最近仕事が忙しくて……。
それではどうぞ!
俺たちは穴に落ちて、しばらくしてから光が見え始める。
出口だ。
俺は一回転して、態勢を立て直し着地の準備をする。
そして、着地をすると、俺はニヤッと笑う。
「よし、今度こそ決まった。後は上から落ちてくる人達に注意すれば」
「時すでに遅しという言葉を知っているか」
「何!?グファ!?ガハッ!?ブフォ!?」
ルプスの声が聞こえたと同時に俺の上にルプス、兄貴、ベールさんという順に落ちてきた。
しかも、もれなく三人とも俺をクッションとして衝撃を和らげて。
兄貴とベールさんから「あ……」という声が聞こえてくる。
わざとじゃないんだろうけど、なんで絶対俺の上に落ちてくるの?
アレか?もうアレですか?
不幸ですか……そうだね、不幸で全て片づけられますね。
「俺の体質、スゲェ呪いたい……」
「諦めろ、相棒。お前の不幸はどんな力を使っても、開運のお守りを持とうと振り払えん。神さえも凌駕するとは恐ろしいな」
「嫌な体質が神を凌駕した!?何それ、泣けばいいの!?喜べばいいの!?」
「笑えばいいと思いますわ」
「ベールさん!ノらないで!」
変なとこで悪乗りしてくるな、この人。
そして、とある気配……ウィリディスの気配を感じ、俺たちはその方向を見る。
大きな門の前に立っているウィリディスはクスッと笑いながら、俺たちを見てくる。
「先ほどぶりですね、七代目」
「おぉ、先ほどぶりだな。ウィリディス」
「先ほどぶりっていう必要あるのかな……」
「その場の雰囲気ですわ」
「そういうものなのか?」
兄貴が苦笑いしながら言うと、ベールさんが微笑んでいう。
まぁ、ルプスも首を傾げているが、ベールさんのいう通り、ノリだよ、ノリ。
そして、ウィリディスは俺たちを見ると頷く。
「女神はともかく……罪深き星を持つ者たちよ」
「俺と兄貴の事か?」
「我の事もだろうな。我は星座だからな。黒星座のままのな」
ルプスは俺の言った事に付け加える様に言う。
まぁ、確かにそうかもしれないが。
「まぁ、女神はともかくと言いましたが、これは力を持つ者に共通する事でして」
「力を持つ者に共通する事?」
「それは何でしょうか?」
ウィリディスは俺たちの疑問の声を聞くと、微笑む。
「貴方達は力をなんだと思いますか?」
「何……いきなりどういう」
「七代目、どういう事だ、という質問を質問で返そうとしないでください。お決まり事はいりませんから」
「お前、言葉遣いの割りに酷いな」
「それほどでも」
「褒めてねぇよ!?」
コイツ、ケンカ売ってんのか!?
だが、ウィリディスは変わらず微笑んだままだ。
微笑んだまま、ホントえげつねぇ事を言うな、コイツ。
俺はため息を吐くと考え始める。
「力……か」
「そうですわね……。色々あるのでは?」
「色々って例えばなんでしょうか?緑の女神さん」
「『護る』力とか……。浩平さんや私達女神の様に」
「他は『破壊』とかだな」
「お、ルプスさん。良い線行ってますね」
「むっ?そうなのか?」
ルプスが口にした『破壊』。
それは全ての力に確かに共通する。
だが、惜しいとはどういう事だろうか。
「……『罪』ですか?」
「烏座の青年さん、正解です。そう、『力』とは『罪』なのです」
「『罪』……?」
どういう事だろうか。
「どういう事だろうかと考えているでしょうから教えてあげましょう」
