夢の続きは幻想郷で【完結】   作:puc119

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拾壱話

 

 

「おおー、美鈴じゃあないか。久しぶり」

「はい、お久しぶりです浅葱さん。今日はどうされましたか?」

 

 なんとものんびりな浅葱のペースに合わせていたせいで、紅魔館に着く頃には太陽が沈み始めていた。

 浅葱には妖力も霊力もない。だから空を飛ぶことはできないのではとも思ったけれど、どうやら空を飛ぶことはできるらしく人里を出てからはそれなりに早く動けたと思う。

 まぁ、浅葱の体は小柄だし、飛べなかったとしても私が抱えて飛べば良いのだけど。

 

 それにしてもこの子はどうやって空を飛んでいたのかしら? 力も無い奴が空を飛ぶことができるとは……

 

「今日はねぇ、レミリアにお呼ばれしたから来たのさ」

「そうでしたか~。それじゃあ今日の浅葱さんはお客さんですね。ふふっ、楽しんでいってください」

 

 どうやら美鈴と浅葱はそれなりに仲が良いらしい。きっと美鈴の性格が浅葱と合っているんだろう。しかし、いつの間に知り合ったのやら。

 

 

「それでは中へ行きましょうか」

「うん、よろしくお願いするよ」

 

 浅葱はそう言って美鈴に手を挙げてから、紅魔館の中へ入っていった。

 そろそろお嬢様も起きる時間だし、色々と準備をしないとだ。お嬢様には浅葱が来ることを伝えてはいないけれど……まぁ、大丈夫か。お嬢様だって浅葱のことは気に入っているらしいし。

 

 

「いらっしゃいませ浅葱様。どうぞごゆっくりしていってください」

 

 紅魔館の中へ入ってきた浅葱へ挨拶。今まではただの知り合い。此処からは招待された一人の客人だ。

 

「……何言ってんの? 咲夜」

 

 ポカンと口を開け、コテりと首を傾げながら浅葱は言葉を落とした。仕方ないでしょうが。客人相手にタメ口と言うわけにはいかないのだから。私はただのメイド。浅葱は大切な客人。

 どうか問題だけは起こさないでくださいね。

 

 さて、浅葱はどうしていてもらおうか。お嬢様が起きるまではまだ時間がある。

 う~ん、少し不安だけども客間でのんびりしていてもらうのが一番か。

 

「客室まで御案内致しますので、ついて来てください」

「えっ、あ、はい」

 

 どうやら私の態度が変わったせいで浅葱は少々混乱しているらしい。それはそれで面白いけれど、少しばかりの罪悪感が残る。きっとこう言う硬いのは苦手なのだろう。ごめんなさいね。

 

 元々この紅魔館は広かったけれど、調子に乗って私がさらに広げてしまったせいか、紅魔館の中は恐ろしく広く複雑な作りとなってしまった。雇っている妖精メイドなどよく迷子になっているし、何処か抜けている浅葱では絶対迷ってしまう。しっかり案内しないとだ。

 

 そんな浅葱は何処か抜けているはずなのに、たまに鋭く尖った言葉を落とす。それは抜けているからこそと言うことでしょうか? ホント、なんとも不思議な子だ。

 

 浅葱のことを考えながら歩くこと数分。漸く客間の前まで辿り着いた。やっぱり広すぎるわね。掃除も大変だし。

 

 

「お嬢様が起きるまでまだ時間がありますので、浅葱様はこの部屋の中で……ってあれ?」

 

 

 後ろを振り返り、ぽてぽてと私の後をついて来た浅葱へ伝えようとしたが、其処に浅葱はいなかった。

 

 何処いったよ。あんにゃろー。

 

 んもう、ホント勘弁してください……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 咲夜が壊れた。最初はそう思った。

 でもたぶん、私は客だからとかそう言う理由なのだろう。けれどもそう言うのは慣れていないため、どうにもあの咲夜の口調は落ち着かなかった。

 咲夜について来いと言われても、そわそわ、そわそわとしてしまい、そんなんだからやっぱり私は誘われやすくなってしまった。

 

