浩平がユニと共に行動している中。
「うわぁ!?」
「きゃあ!?」
淳平とノワールはいきなりできた穴から放り出される。
淳平は一回転してから着地し、ノワールも態勢を立て直して着地する。
さすがというべきか、何というべきか。
「いきなりワープさせられたと思ったら、ここはどこなのよ。浩平、わかる……って、淳平だったわね」
「アハハ、双子だから仕方ないよ。ヘッドホンありかなしかでしか見分けがつかないし」
ノワールは淳平を浩平と見間違えてしまい、ヘッドホンがないのを確認すると言い直す。
淳平も苦笑いを浮かべながら、頷く。
そう、浩平と淳平を見分けるにはヘッドホン以外ないのだ。
髪の長さも同じ、目つきは少し淳平の方がやんわりしてるが、それでもなかなかわからない。
後は性格で見分けがつくくらいだろう。
浩平は基本メンドくさがるが、何でもできるほど手先が器用である事と仲間のためならば熱くなれ、少しツンデレ気味だが、優しい。
淳平は真面目で、常に周りの事を考えており、優しい性格だ。
だが、ヘッドホンを外し、黙ったままでいればどっちが浩平で、どっちが淳平かわからなくなる。
それほど二人は似ているのだ。
「似てるけど、淳平って不幸体質なの?」
「いや、違うけど?」
「それは浩平だけの様ね……」
哀れなり、浩平。
だが、それと同時に悲しそうな目をする淳平。
「浩平は……きっと辛い過去を送ってきたんだろうな」
「急にどうしたのよ?」
「いや……別に。こんな俺が兄として、名乗っていいのかと思ってさ」
淳平は自分の手を見ると、ギュッと握りしめる。
浩平は今まで一人で生きてきた。
今の浩平の強さは過去に何かあったからだと考える。
祖父から武術などを学んだと言っていたが、それだけで実戦向きになるハズがない。
常に命のやり取りをする場所に身を置いていたにも違いない。
そんな悲しそうな目をする淳平を見て、ノワールはため息を吐く。
「浩平がそんな事思うハズないでしょ。貴方を『兄』として呼んでいるという事は、『兄』として認めているって言う事じゃない」
「……そうだな」
淳平は微笑んで頷くと、前を見る。
どこまでも続いているまっすぐな道。
むしろ不自然としか言いようがないのだ。
「浩平とユニちゃんの姿がないところを見ると、恐らくだけど、別のとこに出されたみたいだね」
「二人とも、無事だといいんだけど」
「あ、浩平の心配してくれるんだね」
「ま、まぁ!友達だから仕方なくよ!」
「それ以上の感情があるのに?」
「のわっ!?」
淳平がクスッと笑いながら言うと、ノワールは顔を真っ赤にする。
何てわかりやすい子なんでしょうか。
ノワールは淳平を睨みが、淳平はそれを笑って流す。
「まぁ、浩平がモテている様で何よりだよ。これなら将来、楽しみだね」
「も、モテてるの!?浩平!?」
「気になるの?」
「べ、別に!そう!友達だから気になるだけよ!」
「そういう事にしといてあげる」
淳平はクスクス笑いながら言うと、歩き出す。
それに続く様にノワールも歩き出す。
「淳平は今まで敵だと思っていたから味方になると新鮮ね」
「そうかな?いや、そうかもしれないね」
ノワールの言葉に苦笑いを浮かべる淳平。
まぁ、当たり前だろう。
今まで殺し合ってきた敵が、実はこっちの事を考えて動いてましたとは思わなかっただろう。
だからこそ、淳平はもうこれ以上はと思い、黒を裏切ったのだ。
そして、烏座をその身に宿したまま生きている。
「思えば、今でも『星座の神』なのかしら?」
「そうだね。俺は種族では『人間』じゃなくなっている。『星座の神』……。『星座神』になっているのさ」
「そう……」
「だから、君たちと同じ『不老』の存在なのさ。浩平みたいに限りある命じゃない。もし、百年経てば……俺の隣にもう浩平は立ってないんだと考えると悲しくも思えてくる」
淳平は目を細めると、そう言って奥を見る。
「だからこそ、浩平の力になりたい。例え……浩平が『血筋の宿命』の上に立っていたとしても」
「え?今、何て」