「人の思考読むな」
「これくらい想像できる事です。『力』とは『破壊』を生むものです。そして、『力』を手に入れれば、それを振るいたくなる。振るわなければ、何の意味もないものです。そして、その力は人をも、生き物をも殺めてしまうものです。どれだけ綺麗事を吐こうと結局は『殺す』ものなんです。貴方達だって、あるでしょ?人でないにしろ、人にしろ、倒し、殺してきた者たちが」
それを聞いて、俺たちは黙り込む。
確かにベールさんとかはモンスターを倒してきた。
倒すとは言うが、殺している様なものなのだ。
それでも、人に危険が及ばない様にしているんだし。
「言ったでしょう。どれだけ綺麗事を並べようと、『罪』は『罪』なのです。『力』は『罪』です。混沌しか生まないんですよ、力は」
「……」
「確かにそうかもしれないね。俺はこの手で……浩平たちを殺そうとしたんだし」
「我は過去にある。破壊し尽そうとした事がな」
確かにそうかもな。
兄貴はまだ誰も殺めていない様だ。
だが、俺とルプスは。
俺は自分自身の手を見ると、俺の手は真っ赤に染まっていた。
それは……血の色。
真っ赤な血。
「ッ!?」
俺はそれに驚き、すぐに頭を振ってもう一度見てみる。
すると、そこには血はなく、何もない手が見えた。
それに知ってか知らずか、ウィリディスは俺を見てくる。
「どうしたんです?七代目。そんなに驚いた顔をして。まるで自分の手が何かに染まっている様に見えた様な感じで」
「……お前、嫌な奴だな」
「これでも『罪と聖』を司る者なので」
ウィリディスはニヤッと笑いながら言う。
さっきとは違い、何かを企んでいる様な顔。
ホント……ルーフス達は俺に何がしたいんだろうな。
「ここは『罪と聖』の間。貴方が罪を意識した時、貴方の罪が具現化したんです。意識しない方がいいですよ。次はもっと残酷なものを見るハメになりますよ」
「んな事言われたって」
俺は少なくとも、感じてしまっているものなのだから。
次の瞬間、今度は手だけではなく、俺の所々に血がついていた。
それは俺の血ではないのは理解している。
何の血なのかも。
血くらいもう見慣れた……数えきれないほど人を殺めてきた。
俺が荒れに荒れてた時代。
裏世界にまで足を突っ込んでしまっていた頃の俺の時代。
「……血くらい」
「こう……へい……」
「こう……へい……くん……」
「!?」
こ、この声は!
俺はその声に反応して振り返ると、そこにはブレザーを着た中学生くらいの男子と女子がいた。
それだけならおかしくはない……。
そう、その二人は血塗れで、体中には切り傷があったり、殴られた跡があったりする。
女子の方は少し服だって破けている。
俺はそれを見て、目を見開き、息が荒くなっていくのがわかる。
「ハァ……!ハァ……!ほ、ほのか……!亮……!」
「いた……いよ……。たす……けて……。こわ……いよ……」
「何で……助けて……くれなかった……。なんで……」
「あ、あぁ……!」
俺は頭を抱え、更に息が荒くなる。
やめろ、聞きたくない……聞きたくない!
「ハァ……!ハァ……!」
「こう……へい……くん……。なんで」
「こう……へい……。なんで」
「「助けてくれない……?苦しい……」」
「あ、ああああああああああああああああああああ!?」
俺は頭を抱え込み、蹲って叫ぶ。
やめてくれ、やめてくれ!