 紅魔館へ来たのはこれで二回目。正直、紅魔館の中がどうなっているのかなんて私はわからない。けれども、初めて此処へ訪れた時に感じたあの感覚は覚えていた。

 

 だから私はそれに誘われて、なんとも重苦しい雰囲気のある下へと続く階段を下りていった。

 下へと続く階段は薄暗く、気をつけて歩かなければ足を踏み外しそうになる。それはちょっと嫌だから恐る恐るゆっくりと私は進んだ。

 そして半分ほどの階段を下りたとき、またまた重苦しい一枚の扉が見えた。ふむ、たぶんあの扉の先にいるのだろう。私を誘った奴が。

 

 あの時は余裕がなかったから君の所へ行くことはできなかったけれど、今日はまだ時間がある。

 どんな奴なのかなぁ。

 

 

「それ以上進むのは危険ですのでお止めください」

 

 

 また一歩、歩を進めようとした時、急に咲夜が目の前に現れた。

 超びっくりした。すごい声が出た。

 

 もう……こう言うのは嫌いなんだよぉ。

 

「あの先には何があるの?」

「大切な人がいます。けれども客人である貴女を危険な目に合わせるわけには行きませんので、どうかお戻りください」

 

 そっか、大切な人がいるのかぁ……

 

 でもなぁ。私は誘われちゃったのだ。寂しそうな声が聞こえてしまったのだ。

 

 辛いもんね。君と私は違うけれど、自分の中に大きな物があると大変だもんね。

 

 咲夜は私を止めるけど、私は行かなきゃいけないんだ。

 どんな奴が私を誘ったのかはわからないけれど、誘われてしまったんだ。それなら断る理由はない。

 

 

 だから私は真っ直ぐ歩いて、咲夜を()()()()()

 

 

「えっ?」

 

 

 ふわりと一番下まで軽く飛び降りる。そして、目の前には先程から見えていたあの重苦しい扉。

 

「この先にいる奴がどんな奴か知らないけれど、まぁ大丈夫だよ。何があっても私は死なない。私は……穢れだからさ」

 

 君たちみたいに綺麗な存在じゃあないんだ。醜く汚れ堕ちてしまったただの穢れだもの。

 

 咲夜へ言葉を落としてから、重苦しい扉を開け、私は部屋な中へ入っていった。

 中にいる奴が優しい奴なら良いんだけどなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

「誰? 貴女は」

 

 

 明かりのあるはずの部屋の中は暗く、どうにも重苦しい空気が漂っていた。

 やだなぁ。これじゃあまるで、私がいたあの暗い暗い海の底みたいじゃあないか。まぁ、あの海の底よりも何倍も何倍もこの部屋は大きいけれど。

 

 声をかけてきたのは金色の髪をした一人の女の子だった。君かい? 私を誘ってくれたのは。

 

 

「う~ん……君、レミリアに似ているね」

 

 

 髪の色や羽の形は全然違うけど、纏っている空気がそっくりだ。ただ、君の空気は少しだけ濁っているね。

 

「……だって私は妹だもの。それよりも貴女は誰? 私に何か用事があるの?」

 

 なるほどレミリアとは姉妹の関係だったのか。そりゃあ似ているはずだ。

 はて、妖怪……それも吸血鬼なのに姉妹なのか。う~ん、半妖ってわけでもなさそうだし……まぁ、そう言うこともあるのだろう。きっと私が知らなかっただけだ。

 

「私は浅葱だよ。君に誘われてぽてぽてと来たんだ」

「私は別に貴女なんて誘ってはいないわよ? そもそも私はこの部屋から出ないし」

 

 あらぁ、そのなの? そうだとすると、私が聞いたあの寂しそうな声は誰の物ってことになる。

 

