もやしがないならじゃが丸君しかないじゃない   作:夕陽オニ

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何も人の心に敏感なのは悪いことじゃないと思うんです。身を守る以外にも色々利点がありそう。

てか今回心配です(;´・ω・`)

会話が少し不自然なので修正しました


7話

「申し訳ありません」

 

リューさんにベッドに寝かし付けられてから、開口一番、飛び出したのは謝罪の言葉やった。

 

「わかった、ええよ」

 

会話はそれでしまい。お互いに口数が多いわけではないし、当たり前と言えば当たり前。腫れた口を動かすのも億劫になって、わしが天井の木目を数えていると、横からリューさんの顔が視界に広がる。

空色の瞳に見つめられ、自然と吸い寄せられるように見つめ返す。

 

「怒って…いないのですか」

 

「怒っとらんのちゃうか?」

 

目の前にある、切れ長の双眸が細められ、形のええ眉が八の字を描く。…疑われとるんやろか、それとも

 

「困っとるんか」

 

空気が変わる。

事実、リューさんの目には強い光が灯っていた。

 

「…やはり、貴女は変わっています」

 

せやろか…せやろな

 

「自覚はある」

 

「本当ですか?」

 

「ほんま、マジ。ただーーーー」

 

 

氷が入った革袋を乗せられる。

ひやりと冷たい感覚が、じくじくとした痛みを却って強く認識させる。感情を理解しようと努めてはいる、けども今感じている出来事の様に事象としか捉えられない。それも一役買っているのだとわしは思う。

 

 

「ーーーわしには感情がない。から」

 

「あります」

 

「ないで」

 

「うそ」

 

「ないで」

 

「あなたにはちゃんとーーー」

 

「ええ加減にせぇよ」

 

今までに何度か似たやり取りを繰り返した。毎度、毎度誰かの言葉に触発されてしか、わしは自分の感情に気づけなかった。

最近は特にーーーだから、思う。

 

「わしに感情は、ない。」

 

「……」

 

話はこれで終わりだと寝返りをうつ。

コイツは同じ様な問答を繰り返してきたヤツらとは、また違う。まだ会って一日しか経ってない。

筈やのに、はっきり「否」と言い張る。

その根拠はなんや?

どうしてそう言い切れる

 

 

 

 

何よりも

 

 

 

 

何よりも、自分がわしの知っている自分かわからなくなってしまう

今ここにいる日影が〝わし″なのかあやふやになる

 

 

それがどうしようもなくーーーーーーーーー

 

 

歯を食い縛る。思考の先を噛み千切る。

それ以上は、その先に進めばやわになってしまう。

わしはまた

 

「此処からは私の独り言」

 

………

 

「今まで貴女の事がよく分からなかった」

 

そりゃそうや、わしにだってようわからんもの

 

「だから、恐かった。でも、今は」

 

突然、さっきまで冷たかった頬の、温い感触に体が大きく震えた。

手を伸ばして知りたい。けど

 

「はっきりとわかる。小さすぎて見えなかっただけ。貴女の感情は剥き出しだ。だから、『恐い』筈がない。赤子を恐れる必要が無いのと同じなんです。」

 

為されるがままに、頬に添えられた手に従って、首が彼女の顔へ動く。

 

 

息を呑んだ。

呼吸すら忘れて忘れて二つの『()』に魅入る

 

 

 

(リュー)』は言った

 

 

 

 

「痛みを『恐れるな』

 

 

 

 

自身の手で摘み取るな

 

 

 

 

 

貴女の〝ソレ″は確かにーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーーもう、芽吹いている」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

リューさんはそれだけ言い残して去ってしもた。

リューさんがいた場所に二つの、何処までも透き通る『空』を幻視して、何時まで手を仰いでいたかはわからん。

気付けば、冷たい革袋は人肌の温度になっておった。

 

「これが…懸想…憧憬?」

 

どっちの感情なんやろか。

まぁ、せぇてせかん事やし、ぼちぼち考えればええか。

それにしても

 

「何時までこそこそしとるんや?」

 

「あは、は…バレてた?」

 

ビクリと壁越しに気配が揺れると、扉の背中からシルさんが現れた。シルさんの気配は誰かに似とるから分かりやすねん、その誰かは忘れてしもたけど。

 

「よう言わんわ。アンタ、端から全部見てたクセしてそれはあほらしいで」

 

「いやね?良い雰囲気だから、つい。ふふ」

 

「なんぎなやっちゃな。なら、リューさんをはよ追い掛けなはれ」

 

「それもそうね。じゃあ『二人とも仲良くね』」

 

気配が遠ざかる。

ソレがわかった途端、堪えきれなくなった舌打ちがび出した。

 

「けったくそ悪い…」

 

いらちになっとったら、僅かに開いた窓の隙間から、風に乗って喧騒が聞こえてくる。もう昼辺りやろか。

不意に思い出す。食器をなおしに戻るとミアさんに言ったきりやった、はよ降りんと。

 

ベッドから下りて、歩く。すると強烈な吐き気に見舞われ、足元が覚束ない。どうやらリューさんの肘はわしの脳ミソまで揺らしてくれたらしい。

 

「はぁーしんど」

 

それだけ言って歩き出す。

職業上こんな経験はときとなしにあった。どんな時でも自分の体を卸し得なければ、わしはとっくに何処かで物言わぬ肉塊に成り果てていた。

 

「あ~ふらふらするわぁ」

 

