それではどうぞ!
えぇ、ただいま私はラステイションに来ております。
何故、こうなっているのかというと、私めの兄が原因でありまして。
プラネテューヌでダラダラと過ごす予定のハズが、兄が私めと旅行に出かけたいと言い出したのですよ。
で、ネプテューヌとネプギアにも兄貴が可哀想だと責められ、今に至るわけです。
一言言いますと……泣いてもいいよね?
「泣く余裕があるなら、腕を動かして。今日は仕事が多いんだから」
「逃げ出したい……」
「てきぱきやればすぐに終わるから」
「ヤベェ、涙が止まらない」
いや、泣いてはないけどさ?
今、俺たちは書類仕事をしていた。
国巡りに来てまで、仕事をしなければならないとはこれいかに。
兄貴が手伝わないと気が済まないという善人っぷりを見せたのだ。
ノワールも最初は渋っていたが、あまりにも根気強く来るもんだから、ノワールの方が折れた。
で、俺も手伝う事になり、今に至るというわけだ。
「にしても、これだけの書類仕事くらい、俺が手伝わなくても終わるだろうに。兄貴だけおいていくから、俺出かけていい?」
「ダメよ。それは終わってからにしなさい」
「じゃあ、終わらせる」
俺はニヤッと笑うと、素早く腕を動かし、書類を次々と終わらせていく。
その素早さに驚いているのか、ノワールはポカーンとしている。
三分も経たない内に書類仕事を終え、俺は背伸びすると立ち上がる。
「んじゃ、出掛けるわ」
「え……全部出来てるの!?」
「できてるできてる。プラネテューヌで得た方法だ」
「いらないスキルを身に着けてるよ、浩平……」
俺がケラケラ笑いながら言うと、兄貴が苦笑いを浮かべながらツッコミを入れてくる。
「貴方、色々な方向でおかしくなってない?」
「むしろ、それこそが俺の普通」
「貴方の普通って何……」
知らない。
まぁ、馬鹿げた事されても、ちょっとやそっとじゃ驚かない自身はあるな。
「浩平、終わったなら手伝ってあげたらどうだい?ノワールは君と遊べると思って、嬉しそうにしていたのに」
「なっ!?べ、別にそんな事!」
「仕方ないな~。ノワールは~」
「何、その笑み?凄くイラッと来るんだけど」
え?ノワールにそんな事を言われるほどの憎たらしい笑みですかい?
まぁ、わざとやってるんだけどな。
まぁ、友達を見捨てるほど、俺も落ちぶれちゃいない。
「わかった」
「浩平にしては珍しく聞き入れたな」
「いえ、これは」
「グータラして待ってる」
「手伝え」
「タラバガニ!?」
俺が手を振りながら去ろうとしたら、兄貴のドロップキックが顔面にめり込み、そのまま吹き飛ばされて壁に大激突する。
口から血が流れ出てきて、俺は兄貴たちを見る。
「い……良い蹴りだ……兄貴……。ガフッ」
「力尽きた!?」
「少しすれば回復する。殺そうと思って殺せる様な奴じゃないからな」
「人間……よね?」
「あぁ、生物的にも、遺伝子的にも人間だ」
「……」
ノワールは本当なのか?という顔をしながら、浩平を見るのだった。
☆
俺はあの後、気が付くと二人が仕事を終わらせていた。
あの後……蹴り飛ばされて……うっ、頭が。
という様な冗談を言うのはやめておいて、本当に何が起きた?
で、俺は兄貴と黒姉妹と一緒にダンジョンに来ていた。
「何でまた仕事なんだよ」
「いいじゃないか。労働時間はキッチリ守らないと」
「俺は自由奔放な男なんで、無視しま~す?」
「真面目にやりなさい」
「ハイ、すいません」
ノワールが睨みながら言ってきたのに、俺はすぐさま謝る。
いや、絶対断ったら蹴りとか飛んでくるパターンでしょ?
