活動報告にて最後のヒロインアンケートを実施しています。
既にコメントをくださった読者さんも、追記をしておりますのでもう一度ご確認よろしくお願いします。
「は?すまん、もっかい言って?」
「…な、何も覚えてないです…」
「…ちっふー先生。電撃で人の記憶って復活出来ましたっけ?」
「やめろ」
旅館の大広間にて、一夏は時守と千冬の前で正座していた。
「オイオイオイオイ一夏くぅん。せっかく事前にお医者さん呼んどいたのによぉ、覚えてないってさぁ…そりゃ通らんやろ。なぁ?」
「どこの極道だお前は。まあ、あらかじめアレをボコボコにすることを踏まえて医者を呼んでいたことは褒めてやろう」
時守が戦闘空域に飛び立つ前に電話していた施設。
それは病院だった。
「移動させたくない患者が出来る」という電話をかけ、事前に旅館に来てもらっていたのだ。
「…え、結局俺って何が原因でこんなことになったんだ?」
「亡国のクソチビにボコられて、なんか分からんけど変身して、そこをまた俺がボコった」
「あー、そっか。アイツにやられたのか。…なんか、すまん」
一夏の中で罪悪感が生まれる。
普段なら、理由も無くボコボコにされれば流石の彼も怒る。
だが、今回は明らか自分の実力不足のせいでマドカに敗れ、そこから迷惑を掛けてしまったのだ。
彼の中では、形はどうであれ自分に非がある。
「やからお前に、罰を与える!」
「っ、あ、あぁ!」
「これから年末まで一日1本俺にジュース奢りな」
「………え゛」
一瞬考え、「あれ、そんなにキツくないないか?」と思ったが、よくよく考えれば時守は「俺に」とだけ言った。
ということは、まだ少女達からの罰は決まっていないのだ。
「あ、モッピー達にはお前の筋力が無くなるまでのエンドレスマッサージな」
「嘘だろおい」
ある意味地獄。
ただでさえ肉体の疲労が凄まじく、激しい筋肉痛にも襲われているのだ。
そこに、身体的負荷が大きいマッサージなどをすれば、腕がヤバいことになってしまう。
「私と」
「もちろんアタシと」
「無論私にだ」
「はぁー…」
クソデカため息を吐く一夏だが、彼の中では決心は付いていた。
というより千冬と時守があちら側にいる時点で断ることなど出来ないのだと、割り切っていた。
「…ってあれ、シャルロット達はいいのか…。あ、いや悪い。そうか、そうだよな…。そっちで楽しくやってくれ…」
「…先輩、織斑君明らかダメな方向の察しが良くなってきてますよね…」
「……言うな。言わんでくれ、真耶…」
マッサージをして欲しいと言わなかったセシリア、シャルロット、簪、楯無の方を見て、一夏は察した。
なぜか全員が時守のすぐ側に近づいており、彼の浴衣をがっしりと掴んでいるのだ。
彼の顔を見た一夏は、その眠たげな彼に心の中で合掌した。
「あー、まあなんだ。若いのは若いの同士よろしくやっとけ」
「それ教師が言っていいことっすか?」
「今は勤務時間外だからな、ただの元世界最強さ。ほら真耶、風呂で呑むとしよう」
「はいっ!んーっ、楽しみですねぇー」
「あ、風呂はそこ出て左っす」
「おう」
いつもより気持ちテンション高めだった千冬が真耶を引き連れ、大広間を出ていく。
残ったのは、ダリルとフォルテを除く専用機持ち達のみ。
「さ、行きましょ、剣君」
「…うん」
刀奈と簪に連れられ、時守が襖の前へと連れていかれる。
その襖がシャルロットとセシリアによって開けられると、そこには1枚の布団が敷かれていた。
「ほぇ、布団?」
「…剣君、疲れてるでしょ?」
「いや、そんなこと…」
「嘘ですわね。普段よりも少し歩くのが遅いですわ」
「普段と違って気が抜けてるし、猫背にもなってるよ?」
「…目がトロンとしてるのと、口調も普段とは違う…」
「喋るのも遅くなってるし、寝ぼけてる時の特徴が出てるわよ?」
「…バレてた?」
その時守の一言に、4人が一斉に頷く。
『完全同調・超過』は、時守への肉体的負荷すらもエネルギーに変換することで、『完全同調』の完全上位互換へと進化した。
しかし同時に、『雷動』や『雷轟』との併用も増え、結果時守の脳にかかる負荷は増えたのだ。
スペックの上がった『金色』が大半の演算を担ってくれてはいるが、時守の脳が行う演算も、そう少なくはない。
「織斑先生とか一夏くんには、こういう所見られたくないでしょ?」