亮、ほのか……ゴメン、ゴメンだから。
「ゴメンゴメン。ゴメンなさい。護れなくてゴメン。俺のせいで。俺のせいで……亮、ほのか……。俺と、俺と関わったばっかりに。ゴメンゴメンゴメン……」
「こ、浩平!?どうしたんだ!?」
「何を謝ってるんですの!」
「貴様……何をした!浩平の心の中が苦しみと謝罪だけでいっぱいだぞ!」
ルプスはウィリディスを見ながら叫ぶ。
ウィリディスは焦る事もなく、何事もないかの様に口を開く。
「彼は……いえ、彼の血筋は人とは違うものがあるのは知ってますよね?」
「人とは……この異様に紅い血の様な瞳ですわね?」
「そうです。人とは自分とは違うものを恐れ、嫌ってしまうものなのです。彼は周りの人々から化け物呼ばわりされ、忌み嫌われていたのです」
「……」
淳平はそれを聞いて黙り込んでしまう。
自分はすぐに星座に連れていかれたためにそういう経験はしていない。
ここ、ゲイムギョウ界の人達は優しく、特に自分たちの特徴を気に留める人たちなどいないため、そういう辛い思いもしていない。
「そのために彼は一度心を閉ざした様です。ですが、それをこじ開けて、七代目と仲良くしていた子たちがいたそうです。中学生、とかいうくらいの時の話らしいです」
「中学生の時に……」
「今の七代目はその子たちのおかげですね」
「でも、彼は向こうには友達はいないと言ってましたわ。私達に嘘を吐いたとでも?」
「いいえ、嘘ではないです。向こうにはもう彼の友達はいません」
「え?でも、中学生の時にと……」
ベールはそこまで言った瞬間、何かを察する。
中学生の時、そして今はもういない。
ここまで来ると、繋がる事はただ一つしかない。
「そうです。もうこの世にいないんですよ、その二人は。彼の事情に巻き込まれて」
「事情……?」
「烏座さんも知らない事でしたね。彼は……彼自身の世界の裏世界に足を突っ込んでいたんですよ。それも名が知られ、『一匹狼』と恐れられるほどに。実際に一人で一つの巨大マフィアとかも壊滅させていましたからね。それもほとんどが殺されて。よくて、再起不能でしょうか。一生をベッドで過ごすハメになったとか。運が良ければ、重傷だったらしいですが」
「なっ……!?な、何故、浩平はそんな危険な事に!?」
「言ったでしょう。彼は心を閉ざしていた。荒れに荒れていた彼は気付かぬ内に裏世界にも足を突っ込んでいたんですよ。ですから、裏世界の人達からも狙われていた」
そこまで言うと淳平たちは気付く。
もし、『一匹狼』と呼ばれるほど一人だった浩平に友達がいたとすれば、どうするだろうか?
殺すために誘拐し、人質とするだろう。
「御察しの通り、初めての友達である二人は連れ去られ、人質とされました。その時の七代目は二人のおかげで変わり始めていて、二人をとても大切に思っていたそうです。ですから、その時は人質にされたら何もできなかったんでしょうね」
「許して……ゴメンなさい……」
「相棒……わかっていた。それは我も見ていた」
ルプスは思い出すかの様に呟く。
今になってわかる。
大切な人を失った時の苦しみが。
当時は黒星座の黒だけだった自分は何も感じていなかったが、澄んだ黒になってからわかる。
仲間を失う痛みと怖さが。
「相棒は……。目の前で大切な人が傷ついていく姿を見る事しかできなかった。取り押さえられ、大切な人たちの泣き叫ぶ声と殴られていく姿を見るしか」
ルプスは生まれ変わりの浩平を見る。
わかる……どれだけ辛かったか。
『いや……やめてェ!浩平君、助けて!亮君!』
『テメェ等!ほのかに何を……ガハッ!』
『やめろ……。そいつ等は何も関係ない。やめろォォォォォォ!』
あの時、星座の力があれば。
助けられたのだろうか。
「あぁ……うぅ……許して……許してェ……」
「七代目は殺してきた人たちの罪を背負っていく覚悟はあった。だけど、どうしても背負いきれない罪……それは親友を失った罪」
「闇を受け入れた浩平がなんで『罪』で」
「意識の違いさ。それに『罪』と『闇』を一括りにするのはおかしいですよ。だって、あくまで『闇』は負の感情が主です。『罪』はまた別のものですから。ですが、もしこれを乗り越えられた時、彼は全てを受け入れ、背負う者へとなる」
ウィリディスはそういうと、浩平を見る。
浩平は涙を流しながら何度も謝っている。
「思えば、親友二人を殺した奴らはどうなったの?」
淳平は少し気になって聞いてみた。
