夢の続きは幻想郷で【完結】   作:puc119

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拾弐話

 

 

「おっ? もしかして終わり? ふふん、どうやら私の勝ちのようだね」

 

 けふっと一息。

 あの綺麗な弾幕が、まさかこんなにも続くとは思っていなかった。けれどもその弾幕も終わりこうして私は立っていられるのだから、私は勝ったということ。

 

 また勝ってしまったか、敗北を知りたいぜ。

 

 ふふっ、な~んてね。

 

「……ずるい」

 

 むすっとした顔から言葉が落ちた。

 そんなことを言われても私は速く動くことが好きじゃないから、ああして食べるしかなかったのだ。

 

 ごちそうさまでした。

 

「どうしてか目も見えないし、貴女は……浅葱は何者なの?」

「私は私だよ。君たちのように綺麗じゃなく……汚れ穢れたもの。それよりも君の名前は?」

 

 私のことなどどうでも良いのだ。

 どうせまた寝てしまうのだから。

 

 それよりも君のその素敵な名前を教えて欲しいな。その後は月明かりの下を二人でぽてぽて歩くのだ。

 

「……フランドール。フランドール・スカーレットよ」

 

 おお、フランドールって言うのか。横文字の類は苦手だから、その名前にどんな意味が込められているのかわからないけれど、きっと素敵な理由があるのだろう。

 フランドール、フランドール……ちょっと長いけれど、うむ素敵な響きじゃあないか。

 

 

 さて。

 

 さてさて。

 

 ちょっとずるかったけれども、この遊びには私が勝ったのだ。それなら私のお願いを聞いてもらっても良いんじゃないかな。

 

「ねぇ、フランドール」

「なあに?」

「私と一緒に外へ行こう」

 

 さっきは私が君のお願いを聞いたのだ。今度はきっと私の番。断られたらやっぱりちょっと困っちゃうけどさ。

 

「……外には何があるの?」

 

 ん~……何がって言われても、ちょっと困っちゃう。

 

 でも、外の世界は――

 

 

「この部屋にはない全てのものがあるよ」

 

 

 明るい光、青い空、白い雲、輝く月、瞬く星々、そよめく風、揺れる草花。それらは全て、この暗い暗い部屋の中にはないもの。この世界はちょっと広いから、私が知らないものも沢山ある。だから毎日が発見で毎日が冒険だ。わくわくするね。

 

「そっかぁ、それなら私も外へ行ってみようかな。でも、私は一人で外へは行っちゃダメなの」

「それなら大丈夫。私が一緒に行ってあげるよ」

「……浅葱じゃちょっと心配」

 

 あ、やっぱり? 私もそうなんじゃないかなぁ。って薄々思っていたんだ。

 でも、私は君と一緒に歩きたいんだけどなぁ……やっぱりそれは難しいのかな。

 

 ん~……それなら仕方無い。

 

「じゃあ、とりあえずこの紅魔館の中を探索しよう」

 

 知ってた? この建物ってすごく大きんだよ。これだけ大きいのだから素敵なものだって沢山あるはず。

 

「まぁ、それくらいなら」

 

 うむうむ、とりあえずは私もそれで満足しよう。いつか君と一緒に外の世界を歩くことを夢見ながら、今のところは我慢しよう。

 フランドールの左手を私の右手で捕まえる。繋いだ右手と左手。それだけで、何処までも行ける気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、浅葱様。お怪我などはされて……えっ? えと、妹様が? あの、どう言う状況でしょうか?」

 

 フランドールと一緒に部屋の外へ出ると咲夜がいた。もしかしてずっと待っていてくれたのかなぁ? それなら悪いことをしちゃった。でも私は待っているだなんて聞いていなかったし、仕方無いね。

 

「フランドールと一緒に紅魔館の中を探索することになったんだ」

 

 この建物中は広いからねぇ、何があるのか考えるだけでわくわくしてくる。

 

「探索、ですか……よくわかりませんが、今日は妹様も御一緒にお食事を取られますか?」

「ん~……それって浅葱も来るの?」

 

 お食事? 何それ、そんな素敵なお誘い私は聞いていないぞ。ずるい、私も皆とお食事をしたい。

 それにしても、この咲夜の話し方は慣れない。どうにもむずむずするじゃあないか。

 