「…あぁ。わざわざありがとう、刀奈…」
「素直…」
「…俺って普段そんなに素直ちゃう?」
素直は素直だが会話の中でツッコミとボケが多いので脱線しまくっているのだ、とは言えなかった。
今にも寝そうな彼を前に、そんなこと言えなかったのだ。
「…襖、閉めといたよ?」
「ん…」
簪のその言葉を聞くやいなや、布団に倒れ込んだ時守。
うつ伏せになった彼の両足に、シャルロットが手を添えた。
「マッサージ、してあげるね?」
「あ゛ぁ゛〜…。このまま天国行きそう…」
「では私は腰の方を…」
「お゛ぉ゛あ゛…。はぁん…」
「…そして私たち」
「更識姉妹が…」
シャルロットとセシリアからの腰から下へのマッサージを堪能していると、楯無と簪が時守と同じように布団に寝転んだ。
「二人揃っての添い寝よっ」
「…して欲しいことがあったら、何でも言って…」
「……すぅ…」
「…ってあら?」
「…寝ちゃった?」
頬を啄いても、時守の手を掴んで胸に押し当てても、耳に息を吹きかけても何の反応もない。
疲れすぎて死んだように寝ている時守は、ある意味最高のおもちゃになっていた。
「ふふ、こうしてるとほんとに可愛いわね。剣くん」
「……ほっぺ、柔らかい…」
「んう…」
「…寝かせてあげよっか」
「そうですわね」
シャルロットが気を利かせ、全員が彼から離れて毛布をかける。
「うつ伏せのままで、大丈夫かな…」
「肋骨にヒビが入ってるって理由でもないけど、確かに心配ね…」
「このままぐっすりという可能性もありますし…」
「よ、4人で仰向けにする…?」
この割とガタイの良くなってきた引き締まった筋肉に包まれた彼氏を?
いくら女子4人でも、起こさずに仰向けにするのはキツいだろう、と思っていた、その時。
「…ん〜…」
「あっ…、寝返り…」
「そ、そう言えば剣さん。以前に布団では寝相が悪いと言っていたような…」
「あ、あはは…」
「…とにかく今は、ゆっくり寝かせてあげましょう?」
ごろん、と彼が寝返りをうった。
見知った旅館での浴衣姿ということと、彼の性格、そして今の寝返りもあって胸元が大きくはだけてしまうが、所詮は男のもの。
さらにもう見慣れている彼の身体なので、4人はそこまで大きな反応は見せなかった。
…チラ見せというのに惹かれたのは事実だが。
「おやすみなさい…」
屈んだ刀奈の唇が、時守の頬にキスをした。
「――っ、お姉ちゃん…!」
「ぬけがけ…、ですわよ…!」
「そ、そんな小声で怒らなくたっていいじゃない。ほら、みんなもすればそれで平等ってことで…」
「それもそうですけど…」
文句を言いながらも、セシリア、簪、シャルロットの3人も彼におやすみのキスをする。
平等とは言え、誰もが一番初めを狙っているのだ。
「…お風呂、入る?」
「えぇ、是非そうしましょう」
「ここの温泉、結構良いみたいよ?」
「そうなんですか?」
4人が時守を起こさないよう、ひっそりと部屋を後にした。
残ったのは、ただ1人。
「…みんなめっちゃええ匂いしてたやん…。唇も柔らかかったし。普段ほっぺにしてもらうこととか無いからなー」
寝たフリをしていた、時守剣だけである。
眠いのは確かだ。
だが、彼女達が自分のために何かをしてくれそうだったので寝た振りをしたところ、予想以上に役得なことをしてくれた。
疲労に感謝感謝である。
とは言え
「…あかん、まじでクソ眠い…」
疲労のピーク真っ盛りなのも事実。
この旅館の風呂がどういうシステムかは良く理解しているため、一刻も早く突撃したい気分を抑え、今は少しばかりの休息を取ることにした。
「寝よ」
その言葉から10秒も経たない内に、その部屋からは寝息が小さく聞こえていた。
◇
「…っ、ガチ寝!?…なんや、10分しか経ってへんやん」
仮眠を取った時守は勢いよく身体を起こした。
疲労は少しだけだが取れているし、頭も割と冴えている。
「よし、行くか」
いざ楽園。混浴へ。
彼女達が温泉へと向かったのは約15分前。
事前の準備に時間もかかるだろうし、入ってるまだそれほど時間は経っていないはず。
「着替えもタオルも置いといたし、後は行くだけや」
ラッキースケベならぬ必然のスケベをしに、時守は温泉へと足を向ける。
そもそも、入っているのは彼女だけ。
さらに彼女達は夜になると風呂やベッドで誘ってくることもある。
