夢の続きは幻想郷で【完結】   作:puc119

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壱話

 

 

 少しだけ寝て、目が覚めたら世界が赤く染まっていた。

 

 むぅ、私が寝ている間に何があったんだろうか。残念な記憶力しか持ち合わせていないこの身ではあるけれど、少なくとも私の知っている世界はこんなに赤くはなかった。

 モヤモヤと視界を埋める赤いやつの正体は霧だろう。でも普通の霧は赤くない、白いはずだ。それに赤い霧とはなんとも不気味じゃないか。ただでさえ霧は不気味なのに、それが赤ければ余計に不気味だ。

 

 ふと、上を見上げると其処には赤い月。あら、君も随分とまぁ赤くなってしまったんだね。少しだけ欠けているせいでまだ満月とは言えないが、ほとんど丸に近い形。そんな月も赤かった。

 でも、月は良いのだ。今までだって赤い時はあったから。きっと綺麗好きなアイツらや、兎たちが赤くしているだけ。

 

 月が赤いのは良い。

 霧が赤いのはダメだ。

 

 しかし、どうしてこの霧はこんなに赤いのだろうか? う~ん、自然現象ではないと思うんだけどなぁ……

 

 と、なるとだ。きっと誰かが霧を赤くしたのだろう。

 うむうむ。きっとそうだ。だってそうでもしなければ霧は赤くならない。

 

 さて、これでやることは決まった。

 別に霧は嫌いじゃない。でも、この赤い霧はちょっと好きにはなれないだろう。だって不気味だもの。それならば、霧を赤くしている人の場所へ行こう。

 もしかするとお願いすれば、赤くするのをやめてくれるかもしれない。断られたらちょっと困っちゃうけど、それでもお願いしてみなければ始まらない。

 

 せっかく起きたんだ。どうせなら不気味じゃない世界にいたいじゃあないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

「ちょ、ちょっと待ってもらえないかな?」

 

 ああ、困った。これは困ったぞ。

 霧を赤くしている人の場所へ向かうと決めたのは良い。けれども、向かう途中でちょっと困ったことになった。

 

 

「わ、私を食べても美味しくないよ?」

 

 

 先に言い訳をしておくと、この赤い霧のせいで視界が悪かったからなんだ。決して私の注意力不足とか、私が鈍いとかそう言うことではない。霧が赤いのがいけないんだ。

 

 そんな悪い視界の中をぽてぽてと歩いていたら、柔らかい何かを踏んでしまった。どうやらその柔らかい何かは生き物だったらしく、私がそれを踏むと『ギャオォ』なんて言う声がした。

 私も私でいきなり柔らかいものを踏み、いきなりそんな声が聞こえてきたものだから、やっぱりビックリしてしまって変な声が出た。

 

 だからこう言うのは嫌いなんだよぉ……

 

 私が踏んだそれは狼みたいな生き物らしく、私が踏んだせいでやっぱり怒っているらしい。踏んでしまった私が悪いのだから――ごめんなさいと謝ってはみたものの、狼はまだ怒っていた。

 踏んだ所が尻尾の先とかだったら許してもらえたかもしれない。けれどもどうやら私は狼の顔面を踏んでしまったらしい。そりゃあ怒るよね。私だって顔を踏まれたら怒るもの。

 

 そもそも言葉が通じていないのかもしれないけれど、謝罪は受け入れてもらえない。それどころか狼は涎を垂らして私に噛み付こうとすらしてくる始末。こんなのどうすりゃ良いのさ。

 畜生は別に嫌いじゃない。でもおこりん坊な畜生は嫌いだ。狼怖いよ、狼。

 

 それにこの狼――

 

 

「妖怪だよねぇ、君」

 

 

 ただの畜生程度なら私だって頑張ればなんとかなる。なんとかならないこともあるけれど、なることの方が多い。でもそれが妖怪となると話は別だ。妖怪は強いのだ。

 

 むぅ、困ったぞ。これは私じゃどう仕様も無い。

 

 せめて、言葉が通じてくれればなぁ……

 

 

