てか今回心配です(;´・ω・`)
会話が少し不自然なので修正しました
「申し訳ありません」
リューさんにベッドに寝かし付けられてから、開口一番、飛び出したのは謝罪の言葉やった。
「わかった、ええよ」
会話はそれでしまい。お互いに口数が多いわけではないし、当たり前と言えば当たり前。腫れた口を動かすのも億劫になって、わしが天井の木目を数えていると、横からリューさんの顔が視界に広がる。
空色の瞳に見つめられ、自然と吸い寄せられるように見つめ返す。
「怒って…いないのですか」
「怒っとらんのちゃうか?」
目の前にある、切れ長の双眸が細められ、形のええ眉が八の字を描く。…疑われとるんやろか、それとも
「困っとるんか」
空気が変わる。
事実、リューさんの目には強い光が灯っていた。
「…やはり、貴女は変わっています」
せやろか…せやろな
「自覚はある」
「本当ですか?」
「ほんま、マジ。ただーーーー」
氷が入った革袋を乗せられる。
ひやりと冷たい感覚が、じくじくとした痛みを却って強く認識させる。感情を理解しようと努めてはいる、けども今感じている出来事の様に事象としか捉えられない。それも一役買っているのだとわしは思う。
「ーーーわしには感情がない。から」
「あります」
「ないで」
「うそ」
「ないで」
「あなたにはちゃんとーーー」
「ええ加減にせぇよ」
今までに何度か似たやり取りを繰り返した。毎度、毎度誰かの言葉に触発されてしか、わしは自分の感情に気づけなかった。
最近は特にーーーだから、思う。
「わしに感情は、ない。」
「……」
話はこれで終わりだと寝返りをうつ。
コイツは同じ様な問答を繰り返してきたヤツらとは、また違う。まだ会って一日しか経ってない。
筈やのに、はっきり「否」と言い張る。
その根拠はなんや?
どうしてそう言い切れる
何よりも
何よりも、自分がわしの知っている自分かわからなくなってしまう
今ここにいる日影が〝わし″なのかあやふやになる
それがどうしようもなくーーーーーーーーー
歯を食い縛る。思考の先を噛み千切る。
それ以上は、その先に進めばやわになってしまう。
わしはまた
「此処からは私の独り言」
………
「今まで貴女の事がよく分からなかった」
そりゃそうや、わしにだってようわからんもの
「だから、恐かった。でも、今は」
突然、さっきまで冷たかった頬の、温い感触に体が大きく震えた。
手を伸ばして知りたい。けど
「はっきりとわかる。小さすぎて見えなかっただけ。貴女の感情は剥き出しだ。だから、『恐い』筈がない。赤子を恐れる必要が無いのと同じなんです。」
為されるがままに、頬に添えられた手に従って、首が彼女の顔へ動く。
息を呑んだ。
呼吸すら忘れて忘れて二つの『
『
「痛みを『恐れるな』
自身の手で摘み取るな
貴女の〝ソレ″は確かにーーー
ーーーーもう、芽吹いている」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リューさんはそれだけ言い残して去ってしもた。
リューさんがいた場所に二つの、何処までも透き通る『空』を幻視して、何時まで手を仰いでいたかはわからん。
気付けば、冷たい革袋は人肌の温度になっておった。
「これが…懸想…憧憬?」
どっちの感情なんやろか。
まぁ、せぇてせかん事やし、ぼちぼち考えればええか。
それにしても
「何時までこそこそしとるんや?」
「あは、は…バレてた?」
ビクリと壁越しに気配が揺れると、扉の背中からシルさんが現れた。シルさんの気配は誰かに似とるから分かりやすねん、その誰かは忘れてしもたけど。
「よう言わんわ。アンタ、端から全部見てたクセしてそれはあほらしいで」
「いやね?良い雰囲気だから、つい。ふふ」
「なんぎなやっちゃな。なら、リューさんをはよ追い掛けなはれ」
「それもそうね。じゃあ『二人とも仲良くね』」
気配が遠ざかる。
ソレがわかった途端、堪えきれなくなった舌打ちがび出した。
「けったくそ悪い…」
いらちになっとったら、僅かに開いた窓の隙間から、風に乗って喧騒が聞こえてくる。もう昼辺りやろか。
不意に思い出す。食器をなおしに戻るとミアさんに言ったきりやった、はよ降りんと。
ベッドから下りて、歩く。すると強烈な吐き気に見舞われ、足元が覚束ない。どうやらリューさんの肘はわしの脳ミソまで揺らしてくれたらしい。
「はぁーしんど」
それだけ言って歩き出す。
職業上こんな経験はときとなしにあった。どんな時でも自分の体を卸し得なければ、わしはとっくに何処かで物言わぬ肉塊に成り果てていた。
「あ~ふらふらするわぁ」
まぁ、平気かと問われればちゃうけども