ならいいだろうという考えの元で動いていた。
「…ま、まあ風呂入るだけやし?」
風呂では風呂に入ることが目的。
それ以外のことで、何かすることがあるのだろうかと頭を働かせる。
あったわ。とすぐに自答した。セシリアや刀奈が誘惑してくるのがいけないのだ。
「男って楽やわー。脱ぐのほんま楽やし」
脱衣場に着くなり、上を二秒で脱ぎ、下を下着ごと一秒で脱ぎ、三秒程で全裸になった時守は、一応前を隠して温泉に突撃した。
「やっほー!……あー…」
突撃した先に待っていたのは、桃源郷。
桃源郷には違いないが、同級生や副担任、コーチまでもが入浴している桃源郷だった。
「入るで?」
「何平然と覗いてんのよアンタはーっ!?」
顔を真っ赤に染めた鈴が大声で怒鳴る。
それもそのはず。彼氏でもない男に風呂に入っている姿を見られているのだから。
「覗いてへんわ!ガン見や!」
「見んな!」
「…ってかカナ、3人だけちゃうかってんな」
「スルーしてんじゃないわよ!なんか言うことないの!?」
「…てへぺろ?」
「このっ…」
さらに真っ赤になりながら怒鳴る鈴を無視し、時守は身体を洗い始める。
「まーまー、そう怒んなって。お前も俺の裸見たってことでチャラや。ですよね?ちっふー先生」
「あぁん?あー、そうだな。男女平等はいい事だ。はっはっは」
「うわ酔うてはるやん」
即効で髪の毛を洗った時守が泡を流す。
そしてそのまま洗顔を始める。
「ゔぁ、ゔぉっゔぃー?ゔぁゔゔぁ?ゔぃゔぁゔぁっゔぁあ」
「と、時守くん?何て言ってるんですか?」
泡まみれのまま話したため、声が泡に遮られてまともに聞こえない。
時守の乱入に未だ混乱している数名の代わりに、真耶が聞いた。
「…ぷはっ。モッピー?ラウラ?嫌やったらゴメンやで?って言おうとしたんすよ」
「何で私はいないのよ!」
「…何となく?」
簪、刀奈、セシリア、シャルロットに謝らないのはまだ分かる。
先ほどから満更でもない、というよりも待ってましたと言わんばかりの表情を浮かべているからだ。
真耶、千冬の教員達もまだ、百歩譲って分かる。
流石に、生徒の裸に欲情するような変態だとは思いたくないし、まずこの2人とも酔っているからだ。
だが、ラウラと箒。テメーはダメだ。というのが鈴の主張だった。
「てかそもそも3人ともほんまに嫌ならIS展開してるやろ?」
「ぬぐっ…」
「それ、は…」
「言ってはいけないやつだぞ、師匠…」
だが、時守のその言葉により彼を止めることが出来なくなってしまう。
一夏に着替えを覗かれればISを展開して怒り出すにも関わらず、この場では展開しない理由。
時守を恋愛対象として見ていないということもあるだろうが、この場に、酔っているとはいえ千冬がいることが大きかった。
「その前に3人に手ぇ出したらセシリー達に何されるか分からんもん」
「もちろんお仕置きですわよ?」
「…手ぇ出そかな…」
「剣さんっ!」
身体を洗いながら、そんなことを1人呟くとセシリアから手厳しいツッコミが入った。
セシリアからお仕置きと言われるとどこか唆られる時守なのであった。
「っと、おーわり。…入ってもええの?」
「…こっちをジロジロ見ないなら」
「アホ。見るわけないやろ」
「…何よ…」
顔を赤くしながら口元まで湯に浸かり、ぶくぶくと泡立てる鈴。
そんな彼女を尻目に、時守は刀奈達が待っている所に入った。
「はひょ〜。ええお湯」
「剣くん、寝てなくて大丈夫?」
「あぁ。4人ともありがとうな。気持ちよく寝れたわ」
肩までしっかりと浸かる時守と談笑する刀奈。
簪、セシリア、シャルロットも平気な顔をしているということは、普段から彼の裸を見慣れているということなのだろう。
「…にしても疲れたわ。白騎士強すぎやろアレ…」
「そうなの?結構、競ってるように見えたんだけど」
「……正味、アレを操ってるのがほんまの人で、性能も段違いに上がってたら無理やったわ。無人機の第1世代やったからいけただけやな」
「…無事に終わったから、それでいいんじゃないの?」
「まあせやな。簪ー!」
「わっ…」
近くにいた簪をぎゅっと抱きしめる。
話題も話題だからだろうか、神妙な顔をしていた時守の顔が一気に緩んだ。
「…やばい」
「っ、だ、ダメ、剣…。みんなまだいてるから…」
「い、いけませんわよ剣さん!」
「分かってるけど…」