 そんなことを思いながら、私はその妖怪狼に腕を齧られた。

 

 

 

 あらぁ……やっちゃったね。

 

 

 

「ギャッ!?……ッ?」

 

 

 腕に噛み付いたままの妖怪狼。ちょっと痛い……気がする。

 

 ごめんね、ごめんね。やっぱり私、美味しくないでしょ? だから言ったんだけどなぁ……

 

 噛み付いていた私の腕から放れ、妖怪狼は苦しそうな声をあげた。

 うん……君じゃあ私を受け入れることはできないよ。

 

 

 私は穢れ。

 

 汚れ、汚れてしまった、穢れの塊。

 綺麗好きなアイツらに嫌われて、それでも残ってしまったたった一つの穢れ。

 

 そんな私を中へ入れてしまえば、例え丈夫な妖怪だって大変だ。

 

 ぴくぴくと痙攣を起こし、倒れてしまった妖怪狼。ごめんね、ごめんね辛いよね。だって私は穢れだもの。

 もう直ぐこの妖怪狼は死んでしまう。内側からじわりじわりと穢されて死んでしまう。

 そして残るのは穢れだけ。

 

 でも此処に穢れを残しておくのはよろしくない。

 

 だから――

 

 

「いただきます」

 

 

 ちょっと散らかっているけれど、私の中でゆっくりしていってね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 決して美味しくなんてなかった。でも私の一部となってくれた妖怪狼のためにも、お礼を言わなきゃいけない。ありがとう。ごちそうさまでした。

 

 さて、それじゃあまた歩き始めようか。相変わらず世界は赤いまま。これが緑とかだったら目にも優しかったけれど、赤い色は目に優しくない。

 私は優しい世界が好きなんだ。

 

 う~ん、なんて言えばこの赤いのを止めてもらえるかな? きっと赤くした人だって理由があるはず。ちゃんと考えておかないとだなぁ。

 

 そんなことを考えつつ、ぽてぽてと歩を進める。すると、大きな湖に辿り着いた。

 その湖にもやっぱり赤い霧がかかっていて、どうにも不気味。先程よりもずっと霧は濃くなっているし、この辺に赤くしている人がいると思うんだけど。はてさて、何処にいるのやら。

 考えていてもわかりやしないから、とりあえず湖の周りを散策してみることに。湖の周りと言っても、湖からは少しだけ離れた所を歩くことにした。だって、もしかしたら湖の中からいきなり何かが出てきて『わぁっ!』とかやられるかもしれない。

 それはちょっと困るから、少しだけ離れた所を歩いてみる。

 

 赤く染まった世界をぽてぽてと歩く。

 前も後ろも赤い霧。上を見上げてもまた赤い月。これだけ赤が続くと流石に飽きてきたなぁ。どうせ色を付けるのだったら、もっと色彩鮮やかにすれば良いのにね。

 きっと赤くしている人は、よっぽど赤色が好きなんだろう。私だって赤色は嫌いじゃない。でも、此処まで赤い色が続いてしまえば、赤色を嫌いになってしまうかもしれない。

 

 それは寂しいなぁ……

 

 

 

 

 どれくらい歩いていたのかはわからないけれど、漸く何かを見つけた。

 

 

「ふむ……こりゃあ、怪しいぞ」

 

 

 目の前にあるのは真っ赤な真っ赤な大きな建物。きっと此処に住んでいる人は、よっぽど赤色が好きなんだろう。

 それにしても……この世界は随分と赤くなってしまったものだ。月や霧だけじゃなくて、まさか建物まで赤くなっちゃうとはねぇ。

 きっと霧を赤くした人はこの建物中にいる。外に出ていてくれれば嬉しかったけれど、やっぱり家くらいはあるよね。私はないんだけどさ。う~ん、優しい人だったら嬉しんだけどなぁ。

 

 

 ため息を出すと共に空を見上げると、真っ赤な月が怪しく輝いていた。

 

 

 






読み専になろうなんて考えていましたが、なんとなく書きたくなったので書いてみました

難しいものですねぇ

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