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それではどうぞ!
ルウィーに来て、一日が経った。
俺は窓から差し込む日差しで目を覚まし、体を起こすと大きな欠伸をする。
「ふぁ~、眠い……」
たくっ、ブランとの話で盛り上がったな。
後でロムとラムも来て、遊び相手をする事になったけど。
小さい子は元気だね……俺はおじさんだよ、もう。
小さい子の遊ぶ気力にはついていけねぇわ。
「にしても、兄貴も小さい子には好かれやすいんだな」
ラムはともかく、ロムも懐くんだからな。
思えば、ブランも俺の時は驚いてたっけか。
兄貴も意外と人に好かれやすいタイプなのかもしれないな。
それが黒星座としていたから、薄れていただけで。
「さっさと起きて」
「浩平お兄ちゃん、起きてる……?」
「ん?おう」
ロムが扉を開けて、俺が起きているのか見てくる。
早起きだな……と言いたいが、朝十時の様だ。
俺が寝すぎだな……まぁ、眠たいからいいよね!
早起きは三文の得とかいうけど、俺はそう思えないね!
ロムは部屋に入ると、俺の元まで来る。
「おはよう、浩平お兄ちゃん」
「おはようさん。どうした?」
「遊びたいから、来たんだよ……」
「またか……。ラムは?」
「淳平お兄ちゃんと遊んでる」
兄貴は面倒見いいから、ラムの相手は務まるかもな。
子供は嫌いではないが、メンドくさがりな俺じゃ、どうもついていけねぇ。
自分で言うのもなんだがな、メンドくさがりって。
「んじゃ、ブランは?」
「お姉ちゃんは仕事があるって……」
「なるほどね。で、俺の元に来たと?そのまま兄貴とラムと一緒に遊んでりゃいいのに」
「浩平お兄ちゃんと遊びたかったから……」
「ん~……ハァ」
まぁ、ロムだったら、そこまで動かないし、いいかもしれねぇな。
俺は頷くと、ロムは嬉しそうな顔をする。
こういう子どもの純粋な笑顔っていいよね、癒されるよね。
言っておくが、決してロリコンではないぞ!
ロムは一旦外に出ていくと何かを持ってきた。
見てみると、クレヨンと白い紙である。
「お絵かきしよう(ニコニコ)」
「いいぜ」
俺は笑みを浮かべながら頷くと、ロムとお絵かきを始める。
と言っても、俺が描いたらお絵かきってレベルじゃないけどな。
もう十八の男がお絵かきは難しいから……ロムのでも眺めとくか。
ニコニコしながら、絵を描くロムを見て、笑みが零れる。
「こういう日々も悪くねぇな……。星座たちと『奴』という存在との決着がついたら……平和に暮らせるかな」
「それが君が求める真実かな?」
「真実……とは少し違うな。最後にはそうなりたいという感じかな」
「それをも『真実』というのさ。七代目」
「……誰だァァァァァ!?」
「え?今更?」
俺の隣にいつの間にか白いフードマントに姿を隠した少女がいた。
ルーフス達と同じ服装であり、当然ながら顔も見えない。
だが、いつも不思議な事に瞳だけは見える。
水色に輝く瞳が俺を見据えている。
ロムは俺の声に反応して、白の少女を見てから、すぐさま俺の傍に来る。
「お前は……誰だ?」
「自己紹介がまだだったね。僕の名前は『アルブス』……。僕は『真実と虚無』の『アルブス』だよ」
「アルブス……」
やっぱり、どこかで聞いた事がある。
コイツ等は知らないが、コードネームとしているのだから、何かが元のハズなのだ。
何だっけか……思い出せない。
「君を『真実と虚無』に誘いに来たよ。僕は『真虚』。真実は霧を掴む様なものであり、虚無は存在があるのかないのかもわからない。貴方は真実を知りたい?それとも虚無に身を任せたい?」
「……何を言いたい?」
コイツの言っている事がよくわからない。
真実を知りたいだとか、虚無に身を任せたいだとか。
それと同時に扉が開いて、反応して振り返る。
そこからブランと兄貴とラムが入ってくる。
「浩平、ロムと仲良くしてるかい……って、君は?」
「誰……?」
兄貴とブランはアルブスを睨みつけ、アルブスはクスッと笑う。
「どうも、女神様と烏座さん。僕の名はアルブス。『真実と虚無』を司る者さ」
「ルーフスの仲間か?」
「うん、そうだよ」