まぁ、平気かと問われればちゃうけども

 

一階に降りると見たことのある面子がモップやバケツ、或いは布巾を持って忙しなくあっちこっちを行き来していた。

階段を全て降り切ると、独り言を耳聡く聞き付けた、猫娘のブラウンの瞳がわしを捉える。

 

「ニャニャっ、下っ端ニャ。」

 

陽気な猫娘は近付いて来て、意気揚々と先輩風を吹かし始めた。

 

「新人のクセに重役出勤とは良い度胸だニャ。これからおミャーには馬車車の如く働いてもらうから、コレ」

 

まぁ。初日から休む従業員は何であろうと褒められたモンでもないしな。

突き出されたモップとバケツに手を伸ばすと、両の掌は横からずい、とリューさんの掌にさらわれた。

 

「起きましたか。買い出しに行きますよ」

 

「何をするニャ!ミャーがこれから下っ端に世の厳しさを教えようかと言う時に…」

 

「上司が部下に仕事を押し付けて良い訳無いでしょう。アーニャのソレは厳しさではなく貴女の甘えです」

 

「ニャんだとぉ」

 

「アレ、ええんか」

 

背後で喚き立てるアーニャ。気持ちが表に出易いらしく、ソレを証明するかの如く猫娘の顔は正に憤怒一色、まっかっか。この恨みはらさいでか、と般若のような表情を浮かべとるーーー本人はそのつもりなのかも知れんが、凄味に欠けた、実に愛嬌のある表情をしてはる。

 

「大丈夫でしょう。アーニャはイイ(アホの)子ですから、直ぐに忘れます」

 

「リュー!後でーーー」

 

「ジャガ丸くんですね、分かりました」

 

「シャケお願いニャー!」

 

一転。八重歯を覗かせる喜色満面の笑みに変わりおった。

どういうこっちゃ

 

「いずれあなたも分かるようになります」

 

「せやろか」

 

外に出る両開きの扉を目の前にして気付く。

 

「わし、寝巻きのままやわ。リューさん、わしの服知らんか」

 

「えぇ、ですが今日からあなたもここの従業員。制服を着ていただきます」

 

リューさんが着とるヤツか

袖の長い緑のワンピース、ワンピースの上からエプロンが装着され、頭にはフリルがあしらわれたカチューシャ。

一言で表すなら、給仕さん。

 

突然踵を返し、裏口の方へと歩くリューさん

まさか忘れてたとか…ないわな、リューさんやし。

後ろを着いていくと、裏口を開けたリューさんが正面にーー周囲に建つ建物に押し込められた様にぽつんとーーある小屋を指差す。

 

「着替えるときはあの小屋で済ませます。覚えておいて下さい、ではーーー」

 

「ちょぉっと待ちな」

 

「母さん?」

 

いざ行かん。

そんな時にミアおかんが介入してきた。

 

「あんたにはアタシと同じ制服を着てもらう」

 

「!」

 

「……はぁ」

 

 

リューさんを注視しとると、ややあって目がカッ!と開かれる。えらい事でもあるんやろか

 

「それは…つまり」

 

「やっとこさ、厨房に立てる娘が出来たんだ。この機会を逃すつもりはないよ」

 

ミアおかんが肩の荷が降りたと言わんばかりに安堵の息を吐くと、リューさんから全身を貫く威圧が噴き出る。直後、首がぐりんとわしの方へ回された。

淀んだ空色はまるで暗い宙、或いは底無しの海の様で、全身が凍り付き、圧し潰されるかとすら思えた。

 

「あなた…料理出来たの…?」

 

「出来ひんよ。教えて貰えば出来る様になるだけや。なんや、けったいな事でもあるんか?」

 

「私にだって…火を点けるぐらい……」

 

顔を逸らしたリューさんは消え入りそうな声で呟くと、それきり俯いてしもうた。間違うた事でも言ってしもたか。

 

「リューさん、どないしたん」

 

ミアおかんからくつくつと笑い声が漏れる。おかんは肩を震わせると、たまらんと言った様子で語り出す。

 

「聞いての通り、アタシの娘達は程度があれど皆料理が下手なのさ。まぁ、それだけで済めば御の字だったんだろうさ。けどね?」

 

「なんや?まだあるんかいな」

 

「困った事にねぇ。今までは一番マシでも客に料理を出せるには程遠くてね。アンタは焦がしただけでも見込みがあるってもんさ」

 

そのままげらになったミアおかんは次に俯くリューさんの事を見て、口の端を益々吊り上げる。

 

「そこにいるリューはね、焦がすどころかーーーー」

 

「行きましょう」

 

手を引かれて強引に小屋の方へと引っ張られる。

最後まで聞くことは叶わんかった。けど何となく分かってしもうた。

こう言う場合は言葉を掛けるべきなんやろか。

今も続くミアおかんの高笑いを聞いた感じ、きっと悪くは取られてはないと思うんやけど…

 

小屋に入ると、リューさんは扉を力一杯に閉めた。

大分キテるみたいやし、せや、ここはーー

 

「わし、リューさんのそないな所も好きやで?」

 

「ーーー」

 

リューさんは今度は腰を落として、両手で顔を覆い隠してしもうた。

 

 

はぁ、あんじょういかんなぁ…

 

 

 

 

 

 

 




リューサンリューサンしつこくないか心配になってきました。
申し訳程度のジャガ丸くん要素
それにヘスティア様の霊圧がががが
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