IS 西の男性操縦者   作:チャリ丸

85 / 125
まさかテスト前にインフルにかかるとは思ってなかったぜい…(束さん感)

やりすぎた感が否めない。


Like the Lightning.

 「…後何分っすか」

 「後2分だ!さっきからそればっかりだぞ、時守くん!」

 「しょうがないですよ、ロジャーさん。剣くんも、気が気で無いんですから。制約が無ければ、きっと『能力』を使ってでも飛んでいっていますよ」

 

  国際連合宇宙開発専用ISステーションとIS学園を繋ぐ空の道を、3つの人影が超高速で駆けていた。

 

 「…クソが」

 「ん?どうか、したかい?」

 「いや、何でも無いっすよ」

 

  2機共に音速を超えているため、もちろんプライベートチャネルを通しての会話だったが、時守が呟いた一言は、ロジャーには聞こえなかった。

  そう、ロジャーには。

 

 「剣くん、怒る気持ちは分かるわ。誰だって、大事な人達を襲われたらそうなるわ。でも、それをぶつけるのは相手よ。今のここでは、心の中に押しとどめて…」

 「んなもんあそこで聞いた時からずっとやってるわ」

 「っ、剣、くん…」

 

  時守の呟いた声がはっきりと聞こえてきたナターシャから、無闇に怒りを撒き散らさないように注意される。だが、この怒りを押さえつける努力など、報せを聞いた時から既にしていたことだ。出撃前ですら、それが溜まりに溜まって、自分が変になりそうだった。

 

 「今からでもな、許可が出たら戦いに行く準備は出来てんねん。照準さえ絞り切れれば、俺はいつでも行くからな」

 「…えぇ。それなら、出撃時に許可が降りてるから大丈夫よ」

 

  時守に、現在『能力』の使用が禁じられている理由はただ一つ。あまりにも強大すぎる力故に、少しでも操作を誤ってしまえば、被害がより拡大してしまうからであった。

  驕りでは無い。事実だった。

 

 「君の『能力』が、千冬くんと『暮桜』の様なものなら、私も考えたさ!だが、もしそうだったとしても、向こうで戦うためのエネルギーが少なくなる!」

 「…分かってるっすよ」

 

  そう話している間も、3人は超速移動を続ける。

  時守は、ISスーツを着た上にウインドブレーカーに身を包み、その上から改造された輸送ユニットが、背負う形で固定されている。一見するとものすごくダサいことになっているが、今の姿を肉眼で捉えることが出来るものなどいるはずが無いので、ビジュアル面は無視した結果となっている。

  ナターシャとロジャーは、高速移動パッケージを換装し、さらに速度特化に改造された『ラファール・リヴァイブ』で時守の後を付けている状態だ。

 

 「君の全力なら、敵を簡単に倒せるだろう。だが、今は負傷者となっている味方がいるかもしれん!それに、今回も敵が増援を送ってくる可能性だってあるんだ!」

 「やからこそ、今こうやって我慢してるんすよ。言ってる事矛盾しすぎてて自分に腹立ちますわ。この行きだけに全てのエネルギーを使うようにプログラムされた輸送ユニットでさえ、遅いって感じますわ」

 

  この日、何度目となるであろう、遠い目で、時守は進行方向の遥か先、IS学園を見やる。

  3人がここまで焦るのには理由があった。

  ロジャー、ナターシャ、時守。3人が付けている無線に、数分前から絶え間無く入ってくる、IS学園からの情報だった。

 