フードから見える口元はニコッと笑っている。
ルーフスの仲間……か。
まぁ、フードマントをしている時点で気付いてはいたけどさ。
そして、俺たちの方へと手を向けると、そこから白銀の光が出ている。
「それじゃ、早速行こうか。僕が案内してあげるよ。『真実と虚無の間』へ」
そう言ったと同時に俺の視界は白銀の光に包まれる。
ロムが俺の服を掴んでいるのに気付く。
どうやら、これをされたのは俺だけじゃねぇみてぇだな。
そして、白銀の光が消えると、俺は広い部屋へと出ていた。
どうやら、また遺跡に飛ばされた様だな。
白銀の光も恐らくは星の力の一つだろう。
辺りを見渡すと、今回は全員いる様だ。
「ここは……あの時の遺跡にあった部屋にそっくりだけど」
「どうやら、ルウィーにある遺跡に飛ばされた様だな」
「ルウィーに……?まさか、プラネテューヌ以外にもあったなんて」
俺の説明を聞いて、ブランは納得した様に頷く。
そして、拍手が聞こえ、俺たちはその音の方へと視線を向ける。
そこには拍手しているアルブスがおり、拍手をやめると、微笑む。
「ようこそ、『真虚の遺跡』へ。君はここで『真実』を掴めるかな?それとも『虚無』を彷徨うか……。七代目、導き者としての素質、見させてもらうよ」
そう言った瞬間、白銀の光を俺目掛けて放ってくる。
俺はそれをかわそうと思うが、かわすな……と星たちが告げている気がした。
そのまま、俺は白銀の光に包まれる。
「君の『真実』は一体どうなのかな?導き者としての真実を知り、君自身の中に眠る真実も知った。なら、残るは……君の行き着く先の『真実』。君が望む『真実』だよ。それを直視できるの?」
アルブスはニヤッと笑い、白銀の光に包まれながら倒れる浩平を見る。
倒れていく浩平を見て、すぐに淳平は掴んで、倒れるのを阻止する。
そして、心配して、四人は浩平を見る。
白銀の光は消えて、眠っている浩平がその場にいた。
「浩平に何をしたんだ?」
「少し真実という名の冒険を与えたのさ。真実というのはありそうでない。なさそうである。そして、人は真実から目を背ける。なぜだかわかる?理由は簡単。真実を知るのが怖いからだよ。だからと言って、虚無にも堕ちれない。人間はその間にいる事で平穏を望む」
アルブスはそう説明すると、浩平の元に近づき、屈みこんで浩平の顔を覗き込む。
「ホントそっくり……」
アルブスの小さな呟きに誰も気付かない。
そして立ち上がると、再び淳平たちを見る。
「導き者は導く者として、真実を受け入れる覚悟が必要なんだよ。彼の真実……それは『ルプス』と共にあろうとする事だよ。今の彼からすれば、『完全に受け入れてはない』んだよ。その証拠に瞳しか出ていない。第一形態しかね」
「そんな……あの時、浩平は受け入れて」
「違う。アレは『闇』を受け入れただけ。『ルプス』自体は受け入れてないのさ。そして、ルプス自身も浩平を認めていない」
「つまり……浩平が受け入れたところで『ルプス』に認めさせなければ意味がないって事ね……」
「そういう事♪」
ブランの言葉に嬉しそうな声で頷くアルブス。
そして、アルブスは浩平を見ると微笑む。
「さぁ、『ルプス』を認めさせるんだよ。そしたら、君は『ルプスと共に真実』を追う力を手に入れられる。私がするのは『真実へ行く道』へと導く事。真実を追う人と虚無を背負う狼……この二つが揃ってこそ、『真理』へといけるんだよ。さぁ、唯一光と闇の両方を持つ導き者」
クスッと笑うアルブスだった。
☆
俺は白い空間の中に立っていた。
その白い空間は何もなく、俺だけしかいない。
まるで真実も何もない……虚無の中にいる様な。
「虚無の中から真実を見つけろって事なのか?」
俺は辺りを見渡していると、ゾクッと体が震える。
この感覚……黒の力だ。
それも幹部に匹敵するほどの力を感じ取れる。
俺は反応して振り返ると、そこには紅い瞳を光らせる黒い狼がいた。
狼にしては大きく、俺より大きい。
大体二mくらいか。
俺は苦笑いを浮かべると、黒い狼はその紅い瞳で俺を見てくる。
「我の生まれ変わりよ……」
「喋ったァァァァァ!?」
「驚くとこそこか?」
狼なのに、喋ってやがりますよ!?