絶対そうに違いないよ。
「モンスター退治って言うのもメンドクセェなぁ」
「どこまでメンドくさがるのよ」
「それはもうこれでもかってくらいにな」
「真面目じゃない弟ですまない」
「今更だから、気にしないわよ」
そうそう、今まで通りじゃありやせんか。
つうか、思えば……俺って弟なんだよな。
兄ができたという実感はあまりないな。
「つう事でユニ。下の者同士仲良くしようか」
「何でそうなるのよ」
「俺、弟になっちまいやしたから」
「そういえばそうね……」
そう言って、ユニは俺と兄貴を交互に見る。
「と言っても、別に兄と弟って言う感じじゃないわね。双子だからかしら?」
「そういうもんなのかもな。年齢は同じだし、生まれたのがどっちが先かの違いだからな」
双子ってそういうもんだろ?
兄貴が先に生まれただけで、年齢は同じなのだから。
「つうか、モンスター退治ってもういいじゃん。俺、メンドクセェよ」
「メンドくさがってないで、しっかりやる」
「俺、星座との戦いだけで十分だよ。モンスター討伐とか、もういいよ」
「メンドくさそうな目をするわね」
「実際メンドクセェんだから」
ノワールがムッとしながら言うが、俺は肯定する様に頷く。
俺はそういいながらも、頭をポリポリと掻く。
それと同時に目の前から誰かが歩いてくるのが見える。
黒いフードで顔を隠し、フードマントで全身を覆っている。
まるで、ルーフスやウィオラと似ている。
そして、俺たちの前で止まると、フードの中から見える黒い目が俺たちを見てくる。
「見つけたわ。今世の導き者……。そして、スターゲイザーに目覚めた者」
「アンタは……誰だ?」
「私の名前は『アーテル』。ルーフスやウィオラと同じ存在よ」
「アーテル……」
それがコイツの名前……。
アーテルは俺たち一人一人を見てから頷く。
「黒から解放された者も一人いる様ね」
「俺の事か……」
兄貴はアーテルの言葉に眉を潜める。
アーテルは微笑んでいるのか、俺を見てくる。
「凄いわ。今世の導き者は。確かに最弱かもしれないけど……『弱い』という事を知っているからこそ、周りを導く方法を知っている。初代以上の『先駆者』というわけね」
「初代初代ってばっかり言ってるけど……初代星の導き者は一体どういう存在だったんだ?」
気になっていた。
たまに出る初代星の導き者についての事が。
「初代もあなたに似ていた。それだけよ。いえ、違うわね。貴方が初代に似ているのよ」
「俺が似ている……?」
「さすがというべきかしら……。まぁ、それはいいわ。それよりも十二星座はまだ半分なのね、目覚めたの」
「それの何が悪い?」
俺だって、目覚めさせられる様に頑張っているのだ。
それでも目覚めないのだから仕方ないだろう。
「成長は速いけど、星座の目覚めが遅いわね。その手助けでもしてあげるわ」
「何を言ってるんだ?」
アーテルの言葉に兄貴は首を傾げながら聞く。
ノワールとユニも首を傾げており、アーテルはクスッと笑うと、指をパチンと鳴らす。
その瞬間、俺たちの足元に穴ができる。
「なっ!?」
「こ、これは!?」
「『星の穴』……ワープしてもらうわ。まぁ、私が招待しない限り、辿り着けない場所にだけど」
「ちょっと、どういう意味よ!?」
「行けばわかるわ。待ってるわよ」
「ちょっ……あああああああああああああああああああああああああああああ!?」
俺たちはその穴に落ちていき、アーテルはそれを確認すると、穴を閉じる。
そして、自分の前に穴を出すと、微笑む。
「さてと、星兄弟が揃ったわね。導き者は皆をどこへと導くのかしら?『守護』?『未来』?『希望』?それとも……導かずに終わる『破壊』へと行くのかしら?」
アーテルはそう呟くと、穴へと飛び込むのであった。