  ラウラ・ボーデヴィッヒ。ISの損傷が激しく、生身にも幾らかの傷あり。後遺症になる程の物は無いが、これ以上戦闘を続けるのは危険。

  ダリル・ケイシー。IS、本人共に未だ目立った外傷は無いが、SEがほぼ尽きかけており、非常に危険な状態。

  フォルテ・サファイア。ダリル・ケイシー同様、目立った外傷は無いものの、疲労が溜まりつつあり、撃墜も時間の問題。

  凰鈴音。肩部、腕部の全衝撃砲が破壊。満身創痍の中、『双天牙月』で辛うじて防衛に徹している。

  篠ノ之箒。単一仕様能力『絢爛舞踏』の発動に成功するも、機体の損傷が激しくなり、苦戦を強いられている。新武装である『穿千』による、本人への負担が懸念される。

  織斑一夏。専用機持ちの中で最も生身の肉体にダメージを負っている模様。『絢爛舞踏』のおかげで戦うことは出来ているが、先に操縦者が失血により意識を失う可能性が大。

  セシリア・オルコット。BT兵器が全て破壊され、スターライトmkⅢで応戦するも、その手数と攻撃力、そして敵の防御力の高さ故に、ほぼ相手にダメージを与えられる状態ではない。

  シャルロット・デュノア。周囲の援護のため1人奔走中。ほぼ全ての味方に自身の拡張領域に積んでいる武装の使用許可を出しており、何とか戦況の維持に貢献。しかしそれにより、本人の火力不足が顕著に。

  更識簪。『春雷』、『山嵐』共に弾切れ。現在、『夢現』での近接戦闘で奮闘しているものの、複数機からの猛攻に攻めあぐねている。

  更識楯無。唯一と言ってもいい程に武装が残っており、着実に敵にダメージを与えている。周りに味方が多く、開けた場所であるために『沈む床』と『清き熱情』は期待出来ないが、操縦技術の高さと『蒼流旋』で現在奮闘中。

 

  状況が芳しくないどころか、最悪に近いものだという報せが、先ほどから耳に入っていた。

 

 「絶対防御の阻害、か…」

 「惨状を聞いて改めて恐ろしさが身に染みたよ。絶対防御阻害、それに合わせた巨大ブレードと4砲口の超高密度圧縮熱線、そして『ゴーレムⅡ』から引き継いだ君の動きに近いAI、大体の攻撃は防いでしまう可変エネルギーシールド。…どうやら敵は、本気で殺しに来ているか、本気で世界に喧嘩を売りたいようだね」

 「そうみたいっすね」

 

  歯噛みし、しかし表情を変えること無く、時守は飛ぶ。

 

 「っ、雨…か。IS学園にも降っているんだったな」

 「…皆、もうちょいだけ頑張ってくれ」

 

  ロジャーと時守、2人の呟きは雨の中に消えた。

 

 ◇

 

 

 「ぐッ、が、ァアア!!」

 「一…、夏…ぁ…」

 

  『ゴーレムⅢ』の右手で掴まれた一夏が、アリーナの壁に叩きつけられる。

  こちら側が弾切れやエネルギー不足を起こしたと判断するや否や、今までは大人しかった『ゴーレムⅢ』達が、猛攻を仕掛けてきたのだ。

 

 「まだ…だ、まだ、負けちゃいけねぇ…っ!」

 「はぁ…っ、はぁ…、そう、ね。頑張ってね、一夏くん。おねーさん、ちょっと助けてあげる余裕が無くなってるから…っ、ふっ!」

 

  『蒼流旋』が、虚しく可変エネルギーシールドに防がれる。

  ゴーレムにしては早すぎる機動と展開に、専用機持ち達は完全にサンドバッグにされていた。

 

 「…この前の襲撃で、剣の動きと、シャルロットの『高速切替』を会得してる…。このままだと、ジリ貧っていうより…」

 「言うな、簪…!そんなもの、言わずとも私達が一番良く理解しているはずだ…!」

 

  『夢現』で『ゴーレムⅢ』1機との戦闘を続ける簪が、つい零してしまった一言。それに反応したのは、膝に手を付き、息絶えだえながらも、何とか立とうとする箒だった。

  彼ら彼女らの周りには、未だ6体のゴーレムが、四人を狙っていた。

 

 ――そこへ

 

 「ぐっ!?こんのっ、なんだいきなり!」

 「分かんないッス!」

 「今、の、は…効きましたわ…」

 「はぁ…、はぁ、不味…いな。流石にもう、エネルギーが無いぞ…」

 「本当、何がしたいんだろうね、こいつらは!」

 「愚痴ってる暇は無いわよ、シャルロット!」

 

