今日も今日とて、博麗神社には楽しげな声が響いていた。
それもそうだろう。だって今は宴会だから。
モヤモヤとしていた妖気もなくなり、心だって何処か晴れた気分になる。できれば私がこの異変の解決をしたかったが、結局今回も霊夢に先を越された。
そして開かれた宴会。まぁ、元々開かれる予定だったんだけどな。
さらにその宴会の中には、見慣れない姿が一つ。
「なぁ、霊夢。この異変の犯人は結局、彼処で浅葱と一緒に騒いでいる小さな鬼ってことで良いのか?」
「そうらしいわよ。ずっと神社の屋根の上に居て皆を萃めていたんだって」
どうやらそう言うことらしい。
つまり私たちは、自分の意思とは関係なしにこの宴会をやらされていたんだと。正直それは信じられないことだが、まぁ、考えてみれば三日おきに宴会なんて明らかにおかしいもんな。
しかし鬼、か。まだそんな存在が残っていたんだな。
今なら浅葱があの時に言っていた言葉だってなんとなく理解することができる。だって鬼なんかが幻想郷にいるはずがないのだから。私も詳しくは知らないが、そう言う約束のはずだし。
「それにしても良く霊夢はあの鬼を見つけられたな」
「まぁ、ね」
何処か歯切れの悪い様子の霊夢。
せっかく異変も解決したのだし、もう少し威張るくらいでも良いと思うが。
「その……浅葱のね。泣く声がしたのよ。それでその泣かせた奴を倒したら解決してた」
……ああ、そう言うことか。
確か、前の異変もそんな感じじゃなかったか? なんだかなぁ……解決できたんだから別に良いけれど、どうにも締りが悪い。
ため息を落とし、なんとなしに霊夢を見てみる。
「なによ?」
いや、ただお前も変わってきたなって思っただけだよ。
それにちょっと浅葱に依存し過ぎてないか?
その浅葱はと言うと、今日も全力で宴会を楽しんでいる様子。ぽてぽてと忙しそうに境内を走り周る。
浅葱は面白い奴だし、興味が湧くのもわかる。でも霊夢はちょっといき過ぎ。そのことがやたらに不安だった。
なぁ浅葱。お前は誰なんだ?
――――――――――
「本当にごめんよ。浅葱」
もう何度目かわからないけれど、また萃香に謝られた。
私はもう気にしていないんだけどなぁ……
そりゃあ、叩かれ時はびっくりして泣いてしまったけれども、その後萃香はちゃんと謝ってくれたから私はもう気にしていない。なんたって私は心が広いからね。
「だから私はもう気にしていないよ?」
「……本当かい?」
うん。本当。
それよりもせっかくの宴会なんだ。楽しまなきゃあもったいない。
「そっかぁ、それなら良かったよ」
萃香が何をそんなに心配しているのかわからない。
意地悪されるのは嫌いだけど、萃香はそんなに意地悪な奴じゃあないから嫌いじゃない。そう何度も言ったんだけどなぁ。
今日の宴会は萃香に萃められたんじゃあなく、自分の意思で集まってもの。だから今日は皆楽しそう。うむうむ、やっぱり宴会はこうじゃあないといけないね。だってお酒は楽しく飲まなきゃ意味がないもの。
料理とお酒と多く人と……此処には素敵なものが溢れている。だから私は宴会が好きなのです。
ねぇ、萃香。君もそう思うでしょ?
さてさて私はあと何回、この楽しい宴会に参加することができるんだろうね。
どうしてなのかわからないけど、楽しい時間ってのは直ぐに終わってしまう。もう少しゆっくりしてくれても良いのに、直ぐに終わっちゃう。まぁ、アイツらはせっかちさんだしなぁ。仕方無いね。
そんなせっかちさんのせいで、今回の宴会もあっと言う間に終わってしまった。けれどもそれは仕方無いんだ。それに楽しいことは短いからこそ楽しめるもの。
「お疲れ様。どう? 楽しかった?」
「うん、楽しかったよ」
縁側に座り、お茶を飲んでいたら霊夢が声をかけてきた。
思った通り、萃香を見つけたのはやっぱり霊夢だった。もしかしたら見つけられないかなぁ。とも思っていたけれど、霊夢は見つけてくれた。君は不思議な人だね。
「そう、それなら良かったわ」
なんて言って笑う霊夢。
君はどうだったのかな? 今日の宴会は楽しかった?