コイツ、一体何者でありますか!?
口調がおかしくなっちまってるけど、気にするな!
それよりも、我の生まれ変わり、と言ったな。
「お前はルプスか?」
「如何にも。我は『狼座』の『ルプス』だ。貴様の前世であり、再び黒星座としてよみがえるハズだった。だが……貴様の裏切り者である『黄道十二星座』の力が宿り、導き者となった。そして、我はその力で奥底へと封印された。元は大幹部だ。幹部の我が勝てるハズもなかった」
ルプスはふんっと軽く笑うと、俺を睨んでくる。
本来なら、俺という『意思』は生まれず、成長すれば『ルプスの意思』になっていたのだろう。
それこそ、破壊と殺戮、苦などを与える存在に。
「この空間……一体何かは知らぬが、貴様と向き合える時が来るとはな。今のお前は『精神体』だ。貴様を殺せば、我が表になり、体を取り戻せる。返してもらうぞ、我の体を」
「オイオイ、前世なだけで何言ってんだ。お前の体じゃねぇよ。俺の体だ」
俺はニヤッと笑って見せると、ピキッという怒りを表す様な音が聞こえてきた。
「その飄々として憎たらしい笑み……そして、その顔。奴を思い出す。我を犬の様な扱いをしたあの憎たらしい宿敵を……」
「何を言いたいのかさっぱりだが、俺は殺されるつもりはねぇ」
「黙れ!」
ルプスは吠えると、それによって起きた突風に俺は足に力を入れて踏ん張る。
コイツ……吠えただけでこれとは、マジで化け物だ。
「我は『星座神』だぞ?『人間』が『神』に勝てるとでも思っているのか?『星』に勝てるとでも思っているのか?」
「くだらねぇ。もう聞き飽きたよ、そういうの。どうも、黒星座の奴らは慢心な奴らばかりで困る。たまには他の種族を認めたらどうだ?」
「くだらん。人間も、動物も、虫も、魚も、女神さえも……我にとっては『喰い物』にしか過ぎん。腹が減れば喰う……。それだけのな」
「……」
ルプスはニヤッと笑ってみせる。
コイツは……本当に狼というべき存在だろう。
気に入らない者は食い殺し、邪魔な者は引き裂く。
まるで……一匹狼と呼ばれていた頃の俺を体現しているかの様な奴だ。
昔の俺は例えるなら、そうだったから。
さすがに食い殺す様な事はしないけどさ。
「我に喰われる覚悟はできたか?」
「ふざけんな。誰が喰われてたまるか」
俺は冷や汗を流しながら、身構える。
ルプスの力を引き出せない理由……それはルプス自身が俺を否定しているから。
そして、俺自身もどこかでルプスを否定している。
俺が受け入れたのはルプスがため込んだ闇だけだった。
だからこそ、ルプスの力を完全に引き出す事が出来なかったんだ。
「我は世界をも喰らう。我を止められる者など存在せぬ」
「テメェの牙が全てを喰らうなら、俺もその牙を持って、喰らってみせる。
俺がヴィルゴを呼び出し、構える。
それに反応してルプスも身構える。
「我の体を返してもらうぞ!七代目、星の導き者よ!」
「だから、前世の奴が人様の体を乗っ取ろうとするなっての。来い……。テメェに喰われるわけにはいかねぇんだよ。だから……言ってやる。テメェも俺の元へ来い!」
「笑わせるなァ!」
ルプスの起こした雄叫びと同時に俺は走り出すのだった。
どうも、風狼龍です。
如何でしたでしょうか。
それが今回の浩平の向かうべき真実です。
ルプスと分かり合えれば、真実の道へ、食い殺されれば虚無へと堕ちる。
さぁ、どうなるのでしょうか。
それではまた次回!