と言っても、バカな自分ですから考えてもわかりませんが。
それではどうぞ!
ここはどこだろうか。
俺は何処か知らない……暗くて、何もない場所に立っていた。
何で、俺はこんなところにいるのだろうか。
「……見えねぇ。何も……見えねぇ」
俺は暗闇の中に座り込むと、そのまま膝を立て、腕で足を抱える様に丸くなる。
自分の体はハッキリと見えるのに、それ以外は見えぬ……光も届かない常世の闇。
そんな中に俺は今、いるのだから。
自分がこんな事になるまでの経緯を思い出してみる。
あぁ……そうだ。
俺は……コルヴスにやられたんだと。
つまり、ここは死の世界なのだろうか。
そうなら、俺は地獄にでもいるんだろうな。
わかっていた……そんな事は。
この手は汚れている……。
この手は血で汚れてしまっているのだ。
人を殺した者はまた誰かに殺される運命にある。
因果応報というべきだろうか。
「……暗いな。俺の心もこんなに暗かったんだろうなぁ」
俺はボソッと呟くと、顔を伏せる。
俺は仮面をつけていたのかもしれない。
ネプテューヌ達の前ではバカやったり、メンドくさがったりしていた。
だが、それはこれが俺だ、という認識をさせるための仮面だったのかもしれない。
本当の俺とは……何なのだろうか?
今いる俺が本当の俺なんだろうか?
それとも、これが仮面で、その下にあるのが俺の本当の顔なのだろうか。
「……死に直面するとあれこれ考え込んでしまうもんだな」
しかも、死ぬ前に考える事が自分が何者なのかって言うとはな。
今まで普通に暮らしてきて、こんな戦いが始まれば考えてしまうもんだろうな。
俺だけなのかもしれないが、それでも考え込んでしまう。
星座たちが残す言葉が気になって仕方がなかった。
『スターゲイザー』
この言葉が俺は気になっていた。
スターゲイザー……日本語に訳すと『星を見つめる者』という事である。
一体、それがなんだというのだろうか。
アイツ等は俺の何を知っているのだろうか。
俺は一体……なんなんだよ。
「お前は何者でもない。その性格だって、お前ではないし、仮面なんて言う立派なものもお前はしていない」
「誰だッ!」
俺はどこからか聞こえた声に反応すると、そこにいた一人の人物を見て驚く。
どういう……事だ?
「お前は……俺?」
「よぉ、俺。会いたかったぜ」
そこにいたもう一人の俺は不気味な笑みを浮かべながら、俺を見ているのだった。
☆
ネプギアたちはリーンボックス教会におり、アイエフがイストワールに連絡を取っていた。
「一体、どういう事なんですか?アイエフさん」
「よくはわからないのですが、アンチクリスタルがどうとか。多分、それがネプ子たちの力を奪っているんです」
「アンチクリスタル?」
「イストワール様、調べてもらえますか?」
「もちろんです。でも、三日かかりますよ?」
「心もちまきでお願いします」
そんな会話を聞いて、秀司はふーんという顔をする。
(なるほどね。アンチクリスタルかぁ……。アレは女神に対しては有効だねぇ。浩平は星の力を宿しているから関係ない。破壊する事が可能な浩平はコルヴスに始末させると。なるほどね……。奴らも女神をどうこうするついでに、浩平も殺そうって考えた訳だ。それもコルヴスの『死』の能力を使って)
秀司は考え込みながらも、ネプギアたちを見る。
(でも、彼らは油断している。この子たちは女神候補生……。女神化もできない妹だから捨て置け、とでも考えているんだろうね。幹部クラスがそういう考えを持っているとは思えないけど。コルヴスなんて余計にだ……。パワーで攻めてくるドラコや頭脳で攻めてくるピクトルとは違い、バランス型と言ってもいいコルヴスがそんな見落としをするハズがない)
「……じ!秀司!」
「ん?」
考え事をしていると、名前を呼ばれているのに気付き、秀司は皆を見る。
「どうしたんだい、アイエフ?」
「浩平はどうなってるのよ?」
「浩平?あぁ、死の淵を彷徨ってるけど」
『!?』
皆は女神たちだけでなく、重傷だった浩平も気になっていたのだ。
だが、秀司が簡単に口にした言葉を聞いて、皆は驚愕する。
女神には死が近づいており、浩平には死にかけている。
絶望的だと言ってもいい、この状況。
もし、女神たちも浩平も死ねば、この世界は星々の進行を受け、滅ぶ事となる。
それなのに、秀司は簡単に言う。
「死の淵を彷徨ってるけどって、浩平の事が心配じゃないんですか!」
「え?いやぁ、心配しても死ぬ様じゃないでしょ、アイツ」
「秀司お兄ちゃん……なんでそんな事を言うの?」
