様ら!!…あぁ、付き合いたてか。そう言えば鈴も同じようなことを言っていたな)』
「…ふふっ…」
「俺も緊張してんねん…笑わんといてくれ…」
「それに、疲れてる…?」
「ちょっとな。…セシリーやばいわ」
『(おい!!ここまだ寮の玄関だぞ!?しかもタッグトーナメントの件で完全休みになっているから普通に生徒もいるのだぞ!?そんな話をして大丈夫なのか!?)』
「今日は、私。その次がお姉ちゃんで、次がシャルロットさん。その次がセシリアさんとシャルロットさんの2人で、次が私とお姉ちゃんの2人。で、最後に全員」
「はぇっ!?え、金曜セシリー、土曜簪、日曜カナ、月曜シャル、火曜セシリー&シャル、水曜簪&カナ、木曜全員って…いつ休むんや…」
「…たまに?」
「えっ…、い、いやでもやっぱりそういうのは籍入れてからの方が良いと思うねんけど…」
「せ、籍……!…お、奥さん…か、…ふふっ」
『(なぜもっと先に進んでいるのに籍を入れるという事実に顔を赤らめるのだ簪!!)』
将来の自分達の姿を想像しながら2人は照れくさそうに話を続ける。それは付き合いたてだがその愛はしっかりとしたもので、結婚を考えている…否、確実としているカップルの雰囲気そのものだった。
「じゃ、じゃあ……あの…」
「ん?…あぁ。はい」
「…!う、うん…!」
先程から時守の右腕を見ながら自身の両手に奇妙な動きをさせていた簪に、時守は腕を差し出す。
対する簪はその腕を少し遠慮がちではあるが、しっかりと抱きしめる。
「じゃ、行こか」
「うん、…よろしくね?」
『(…………なんだあれは……わ、私だけではないな。やはりあの二人のやり取りを見ていて…あぁ、やはり居たか。壁パン、床パン、挙句の果てには木に頭突きしだしている者も居るな…。あぁ、最近良く見かけるが、皆男友達に振られすぎではないか?そう言えば『ごめん俺拓海と付き合うことになった』と言われた女子が泣いていたな。…確か中学1と2のイケメン同士がカップルになっていた…だったな。……わ、私は一夏に貰ってもらえなかったらどうなるんだろうか…)』
「あっ…」
「ん?どないした?簪」
「ううん…結構、剣って筋肉…あるんだなって…」
「そうか?ワンサマと比べたら細いほうやけど…」
「何ていうか…引き締まってるっていうか、無駄が無いっていうか…とにかく、こう……シュッとしてる」
「ははっ、さんきゅ」
「ふふっ…どういたしまして」
『(…私は…今日耐えられるだろうか?)』
そして2人は駅へと歩き出す…
◇
「簪、今日はどうする?」
行くあてもなくプラプラと『レゾナンス』を歩いていた俺たちは、未だ目的地を決めていなかった。
簪は今俺の右手を左手で握っている。さすがにまだ人前で密着するのは恥ずかしいようだ。
「…ゲームとか…アニメとか…ゲーセンとか」
「おー、ゲーセンか。昔ようやったわ」(※数ヶ月前です)
「今のガンシューティングゲームとか…後は…あれ、隣の筐体と協力するやつ」
「あー、あれか。カードとか作ってデータ保存したりするやつ」
「うん」
『(簪が…あそこまでスラスラと話せているだと?まあ私も付き合いがそこまで長い訳ではないが、自分から積極的に話すようなやつではないことぐらいは分かる。…これも剣…か)』
簪と歩いているとゲーセン発見。
しっかしほんま何でもあるな、『レゾナンス』って。
ゲーセンの中に入った俺と簪はとりあえずシューティングゲームやらオンラインやらのあるところに向かった。
「…あ」
「…?どうしたの?」
「いや、中学ん時やり込んだ奴があったからさ」
「…これ?…私も…結構やった」
「お、じゃあ勝負しよーや」
「うん。…負けない」