 ふふん、まぁ、どうせアレだろう。ただ恥ずかしいだけなのだろう。難しい年頃そうだもんね。仕方無いね。

 だから此処は私が頑張るのだ。君に何があってこの部屋の中に篭ってしまったのかはわからない。それでも私は決めたぞ。今日は君を外に連れ出そうと。

 

 こんな暗い暗い部屋じゃなく、広く明るい世界へ君を連れて行こうじゃあないか。お日様の下を二人でぽてぽて歩くこうじゃないか。

 

 うん? ……ああ、お日様の下はダメか。吸血鬼だもんね。

 

「君はずっとこの部屋の中にいたの?」

「うん、500年くらいだと思う」

 

 500年かぁ……そんなに長くはないんだね。それなら大丈夫。君はまだ戻ることができる。

 

「じゃあさ。私と一緒に外へ行こう」

「嫌よ」

 

 断られた。

 

 どうしよう……こりゃあ、困っちゃったな。

 

 

「それよりもせっかく来たんだもの。私と一緒に遊びましょ?」

 

 

 その妖艶な笑はまさに吸血鬼。妖怪最強種。夜の王者。

 

 そんな君がどうしてこんな場所にいるんだろうね。

 

「うん、良いけど何をして遊ぶの?」

 

 遊ぶことなら任せて欲しい。私には今まで培ってきた経験がある。

 その培ってきた経験のほとんどが一人遊びだったから、二人でできるかはわからないけど、きっと役に立つこともあるだろう。

 

 

「弾幕ごっこ」

 

 

 ……うん?

 

 弾幕ごっこ? 初めて聞く遊びだ。

 今まで数々の遊びを開発してきた私ですら知らないとは……やるねぇ、君。しかし此処で遊びの開拓者たる私がその“弾幕ごっこ”とやらを知らないと言ったら馬鹿にされてしまう。

 

 推察するに“弾幕ごっこ”とは“ごっこ遊び”の一種なはず。と、言うことは役を決めて何かをする遊びだろう。

 ふふん、流石は私だ“弾幕ごっこ”が少しずつ見えてきたぞ。例えば鬼ごっこなら役は鬼役と子役の二つ。“弾幕ごっこ”だってそう言う遊びなはず。

 “弾幕ごっこ”にどんな役があるのかはわからないけれど、一つだけわかるものがある。それならば私はその役をやらせてもらおう。

 

「あい、わかった。じゃあ私は“弾幕”役をやるよ!」

「……なに言ってんの?」

 

 ……違うのか。そう言う遊びじゃないのか。

 

「ごめんなさい。弾幕ごっこがわかりません」

「貴女って弾幕は……出せそうもないわね。うー、じゃあこうしましょ。私が弾幕を放ち終わるまで貴女が立っていられれば貴女の勝ち。立っていなかったら私の勝ち。どう?」

 

 おおー、そりゃあわかりやすいね。

 それなら私でもでき……あれ? 何かおかしくない?

 

「あ、はい。わかったよ」

 

 こらこら待て私。何もわかってないでしょうが。

 

「あはっ、それじゃあ始めましょ」

 

 ああ、困った。これは困ったぞ。

 これ絶対に痛い遊びだ。

 

 つまりこの遊びは――私が死ねば私の負けと言う遊びだろう。

 それは、なんてわかりやすい遊びだろうか。

 

「禁忌『クランベリートラップ」』」

 

 目の前には視界を埋め尽くすほどの綺麗な弾幕。

 

 私じゃ鮮やかな弾幕を出すことなんてできやしない。そして、死ねば終わりかぁ……

 

 負けるのは嫌だ。実力なんてないのに負けず嫌いな性格なんだ。

 だから、この一方的な殺し合いが遊びだと言うのなら、私は頑張らなきゃあいけないんだ。遊びってのは手を抜いちゃいけいない。

 

 そして、そんなこの遊びで私が負けることは――絶対にない。

 

 

「いただきます」

 

 

 君はずるいと言うかもしれないけれど、君じゃあ私を殺せやしない。

 

 

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