  第二アリーナにいたはずの6人が、『ゴーレムⅢ』達によって第一アリーナの地面に叩きつけられた。

 

 「フォルテ、ちゃん?」

 「アレ?楯無…ッスか?てことは、ここ第一アリーナッスか」

 「…なんだ、嫁よ。みっともないぞ」

 「お前には言われたくないな…っ、ラウラ…」

 「皆様、大丈夫ですの…?」

 「そういう…セシリアも…?」

 「僕もセシリアも皆も、何とかって所だよ、簪」

 「あ?んだよ。こっちも大して状況良くねぇじゃねぇか…」

 「言ってる場合じゃ、ないでしょう…!」

 「アンタ、大分やられてるけど平気なの?箒」

 

  これにより、第一アリーナに専用機持ち全員が揃う形となった。

 

  第一、と謳っているだけあって、このアリーナはIS学園の中で最も大きいアリーナとなっている。だがそれでも、専用機持ち10人と『ゴーレムⅢ』13機が戦うとなると、少し狭苦しくなる。

 

 「何が目的でここに皆を…」

 「んなの、簡単だろ?生徒会長。っ、全員、構えろ!」

 

  楯無の疑問に答え、吼えたダリル。アリーナ中央に集められた満身創痍の専用機持ち達。そして彼らを囲むように、ゴーレムⅢ達はジリジリと距離を詰める。

 

 「オレらを、ここで一網打尽にして見せしめにでもすんじゃねぇのか?」

 「笑えない冗談…ねっ!」

 

  諦めたように笑うダリルの言葉を聞き、鈴が『双天牙月』を『ゴーレムⅢ』の1機に振り下ろす。が、やはり虚しくも右腕の巨大ブレードにより防がれてしまう。

 

 「皆、疲れてるとは思うけど中央で混戦になるのは避けるべきよ!…フォルテちゃん、ダリル先輩、2機ずつ任せられるかしら…?」

 「オレらしかいねぇんだろ?」

 「やるしかないッスね…!」

 「後、は…私が引き受けるから」

 

  1年生が一体ずつ。2、3年生が2体ずつ引き受けることで、何とか戦いを成立させようとする。

 

 「ぐぁっ…!」

 「ラウラ!」

 

  しかし、元から戦闘不能間近だった所から、綻んでいく。

  他の専用機に比べ、極端に防御力が低い『シュヴァルツェア・レーゲン』に、『ゴーレムⅢ』のブレードが突き刺さる。偶然にもラウラ自身には刃が通っていないが、ラウラ自身に大きなダメージが伝わるのも時間の問題だった。

 

 「…はっ!」

 「このっ!」

 「なんで…!」

 「ちぃっ!」

 「通、り…ませんわ…」

 「当たってよっ!」

 

  零落白夜、双天牙月、夢現、空裂、スターライトmkⅢ、パイルバンカー。

  その全てが、可変エネルギーシールドと巨大ブレードに防がれる。続けて攻撃しようにも、ひらりひらりと、躱されてしまう。

 

 「こりゃ、オレもちょっとキツいぜ?生徒会長さんよォ」

 「無茶を言ってるのは承知よ…、でも、今1年生はそれどころじゃないの…!」

 「そうは言っても、ウチらんとこもそれどころじゃないんッスけどね」

 

  思わず、フォルテは笑ってしまった。

 

  ―無理ッスよ、こんなん。何も、何も通らないじゃないッスか。

 

  周りが、見えてしまっていたのだ。可変エネルギーシールドと巨大ブレードに全ての攻撃は阻まれ、かと思えば絶対防御の阻害システムによりこちらはダメージを負うばかり。楯無も虚勢を張っているが、きっと気づいているはずだ。

 

  ―ウチら全員、ここで誰かの踏み台になるんスね。顔も見たことない誰かの。

 

  そんなフォルテの考えが伝わってしまったのか、楯無の表情にも陰りが差した、その時だった。

 