そりゃあ私も楽しみたいけれど、どうせだったら皆で楽しんだ方が良いに決まっているもの。
「……ねぇ、浅葱」
「ん~? どうしたの?」
そろそろ霊夢は寝る時間だけど、まだ寝なくて良いのかな? 夜更かししちゃうと、明日の朝起きるのが大変だ。
私が起こしてあげても良いけれど、また前みたく捕まえられて動かなくされちゃうのは困るから、できれば遠慮したいところ。寝起きの霊夢はちょっと怖いのです。
「あんたは消えちゃうの?」
私と霊夢しかいない神社へ、ぽそりと落ちた霊夢の言葉。
消えちゃう、か。
私的に消えると言うよりは寝てしまうと言う方が近いけれど……う~ん、霊夢のような人間にとってそれは消えるのと一緒だもんね。
だって私が一度寝てしまったら、きっともう霊夢と会うことはできないのだから。
「そうだね。いつかはそうなると思うよ」
今までだってそうだったもの。きっとこれからだってそうなんだろう。
それに慣れるなんてことはないけれど、それは仕方が無いこと。私だって頑張って起きようとはしているんだけどね。
どうにも言うことを聞いてくれないこの身体。
だから私はまた寝てしまう。だって私は穢れだから。
「そっか。それが、いつなのかは……わからないのよね」
「うん、私にもわからない」
もしかしたら次の瞬間かもしれないし、もしかしたら一年後かもしれない。
でも、どんなに起きていられてもあと二年くらいが限界だと思う。そして一度寝てしまえば、きっと次に起きるのは数百年後。
私はまた違う世界で目を覚ます。
そして、その世界に君はいない。
だからせめて起きている間は楽しみたいと思うのです。寝てしまったら、もう二度と戻らないものがあるから。
絶対に後悔はするけれど、少しでもその後悔が減ってくれるよう頑張ってみるのです。
「まだ頑張れそう?」
「うん、もう少し頑張ってみる」
どう頑張れば良いのかちょっとわからないけれど、それでも起きていられるよう気分だけでも頑張ってみる。気分ってのは結構大切なのだ。
「そう……じゃあ私は寝るわ。また明日、浅葱」
「うん、おやすみ。また明日」
また明日もこうやって会えると良いね。
おやすみなさい。良い夜を。
霊夢がいなくなり、私はまた一人ぽっち。
真っ暗な空を見上げると、まん丸の振りをした月がぽっかりと浮かんでいた。その月はまん丸のように見えなくもない。
今日は満月だったはず。けれども、空に浮かんだあの月は何処か揺らいで見える。
まだ何かが始まったわけじゃない。けれども、何処かで誰かが何かを企んでいる。
「そっか、お月見ってのもしてみたいね」
皆でまん丸の月の下。空を見上げながらお団子を食べるのだ。
きっと月明かりの下なら、あのフランドールだって来てくれるはず。ふふん、そりゃあ楽しみじゃあないか。
中秋の名月まではもう少しほど時間がある。その時私が起きているのかはわからない。でもその時は皆でお月見をしたいなぁ。十五夜のお月様を眺めながらのんびりと。
だからね、嘘っぱちのお月さん。
君が早くいつもの姿になってくれた方が嬉しいと私は思うんだ。
ああ、でもその前にあの梅雨の日に会った人の場所へ行かなきゃだ。危ない、大切なことを忘れるところだった。
ん~……確かあの子たちが咲いていれば会えるんだっけ? うむうむ、あの子たちかぁ。
いや、誰だよ。あの子たちって。
気がつけばもう26話も書いているそうです
早いものですねぇ
とりあえず一区切りがついたので、また日常編をぽこぽこと書いていきます