何かおかしい。そんな感じはしているけれど、いったい何がおかしいのかが私にはわからなかった。思考に靄がかかったみたいに、どうにも考えがまとまらない。
今日も今日とて、霊夢の神社では沢山の人外や少しの人間が楽しそうに騒いでいた。騒いでいるのはおかしくない。だって今は宴会だから。人を集めて宴会を開いたのは私。
けれども、だ。ここ最近はこの宴会がずっと続いている。それも3日おきに、ずっと。酒好きで騒ぐことを好きな奴らが多いとは言え、流石に最近は宴会が多過ぎる。じゃあ人を集めなければ良いんじゃないかとも思ったが、どうにもそれは違う気がして……でも、どうしてそうなってしまうのかはわからなくて……なんとも難しい。
私がおかしいと思っているくらいだ。他にも気づいている奴はいるはず。もしかして、これは異変なのか? だとしたら誰がどんな理由で……
う~ん、考えてもわからないな。
「わーっ、こっちの料理も美味しそうだね!」
「まぁ、ちょっと待て」
騒ぎながら料理へ向かってぽてぽてと走っていた浅葱を捕まえる。
流石に浅葱が犯人ってことはないだろう。けれども、何かを知っているかもしれない。以前の2つとも異変はコイツが解決したわけだし。
「な、何をするだー。って、魔理沙じゃあないか。どうしたの?」
「なぁ、浅葱。この宴会についてどう思う?」
走っていた浅葱を私が捕まえると、やはり騒いだ。ホント、元気だなお前。
「うん、楽しんでるよ!」
ああ、うん。そりゃあ良かったよ。
う~ん、そう言うことを聞きたかったわけじゃないんだけどなぁ。しまったなぁ、聞く相手を間違えたか。だって浅葱バカだもん。
「そうか、そりゃあ良かったよ。悪かったな引き止めっちゃってさ」
違う奴に聞いてみるか。ただ、酔っ払って刀を振り回している妖夢以外の奴に。
アイツは何をやっているんだよ……
「ん~……やっぱり君にも見えていないのかな?」
こてりと首を傾げながら浅葱に聞かれた。
ちょっと、待て。見えていない? 何のことだ?
浅葱の話す言葉は理解できないことが多い。そのほとんどの原因は浅葱の頭が残念だからだけど、たまに……極希に違うことがある。
そして今回は、きっと――
「見えていない? 何のことだ?」
「でもね、それは仕方無いことなんだ。だって皆忘れてしまったんだもの。それを思い出すことは、君じゃあできない。薄く薄く広がったそれを萃めなければ、君じゃあ見ることができないよ」
そんな言葉を私へ言うと浅葱はまた料理の方へ走って行ってしまった。
忘れてしまった? 薄く薄く広がったそれ?
……マズイな、さっぱりわからん。きっとこの異変のことに関係はしていると思うんだが。
こりゃあ明日から動く必要がありそうだ。
――――――――――
「おおー、初めて見た顔だけど、君は誰だい?」
一人でゆっくりお酒を楽しんでいたら、変なのに捕まってしまった。
その変な奴の名前は浅葱で、確か霊夢のペット……で良いのよね? 詳しくは良くわからないけれど。
「いえ、前も居たんだけど……。私はアリス・マーガトロイド。魔法使いよ」
それにしても、以前からずっとあるこの妖気は何なのかしら? 全く、妖怪退治は人間のすることなのに、霊夢や魔理沙は何をやっているのやら。
この終わらない宴会も絶対にこの妖気のせいよね。
さてさて、目の前にいるこの小さいのはどうしたものか。確か虐めると霊夢がブチギレるとかって魔理沙が言っていたっけ。それはちょっとやってみたいかも。
「ははーん。さては君、今日初めて宴会に来たな?」
「……いや、だからね。私は前回も前々回も前々々回も居たって」
ちゃんと他人の話聞きなさいよ、このちんちくりん。なんだろう、私って影が薄いのかなぁ。それは軽く傷つく。
変わった奴だとは聞いていたけど……なるほど、これは変わった奴だ。霊夢の奴、よくこんなのと一緒に居られるわね。