「そう言えばまだ聞いていませんでしたね。浅葱様はどうされますか?」

「私も参加して良いの?」

「はい、是非どうぞ。お嬢様も喜びますし」

 

 なんと、そうなのですか。

 

 それなら――

 

「よろしくお願いします」

 

 ふふん、こりゃあ楽しみだ。

 皆でお食事。それはなんて素敵なことだろうか。

 

 そんなすぐ先の素敵な未来のことを考えてしまったせいか、やっぱり私は嬉しくなってしまって別の世界へ旅立った。仕方無いね。嬉しかったんだもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 浅葱が食卓に着くそうだから、私も久しぶりに食事へ参加してみることにした。こうやって皆で食事をするのは何年振りだろう。

 どうにも私の心は不安定で、どうしても皆と一緒にいるのは気が進まなかった。

 けれども浅葱が居てくれると聞き、進まなかった気が少しだけ進んでくれた。

 

 浅葱は不思議な奴だ。悪い奴ではないと思うけれど、何を考えているのかわからないし。

 私の能力を使えば例え生き物じゃない奴だって壊すことができる。目を握りつぶせば簡単に壊れる。でも浅葱にはその目がなかった。

 私の部屋で放った弾幕も悉く消され、私は負けた。なんでこんな何も考えていない奴がって思ったけれど、たぶん浅葱は壊れかけている私よりもずっと……なんとなくそんな気がする。

 だからなのか、浅葱と一緒に居ると安心できる。浅葱は不安な奴だけど、私は安心できる。

 

 浅葱はちょっとバカだ。咲夜から食事に誘われてしまっただけで舞い上がり、言葉は届かなくなった。でも、そんな純粋さが羨ましかった。私も浅葱と一緒にいれば変わることができるのかなぁ……変わることができれば嬉しいなぁ。

 

 

「え、えと、咲夜? 私には全くわからないのだけど、これは何かしら?」

 

 

 久しぶりに見たお姉様の姿。他の姉妹同士がどんな関係なのか私にはわからないけれど、私とお姉様の仲はそれほど良くはない。

 でも悪くもないんじゃないかなぁ。なんて思う。

 

「はい、手前からスモークサーモンと夏野菜のテリーヌ。唐柿の冷静スープ。黒胡椒を振りかけたローストビーフ。お飲み物はB型の血液です」

「料理のことじゃねーよ」

 

 その浅葱はと言うと、目の前に用意された料理に目を輝かせている。単純だね、貴女は。

 美味しそうに料理を頬張るその様など、見ている此方も嬉しくなる。

 

 浅葱は明るい。すごく明るい。だからそのせいで、貴女の持つ闇が全く見えない。私もそうやって生きることができたらなぁ。

 

 

「とりあえずフランがいるのは良いのよ。家族だから」

 

 

 ああ、なんだ。お姉様も私のことは家族だと思っていてくれていたんだ。卑屈なこの性格のせいか、そうは思われていないんじゃないかって思っていた。

 そっか、そっか……家族、か。

 

 うん、これは悪い気持ちじゃない。

 

「でも、どうして浅葱がいるのよ? いや、確かに私は誘ったし来てくれたのは嬉しいけど」

「わーっ、この料理も美味しいね!」

「おい、話聞けよ。仕舞いにゃ泣くぞ」

 

 騒がしい食事の時間。きっといつもならこんなにも五月蝿くなることはないはず。

 こうも五月蝿くなる原因なんて一つしかない。

 

 

「変な奴」

 

 

 お姉様にペシペシと頭を叩かれている浅葱を見て、そんな独り言が溢れ落ちた。

 

 一緒に外へ行こう、か。

 外に出ようだなんて全く考えていなかったけれど、浅葱と一緒ならそれも悪くはないかもって、私にしては珍しいことを思った。

 浅葱曰く、外の世界には私の知らないものが沢山あるらしい。少しだけ興味はあるかも。そして、そんな外の世界を歩くとき、貴女が隣に居てくれたら……

 

 うん、いつかそんな日が来れば良いね。

 

 どうやら私にも大切にしたい人ができたっぽいです。

 

 

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