とある生理現象が起きかけた時守だが、自称鋼鉄の理性を持ってなんとか耐える。
「でもまあ、本来の目的は果たせたな。ですよね?山田せんせ」
「えっ、わ、私…ですか…?」
簪を抱きしめながら顔だけを器用に真耶の方に向けた時守。
その抱きしめれている簪の顔が、2つの意味の火照りにより真っ赤に染まっているのを微笑ましく見ていただけに、真耶にとってそれは不意打ちに近かった。
「うーん…、どうでしょう。亡国機業の幹部も倒せませんでしたし、何より向こうに全力が渡ってしまったので…」
「…え?いや、それちゃいますて」
「え?」
微妙に噛み合わない会話。
楯無と千冬から伝えられていた亡国機業への攻撃はお世辞にも成功したとは言えない。
しかし彼は、目的は果たせたと言ったのだ。
「修学旅行の下見っすよ。亡国だけならなんとか出来ますし、一般生徒には楽しく行ってもらえそうかなって」
「時守くん…」
真耶が言う目的はそれであったが、時守の言う目的は修学旅行の下見。
教え子がこれほどまでに周りのことを考えられていることに感動しつつ。
「はっはっは!真耶、注いでくれ。…えぇ?何か言ったか?…ぷっ、はっはっは!」
「…先輩…」
目の前で偉大な先輩が泥酔しているのを目の当たりにし、その感動が薄れてしまった。
「そ、そうですね!下見としては、文句なしの出来栄えです!」
「なら良かったっす。もしまた変なんが来たとしても、俺らでなんとかしますから」
無自覚に専用機持ちにプレッシャーをかける時守。
だがそれでも、後ろ向きな気持ちが芽生えることは無かった。
今度こそ、今度こそは仕留めると、心の中でそう決めたのだ。
「…そろそろ出よか」
「そうですわね…」
「うん、ちょっとこのままだとのぼせそうだし…」
「…えっと、じゃあお先に上がるね…?」
「おやすみなさい、みんな」
箒、ラウラ、鈴に別れを告げ、千冬と真耶にも会釈をし、5人共に気づかなかったが、真耶と千冬により隠されていた一夏とも別れる。
互いの裸を少しは見慣れてくる程に付き合いを重ねてきた彼らだが、脱衣所に戻るまではしっかりと身体をタオルで隠し、新しい浴衣を着る時も出来るだけ見せあわないようにした。
「お待たせ、剣くん」
「おぉ…。…浴衣美人ってやつか…」
「んもぅ。そんな上手いことを言っても、何もいわよ?」
「…お姉ちゃん、だけ?」
「僕達にも、何か無いの?」
「お風呂上がり…少し自信はありましてよ?」
「あぁ、簪も、シャルも、セシリーもよう似合ってるわ」
再び顔を合わせて脱衣所を出る頃には、5人が5人とも、しっかりと浴衣に身を包んでいた。
「…ねぇ、剣くん」
「おい、まだ廊下やぞ?」
「そんなもの関係ありませんわ」
「それに、この時間帯なら誰も居ないでしょ?」
「…そもそも、貸し切り状態だし…」
脱衣所から部屋へと向かう途中。
浴衣を、というよりも身体をこれでもかと時守に押し付ける彼女たち。
楯無の生徒会長権限で既に5人同室にしているということはそういう事なのだ。
「せっかく大運動会で5人一部屋になったのに、最近ご無沙汰だったじゃない?」
「ま、まあせやけど…」
「なら京都に来るんだし、浴衣姿でするっていうのはどうかなーって思ったんだ」
「幸い、織斑先生達とは少し離れた部屋ということですし…」
「……これでも、興奮しない?」
「さっきから結構やばいねんって」
さっきとはいつか。
具体的に言えば風呂に入った数秒後からである。
「部屋に入ったらよろしくな」
「こちらこそ、よろしくね?」
「覚悟しててね?剣」
「今日の疲れを、わたくし達が吹き飛ばして差し上げますわ」
「…でも、今夜は、寝かせてあげない…」
襖を開け、割り当てられた部屋へと入る。
既に布団が敷かれていた部屋。
だが、その布団や先ほどまで入っていた混浴が、今夜だけは本来とは少し違う用途で使われたのは言わなくても良いだろう。
夜中、もし誰かが襖に耳を当てれば、声が漏れていたかも知れなかった。
ここまで結構な数のフラグでを建ててる(予定)ので、忘れないかほんとに心配。
リメイクとかこの作品とかの更新に義務感とかを覚えだしたので、気分転換の作品が増えるかもです。お楽しみに(?)
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