 「きゃっ…!……えっ…」

 

  簪の方から、嫌な予感と共に短い悲鳴が聞こえたのは。

 

  その両手から夢現が弾き飛ばされ、クルクルと宙を待っている。その背景には、曇天と…飛行機だろうか、一筋の光が見える。

  弾き飛ばされた衝撃で、思わず尻もちをついてしまった。

 

  瞬間。簪が相手をしていた『ゴーレムⅢ』は、当然のように巨大ブレードを振り下ろした。

 

 「簪ちゃん!」

 

  自身の相手をしているゴーレム2機を無視し、楯無は簪の元へと翔んだ。ダリルもフォルテも、これを咎めるはずがなかった。いくら他国の代表候補生とは言え、同じ学園の仲間なのだ。その仲間が死ぬところなど、見たくもない。

 

 「お、ねぇ…ちゃん」

 「ぐっ…!こ、のぉ…!」

 

  巨大ブレードを、『蒼流旋』で何とか受け止める。完全に仕留める一撃だったそれはとてつもなく重くのしかかり、地に膝を付いてしまった。

 

 「おねえ…」

 「簪ちゃん。お姉ちゃんなら、大丈夫よ」

 

  楯無はそう見栄を張っているが、そう長くは持たないだろう。

  学園最強の楯無ですら、敵わない。篠ノ之博士お手製の専用機ですら同じ結果だった。学園に所属している全ての専用機持ちが力を合わせても、このざまだった。

 

  簪の中で、何かが切れた。

 

 「もう、無理だよ…」

 「無理じゃ、ないわ」

 「無理だよ!この世にヒーローなんていないんだよ!」

 「そう、かしら?…って、ちょっと不味いみたいね」

 

  楯無がブレードによる攻撃を耐えている間にも、『ゴーレムⅢ』は次の攻撃への準備を進めていた。

 

 「あ、ぅ…」

 「…ごめんなさい、簪ちゃん。…私達、ここまでみたい」

 

  超高密度圧縮熱線の4砲口、全てが2人を捉えていた。

 

 「楯無さん!」

 「簪っ!」

 

  仲間達の声が聞こえる。

 

 

  雷の轟音と光と共に、熱線が放たれた。

 

 

 ◇

 

 

 「……あ、れ?」

 「…簪、ちゃん?」

 

  目を開けた2人は、生きているのか死んでいるのか、自分自身定かではなかった。

 

 「生き、てるの?」

 「そうみたいね。…一夏くん達が、こっちを驚いた顔で見てるから」

 

  どうして、あの状況で生き残れたのか、という言葉を出そうとした楯無の頭に、何かが乗った。

 

 「…へ?」

 「そりゃ流石に、このタイミングで俺が来たら驚くやろ」

 

  頭を上げると、そこには髪が無造作に伸び、こちらに優しく微笑む彼がいた。

 

 「…剣、くん?」

 「あぁ、せやで。お待たせ」

 

  何故か、彼は非常にあっさりとした挨拶で終わらせたが、楯無と簪の心は揺れ続けていた。

 

 「なん、で…」

 「んー、多分色んなことについてのなんで、やとは思うけど、とりあえず今は避難してくれへんか?」

 

  ほら、今も狙ってきとるし。とボヤく彼。どうやって熱線を止めたのか、どうやってここに来たのか、聞きたいことは山ほどあるが、それを今すべきでは無いと、本能で理解出来た。

 

 「…うん、分かった…」

 「よし。シャル!一夏!出来るだけここにいる全員を隅の一箇所に固めてくれ。んで、固めたら『雪羅』のエネルギーシールド張ってくれ」

 「わ、分かった…」

 「了解…っ!」

 

  全員がボロボロだが、特にゴーレムに攻撃されることなく、全員が移動を開始することに成功していた。

 

 「…さっきから、やたら信号多くてウザいな」

 「…へ?」

 

  簪の気の抜けた声を置き去りに、時守は消えた。

  ISも展開しないまま、一体どういう原理になっているのかは全く分からないが、確かに消えた。

 