「そんな事?どう思おうと人の勝手でしょ?そう思わない、ロムちゃん?」
「アンタ!」
ユニは秀司を睨んだまま掴みかかろうとするが、秀司はユニの腕を掴んで受け止める。
「心配しないのが許せない?ゴメンね。俺、心があるか、ないかもわからない奴なんだ。だけどさ、アレで死ねばその程度だったんだって、俺は思うね。俺の見る目も衰えたものだとも思うね」
「秀司さん、ホントに言っているの!?」
ラムも秀司に聞くが、秀司は変わらない笑顔で見てくる。
それにラムは黙り込んでしまう。
いや、ラムだけではない……周りだってそうだ。
秀司の笑顔は作っているものだというのは誰にでもわかる。
その笑顔が不気味さを覚えさせるのだ。
「まぁ、浩平はどうにでもなるよ。それよりも女神たちはどうするのさ?助けないといけないでしょ?」
『……』
秀司の言葉に皆は黙り込んでしまう。
そんな沈黙を破る声が聞こえてくる。
「ゴメンなさい……」
その言葉に皆は反応して、発した人物、ネプギアを見る。
「ぎあちゃんが悪いわけじゃ」
「ううん」
コンパの言葉をネプギアは首を横に振って否定する。
そして、買い物のときの事を思い出す。
「買い物のとき、拾った石……アレがきっとアンチクリスタルだったんです」
「やめましょう。そんな事、今考えたって」
「どうして……どうしてあの時、めまいがしたのかをちゃんと考えてれば……。お姉ちゃんたちに知らせてれば。浩平君だって、私がお願いをしなければ、あそこまでの無茶だって」
「ネプギアのバカぁ!」
ネプギアは目に涙を浮かべながら、顔を上げる。
「お姉ちゃんは。アタシのお姉ちゃんは凄く強いのに……。アンタのせいで」
そういうユニの目にも涙がたまっている。
「ネプギアが代わりに捕まっちゃえばよかったのよ!」
「……!」
ユニは涙を流しながら叫ぶと、その言葉にネプギアは反応し、涙を流す。
そして、そのままユニは走り去っていき、その場の空気は暗くなる。
「さてと、浩平。君ならこんなのを見たら、どういうだろうね。君なら、俺の責任だって言ってそうだね」
そう言って、秀司はその場を去るのだった。
☆
俺は今、目の前にいるもう一人の俺を見る。
その俺は不気味に笑っており、危険ささえ感じる。
「どういう……事だよ?」
「言っただろ?言うならば、『虚無』だ。お前は何もない。お前という存在はないんだ」
「どういう事だって言ってんだろうが!」
「そのまんまの意味さ。お前はお前という存在はない。お前に本当の顔などない。どんな存在にでも変わってしまう……。そう、それが『虚無』のお前だよ」
コイツは何が言いたい?
俺は……何者でもない?
「言うならば、お前は真っ白な紙だ。それは何色にも染まる。赤にも、黒にも、何色にでもな」
「だから、それがなんだと!」
「理解している癖に理解していないフリをするな。お前というのは存在しないんだ。その心も昔に死んでいる。その心は偽物さ……。お前は『虚無』なのだから」
「黙れェ!」
俺は殴りかかるが、その俺をすり抜け、そのまま通り過ぎてしまう。
まるで影でも殴ろうかとしたかの様に。
俺はそれに驚いて振り返ると、もう一人の俺は未だに笑っていた。
「だが、そんなお前にも一つだけ心はあった。そう……『殺戮』と『狂気』の心である俺がな。お前自身が恐れ、嫌った『俺』だよ」
「なっ!?」
俺自身が恐れ、嫌った自分自身……?
もう一人の俺はニヤァと笑うと、ゆっくり歩きながら近づいてくる。
「お前だって嫌うものは存在するだろ?人ってのは、全てを受け入れるのは無理なもんだ。必ず恐れるものは存在する。人は気付かない内に、自分が嫌う自分ってのがあるもんだよ。それを心の奥底に閉じ込めて……。言うならば、俺はお前の『闇』だ」
闇の……俺?
人の心というものは光と闇……言うならば、表と裏があってこそつりあっているものだという。
だが、基本闇としての自分を人々は嫌う。
光の元にいようとするのが生物としての本能だ。
闇の俺と名乗る者は変わらず笑みを浮かべながら、俺に近づいてくる。
「もういいじゃねぇか。何かを護るために戦うのも。自分の命を犠牲にしてまで護るのも。もういいじゃねぇか、そんなくだらねぇ事。これからはやりたい事だけやればいい!お前には……いや、俺には殺しの才能があるんだよ!俺ができるのは殺戮と破壊!狂気の如く、それをやるのが俺だろう!」
違う……そんなのは俺じゃない。
認めたくない……そんなものはない。
俺は護るためにしか戦わないと決めている。
俺は殺戮と破壊を楽しむ様な人間じゃない!