「そうなの? でも、私は初めて君を見たよ?」
いや、それは貴女が私に気づかなかっただけでしょうが。何故そのことがわからない。
私は何度も貴女の姿を見ていたんだけどなぁ……どうやら浅葱は私のことに気づいていなかったらしい。
どう見たって浅葱に力なんてない。それでも、前に起きた異変はこの子が解決した。う~ん、そもそもこの子は何なのかしら? 人間でも妖怪でもなさそうだけど……それなら妖精? 確か、妖精の中にもバカがいるって聞いたし。
「なんだか難しい顔をしているけれど、どうかしたのかい?」
「……貴女は気づいていないでしょうけれど、今の幻想郷には妖気が溢れているのよ。そしてこの終わらない宴会。おかしいとは思わない?」
何と言うか、まるで自分の意思とは関係なしに宴会をやらされているようで、どうにもそれが気に食わない。それもこれも、この妖気が原因なはず。妖怪退治は人間の仕事だと言うのに……
「でも宴会は楽しいよ?」
ああ、うん。そうだね。楽しいね。
はぁ……この子と話をしているとやたらに疲れる。どうにも相性は良くないらしい。私はそんなにゆっくりは生きられないもの。
「ん~……君は自分の意思でこの宴会に来たの?」
いきなりだった。サクリと浅葱の言葉が私に刺さった。
自分の意思で宴会に……どう、なんだろうか。
「そりゃあ、そうでしょ。魔理沙に呼ばれて自分の意思で来たわ」
なんのこと? 浅葱は何を言っている?
「ううん、そうじゃあないんだ。此処へ来てしまったと言うことは、そうじゃあない。でもそれは仕方が無いこと。だって宴会は楽しいから。そんな楽しい宴会に皆は萃まった」
此処へ来てしまうことが自分の意思じゃない? じゃあ、それは誰の意思? 貴女は何処まで知っているの?
「それじゃあね、アリス。また宴会で会おうじゃあないか」
「……ええ、また」
よく、わからないけれど、どうやら既に私も巻き込まれていたらしい。
はぁ……妖怪退治かぁ。私は人間ではないけれど、そんな人間みたいなことを私もやってみることにしよう。
――――――――――
人が萃められた。
沢山、沢山、自分の意思とは関係なしに。
けれども、まぁ、これは良いことなんだ。だって皆でやる宴会は楽しいもの。一人ぽっちの宴会は面白くんなんてないけれど、皆でやる宴会は楽しい。
そうだからきっとこの宴会だって楽しいもののはず。きっと素敵なもののはず。
「でもなぁ」
楽しそうじゃあない顔をしてしまっている奴が何人かいるのだ。きっと、この宴会のことが良くわからないから。もやもやとした何かの正体がわからないから。
でもそれは仕方無いこと。だって皆忘れてしまったから。私は覚えていたけれど、此処に居るほとんどの人は忘れてしまっている。だからきっと気づけない。
「どうせなら、皆が楽しそうな顔をしていて欲しいなぁ」
この宴会は、一人ぽっちの子鬼が仲間を萃めるために起こした宴会。暗い暗いあの場所から、仲間が戻ってきてくれれば良いなぁなんて考えた宴会。
あの子鬼は宴会の香りに誘われれば、もしかしたら帰ってきてくれるかもって考えている。けれども暗い暗いあの場所まで、香りは届かない。だって香りは直ぐに薄くなって消えてしまうもの。
一生懸命頑張ってはいるけれど、きっと届かない。
それに、萃められた人だってそろそろ気づいてしまう。私は一人ぽっちの君を応援するけれど、きっと皆は違う。
確かに君は一人ぽっちだ。けれども、此処に居る奴らだってきっと君を大切にしてくれる。そのことに気づいて欲しいなぁと私は思うのです。仲間がいないことは寂しいけれど、君は一人にならないことだってできるんだ。
いつかのあの紫陽花のようにさ。
「ねぇ、萃香。そろそろ宴会が終わっちゃうよ?」
神社の屋根の上、一人お酒を呷る子鬼に向かってそんな言葉を投げかけた。
萃夢想スタートっぽいです
はてさて、どうやって進めましょうか