このシューティングゲーム…まあ良くあるゾンビ打つやつやねんけど、1人プレイと2人プレイが100円で両方いけるっていうのが学生にとってデカすぎる。ハイスコアを取ろうとしたら、1人で2人プレイしつつ、しかも銃を威力クソヘボいやつにしといて、ゾンビを出来る限り少ない弾数で倒す。…っていう仕組みのやつや。
「…あ、…!こ、こっち…」
「おー…」
簪はうまい。久しぶりにやったということでパターンを忘れたのだろう、ゾンビの出てくる所を覚えきれていなかったりするが、それでもうまい。ヘッドショットもかなり決めている。…でもなぁ…
「ふぅ…。あんまりいかなかった…」
「いいほうちゃうか?ほら、観客が集まるぐらいやし」
「えっ…!…あぅ…」
俺のその言葉に簪が振り向き、大量の観客を見た瞬間、顔を真っ赤に染め俺に抱きついた。可愛ええ。
さてと…
「んじゃ、簪。今度は俺の番な?」
「えっ…!?う、うん…頑張って…!」
頑張るというか何と言うか…
「す、すげぇ……なんだよあのリロードの速さ…」
「オールヘッドショットワンパンとか…やり込み過ぎだろ…」
背中から聞こえてくる声を無視してひたすらにトリガーを引き続ける。
そう、このゲームは俺が中学時代、最もやり込んだゲームの一つなのだ。『どうせならこのゲームの全国ランキング上から10、制覇しようや!』という健くんのアホな発言から始まり、『飽きた』という健くんの一言でブーム終わったのだ…が、そのやっていた間はそれはもうやり込んだ。頭の位置、タイミングなどなど…まあつまり。
「ふぅ…」
「す、すごい…」
全国ランキングの上位層には俺の友達の名前しかない。――しかも、
「…これって…」
「じ、ジト目で見やんといてくれ…」
ランキングには
1-TAKERU
2-KENCHAN
3-TAKERU
4-TAKERU
5-TAKERU
6-KENCHAN
7-RIKO
8-RIKO
9-TAKERU
10-KENCHAN
といったふうに3人の名前しかない。…今回6位か…
「RIKOって…あの?」
「おう、リコピンや。…あいつISでもこの技術使うつもりっぽいで」
「…私も……ゲームとかアニメから、ヒント貰ってる時がある…」
「マジで?じゃあ今度一緒に見よや」
「…!うん…!…あ、その…」
「おけ、出よか」
簪が周りに人が多くなってきたことに、居心地が悪くなったのだろう。ちょっと嫌そうな顔をしてたのでゲーセンを出ることにした。
せっかくのデートやねん。笑って楽しい方がええに決まってるしな!
◇
昼食をとった後、俺たちはある店にいた。
「あぅ…」
「いや連れてきたん簪やんな」
今の状況を整理しよう。
辺りを見回すと、水着、水着、水着………そう。
「う、うん…!よし…!わ、私に似合う……水着、選んで…?」
セシリー同様、臨海学校の時の水着を買いに来たのだ。
小さく拳を握り、少し照れながら、恥ずかしそうに上目遣いで聞いてくる簪。
Q.断れますか
A.無理です。
「任せい。ちゃんと似合うの選んだるわ」
とは言うものの――
「は、恥ずかしい…」
際どすぎる水着だったり…
「…むぅ…」
簪の年齢にそぐわない水着だったり…
「……」
のほほんみたいな着ぐるみタイプの水着だったり…
「び、ビキニ……。…いいなぁ…本音…」
簪のイメージとは合わなさそうなビキニの水着だったり…
まあぶっちゃけると
「全部似合ってんねんなぁ…」
「うぅ…」
『(途中から私には無理だと思って離れていたらいつの間に水着売り場にいたのだ!というより持ってる水着がおかしいだろう!なんだ!紐ではないか!幼稚園児が着るやつではないか!そ、それは水着なのか…?び、ビキニだと!?…あ、あの白いビキニいいな…)』
そう、全部似合いすぎて困るのだ。うーん…どないしましょ。簪は顔赤くしてるし…。
と、悩んでいたら簪が更に顔を赤くして爆弾を投下した。
「じゃ、じゃあ…剣が、…その、私に…着てほしい水着を…」
「」
『』
what's?
