妖気が溢れている。此処のところずっと。
誰が何を企んでこんなことをしているのかわからないけど、良い加減鬱陶しい。時間は無限にあるけれど、私だって暇じゃないのだ。あの広い紅魔館の掃除は本当に大変だもの。
それだのに、こうも3日おきに宴会などをやられてしまうと少々困る。だから決めた。良い加減終わらせようって。
けれども、残念なことに誰がこの妖気を出しているのかがわからない。この終わらない宴会はこの妖気が原因だとは思うけど……
犯人が誰なのかはわからない。でもとりあえず動かなければ始まらないのだ。
「さて、行きましょうか」
とりあえずは……まぁ、あの神社にいる巫女から始めよう。お嬢様が起きてしまう前に終わらせないと。
巫女が妖気を出すとは思えないけれど、あの宴会は全てこの博麗神社で行われている。だから、やっぱりあの巫女は怪しい。
霊夢がいつもお茶を飲んでいる縁側へ移動。しかし其処に霊夢の姿はなく、くたりと横になっている浅葱の姿しかなかった。霊夢は居ないのかしら。
てか、浅葱っていつも同じ場所で同じ格好ね。その場所が好きなの?
「あらぁ? 咲夜じゃあないか。今日はレミリアと一緒じゃないんだね。でも君が一人で来るなんて珍しい。どうかしたの?」
う~ん、流石に浅葱が犯人ってことはないわよね。確かに浅葱は宴会が好きではあるけれど、そもそも浅葱って妖力ないし。
「霊夢に用事があったのだけど……あの巫女は?」
「おおー、霊夢に用事があったのかぁ。でもね、霊夢は出かけちゃったから居ないよ」
むぅ、やはり霊夢はいないのか……さて、それなら次はどうしようか。
次に怪しいとなると、魔理沙かあの亡霊になるけれど……さて何方へ行くべきか。でも魔理沙の住んでいる場所ってよく知らないのよね。魔法の森にいることは知っているけど。
う~ん、一人じゃつまらないし浅葱でも一緒に連れて行こうかしら? ……いや、騒がしくなりそうだしやめておこう。
「ねぇ、咲夜」
「うん? どうしたの?」
相変わらず浅葱は縁側にくたりと横になったまま。そんな姿のまま顔を此方へ向けることもなく、言葉を落とした。
「君は一人で寂しくないかい?」
……うん? なんのこと? 確かに今は一人だけど紅魔館へ戻れば騒がしいくらいだし、寂しいなんて思ったことはないのだけど。
はぁ、ホント、この子は何を考えているのだろうか。
「別に寂しくなんてないわよ。紅魔館には沢山の人がいるもの」
「ん~とね、そう言うことじゃあなくてさ。君だけでしょ? 人間は」
えと、紅魔館での話ってことなのかな? そうだとしても、別に寂しいと感じたことはない。確かに私はお嬢様たちと種族が違う。でも、別に寂しいとかは……なんだろう、寂しそうに見えたってこと?
「確かに人間は私だけよ。でもやっぱり寂しいと感じたことはないわよ」
「うんうん、やっぱりそうだよねぇ。例え自分の仲間がいないとしても、寂しくはないよね」
何が、言いたいの?
くたりと横になったまま、理解のできない言葉を落とし続ける。浅葱の言葉は理解できないことが多い。だって浅葱ってバカだもん。何を考えているのかなんてわからない。
でも、今回はそうじゃない気がする。どうにも頭の中に靄がかかり、上手く考えがまとまらない。それもこの妖気のせい? 貴女には何が見えているの?