いや、聞かなくてもわかる事だ。
「……相棒が怒り、皆殺しにした……」
「……そう」
浩平の手は淳平の知らないところで血で染まりきっていた。
拭っても拭いきれないほどに。
それは自分の血ではなく、全て殺した事によって流れてきた血。
それが浩平を縛り続けているのだ。
「こ……へい……こっちに……」
「なに……も……まもれ……ないんだしさ……」
「あぁ……あぁ……そうか、そうだよな。俺は何も護れない。力は罪……。俺が裏世界で暴れたせいで……二人が俺と関わったから目をつけられて……俺は……力が『罪』なんだ。俺が振るっているのは『罪』……。罪は裁かれないといけないよな」
浩平はそう言った瞬間、ヴィルゴを呼び出し、首に押し当てる。
それに淳平たちは反応する。
「あまりにも深すぎる罪だったみたい。自害しようとするなんて、さすがに予想外です」
「言ってる場合か!ダメだ、浩平!」
「相棒!」
「俺は……何も、まもれn「そんな事ありませんわ」……!」
浩平が首を斬ろうとした時、ベールが優しく抱きとめた。
それに浩平は目を見開く。
「そんな事ありませんわ。貴方は私達を助けてくれたじゃないですか。黒星座が襲来した時も、私達女神が捕まった時も、その命を賭けて、一生懸命戦ってくれたではありませんか」
「でも……」
「今、貴方が見ているのは貴方の『罪』の意識から生まれたものですわ。本当に貴方を恨んでいるのでしょうか?あなたの親友二人は。本当に貴方を憎んでいますの?」
「そんな言葉は……慰めにもならないです……」
「ですが、貴方はそうでもしないと壊れてしまいますもの」
「ベールさん……」
俺はその時に段々、周りから血が消えていくのが見えた。
二人の親友からも血がなくなっていくのが。
「相棒、忘れてはいけない。二人は死ぬ間際に相棒に言った事を」
「……あ」
「俺は」
「私は」
「「一緒に居れて、楽しかった。恨んでなんかないよ。自分たちでこうなったんだから」」
「うぅ……」
そうだった……そうだったよな。
お前等、最後にそういったもんな。
俺が苦しまない様に言ったんだよな。
だけどさ、それを聞いても辛かった。
お前等はお人よしだから、そういえたんだ。
だから……お前等の言った事が本当でも、俺はお前等を巻き込んでしまったという『罪』を背負うよ。
(! 目に輝きが戻った……。まっすぐ見据えた目)
ウィリディスは俺を見てクスッと笑う。
見透かしている様な目、気に入らないね。
俺はベールさんから離れると立ち上がる。
「『力』は『罪』です。それでも振るい続けるのですか?」
「あぁ、『罪』には『罪』を持って立ち向かうさ。例え、力が罪だろうと、護るためにも力は必要なんだ。だから、どれだけ重たかろうと、どれだけ辛かろうと、どんな罪だって背負う覚悟だ」
俺はウィリディスを見ると、ウィリディスは頷く。
「そう……確かに『力』は『罪』です。どれだけ綺麗事を並べようと『殺しの罪』なんです。ですが、それをも背負う覚悟がある。貴方は『聖』なんです。護るべき力として、罪を受け入れれば……それは『聖』なんです。合格です、貴方に恐れるものはないのでしょう」
「いや、買いかぶりすぎだ。俺は周りの人達のおかげで強くいれる。俺一人じゃ、脆すぎるよ」
「……そうですね。ますます合格です。ですが、この先へは行かせられませんね。まだ来る時ではありませんから」
「そうかい」
他と同じというわけか。
「貴方はどれだけ『罪』を背負うかわかりませんが、くじけず進む事を期待していますよ。貴方の親友もそれを望んでいるハズです」
「あぁ……」
「それではあちらが出口です」
そう言うとウィリディスは星の穴を作り出す。
「直接リーンボックスの教会につながっているので。それではまた会いましょう」
「あぁ」
俺は頷くと穴に飛び込み、それに続く様にベールさんも、兄貴も、ルプスも飛び込んだ。
そして、穴を閉じるとそこにはウィリディスだけが残る。
「そう、人は一生を『罪』と向き合って生きていかなければならない。ですが、それをも背負う覚悟がある人は『聖』へと向かうのでしょうね」
ウィリディスはそう呟いて、微笑むのだった。
どうも、風狼龍です!
というわけで次回で兄弟国巡りは終わりとなります!
最後に浩平がいつも無茶をする理由が明らかになりました。
浩平の過去はこんな感じですかね。
『罪』と『聖』って、考えたら難しいですよね……。
それではまた次回。