「ちょ、ちょっとぐらいなら……えっちな水着でも…」
「待て落ち着け更識簪、君はそんなことを言う子じゃない」
『(い、いいいいいいいいきなり何を言い出すのだ簪は!?)』
ビビったわ。
「ほら、な?ちゃんと決めるから」
「う、うん♪」
『(く、くそぅ…あんな発言をした後に普通にイチャイチャしおって…!羨ましい!羨まけしからんなどという言葉は存在しない!羨ましい!!私も一夏とああいうことしたい!
『ほら、箒…この水着、箒に似合うと思うぜ』
『い、一夏!そんな際どいもの…!』
『箒に、着てほしいんだ…』
『一夏……』
みたいな!こんなやり取りを!)』
あんまり地味すぎるのもアレやし…その…露出が激しすぎるのもアレやし…ん?
「お?」
「え?」
『(む?)』
偶然見つけた淡い水色のワンピース型の水着。
「これがいい」
「…?…この、水色の…水着?」
「おう」
簪の魅力を引き出せるような水色の水着を買う。…うん、これや。
◇
「んー、っと…今日は楽しかったな」
「…うん」
あの後、俺たちはゲームやらアニメのブルーレイやらを漁り、再びゲーセンで遊んだりなど、なんとまあデートっぽくないデートを楽しんだ。
そして駅につき、モノレールを待っていた時、簪が俺を止めた。
「…剣」
「ん?」
「何か…変わった?…その…スッキリしたっていうか…」
「…あぁ…確かに変わった。…セシリーに言われたこと。周りを見て改めて感じたこと。分かったこと。色々あって…な」
単純に言えば、深く。そしてより強くなったのだ。何が、とは言わない。
「簪。…俺は、お前を愛してる。だから、これからも、今日みたいにずっと隣に居てくれ…」
「うん…!私も…愛してる」
『(な、なななななななな何を言い出すのだあの2人は!?)』
「やから…離れんといてくれ…」
「うん…大丈夫。離れない。…だから…剣も…」
「あぁ、離れへん。ずっと一緒や。…でも、時には無茶もする。…やから」
「うん…、その時は、信じて待ってる。お姉ちゃんとシャルロットさんとセシリアさんと私の四人で」
「…必ず…戻ってくるから…な?…やから、俺がいない時は、これを俺と思ってくれ」
簪にも、セシリーと同じくネックレス付きの指輪を渡す。
「こ、これって…!」
「まだ婚約指輪とかちゃうねんけど…その、証、として持ってて欲しい」
「うん…。大事にするね」
簪にそのネックレスを首を付けると、簪は右手で指輪をキュッと握った。
「んじゃ、帰ろか」
「…うん」
そして反対の左手で俺の右手をしっかりと握った。
モノレールが来た時、俺と簪の距離はより縮まっていた。
◆
『(こ、これは想像以上だな…。告白の場所がムードもへったくれもないが、まあ2人とももう相思相愛なことはお互い知っているんだし、別にそんなものはどうでもいいのか?…いや、普通はそうはいかない…のか?に、にしてもだな!一夏と…あのようなこと…は、恥ずかしいがやってはみたい…な。むぅ…まだまだ研究せねばなるまいな…)』
まあ嘘なんですけどね(これも嘘かも)。
あ、『』内はモッピーです。
あともう一つ。
9巻ってさ、2話ぐらいで終わるよね。
運動会とイレイズド。…うん、終わる。