 「出来るだけはよ頼むわ。こいつら、今俺しか狙ってへんみたいやしな」

 「ちょ、剣!ISの展開は…」

 「今はいらん。時間稼ぎには勿体ないわ」

 

  まるで超人のように、生身でゴーレムを飛び越え、自分に攻撃を集中させようとする時守。その思惑通り、全員が一夏の後ろへ避難した。

 

 「どうなってんスか?あの動き。どう見ても人間のソレじゃないッスよ…」

 「あれぐらいなら、『完全同調』を生身で発動させたアイツでもやってたわよ」

 「それよりも、今は重傷者の応急手当ですわ…」

 「そうだよ、鈴。…ラウラ、大丈夫?」

 「平気だ。…とは、言い難いな。シャルロット。すまんが支えてくれるか?」

 「うん」

 

  しゃがんだ一夏の後ろで、箒が『絢爛舞踏』を発動。一夏の『雪羅』が切れないようにする。

  そして、その2人の影で、残った8人がISを解除して座っていた。

 

 「お姉ちゃん…」

 「大丈夫よ。きっと、今の剣くんなら、大丈夫」

 「どうやって、あの熱線を止めたのだ…。私も見ていたが、どう考えても間に合わなかったぞ…」

 「それを、今から見せてくれんじゃねぇのか?…しっかり守ってくれよ?オリムラくん」

 「分かってますよ!」

 

  箒を除き、これで避難した全員が生身になったことを確認した一夏は、シールドの展開により集中する。自分が破られてしまえば、確実に重傷では済まないものが出てくるからだ。

 

  とはいえ、目の前で繰り広げられる戦いは、一瞬で終わるのだが。

 

 「よっ、と。全員、無事に終わったみたいやな」

『最重要ターゲット、ロック。排除シマス』

 「やからさっきからうるさいねんって」

 

  ふわぁ、と欠伸を一つ。『ゴーレムⅢ』の1機が左手を向けているにも関わらず、生身で大あくびをかく。

 

 「さあさあ。確認させて貰うけど、お前らが襲撃の犯人でおけ?」

『本作戦ニオケル、最重要ターゲット、時守剣ト断定。コレヨリ、行動ヲ開始』

 「…あぁそう。本作戦っていうんやったら、お前らで間違いないんやな」

 

  『ゴーレムⅢ』の左手から、時守に向けられて熱線が放たれる。

  地面諸共焼き尽くさんとするそれは、時守のいた場所に爆煙を上げた。

 

 「剣っ!?」

 「安心せぇ。…こいつはもう、俺にダメージ与えれへんからな」

 

  その煙の中から、無傷で出てきた時守は、『ゴーレムⅢ』の腹部に右手をかざした。

 

 「…さて、んならそろそろ取り繕うのは止めるか。…いい加減にしろよ。てめぇら、そこまでして早死したいんか」

『ピッ…ガッ、フ、不調…原因、不明ノ不調アリ…』

 

  ゴーレムのカメラを通して見ているであろう真犯人に向け、時守は言葉を紡ぐ。

 

 「なんで俺をここまで殺したいんか、何の恨みがあるんかは知らんわ。…でもな、俺を相手取りたいんやったらこんなクソ使うな。自分でかかってこいや」

 

  時守の右手中指の指輪から、光が溢れる。

 

  そして、

 

 「…『雷轟』」

 

  『ゴーレムⅢ』から天に昇るように、極大の雷が発現した。

  轟音と共に地に沈むゴーレムを目にすることなく、時守は次の標的を見定めた。

 

 「残り12体か。…本気で来いや、クソ雑魚共。お前らの相手はこの俺や」

 

  台詞と共に、黄金のISが展開される。

 

 「なんでも、世界初らしいな。これ出したんって。丁度ええわ。憂さ晴らしに付き合え」

 

  一夏と、その影に隠れる全員が、ISを起動させて時守のISを確認する。

 

  金獅子第三形態『金色(こんじき)

 