一階に降りると見たことのある面子がモップやバケツ、或いは布巾を持って忙しなくあっちこっちを行き来していた。
階段を全て降り切ると、独り言を耳聡く聞き付けた、猫娘のブラウンの瞳がわしを捉える。
「ニャニャっ、下っ端ニャ。」
陽気な猫娘は近付いて来て、意気揚々と先輩風を吹かし始めた。
「新人のクセに重役出勤とは良い度胸だニャ。これからおミャーには馬車車の如く働いてもらうから、コレ」
まぁ。初日から休む従業員は何であろうと褒められたモンでもないしな。
突き出されたモップとバケツに手を伸ばすと、両の掌は横からずい、とリューさんの掌にさらわれた。
「起きましたか。買い出しに行きますよ」
「何をするニャ!ミャーがこれから下っ端に世の厳しさを教えようかと言う時に…」
「上司が部下に仕事を押し付けて良い訳無いでしょう。アーニャのソレは厳しさではなく貴女の甘えです」
「ニャんだとぉ」
「アレ、ええんか」
背後で喚き立てるアーニャ。気持ちが表に出易いらしく、ソレを証明するかの如く猫娘の顔は正に憤怒一色、まっかっか。この恨みはらさいでか、と般若のような表情を浮かべとるーーー本人はそのつもりなのかも知れんが、凄味に欠けた、実に愛嬌のある表情をしてはる。
「大丈夫でしょう。アーニャは
「リュー!後でーーー」
「ジャガ丸くんですね、分かりました」
「シャケお願いニャー!」
一転。八重歯を覗かせる喜色満面の笑みに変わりおった。
どういうこっちゃ
「いずれあなたも分かるようになります」
「せやろか」
外に出る両開きの扉を目の前にして気付く。
「わし、寝巻きのままやわ。リューさん、わしの服知らんか」
「えぇ、ですが今日からあなたもここの従業員。制服を着ていただきます」
リューさんが着とるヤツか
袖の長い緑のワンピース、ワンピースの上からエプロンが装着され、頭にはフリルがあしらわれたカチューシャ。
一言で表すなら、給仕さん。
突然踵を返し、裏口の方へと歩くリューさん
まさか忘れてたとか…ないわな、リューさんやし。
後ろを着いていくと、裏口を開けたリューさんが正面にーー周囲に建つ建物に押し込められた様にぽつんとーーある小屋を指差す。
「着替えるときはあの小屋で済ませます。覚えておいて下さい、ではーーー」
「ちょぉっと待ちな」
「母さん?」
いざ行かん。
そんな時にミアおかんが介入してきた。
「あんたにはアタシと同じ制服を着てもらう」
「!」
「……はぁ」
リューさんを注視しとると、ややあって目がカッ!と開かれる。えらい事でもあるんやろか
「それは…つまり」
「やっとこさ、厨房に立てる娘が出来たんだ。この機会を逃すつもりはないよ」
ミアおかんが肩の荷が降りたと言わんばかりに安堵の息を吐くと、リューさんから全身を貫く威圧が噴き出る。直後、首がぐりんとわしの方へ回された。
淀んだ空色はまるで暗い宙、或いは底無しの海の様で、全身が凍り付き、圧し潰されるかとすら思えた。
「あなた…料理出来たの…?」
「出来ひんよ。教えて貰えば出来る様になるだけや。なんや、けったいな事でもあるんか?」
「私にだって…火を点けるぐらい……」
顔を逸らしたリューさんは消え入りそうな声で呟くと、それきり俯いてしもうた。間違うた事でも言ってしもたか。
「リューさん、どないしたん」
ミアおかんからくつくつと笑い声が漏れる。おかんは肩を震わせると、たまらんと言った様子で語り出す。
「聞いての通り、アタシの娘達は程度があれど皆料理が下手なのさ。まぁ、それだけで済めば御の字だったんだろうさ。けどね?」
「なんや?まだあるんかいな」
「困った事にねぇ。今までは一番マシでも客に料理を出せるには程遠くてね。アンタは焦がしただけでも見込みがあるってもんさ」
そのままげらになったミアおかんは次に俯くリューさんの事を見て、口の端を益々吊り上げる。
「そこにいるリューはね、焦がすどころかーーーー」
「行きましょう」
手を引かれて強引に小屋の方へと引っ張られる。
最後まで聞くことは叶わんかった。けど何となく分かってしもうた。
こう言う場合は言葉を掛けるべきなんやろか。
今も続くミアおかんの高笑いを聞いた感じ、きっと悪くは取られてはないと思うんやけど…
小屋に入ると、リューさんは扉を力一杯に閉めた。
大分キテるみたいやし、せや、ここはーー
「わし、リューさんのそないな所も好きやで?」
「ーーー」
リューさんは今度は腰を落として、両手で顔を覆い隠してしもうた。
はぁ、あんじょういかんなぁ…
リューサンリューサンしつこくないか心配になってきました。
申し訳程度のジャガ丸くん要素
それにヘスティア様の霊圧がががが