そして、その穴を閉じると、誰もいない場所にモンスターがうろついているだけだった。
☆
「どわぁ!?」
俺は落ちていくと穴が開き、そこから放り出されるが、何とか着地する。
「フフフ、これでも一応、運動能力は高いかr「きゃあ!?」ヘブンズ!?」
俺がしゃべっている途中で誰かの声が聞こえ、背中に体当たりをくらうとそのまま前のめりに倒れる。
何で……せっかくカッコよく着地出来たのに。
「イタタ……って、ここは」
「オイ、その前にどけ、ユニ」
「え?」
声の主であるユニに俺がそういうと、ユニは俺を下敷きにしているのに気付いたのか、慌てて立ち上がる。
「俺に体当たりするって、なんか恨みでもあんの?」
「べ、別に好きでしたんじゃないわよ!いきなり放り出されれば、仕方ないでしょ!?」
「まぁ、それもそうか」
俺は頭をボリボリと掻きながら立ち上がり、辺りを見渡す。
何処かの遺跡の様だが……ここは一体。
それにこの壁の作り……プラネテューヌで見つけた遺跡に似ている。
俺は辺りを見渡しながらも、とある事に気付く。
「兄貴がいねぇ」
「お姉ちゃんもいない。浩平、これは」
「恐らくだが……別の場所にワープさせられたと考えるべきだな。アーテル、アイツが何を考えているかよくわかんねぇ。秀司なら何か知っているかもしれないが、アイツは現在行方不明。神出鬼没な野郎だからな」
「どうするのよ?」
「とりあえず、進もうぜ。向こうと構造が似ているのなら、罠があるハズだ。気を付けていこう」
「わかったわ」
俺がそう言って一歩踏み出した瞬間、ガコン!という音と共に床が凹み、それと同時に横の壁から矢が飛び出してくる。
そのまま俺は左右から来た矢が頭と体に突き刺さる。
俺はそれに黙り込んでしまい、ユニはどう声をかけようかと悩んでいる。
「こ、浩平」
「……と、この様に油断していると罠に引っ掛かるから気を付けよう。浩平君とのお約束だぞ」
(捻じ曲げた!?さっきの事をなかった事にしようとしてる!)
俺は矢を全て抜いて、ユニに説明する。
俺が体を張って、危険だという事を教えたに過ぎないんだよ。
「だから、ユニも足元や壁に注意してだな」
俺がまた一歩踏み出すと、プツンという音が聞こえ、それと同時に俺のところに影がかかる。
俺は上を見ていると重そうな四角い岩が落ちてきているのだ。
そのまま俺に直撃して、倒れる。
「浩平!?」
ユニは焦った様な声を出しながら近づくが、俺は両足で体を支え。両手で重たい岩を持ち上げる。
「何の……これしきィィィィィ!フハハハ!こんなもので俺を殺せると思うなよ!」
俺は高笑いしながら、岩を殴って砕く。
それにユニは苦笑いを浮かべながら俺を見てくる。
「浩平の耐久力とか考えると、それくらいじゃ無事よね。それじゃ、私が先に行くから」
そう言って、ユニが先を歩く。
何でだ……俺の不幸はなぜ、こういう時に露骨なんだ。
俺はため息を吐きながらも、歩き出す。
ユニは目を凝らして罠がないか調べたりしながら歩く。
「それにしても、なんで離れ離れにする必要があるのかね。しかも、兄と姉、弟と妹組によ」
「きっと、何か意味があるんだと思う」
「ふ~ん、そういうもんかね」
俺は辺りを見渡しながら歩いていると、ガコンという音が聞こえる。
俺が踏んだのかと思い、足元を見てみると、踏んだのは俺ではない。
ユニの方を見てみると、それと同時にユニが姿を消す。
いや、正しくは……下に落ちた。
「ユニ!?」
「きゃあああああああああああああああああ!?」
俺はすぐさま開いた穴に近づき、覗き込む。
いきなりの事でユニは変身を忘れているのか!
下は見えないほど深いが。恐らくだが、針などがビッシリあるに決まっている。
俺は舌打ちをすると、星の翼を出そうとするが……出てこない。
何で!?