  金夜叉よりもさらにコンパクトに、よりシャープになったその金色の機体からは『ランペイジテール』が8本生えていた。

 

  世界初となる、三次移行(サード・シフト)機が、そこにいた。

 

 「『雷轟』」

 

  その声と共に、凄まじい物量の雷が時守の右手装甲から飛ぶ。

  可変エネルギーシールドを展開しても、意図を持つかのように動く雷を捉えられるはずがなく、青白い雷の刃は『ゴーレムⅢ』達の装甲を抉っていく。

 

 「…ん?」

 

  ふと、何かに気づき、後ろを向いてみる。すると、目の前にいるゴーレム達に向けて『雷轟』を放つ時守の背後から、1機の『ゴーレムⅢ』が、巨大ブレードを突き刺さんと突撃していた。

 

 「…『雷動』」

 

  しかし、ブレードの先端が時守の首筋に触れようとしたその瞬間、時守の身体が、まるで雷のように一瞬で消え去った。

 

 「『雷轟』は、ただ雷を射出するだけの単一仕様能力(ワンオフアビリティー)や。んで、今の『雷動』は読んで字のごとく、雷のように動ける、ほぼ瞬間移動に近い複数仕様能力や」

 

  まるでゴーレム達を嘲笑うかのように、時守はふわりふわりと空を飛んでいた。

 

 「んで、『雷鳴』」

 

  その言葉と共に、眩い光が『金色』から放たれ、時守にロックを付けていた全ての『ゴーレムⅢ』が、ハイパーセンサーを手で覆った。

 

 「こいつは優秀でな、俺にタゲ取ってる奴らの視界をハイパーセンサーごと数秒狂わせるもんや。…俺らが三次移行して新しく出た複数仕様能力はこんだけや。楽しませてくれや?」

 

  文字通り、蹂躙が始まった。

 

 

 ◇

 

 

 「『雷轟』ォ!」

 「これで、6体目…」

 「すごい…」

 「はっ、最早同じモンに乗ってると思えねぇよ」

 「は、ははっ、なんスかこれ。アレをオールワンパンとか、ウチらの今までの頑張りって、何だったんスか」

 

  一夏の影に隠れている、専用機持ち達がそれぞれ、思い思いの声を上げる。

 

 「そ、それにしても凄いですわ…」

 「うん…。まるで雷みたいに、いや、もう雷そのものだよ…」

 「まさか、三次移行で先に行かれるとは思ってなかったわ」

 「あ、また一体沈んだわね」

 

  話している内に、また一体の『ゴーレムⅢ』に雷が突き刺さった。

 

 「クソが。これだけやったら、ストレス発散ならんやんけ」

 「…何か、するようだぞ」

 

  ラウラの言葉通り、今まで『雷轟』でゴーレムを叩き潰していた時守が、動きを止めた。

 

 「ランペイジテールで潰すのもなんかちゃうしな。ここは、やっぱアレで行くか」

 

  とある1機の前まで移動した時守は、そのランペイジテールを全て収納した。

 

 「『完全同調・超過(シンクロ・オーバー)』」

 

  金の機体の各スラスターから、見覚えのある金の粒子が放出され、時守を包んだ。

 

 「…こいつの変わった所はただ一つ」

 

  目の前にいるゴーレムの背後に、鋭角機動で回り込む。

 

 「俺への自爆ダメージが無くなった。ただそれだけや」

 

  轟音と共に、『ゴーレムⅢ』は蹴飛ばされた。

 

 「す、ごいな…」

 「えぇ。本当、に…。彼女として、誇らしく思うわね…」

 「全く、ですわ…」

 

  疲弊からか、既に数人が気を失っている。

 

  一夏と箒、2人を残して専用機持ち達は意識を手放した。

 

  残る2人も、時守が最後の1機に雷を落とした所を確認し、静かに眠った。

 

  全ての電気と雨を吐き出したからだろうか、空からは、薄らと陽の光が差し込んでいた。




剣ちゃんがどうやって熱線を防いだか、とか『金色』については次話に詳しい説明を入れます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。