ノワールは淳平が言った事を聞こうとした時、カツンカツン……と何かが歩いてくる音が聞こえてくる。
二人はそれに反応して前を見ると、暗闇から姿を現したのは闇に紛れる事ができそうなくらい黒に身を包んでいるアーテルが姿を現した。
まるで、何かを遮る様に。
「呪われた血族……。貴方は自分たちの血筋について詳しそうね?」
「アーテル……。お前は……俺たちの血筋を知っているのか?」
「知っているも何も……」
「そうだったな……」
二人だけわかっている様な会話を行っており、ノワールはついていけていない。
「ちょ、ちょっと!二人だけでわかっている様な会話をしないでよ!一体、どういう事!?」
ノワールが叫ぶと、アーテルはノワールを見る。
「それは今、知るべき時ではない。それはこの子たちの血筋の……一族の問題なのだから」
「アレを一族の問題というべきだろうか?俺は確かに血筋の運命の道には立っていない。だが……浩平が立っている」
「わかってるわね。そうなると……彼は『短命』ね」
「なっ!?」
アーテルの言葉にノワールは驚くしかない。
浩平の命は短いものでしかないという事に。
「せっかくのイケメンなのに、勿体ないわね」
「……そんな運命は辿らせない。浩平は絶対に……『先祖』の様にはならない」
「絶対……ね。そう言えるかしら?守護する者は大体短命よ。導く者となれば、余計にね……」
アーテルはそう言って、淳平を見る。
淳平はアーテルを睨んでいるが、アーテルはそれに動じない。
「あの子の行く先は『希望』?それとも『絶望』?あの子はどこへと導くのかしら?今までの導き者は『希望』へと導いてきたわ。だけど、あの子は……『闇』を抱えている。死の淵を彷徨って受け入れた……なんていうけど、あの子の闇はそんなものじゃない。あの子自身でどうにかしないと……全ての次元は『絶望』へと沈むわ」
「浩平が……全てを『絶望』へ?」
それも次元の規模でだ。
ノワールは信じられないという顔をしている。
『絶望』には何が待ち受けているのか。
破壊、消滅、崩壊……などなどがある。
だからこそ、あそこまでまっすぐな浩平がそんな事をするとは思えない。
「光が強ければ強いほど闇は濃くなるもの。希望と絶望もまた然り。希望が大きければ大きいほど絶望も大きくなる。彼の中は常にそうなっている」
「そんな……浩平の光と希望が強ければ、逆に闇と絶望も強くなっているという事?」
ノワールはあんな体で、そんな強大なものを浩平が抱え込んでいるとは思えなかった。
光あるところに影という闇は生まれる。
光と闇……この二つがあってこそ、全てはつりあう。
だからこそ、善と悪というものもあるのだ。
全て相対する何かがあって、釣り合いが取れている。
「だけど、逆に言えば闇が濃ければ濃いほど光は強くなる。絶望が深ければ深いほど、希望は大きくなる。浩平はきっと……負けないよ」
「よほど……弟を信頼しているのね」
淳平の言葉にアーテルはクスッと笑うと、歩き出す。
「いいわ。それほど信頼しているのなら、弟さんに頼るといいわ。今世の導き者で……『奴』を倒せる事を願うわ。今までの導き者にはないものを彼は持っている。『闇』というものを……。その可能性に賭けてみるのも面白そうだわ」
「浩平の『闇』に……?」
浩平が持つ『闇』になぜ、賭けるのか。
危険かもしれないものになぜ、賭けるのか。
それについてノワールはわからなかった。
「何で浩平の『闇』に賭けるのよ?『絶望』に染まるかもしれないのに」
「確かに危険な賭けよ。だけど、もし……彼が『闇』をどうにかする事が出来れば、更にその先に進む事ができる。光と闇を持つ者へと。更なるその先へ」
アーテルはまるでその誕生が楽しみだと言わんばかりにフードから見える口元がニヤッと笑う。
「その先に進めば……どうなるのよ?」
「……ルーフスが言うには……『究極』をも超えた先へと行くって言っているわ。それが『無限』へと。人間は無限の可能性の塊よ。辿り着く事ができるかもしれないわね」