『これは貴方への『試練』よ。スターゲイザーの力に頼らず、どうにかしてみなさい』
「ど、どうやって翼を!?」
『……『ルーフス』がやったのよ』
「ルーフスが!?」
アイツ……一体、何者なんだよ。
俺は舌打ちしながらも、穴を見る。
ユニはまだ落ちている。
これは……考えている場合じゃねぇよな。
つうか、アーテルめ……念話までできるとはな。
俺は苦笑いを浮かべながらも、穴を見る。
『さぁ、どうするの?このまま仲間が死ぬのを見ているだけでいるのかしら?』
「んなわけ……ねぇだろうがァァァァァ!」
俺は穴へと飛び込むと、壁を蹴って、更に下へと落ちる。
そして、壁を走り出し、ユニの元まで降りていく。
『壁を駆け下りるなんて……驚いたわ。人間の領域を遥かに超えているわね」
アーテルは驚いている様な声を出している。
きっと、どこかから見ているのだろう。
『それに仲間を助けるなら、自分の命を顧みない……。とんだ武士道ね。だけど、自分の命も護る事が出来ない男が仲間を護れるハズないわ。そういう奴は……初代と同じ結末を辿る』
アーテルが何か呟いているが、俺には聞こえない。
今はユニを助けるのが先決だ!
俺がしばらく駆け下りていると、ユニの姿が見え始める。
「ユニィィィィィ!」
「こ、浩平!」
「手を伸ばせ!」
俺が手を前に出すと、ユニも手を伸ばす。
そして、俺がユニの手を掴むと思いっきり自分の方へと引き寄せる。
そのまま俺は壁を駆け下りていく。
「大丈夫か!」
「浩平……あ、ありがとう」
「たくっ、お前も素直じゃなさそうだな」
「なっ!?う、うるさいわよ!って言うより、なんで壁を駆け下りられるのよ!?」
「もう気にするな!」
「ハァ……浩平に常識をぶつけるのが間違っているのかしら……って、下に落ちて行ってるわよ、まだ!?」
「わーってる!」
とは言うものの、止まる事が出来ないのだから仕方ない。
それと同時に針が見え始める。
このままじゃ、串刺しになる。
それと同時にとある考えが思い浮かぶ。
「浩平、刺さるわ!」
「わかってる!だから!」
俺は壁を蹴って、針の山へと突っ込んで行く。
ユニは目を見開いて、俺を見てくる。
「浩平、一体何を!?」
「こうすんだよ!」
俺は針山に足を延ばすと、針と針の間に入り、針の側面を蹴って、壁へと飛ぶ。
そして、壁に足をつけると同時に壁を駆け上っていく。
「ウオラァァァァ!」
「す、凄い……!」
俺が壁を駆け上っていると、腕の中にいるユニが驚いた様な声を出す。
(あ、あんなに針の隙間が少ししかないところに足を入れて、針の側面を蹴るなんて!に、人間の領域を超えている!それに壁を駆け上るなんて!?)
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」
俺はそのまま走り抜けると、元の道へと戻ってきて、穴の先に着地する。
ハァ……さすがに死ぬかと思ったが、何とかうまく行ったな。
俺はユニを降ろすと、ため息を吐く。
「たくっ、危なかったな」
「正直……怖かったわ。死ぬかと思ったもの」
ユニは少しうつむきながら話す。
誰だってそうだ……死に直面すれば恐怖を覚える。
俺は……怖いとは思わないのは異常なのかもしれない。
だけど、本当に死ぬ事は怖くないんだ。
「だから……あ、ありがとう。浩平」
「素直が一番だ、ユニ。姉みたいなツンデレでもいいかもな!」
「……」
「ゴメンなさい。だから、拳銃をしまっていただけませんか。お願いします、マジで」
「浩平って、眉間撃ち抜かれても平気よね?」
「さすがに死ぬゥゥゥゥゥ!いくら生命力強くても死ぬゥゥゥゥゥ!俺が悪かったです!すいませんでしたァァァァ!」
ユニに拳銃を突きつけられながら、俺は必死に謝るのであった。
それを見ていたアーテルはクスッと笑う。
「面白そうね。今世の導き者は周りを元気にさせるわね。それだけじゃなさそうだけど。兄と姉の方はどうしてるかしらね」
そう言って、アーテルは淳平とノワールの方を覗きに行くのであった。
どうも、風狼龍です!
というわけで国巡りでも不幸な目に遭う浩平でした。
人外?いいえ、浩平は人間です(笑)
それではまた次回!