「ねぇ浅葱……貴女は、この妖気が何処から出ているのか知っている?」
「う~ん、アイツだってそれくらいわかっていると思うんだけどなぁ。それに気づいている奴が沢山いる。だから次の宴会がきっと最後。でも最後なんだし、皆で笑っていられたら嬉しいね」
そう言った浅葱は漸く顔を上げ、私に笑いかけた。
いや、質問に答えろよ。なんて思ったけれど、そんな浅葱の顔を見ると、まぁ、仕方無いか。と思ってしまい。どうにもそれ以上聞く気は起きなかった。
何と言うか随分と甘い性格となってしまったものだ。それもこれも、この浅葱が原因なのだろう。自分でも不思議なことであるけれど、それが悪いとはあまり思わなかった。
「そうね、宴会くらい皆で笑っていたいものね。それじゃあ、私は違う場所へ行くことにするわ。また、次の宴会で会いましょ」
「うん、またねー」
浅葱と言葉を交わしてから、博麗神社を飛び立つ。
次の宴会が最後、か。それが本当なのかはわからないけれど、それまでの間くらいは人間らしく、抗わせてもらおう。
――――――――――
魔理沙や七色魔法莫迦と遊んでいたせいで、随分と遅い時間になってしまった。結局犯人もわからないし……困ったわね。私の勘が鈍ったとは思えないけれど、今回はどうにも上手くいかない。
日が沈んでからかなりの時間が経っている。首輪につけておいた御札のおかげで、浅葱がどこにいるのかはわかるけど、危ないことはしてないかしら? あの子、いくら言っても聞かないしなぁ。
とりあえず、急いで帰ることにしよう。
「ただいま。浅葱ー、居るー? って、あら、お酒の香りが……」
できる限りの速度で、神社へ戻ると、何故かお酒の香りがした。浅葱が勝手に家のお酒を飲むとは思えないし……う~ん、誰か来ているのかしら?
とりあえず、いつのも縁側へ移動。すると其処には、プラプラと楽しそうに足を揺らして縁側へ座る浅葱が居た。でも、浅葱しかいない。
どう言うことかしら? それにお酒も見当たらないし……
「おおー。お帰り霊夢」
うん、ただいま。
一見、浅葱しか居ないように見えるし、お酒も見当たらない。けれども、確かにお酒の香りはしている。でも、その香りは何処から? う~ん、わからない。
「浅葱は今日、何をしていたの?」
「今日はねぇ。此処でごろごろしていたんだ」
うん、つまりいつも通りね。良かった、危ないことはしていないらしい。幻想郷を覆っているこの妖気のせいで、どうにも良い予感がしない。他の奴らも何処かバタバタしているし。
けれども、浅葱はいつも通りみたいね。癒される。
「誰か来たりはしなかった?」
「んと、咲夜と寂しがり屋のちっちゃいのが来たよ」
ちっちゃいの? 咲夜はわかるけど……ちっちゃいの? しかも寂しがり屋って誰よ。妖精か何かかしら。
「だから私はね。そのちっちゃいののために一緒に居てあげたんだ」
何言ってんだろ。全くわからない。
「へ、へー。そうなの、偉いわね」
よくわからないけれど、とりあえず浅葱を褒めて頭を撫でておいた。まぁ、きっと悪いことはしていないだろうし。
しかし、浅葱は一日中この縁側にいたのかしら? どうせ夜も此処にいるだろうし……飽きないの? まぁ、何処かへ行って危ないことをされるよりは良いけれど。
むぅ、私も随分と浅葱に入れ込むようになってしまった。別にそれが悪いことだとは思っていないけれど、流石に過保護過ぎかしら?
「うん? もう動くの? う~ん、まぁ、君がやると言うなら私も協力はするけど……流石にこれはバレちゃうと思うけどなぁ」
ぽそりと浅葱が呟いた。
浅葱は誰に対して喋っているの?
一瞬――お酒の香りが強くなった気がした。
「まぁいっか。んとね、霊夢」
「ちょ、ちょっと浅葱、何をやろうとしているのよ?」
嫌な予感がする。妖気だってさっきよりも強く感じるし。
何が起きるって言うのだ。
「私はちょっと攫われちゃうんだけどさ、別に危ないことをするんじゃあなくて、ただ見えなくなるだけだから安心して。それじゃ、次の宴会でまた会おうねー」
笑顔で此方に手を振る浅葱。
攫われる? ただ見えなくなるだけ? それってどう言う……
そんなことを聞こうとしたけれど、浅葱の姿はいつの間にか消えていた。私が付けてあげたあの首輪を残して。
お酒の香りは、もうしなかった。
次か次の次くらいで萃夢想も終わりっぽいです
それが終わったらどうしましょうか……