「本当か?お前は一度経験があるハズだ。殺戮がどうしようも楽しくて。アイツ等を破壊し尽さないと気が済まないと感じた事が」
「ッ!」
「そう、あの時……俺が地球にいた頃の唯一の友だと言える二人を失ったあの時とかさ」
「違う……」
俺はあの出来事を思い出し、耳を塞ぐ。
やめてくれ……それ以上、何も言わないでくれ。
「あの時、二人を殺した奴らを殺す時の楽しさ、忘れられなかったよなぁ。元がわからなくなるくらい、肉塊へ変えるのは楽しかったなぁ。あの時の事は今でも鮮明に覚えてるんだろ?綺麗に飛び散った紅い液体とかさ」
「うるせぇ!もうそれ以上何も言うな!」
俺はそんなものを楽しむ奴なんかじゃない。
俺は人間だろ……?
そんな黒星座たちと同じ様な事をするのは俺は望んでなんか。
「怯えるなよ。俺はお前なんだよ。怯える必要は何もない。女神も何もかも知るものか。俺は殺戮と破壊の限りを果たそうじゃないか」
女神……皆?
皆は……どうしている?
そうだ……俺は何をしているんだ。
こんなとこで立ち止まっている場合じゃない。
今、アイツ等は大変な目に遭っているってのに、俺は何をしている?
ネプギアの不安をどうにかしたかった俺がここで寝ている場合なのか?
いや、そんな場合じゃない。
「と言っても、俺たちは死の能力に蝕まれている。このまま、死んでしm「黙れ」ん?」
俺は立ち上がると、ニヤッと笑う。
それに闇の俺はビクッと反応する。
「ギャーギャー言ってんじゃねぇよ。死ぬつもりもねぇし、俺は殺戮も破壊も興味ねぇ」
「な、なにを言っている?俺がいるのが何よりの証拠で」
「そうだろうなぁ。俺自身が否定している自分だから、お前は俺だろうな」
「な、なら、殺戮の限り!」
「する気もねぇ。俺の心は今も昔も何も変わらない。大切な人たちを護り抜く。これが俺なんだ」
「……だからって、俺を否定するのかよ!お前は!俺を……否定しないでくれよ……」
闇の俺は涙を流し始め、俺はそれを見ると、そっと抱きしめる。
それに闇の俺はピクッと反応する。
「お前は俺だ。俺の一部なんだろ?なら、否定する理由なんざどこにもないさ。俺は怖がっていたのかもしれない。殺戮と破壊に。だからこそ、その本能があるお前を心の奥底に追いやったのかもしれない」
「うぅ……」
「だけどさ、否定しないよ。お前は俺なんだ。だから……戻ってこいよ」
「受け入れて……くれるのか?」
「あぁ、受け入れるよ……。俺は」
「……そうか」
そういうと闇の俺は光となり、その場から消えて、俺の中へと入っていく。
俺はそれを確認すると同時に何かから目覚める感覚がして、目を覚ますとそこはリーンボックスの天井が目に入った。
どうやら……俺はリーンボックスのベッドで寝ている様だ。
それと同時にドクン!と心臓が鳴り、また苦しくなってくる。
死の淵から帰ってきても、まだ死は俺を襲い掛かるか。
俺はベッドから転げ落ちると、何とか体を引きずりながら歩く。
鼻を動かして、何とか確かめてみるが、ネプギアたちのニオイがしない。
恐らく、ネプテューヌ達を助けにいったのだろう。
「へ……へへへ。なら、俺も……向かわないとな……ガハッ!」
俺は口から血を吐くと、そのまま倒れてしまう。
そして、遠ざかろうとする意識を何とか繋ぎ止め、立ち上がる。
「俺は……アイツ等を助けるんだよ。このまま倒れるわけにはいかない……。だから!俺はアイツ等を助けるためなら、何度だって立ち上がってやる!」
俺がそう言った瞬間、俺の体から星の光が溢れ出す。
これは……。
『お前の覚悟、しかと聞いた。ならば、聞こう。お前は死を恐れぬ勇気を持つか?』
「俺は……死ぬ事なんざ怖くねぇ。だけど、何も護れないまま死ぬのは……凄く怖いんだ。だから、俺は今、死ぬわけにはいかねぇ!」
『……恐怖に屈せず、受け入れ……己が力とする。そして、死の淵で出会った闇の自分さえも受け入れる勇気……見事なり!人の子よ!我が力、授けよう!さぁ、名を呼び!死を乗り越えろ!』
「あぁ……わかったよ。-----」
俺は名を呼び、その武器を手に持ち、体が死の力から解放される感覚を感じると、窓から飛び出し、皆の元へと向かう。
「へぇ……ここで目覚めたか。まぁ、狙っていた様にも思えるけど。まぁ、浩平自身の精神力と生命力は死をも乗り越える力があったという事だね。君は凄いよ、岩崎浩平」
秀司はそう呟くと、自動車のスピードをも超える速度で走り出している浩平を空から見つめるのだった。
どうも、風狼龍です!
浩平が目覚めた星座とは一体!
一体、これからどうなるのでしょうか!
それではまた次回!