ノワールの疑問に答える様にアーテルも答えにくそうに言う。
これを……全てを知るのはルーフスなのだとわかる。
ルーフスは一体何者なのか……秀司並にわからない人物である。
「まぁ、今のところは希望へと向かっていると考えるべきかしら。貴方が黒から解放されたんだから」
「……」
アーテルは淳平を見ながらそういう。
淳平はムッと言う顔をすると、アーテルはクスッと笑う。
「ゴメンなさい。嫌味のつもりじゃないのよ。ただ……人は『黒』をも超える力があるのだと思ってね」
「『希望』の『白』、『絶望』の『黒』……ぶつかり合うのは必然だ。そして、浩平がその運命に立っている限り、導き者となるのも必然だったというわけか」
「悲しい子ね……。辛い人生を送ってきたのに、こんな宿命が待ち受けていて……その先が短命でしかないなんて」
「貴方は浩平の何を知っているの?」
浩平の事を全てを知っている様なアーテルの言い方にノワールは聞く。
アーテルはそれを聞くと、少し黙り込み、考える。
「そうね……。全て……ではないわね。だけど、彼の辿ってきた道は知っている。どれも暗く、常夜の様な闇の道を歩いてきた。今の彼からは想像できないでしょ?」
「浩平が……?」
「あの性格だって、彼が友達ができてから生まれたもの。アレが普段の性格だけど……本当にそれがあの子かしら?本当の顔が存在するんじゃない?」
「本当の顔って……」
まるで今の浩平は仮面をつけていると言っている様な言い方だ。
浩平の過去を知っているであろうアーテルだからこそ言える事なのだろう。
「まぁ、彼がこれからどうなるかはその時次第。私はまた彼と貴方の妹の元に行くわ。それじゃあね」
そういうとアーテルは姿を消す。
それを二人は見送って、ノワールは淳平を見る。
「淳平、血筋とか、運命とかどういう意味よ?まるで、浩平は元々こういう運命だったみたいな」
「……その通りだ。だからこそ、その先に待つ運命に抗わないといけない。浩平が『死ぬ』なんて、そんな未来は……捻じ曲げないと」
「浩平が……『死ぬ』?」
淳平の言葉にノワールは驚愕する。
何故、その先が死で決まっているのか。
この戦いの先に待ちうけるのが……浩平の死なのか。
「それはどういう事よ!?」
「……『死』の運命が待っている事以外俺は……何も知らない。だけど、導き者は必ず『奴』と呼ばれる存在に辿り着く。そして……初代以外は死んでいる。浩平も……『死ぬ』運命にあると思う」
「その『奴』って一体……」
「俺は知らない。だが、こういうのだけは聞いた事がある。『奴』とは『神』も『悪魔』も全てを超えた先にいるもの……だと」
「星座に関係する者なの?」
「恐らくは……な。星座の神話も幾つか存在するが……神話の神だったとしても、超えた先というものを理解できない」
「それが……浩平の運命の先に待っている」
ノワールはそれを聞くと、少し考える。
浩平の力にはなれないのだろうかと。
「と言っても、今考えても仕方ない。浩平とユニちゃんと合流しよう」
「そうね。恐らくだけど、この先に進めば合流できるかもしれないわね」
「あぁ、だから急ごう」
そう言って、二人は歩き出す。
それを見ていたのは、浩平とユニの元に行ったハズのアーテルである。
「悲しい血筋……ね。因縁というものを血に刻まれた以上……それは子孫にまでわたって続く。人間って……変わった生き物だわ」
それもまた人間の運命の一つだと言いたい様な顔をし、アーテルはその場から消えるのだった。
その頃、そんな話があったとは知らない浩平とユニは……。
「浩平!?」
「今日は槍の雨だったか」
「いや、頭や体中に突き刺さってるから!?槍の雨とかありえないから!?それで誤魔化せないから!って言うより、ここ遺跡の中だから雨も降ってこないわよ!」
浩平がトラップを踏み、毎回それをくらっているのであった。
どうも、風狼龍です。
淳平だとギャグに走れない……不思議。
というわけで浩平のこの先はどうなっているんでしょうかね。
それではまた次回!